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性風俗嬢の性感染症(その3)
先日、ある出版社から取材を受けた、「性風俗嬢の性感染症」に関するインタビュー内容を、抜粋してご紹介している最終回です。前回は、日本の風俗の歴史と特徴についてご紹介しました。今回は、「CSWの行うあるサービスが感染症の拡大に拍車をかけている」ことについてお話します。
記者:
CSWが、様々な性感染症に感染している可能性が高いことはよくわかりました。
しかし、インタビューの最初でお伺いしたように、「売春防止法」によって、いわゆる「本番」というか、男性器を挿入して行うセックスを提供するサービスは減ったわけですよね。
ということは、CSWによる性感染症の拡大もなくなってきたのでしょうか?
尾上:
確かに、男性器を女性器に挿入させるようなサービスは、表向きはなくなりました。
が、実は違うのです。ソープランド店のみは監督取締りを行う行政(保健所)も性器の結合を容認しているのが実情です。
しかし、その他の性風俗店ではかなり厳しく取締り・指導をされていると思われます。
ただ、合法的な性風俗店(ファッションヘルス、ピンクサロンなど)では、オーラルサービスが日常的に、あたりまえの様に行われていますよね。
実はオーラルセックスのみでも、クラミジア、淋病、ヘルペス、梅毒などに感染する可能性があるのです。
記者:
えっ!?オーラルは「本番」よりも安全だと思っていましたが・・・・。
尾上:
とんでもありません。それは大きな誤解です。男性の性感染症で最も症例数の多いクラミジア性尿道炎、淋菌性尿道炎の最大感染源はCSWのオーラルサービスなのですよ。
記者:
ということは、クラジミアや淋菌が、CSWの口の中に存在しているということですか? でも、CSW本人には、それがわからないのでしょうか?
尾上:
CSWのクラミジアや淋菌による咽頭炎の特徴は、自覚症状がないことで、これが問題を一層厄介なものにしています。CSWの咽頭からのクラミジア、淋菌の検出率は高いにもかかわらず、ほとんどの症例が無症状で咽頭の発赤、扁桃腫脹など他覚的所見がありません。
記者:
ということは、CSWは自分が感染していることを知らないまま、客にオーラルサービスを提供し、それが感染を広げているわけですね。
尾上:
そうです。実際にCSWの咽頭では淋菌の検出率は性器よりも高い値を示しています。
一方、クラミジアでは性器の方が咽頭より検出率が高くでますが、咽頭にも一定の割合で存在します。この違いの原因は、咽頭が淋菌にとって住み着きやすい環境であるからだと考えられます。
いずれにしても、「オーラルは安全」ではないことは明白な事実です。
まさに、『口腔咽頭は性感染症の温床』なのです。お分かりですか?
記者:
日本の性風俗の特徴である「本番」以外のサービス、これがまさに性感染源の拡大の場になっており、CSWが感染の拡大に深くかかわっておるのも、この点なのですね。
大変興味深い内容でした。本日はありがとうございました。
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いかがでしたか。
これをお読みになったら、もう「オーラルは安全」だとは思えないのではないでしょうか。
もっと多くの方に、この事実を認識していただくことを、望んでやみません。
投稿者 aids : 13:34
性風俗嬢の性感染症(その2)
前回から、先日、ある出版社から取材を受けた「性風俗嬢の性感染症」のインタビュー内容を、抜粋してご紹介しています。前回は、日本の風俗の歴史と特徴についてご紹介しました。
今回は、「性風俗嬢(CSW)によくみられる感染症」についてです。
記者:
CSWの女性自身は、どのような性感染症に感染している場合が多いのでしょうか?
尾上:
CSWの性感染症で最も頻度の高いものは、クラミジア感染症です。次いで性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、淋菌感染症、ケジラミ症、梅毒の順になっています。
記者:
やはりクラミジアが一番多いのですね。
尾上:
その通りです。クラミジア感染症はCSWにとっては避けては通れない性感染症で、最も高頻度に罹患しています。また外陰・腟カンジダ症、細菌性腟症も多くみられます。
これらは多くのCSWの職業病的な様相を呈していると言えるでしょう。
記者:
なぜ職業病なのでしょうか?
尾上:
CSWの仕事上、腟内洗浄を日常的に行うことや何らかの理由により抗生物質を服用することがその要因の一つと考えられますね。
記者:
性器ヘルペスのように、一度かかるとそのあと何度も発症する病気も含まれていますね。
尾上:
CSWにとって性器ヘルペスは、初感染時は性感染症だと言えますが、そのあとは、ヘルペスウイルスが骨盤の中の神経節に潜んで眠っています。
一度治ったように見えても、セックス、月経、仕事などのストレスにより、眠っていたヘルペスウイルスは目を覚まし再発してきます。この再発は高頻度にみられます。ですから性器ヘルペスの再発は性感染症だとは言い難いのですが、感染力があるので他人(男性)にとっては性感染症となりえます。
記者:
HIVおよびエイズに関してはどうですか?
尾上:
CSWは日本人の中でも、HIV/AIDS感染の、High Risk Group(病気になる危険性が高いグループ)に属しています。しかし、感染の報告はほとんどなく、HIVの陽性率は一般女性と変わらないと考えられます。
記者:
それはちょっと、安心できる材料ですね
尾上:
しかし、その他の性感染症に関してはHigh Risk Groupであることに変わりはありませんよ。常に感染の危険と隣り合わせであることを忘れてはいけません。
さて、次回はCSWの行う、とあるサービスが、感染症の拡大に拍車をかけていることについてお話します。お楽しみに。
投稿者 aids : 13:24
性風俗嬢の性感染症(その1)
先日、ある出版社からのインタビュー取材を受けました。
テーマは、「性風俗嬢の性感染症」についてです。
性風俗を利用することでの性感染症のリスクについては、このブログをご覧の方々には、周知の事実だと思います。しかし、世間一般では、まだまだその実態についての理解が不足しているように感じます。
そこで、今回から3回にわたって、このインタビュー取材の内容を抜粋してご紹介することにいたします。
記者:
先生、今日はどうぞよろしくお願いいたします。
今回お話を伺いたいのは「性風俗嬢の性感染症」についてです。
まずは性感染症の拡大に、性風俗嬢がどのように関わっているのか、ということから教えてください。
尾上:
性風俗店で働く女性を「性風俗従事者(commercial sex workers=ここでは以下CSWと略します)」といいます。現在、このCSWが、男性の性感染症で最も症例数の多いクラミジア性尿道炎、淋菌性尿道炎の最大感染原因になっています。
記者:
どうしてCSWが性感染症の最大原因になったのでしょうか?
尾上:
その質問にお答えするには、まずは日本の性風俗の歴史や実態について、ご説明しないといけませんね。ご存知のように、1958年に「売春防止法」が施行され、いわゆる「赤線」で行われていた売春行為が違法となりました。それによって、日本の性産業は大きく変わり、多くの赤線業者が「トルコ風呂」(1984年に現在の「ソープランド」という名前に改称)を始めました。
記者:
これによって、提供されるサービスの内容がいわゆる性行為ではなくなったということですね。
尾上:
そうですね。体を洗ったり、マッサージをしたり、さらにオーラルセックスや素股、手や乳房での性器への刺激、肛門・前立腺刺激、性玩具使用などは、売春防止法にいう「性行為」にあたらないということで、法の網をくぐりぬけた新しいスタイルの性商品がつぎつぎと現れました。
このような性商品は世界的にみても類がなく、日本特有の現象と思われます。
記者:
確かに、ソープランド以外にも様々なタイプの風俗店がありますよね。
提供している内容も、ライトなサービスからヘビーなサービスまで様々です。
尾上:
殊に、ファッションヘルス、ピンクサロンなどのオーラルセックス専門店の存在が、問題です。これらは低料金のため、手軽に若い男性が利用していますよね。
このことが性感染症の拡大・蔓延に拍車をかけているわけです。
さて、次回は実際にCSWの女性がどんな感染症にかかっている例が多いかをご紹介します。
お楽しみに。
投稿者 aids : 13:08
お口だけで淋病になるなんて!?
梅雨入りしたある日、
私の診療所に、26歳のサラリーマンがやってきました。
彼曰く、
「今朝起きたら、オチンチンの先から黄色い膿が出てきたんです。おしっこのし始めが、えらく痛いんですが」
とのこと。
ピンときた私は、すぐに尋ねました。「何処に行ったんですか?」
すると彼は自信たっぷりにこう答えました。
「はい、実は5日前にピンクサロンに行きました。でも、先生、セックスはしていませんよ。性感染症が怖いですからね。だから口だけにしておきました。」
そうなんです。
このようなケースが実に多いのです。
「口だけなら安全・・・!?」
とんでもない誤解です。
口によるサービスだけで、淋病やクラミジアになるのです。
性風俗嬢、殊にピンクサロン、ファッションヘルスなどのオーラルサービス専門店では、
特にクラミジアよりも淋病をうつされやすいという傾向があります。
それはどうしてか?
どうも咽頭は、クラミジアよりも淋菌が住み着くのに環境が良いようです。
実は私たちの咽頭には、いつもノドに住み着いている「常在菌」がたくさんいます。
一説には200種類以上もいるそうです。
そしてその中には、ナイセリア属の細菌が何種類もいます。
淋菌はナイセリア属の一員ですから、生殖器だけでなく咽頭にも住み着くことができるのです。
さらに淋菌は、肛門や眼の結膜にも住み着くことができるんですよ!
一方、クラミジアは、淋菌と比べると咽頭よりも生殖器に多く検出されます。
しかしクラミジアによる咽頭炎も決して少なくはありませんから、油断はできません。
オーラルサービスを行う性風俗嬢の咽頭には、淋菌やクラミジアが、おとなしく潜んでいます。
淋菌やクラミジアが咽頭にいても、なんら症状がでません。
ノドが赤くなったり、腫れたりもしません。ノドの痛みや違和感もありません。
性風俗嬢はノドの症状がありませんから、
自分が病気になっていることを知らないまま、仕事に励んでいます。
そのサービスを受けるのが男たちです。
それだけではありません。
オーラルサービスだけで性器ヘルペスや梅毒にもなります。
まさに「口は災いのもと」ですね。恐いです。
『君子、危うきに近寄らず』ですぞ!
投稿者 aids : 11:11
股間がかゆい。これって性感染症!?(その2)
人間にとって性の問題はとても大事なテーマです。
特に思春期の若い方々にとっては、関心が高い話題でしょう。
しかし同時に、この時期は性への関心に後ろめたさや恥ずかしさを感じたり、
あるいは周囲の人からそれを否定されたりしがちです。
自分の体やその変化についてきちんと知ることが必要なのに、
この時期に正しい知識や情報になかなか巡りあえないことは不幸なことです。
私が、この院長ブログに力を入れて取り組んでいるのは、
性や性感染症に対する正しい知識を、
少しでも多くの方に持っていただきたいと願っているからです。
前回は股間のかゆみ悩む15歳の男性の事例をご紹介しました。
原因として考えられるのはインキンタムシの可能性の他に、陰嚢の皮膚掻痒症があります。
今回はこちらについてお話をしましょう。
まず男性の陰嚢に痒みがおこると、それを解消するためにとにかく掻いてしまいます。
そうすると、陰嚢に掻破性湿疹が生じます。
続いて皮膚が硬くなって皮溝が深まり皮丘が高まってくると、
慢性単純性性苔癬という皮膚病を招いてしまい、
その結果、陰嚢の皮膚がゴアゴアと硬くなってしまいます。
ボリボリ掻いているいる時は気持ち良いのですが、その後が問題なのです。
自分の爪で男性器に目に見えない小さなキズをたくさん付けた状態、
いわゆる掻き壊した状態になってしまうと、それはそれはヒリヒリして痛かゆい。
どうにもならない。
またボリボリと爪で掻いてしまう。痒さが痒さを呼ぶ悪循環です。
そのように皮膚の炎症が長く続くと、
その後、炎症後の色素沈着が生じて皮膚が茶色になります。
相談者の股間の辺りが茶色に変色したのはこのためと思われます。
一部、赤みがあるところは、炎症が残っているところでしょう。
彼の場合、セックスの経験がないということですから、
性感染症ではなく、以上の二つが原因だと考えました。
また、彼は、これが他の人に感染すること、
特にセックスをした時に相手に感染することを心配していましたが、
彼の話を聞く限りでは他人に感染することはないと考えられるとアドバイスをしました。
彼はそれでも受診をためらっていましたので、
「こんな時にお医者さんに行かないでどうするの。
『股間』がお医者さんに会いたがっています。医者をうまく使ってください。
貴方のために医者がいるんですよ。」と最後に申し上げました。
男性器や女性器も他の体の部位と同じです。
病気になれば医者に見てもらわねばなりません。
無用な羞恥心は捨て、素直に病気を治す心をもつことです。
医師は病気を治すことが仕事ですから、どうぞみなさんも安心して受診してくださいね。
投稿者 aids : 16:27
股間がかゆい。これって性感染症!?(その1)
先日も15歳の男性からこんな相談を受けました。
彼はずいぶん前から股間のかゆみに苦しんでいたそうです。
彼の話をまとめると次のような内容です。
「二年ぐらい前から股間が痒くて、どうしても 我慢できず掻いてしまいます。
掻いているうちに股間の辺りが茶色に変色し、一部、赤みもあります。
セックスは未経験なのに、何故こんなことになったのでしょう?
これは性感染症でしょうか?
どうしたら治るのでしょうか?」
これが違う部位のかゆみであれば、彼はもっと早くに皮膚科を受診していたでしょう。
しかし、男性器のこととなると、医師はおろか親や友人にも相談できず、
性感染症ではないかとひとりで悩んでいたようです。
彼の相談に対し、私は2つの可能性を示唆しました。
一つは股間のインキンタムシ、
もうひとつは陰嚢の皮膚掻痒症です(もちろん、両方である可能性もあります)。
まずは、インキンタムシについて。
もともと股間は高温多湿で発汗しやすいところです。
若い男性ならなおさらです。
そして、水虫の原因として有名な白癬菌は高温多湿を好みます。
ですから、白癬菌によるいわゆるインキンタムシになった可能性が考えられます。
これは皮膚科を受診して適切な薬を処方してもらい、患部に塗ることで治療できます。
外陰部はデリケートパーツですから、薬の副作用 も他部に比べて出やすいところです。
素人療法を行うと病気の状態があらぬ方向に向かってしまい、
かえって治療を難しくする可能性もあります。
ですから、恥ずかしがって医師の診察を受けず、
市販薬を勝手に塗ってお茶を濁してはいけません。
必ず専門医を受診することが肝要です。
では二つ目の陰嚢の皮膚掻痒症とはどんなものなのか?
これについてのご説明は次回と致しましょう。
投稿者 aids : 16:21