泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。
2016年09月16日

梅毒検査時の薬の影響

20代後半の男性から、梅毒検査時の薬の影響について相談がありましたので報告いたします。

【相談内容】

私は20代後半の男性です。お世話になります。

梅毒の感染不安行為がありもうすぐ6週経とうとしているのですが、
 
別の病気でグレースビット50mgを1週間、クラリス200mg×2を
 
1週間服用し合計2週間で本日飲み終わりました。

保健所の方へ2~3日後に検査へ行こうと思っておりますが、
 
この服用していた抗生物質で血液検査に影響が出ますでしょうか?
 
例えば陽性なのに陰性になってしまうなど。

お忙しいところ申し訳ございませんがご教示いただけると幸いでございます。
 
①梅毒の薬
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【回答】

梅毒の血清検査はリン脂質であるカルジオリピン(CL)を抗原とした
 
脂質抗原法と菌体自体を抗原として用いる梅毒トレポネーマ抗原法があり、
 
それぞれに定性法と定量法があります。
 
脂質抗原法は通常STS法とよばれ脂質抗原をプローブとして用いる抗体検査法です。
 
用いられるプローブはCLといわれる脂質抗原です。この検査法はたくさんありますが、
 
最近では自動分析器による自動測定が可能なラテックス凝集法(RPR自動化法)が普及しています。
 
このSTSは感染後3~4週で陽性となります。梅毒の治療効果をよく反映するため、
 
治療後の経過観察に用いられます。
 
一方、梅毒トレポネーマ(Tp)抗原法はTpに特異的な抗体を測定する検査法です。
 
Tpの菌体成分を血球にまぶし、血清中の特異抗体による架橋で生じる凝集反応を
 
判定するTPHA法とアセトン固定した菌体そのもので蛍光抗体間接法を行う
 
FTA-ABSなどがあります。FTA-ABS法は手技が煩雑なため、
 
比較的簡便なTPHA法が頻用されています。
 
なお、TP抗原法では治癒後も抗体価が下がりにくいので、
 
治療効果や治癒の判定には適しません。
 
また、病初期において、TPHA法はSTSより2~3週遅れて陽性化します。
 
そのため、多くの医療機関では、通常はSTSとTp抗原の2つの血清検査が行われています。
 
②梅毒2期:バラ疹
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貴男は保健所に行くそうですが、貴男が行く保健所で2種類の検査を施行してくれるかどうか確認いたしましょう。
 
もし1種類しか検査をしてくれない場合は、医療機関を受診いたしましょう。
 
さて貴男の梅毒検査時の薬の影響についてお話します。
 
私見で恐縮ですが、感染機会が3~4カ月以上前でしたら、
 
検査結果にあまり抗生物質の影響はないと考えます。
 
ただ貴男は感染機会からまだ6週間ですから、検査結果に影響がでる可能性がないとは言えません。
 
梅毒はグラム陰性細菌で、かなり原始的な細菌ですから、ほとんどの抗生物質に
 
反応すると考えられます。
 
ですから、もし不幸にも、貴男が梅毒に感染し、極初期であれば検査結果に
 
影響が出るかもしれません。
 
結果が陰性であった場合は、3~4週間後に再検査を受けて、
 
陰性を再確認することをお勧めいたします。
 
お大事になさってください。
 
③カナダ Van Dusen Botanical Gardens 2016091603.JPG

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2016年09月12日

梅毒の症状に関して

20代の男性から梅毒の症状に関して相談がありましたので報告いたします。

【相談内容】

はじめまして。私は20代の男性です。
 
最近梅毒のニュースをよく見かけるようになり不安になりまして質問致しました。

梅毒の初期症状に感染後約3週間後に初期硬結というものができるとのことですが、
 
人によるかとは思いますがこれはいきなりそれなりの大きさのものができるのでしょうか?

それとも毎日気にして見ていれば徐々に大きくなり始めるのがわかるものなのでしょうか?

約十日前に都内の風俗店で手のサービスを受け、梅毒のニュースを見て
 
以降今ではすっかりノイローゼ気味で自分もかかってしまっているのだろうと
 
思い込み夜もあまり眠れず食も喉を通らない状態です...

病院で相談したところ「症状が出てないのなら診察も意味がないし、検査もできない。
 
珍しい病気だからそんなに心配しなくていい。」とそのまま帰されてしまいましたので、
 
今後症状が現れなくても時期を見て保健所へ検査へと行きたいと思っております。

①初期硬結

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 【回答】

顕症梅毒では、初期症状としてに感染後、約3~4週間後に初期硬結や
 
硬性下疳というものが、性器に発症する場合があります。
 
顕症梅毒になり、貴男がいう通り、性器を毎日、毎日気にして見ていれば、
 
初期硬結や硬性下疳が徐々に大きくなり始めるのが、分かるかもしれません。
 
しかし、むしろ症状の出ない無症候性梅毒の方がかなり多くみられます。
 
貴男は風俗店で手のサービスを受け、不安になっています。
 
しかしこの性行動では、常識的には梅毒には罹患しません。
 
体液の交換、粘膜と粘膜の接触がなければ性感染症は先ず、心配ありません。
 
でも貴男は心に傷ができてしまいました。
 
いつまでも悩んでいることは、精神衛生上好ましくありません。
 
貴男がいう通り6週間、経ったら保健所や医療機関で、
 
梅毒の血清反応検査を受けて心に平和を勝ち取りましょう。
 
お大事になさってください。

②飛行機の窓からのアラスカの眺望

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2016年09月02日

若年者の性感染症患者を対象とした再発防止策

学会報告としてメディカル・トリビューンに掲載されていましたので報告いたします。
 
若年の性感染症患者の再発防止策は?

日本性感染症学会第28回学術大会

学会レポート | 2016.01.04 07:00

①尾上 泰彦氏

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 ②齊藤益子会長

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最近では性行動の開始が低年齢化しており,10歳代の性感染症の増加が懸念されている。

宮本町中央診療所(神奈川県川崎市)で長年性感染症の診療に携わってきた尾上泰彦氏は若年者の性感染症患者を対象とした再発防止策を検討。

「患者のパートナーを積極的に受診させるための説明・指導が最も重要」と,日本性感染症学会第28回学術大会(会長=帝京科学大学看護学科教授・齋藤益子氏)のシンポジウム「性感染症,一次医療機関での実際-事件は現場で起こっている-」で強調した。

③ピンクの薔薇
詳細は日本性感染症学会誌 2016 No.1に掲載されます。

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2016年09月01日

「 サンデー毎日」8月30日発売 急増する「梅毒」

 サンデー毎日」8月30日発売9.11特大号201641~43頁に

梅毒に関する私の記事が掲載されましたので、報告いたします。

記事の内容は下記に示します。

 

①「 サンデー毎日」8月30日発売 9.11特大号2016
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急増する梅毒   2016.8.31.

 

『早期発見のススメ』

梅毒が過去の病気ではなくなっている。6年ほど前から増加傾向に転じ、

 

今年の報告数は、すでに昨年1年間の数に迫る勢いだ。

 

感染初期は痛くも痒くもないため、放置してしまう人が少なくない。

 

長年、梅毒を診てきた尾上泰彦医師(72)に症状や予防法を聞いた。

  ②急増する梅毒「早期発見のススメ」
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梅毒は1492年、新大陸を発見したコロンブスの一行が、その地の風土病を持ち帰ったのが始まりといわれる。

 

世界的に爆発的流行となり、日本には16世紀に上陸した。国内で初めて梅毒が記録されたのは1512年。

 

梅毒は当時「瘡」と呼ばれ、特効薬のないまま感染が広がった。


1563年に来日したポルトガルの宣教師ルイス・フロイスは〈男も女もそれ(梅毒)を普通の事として、

 

少しも恥じない〉と書き、江戸時代には医師の橘南谿が『西遊記』(1795年)で、

 

京都の人の半分が梅毒にかかっていたと記したほど。

 

症状が進行すれば鼻が欠け、命を落とす危険もあったため、各地では梅毒平癒を願う「瘡守稲荷」が信仰を集めた。

 

徳川家康の次男、結城秀康や、肥後熊本藩初代藩主の加藤清正も梅毒で亡くなったといわれる――

 

こう書くと、梅毒はひどく昔の病気に感じられる。実際、1943年にはペニシリンによる投薬治療が成功し、

 

患者数は激減。国立感染症研究所によると、67年には1万1000例だったが、近年は87年の2928例を

 

ピークに減少傾向にあった。

 

ところが2010年を境に増加傾向に転じ、特に今年の増え方は顕著だ。感染研によると、8月14日までの

 

報告数は2591例。昨年の2698例(*今年3月30日時点の暫定値。以下*印同)に迫る勢いだ。

 

 宮本町中央診療所(川崎市)の元院長で、40年近く性感染症の診療を続けている尾上泰彦医師は、こう指摘する。


「梅毒の症状を診たことがない医師が増えたので、病変を見ても梅毒を疑わず、血液検査すらしないケースがある。

 

そのため梅毒患者は報告数より、もっと多いと思われます」

 


【爆買いとの関係】
梅毒は性感染症の一種で、皮膚や粘膜の傷から病原菌の梅毒トレポネーマが侵入して感染する。

 

セックスレスが問題化して久しい昨今の日本で、なぜ急増しているのか。

 

1999年に施行された感染症法によって、保健所への報告が厳しく義務づけられたことも一因と考えられる。

 

尾上医師は「疫学調査がないため、理由は断定できない」としながらも、こう推測する。

 

「日本人の性行動が急に活発化したわけでもないのに増えているのは、外的な要因が考えられます。

 

爆買いで来日する中国人が、風俗店に団体で出入りする影響は否定できません。

 

近年、中国では梅毒が爆発的に増えており、日本の300倍という指摘もあるからです」


2014年の中国・江西省南昌での調査によると、ストリートガール(街娼)361人中の梅毒感染率は

 

43.5%と、半数近くにのぼっている。


来日する中国人も急増しており、政府観光局の統計では08年に100万人を初めて突破し、

 

昨年は約499万人。今年も7月までに380万人に達している。

 

14年比で2倍超、10年比では実に3.5倍超と急伸しているのだ。

 

風俗に詳しいコラムニストの木村和久氏は、爆買いと梅毒との関係を、こう分析する。


「中国人お断りの風俗店がある一方、中国人を歓迎する高額な店もある。

 

建前上、性交が禁じられているためコンドームを置いておらず、感染しやすい環境にある。

 

また中国人にチップをはずまれ、過剰なオーラルセックスをしてしまう風俗嬢がいることも、

 

感染を広げている一因かもしれません」(木村氏)


男女比でみると、増加が著しいのは女性。感染研によると、10年には124例だったのが、

 

昨年には764例(*)と、5年で約6倍に。

 

 男性は497例(10年)から1934例(*)と数こそ多いものの、伸び率は4倍弱にとどまる。


「なぜ女性に増えているのか、理由は分からない。ただ、20代の女性に顕著なことを考えると、

 

中国人向けの風俗嬢を中心に発症が増えている可能性は否定できません。」(尾上医師、以下同)



【1期の症状】
注視すべきはクラミジアや淋菌感染症など、他の性感染症がおおむね減少傾向なのにもかかわらず、

 

梅毒だけが突出している点だ。

 

「たとえばクラミジアには痒み、淋菌感染症には排尿痛など自覚症状の出る場合がありますが、

 

初期の梅毒は痛くも痒くもないのが特徴。

 

気付かぬまま感染を広げてしまう事例が多いのです」(尾上医師)


それでも一定のシグナルがある。症状のある「顕症梅毒」は進行具合によって

 

早期(1~2期)と晩期(3~4期)に分けられる。

 

1期では感染部位にポツンと小豆大のしこり(初期硬結)が生じる。

 

次第にしこりが崩れて潰瘍を形成(硬性下疳)、さらに両足の付け根のリンパ節が腫れる。

 

感染からおよそ3週間後に発症するのが通常だ。

 

「ただ、いずれも痛み痒みを伴わず、発熱もないため、1期で医療機関を受診することは稀です。

 

しこりは性器に限らず、オーラルセックスの場合は唇や舌、咽頭や尿道に、

 

アナルセックスの場合は肛門にできる。 

 

③1期顕症梅毒:口唇の硬性下疳
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放置していても数週間で消えるため、自然に治ったと思い込んでしまう人も多い」(尾上医師)


中には自然治癒する場合もあるというが、自己診断は危険だ。

 

江戸時代、遊廓の吉原で梅毒が流行したのは、症状の消退を治癒と勘違いし、

 

客をとり続けたためといわれる。


「しこりや腫れがあっても、感染から3~4週間までは血液検査が陰性になることが多い。

 

その場合、病変部を採取し、暗視野顕微鏡で検査しますが、病原体の視認に習熟を要するため、

 

あまり用いられていない。

 

血液検査は3~4週間以降受けるようにしてください」(尾上医師)

【2期の症状】
1期の症状が消失しても自然治癒しない限り、3カ月~3年の後、梅毒トレポネーマが血液に乗って

 

全身にまわり、2期に進む。


「ここで初めて発熱があったり、全身のリンパ節が腫れたり、脱毛が始まる。

 

2期になって受診する人が大半です。

 

最も顕著なのが手のひらや足の裏に広がる赤い紅斑。梅毒性乾癬という発疹です。

 

それでも痛みや痒みを伴わないので、放置する人がいます」(尾上医師)

 

④2期顕症梅毒:手掌の梅毒性乾癬
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⑤2期顕症梅毒:足底の梅毒性乾癬
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また、2期の段階で紅斑を見つけ皮膚科に駆け込んでも、ただの湿疹と片付けられるケースもあるという。


「2期では血液検査で陽性になることが多いため、検査を受けてほしい。

 

1期、2期は感染力が強いため、人にうつしてしまいます」(尾上医師)

【3期、4期、HIVとの複合感染】
感染後、3年以上経過すると、皮下組織に鶏卵大のしこり(結節性梅毒疹、ゴム腫)が生じる。

 

骨が破壊されるのもこの時期だ。

 

感染から10年たつと心臓、血管、神経などに障害が出て、大動脈炎や大動脈瘤、進行麻痺など

 

重篤な症状に進むことがある。


「現在は特効薬ペニシリンのおかげで、早期に治療を行えば、3期、4期に進行することはほとんどいない。

 

また3期、4期は感染力が弱く、人にうつす心配もあまりありません」(尾上医師)


ただし、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)にも重複感染している場合は、1期~4期の段階を経ず、

 

様相が変わるという。


「梅毒に感染していると、その病変部分からHIVにも重複感染しやす傾向があります。

 

1期や2期でも重篤な症状が表れやすいのです。脳に菌が回り、神経を侵される場合もあります。

 

梅毒の検査をする場合はHIVの検査も同時に受けることを勧めます」(尾上医師)

【無症候性の梅毒も】
実は、しこりもできず、リンパも腫れないのに、血液検査だけが陽性になる無症候性の梅毒の方が多い。

 

感染研によると、14年の顕症梅毒(1期)は337例だったが、無症候は613例にのぼっている。

 

「1期から2期への移行期、また2期で発疹が消えた時に該当することが多い。

 

また、陳旧性梅毒といって随分昔に感染し、何の症状も出ず自然治癒したのに10年くらいたっても

 

梅毒の抗体だけが残り、血液検査によっては陽性が持続するケースもあります。

 

陳旧性は症状も感染力もないので、私は治療しません。

 

ところが現実には陽性であることを理由に、老人ホームなどの入所を断られる高齢者がいる。

 

不当な差別と問題視しています」(尾上医師)

【先天梅毒】
また、後天的に梅毒に罹患するのではなく、生まれながら罹患しているケースもある。

 

梅毒にかかった母親の胎盤を介して感染する「先天梅毒」だ。

 

昨年は13例(*)と決して多くはないが、微増傾向にある。

 

基本的に妊婦検診で発見されるものの撲滅はされていない。


「先天梅毒は出生時に黄疸や低体重であったり、学童期になってから難聴を発症したりする。

 

20代の女性に梅毒が増えている現状を踏まえれば看過できません」(尾上医師)

【予防法】
梅毒と診断されても、現在はペニシリンを一定期間内服することで、治癒する。

 

その前に感染を防ぐのが賢明だ。


「まず、不特定多数の人と性的接触をしないこと。

 

する場合は、はじめから終わりまでコンドームをつけること。性交時はもちろん、

 

オーラルやアナルセックスでも同様です。

 

コンドームは避妊だけでなく、梅毒を含めた性感染症予防の手段と考えてください」(尾上医師)


だが、不特定多数ではなく特定のパートナーとだけセックスしていても、

 

パートナーが風俗通いをしたり、違う相手と接触していれば、結果的に感染する恐れはある。

 

いくら自分が気をつけていても、相手が「潔白」で、感染していないかどうかは分からないものだ。

 

「現実には難しいでしょうが、2人そろって検査をするのが理想的です。

 

まずは1人でも、感染を疑う行為があったら、3~4週間置いて、医療機関を受診してください」(尾上医師)


加えて医師選びも重要だ。前に尾上医師が指摘した通り、梅毒症状を見たことがない若い

 

医師がいるからだ。

 

「迷ったら、性感染症に精通した専門医を選ぶのも一つの手段。

 

自己検査キットもありますが、うまく採取できないことがあるので、注意してください」(尾上医師)


怖いのは、気付かず放置すること。梅毒が死に至る病ではなくなった今、防ぐ術と治す術は確かにある。

 

本誌・菊地 香

 

⑥梅毒を防ぐ、治すポイント
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梅毒を防ぐ、治すポイント

コンドームを使わないセックス(オーラルやアナルも含む)や、不安な性的接触をしたら、

3~4週間後を目安に医療機関へ
性器や唇など接触のあった部位に痛みや痒みのないできものができたり、

痛くもないのに足の付け根のリンパ節が腫れたら医療機関へ

性感染症に精通した専門医を選ぶ
自己診断キットによる検査は採取に注意を

<急増する梅毒 尾上泰彦>

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梅毒の無痛性横痃について

Visual Dermatology  2016 Vol.15 No.9  908~909頁
秀潤社(2016年8月25日発行)
特集: 皮膚科で診るSTI② 梅毒ーーthe great imitator
責任編集: 渡辺 大輔

  私は分担執筆で「無痛性横痃」を担当いたしましたので報告いたします。

①Visual Dermatology 2016 Vol.15 No.9 

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②無痛性横痃
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梅毒の初期症状は第1期梅毒とよばれ、陰部の初期硬結とそこに生じる無痛性潰瘍、
 
そして鼠径リンパ節の無痛性の腫脹からなる。
 
これらを初期硬結、硬性下疳、無痛性横痃とよぶ。
 
横痃は「よこね」ともよび、鼠径部リンパ節腫脹のことを指す。

 
③無痛性横痃(左鼠径部)
20代男性。陰茎部に直径15mm大の潰瘍がみられる(➡)。
また鼠径部リンパ節に示指頭大の腫脹が数個ある(囲み)。
いずれも無痛性である。
無痛性横痃とは、このリンパ節無痛性腫脹のことを示す。

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④硬性下疳と無痛性横痃
参考症例:40歳代男性。
左側鼠径部リンパ節の腫大がはっきりわかる。無痛性である。

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硬性下疳は放置すると数週間で自然消退し、梅毒トレポネーマが全身的に撒布され、
  
皮膚症状を主とする第2期梅毒に移行する。
  
無痛性横痃は初期硬結、硬性下疳に引き続いておこるのが通常であるが、
  
それ単独でおこる場合もある。
⑤初期硬結の典型例
30代、男性。 初期硬結はトレポネーマの侵入部位である。

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診断については、血清学的検査は感染のごく初期では偽陰性を示すことが
  
しばしばあるため、上記の症候をみたら再検査が必要である。
  
患者がリンパ節腫脹のみを主訴として受診することはまずないが、
  
オーラルセックスの時代、男性では尿道内に、女性ではクリトリス周辺に
  
発症する場合があるので、丁寧な視診が必要である。
⑥20代、男性。尿道内に発症した硬性下疳
尿道内に無痛性潰瘍を認める。
痛みがないため患者は気づかない。

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⑦20代、女性 陰核付近に発症した硬性下疳
陰核付近に潰瘍が存在する時は包皮をめくって確認する必要がある。
女性の場合、外陰部のみに硬性下疳が存在するとは限らないため、
腟壁、子宮腟部の視診も必要となる。

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皮膚科医が女性患者で梅毒を疑ったら婦人科と連携し、腟壁・子宮腟部等の
 
梅毒所見の有無について確認してもらう必要がある。
 
また、梅毒を疑うポイントとして、感染機会が3週間前というキーワードは
 
非常に重要である。
 
同じ潰瘍をつくる性器ヘルペス初感染例では、感染機会ら2~10日で発症し、
 
潰瘍は痛みがあり、鼠径リンパ節有痛性腫脹を伴うことから、問診により鑑別できる。
 
他項でも述べられている通り、近年は都市部を中心として梅毒の爆発的増加がみられる。
 
筆者はこのままだと梅毒のパンデミックがおこるのではないかと危惧している。
 
初期段階で正確に診断し、最近改定された日本性感染症学会の
 
梅毒治療ガイドラインに則った適切な治療を行うことを推奨する。

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