泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2009年10月26日

勃起した時、曲がって痛い!(その3)

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前回、前々回とペニスが勃起した際に曲がってしまう
「陰茎形成性硬結症」、別名:パイロニー氏病についてご紹介しました。
 詳しくはバックナンバーをご覧ください。
今回はこの病気の治療法を中心にお話ししましょう。

治療は残念ながら、根本的な方法はありません。
原則的には保存的治療から始めるのがよいと思われます。
しかし、薬物療法 として、発症直後には炎症を抑える薬やステロイド剤、漢方薬(柴苓湯)を使用することもありますが、効果はさほど期待できません。

最も効果がある治療薬として、多くの専門家はユベラというビタミンE製剤を使用しています。
ただしユベラの効果に即効性はなく、数ヶ月かけて徐々に効果がでてきます。
 
その他、超音波治療、ステロイド薬の局所注入、コラーゲン分解酵素注入、プロスタグラディンE1の局所注射などの報告もありますが、あまり良 い成績ではないようです。
 
痛みがある時に放射線照射が有効という報告もあります。
 
あとは、性交渉ができなくなり障害が出るような場合、本人が希望すれば手術を行います。
手術は、陰茎の硬結(しこり)をていねいに取り除きます。
しかし、硬結が海綿体に及んでいる場合は、手術が難しくなります。
また手術により陰茎が短くなることもあり、いろいろなデメリットはあるのですが、陰茎のしこりを取る手術だけが唯一有効な根本的治療法です。
 
この病気は患者さんにとって、精神的、身体的に大変つらい疾患です。
貴方にもしもこの病気の心配があれば、まずは専門医の診断を受け、貴方に適切な治療法について相談されることをお勧めします。

投稿者 aids : 10:16 | トラックバック

勃起した時、曲がって痛い!(その2)

前回、ペニスが勃起した際に曲がってしまう
「陰茎形成性硬結症」 別名:パイロニー氏病についてご紹介しました。
詳しくはバックナンバーをご覧ください。
今回はこの病気の原因を中心にお話ししましょう。
 
パイロニー氏病の原因はあまり明らかになっていませんが、加齢による白膜の退行性変化によるものとの考えがあります。
また、組織学的には、硬結部に慢性炎症像があることから、
膠原病、外傷、血流障害、代謝障害、栄養障害なども原因として指摘されています。
また、過去に陰茎に外傷を負ったことがある場合には、若年層でも発症することがあります。

陰茎には陰茎海綿体と尿道海綿体という2つの海面体があります。
このうち陰茎海面体は一対二本の海綿体からなりスポンジのような構造になっており、
ここに血液が流れ貯留し膨らむと陰茎の勃起となります。
この陰茎海綿体を包む白膜という結合組織に瘢痕(硬いすじ状の組織)ができ、
勃起時その部分が伸展しないため、ひきつれて陰茎が屈曲します。
病気が進行すると、陰茎海綿体にまで及ぶことがあります。

このしこりは徐々に大きくなる症例が多く、ある程度大きくなるとそれ以上は大きくならなくなります。
ではこの病気の治療法にはどんなものがあるのか?
それについては次回、詳しくご紹介します

投稿者 aids : 10:11 | トラックバック

勃起した時、曲がって痛い!(その1)

先日、会社社長だという45歳の男性が診療所にやってきました。
来院の理由は、陰茎が曲がってきたということのようでした。
そこで早速問診を始めました。
 
男性
「先生、最近ペニスが曲がってきました。勃起した時痛みがあって、セックスができません。」

ドクター
「どのくらい前からですか?」
 
男性
「半年ほど前からです。」
 
ドクター
「痛みはペニスのどの部位ですか?」
 
男性
「付け根です。勃起するとお腹側に弓なりに反って、根元が締め付けられる感じです。
 その時、根元が細くなっているんです」
 
次にペニスを診察すると、根部のお腹側に硬いシコリ(硬結)が触れました。
確かに、このまま勃起すると根元が伸びないため、お腹側に弓なりに曲がってしまうわけです。
 
この病気は泌尿器科専門医が診れば、特徴的な症状と触診所見で容易に診断がつきます。
これは「陰茎形成性硬結症」、別名:パイロニー氏病です。
 
この病気はフランスのDr.Peyronie氏が、1743年に最初に報告したといわれています。
陰茎海綿体白膜に線維性硬結(硬いすじ状の組織)が形成される、良性の病気です。
勃起時の痛み、硬結(しこり)の触知、陰茎の彎曲、勃起不全などで、性交障害の原因となります。
 
それほど珍しい病気ではなく、患者さんの訴えとしては
陰茎彎曲,勃起時疼痛,勃起障害などです。
30~50代に多く見られ、陰茎海綿体を包む白膜という結合組織に瘢痕(硬いすじ状の組織)ができ、勃起した時に陰茎が屈曲してしまう病気です。
 
勃起したときに少し曲がる程度のものから、くの字に変形するものまで様々な程度があり、
上下そして左右と屈曲する方向も人によって様々です。
そして痛みのため、十分な勃起が得られず、セックスができなくなることもあります。
曲がり具合にもよりますが、性交時に挿入不能になってしまいます。
 
では、この陰茎形成性硬結症はなぜ起きるのか?
それについては次回お話しすることにいたしましょう。

投稿者 aids : 10:02 | トラックバック

2009年10月19日

「エッチしてないのに左の睾丸が痛い!(その3)

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前回、前々回と、
陰嚢の中の精索の静脈に腫瘤ができてしまう「精索静脈瘤」になった
サラリーマンの事例をご紹介しながら、この病気についてご説明してきました。
詳しくはバックナンバーをご覧ください。

この方も左の陰嚢の痛みを訴えていましたが、静脈の腫瘤は左側にできやすいのが特徴です。
今回は、なぜ腫瘤が左側に多いのかについてご説明しましょう。

左の睾丸から心臓に戻る静脈を左精巣静脈といいます。
この精巣静脈(道路にたとえると田舎道のように細い)は右に比べて長く、
左の腎静脈(道路に例えると田舎道よりやや広い県道)へと一度、合流します。
そして、この左の腎静脈(県道)は心臓に戻る下大静脈(一番太い血管で、道路にたとえると幹線道路)に合
流していきます。

そして、合流地点は2ヶ所あります。
合流地点(道路にたとえると交差点)では少なからず、血液が停滞することが考えられます。
さらに、精巣静脈に流れている静脈血は、立位、座位の姿勢であると、心臓の方が睾丸より上位にあるわけですから、重力に逆らって心臓に戻らなければなりません。

ですから、この現象は立位、座位の姿勢のまま長時間じっとしていると出やすいと考えられます。
逆に言えば、この現象は寝た体勢であれば出にくい訳です。

また、静脈弁の生まれつきの障害や還流障害(精巣静脈の上腸間膜動脈による圧迫)が生じて静脈血が停滞・逆流すると、精巣静脈がこぶ状に拡張してきます。

このようなさまざまの要因による、静脈のうっ血により陰嚢内の温度が上昇して、精巣の発育不全、精子の形成不全(精子の生産能力が落ちる)を引き起こし、子供ができにくくなる、いわゆる男性不妊症になる人もいます。

それでは右側に精索静脈瘤が起こりにくいのは、どうしてでしょう?

右の睾丸から心臓に戻る静脈を右精巣静脈といいます。
この精巣静脈(田舎道)は左に比べて短く、かつ、幸いなことにこの精巣静脈は心臓に戻る下大静脈(幹線道路)に直接、合流していきます。
車の流れに例えると、田舎道から幹線道路に斜めに合流するため、ほとんど交通渋滞はありません。

ただ、体の仕組みや血管の走行には個人差がありますから、右側にこの精索静脈瘤が発症しても不思議はありません。

治療は症状が軽ければそのまま経過観察、症状が強ければ手術になります。
ご心配であれば、専門医をたずねましょう。

少し専門的になりましたね!それでは、ごきげんよう!

投稿者 aids : 10:57

エッチしてないのに左の睾丸が痛い!(その2)

前回、半年も女性と性交渉がないのに、左の陰嚢が痛いと言って来院してきた
真面目そうなサラリーマンをご紹介しました。
詳しくはバックナンバーをご覧ください。

彼の病名は「精索静脈瘤」。
今回はこの病気について、もう少し詳しくお話ししましょう。

「精索静脈瘤」は、陰嚢の中の精索の静脈が蛇行(くねくね曲がる)したり、
拡張(ふくらむ)したりしてできる血管の腫瘤(コブ・塊))です。
 この病気は比較的多いものですが、
この病気を疑って診ないと、医師も見逃すケースがあります。

症状は陰嚢の痛み、不快感、違和感、金玉を握られている感じ、
あるいは陰嚢部や鼠径部、下腹部にかけての重圧感など様々です。

そしてこの静脈瘤は不思議と80~90%は左側に起こるのが特徴です。

思春期以降に多く、ことに長時間、座ったまま、立ったままで仕事をする男性にみられます。
パソコン業務、タクシーやトラックの運転、売り場の立ち仕事などの業務中にみられることから、立位、坐位の姿勢のまま長時間じっとしていることが症状のでる誘因となるようです。
ですから1~2時間、立位、坐位の仕事をしたら適当な運動、コーヒーブレークをとるようにした方がよいでしょう。

また程度の強い「精索静脈瘤」では男性不妊症の原因となることがあります。
成人男性の10~20%に、程度の差はありますが、この静脈瘤を認められます。
症状がなければ、そのまま放置しておいても特に問題はありませんが、
症状は突然でてきます。そうなると仕事に集中できなくなります。
痛みなどの症状を伴う人は、一度、泌尿器科の専門医に診てもらう必要もあるでしょう。

では、どうして精索静脈瘤は左側に多いのでしょうか?
これについては次回ご紹介いたします。

投稿者 aids : 10:50

エッチしてないのに左の睾丸が痛い!(その1)

秋も深まり、紅葉狩の季節となりましたね。

先日、32歳の独身という男性サラリーマンが来院してきました。
見るからに、真面目そうな感じです。
来院の理由を尋ねると、『先生、左側の金玉が痛いです』とのこと。
そこで問診を開始しました。

「痛みは何時からですか?」
『1週間ほど前からです』

「熱はありますか?」
『熱はありません』

「最近、女性との性的交渉はありましたか?」
『たしか・・・最後は半年ほど前になります』

「ふむ・・・右の金玉は痛くありませんか?」
『大丈夫です。痛いのは左だけです』

次にペニスと陰嚢を診察しましたが、特に赤く腫れるなどの異常所見はありません。
睾丸も左右共、正常でした。
ただ、左の陰嚢が右に比べるとやや大きく膨らんでいるようでした。

私はピンと来て、さらに尋ねました。
「痛みは、どういう時に感じますか?」
『そうですね、座っている時かな!』

「それは痛いというより、不快感や金玉を握られている感じですか?」
『そうなんです、先生の言うとおりです!』

「もしかして、あなたの仕事内容はパソコン業務の時間が長くありませんか?」
『えっ?・・・あぁそうですね!そういえば、パソコンをしている時に痛くなります』

「わかりました。それでは、立ちあがって診察しましょう」

彼を立たせてその姿勢で陰嚢を診察すると、
左の陰嚢の方が、確かに右よりダラリとさがっています。
さらに左の陰嚢内容を丁寧に触診すると睾丸のほかに何か柔らかい物が触れます。
しかもこのホワホワ、フニャフニャした柔らかい物の方が、睾丸より下に位置しています。

この柔らかい物は泌尿器科の専門医が触診すれば直ちに判る物です。
答えは血管のコブ。詳しくいうと静脈のコブです。
陰嚢の皮膚の表面からこの静脈のコブがデコボコして見えます。
彼の病名は「精索静脈瘤」だったのです。

そしてこの精索静脈瘤がどんなものであるかは、次回にお話しすることにしましょう。

投稿者 aids : 10:42

2009年10月09日

淋病だと思っていたら・・びっくり!

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先日、当診療所に受診にきた男性はかなりのイケメンでした。
年齢は23歳。

最初に来院の理由を尋ねると
「先生、今朝、気がついたのですが、ペニスの先から黄色い膿がでます。
 あと、おしっこのし始めが凄く痛いんです」とのこと。

そこでさっそく、彼のペニスを診察してみました。
すると、尿道口の周囲は赤く腫れており、尿道口から黄色の膿がでています。
下着にも膿が付着しています。これは立派な淋病です。
 
私が「女性との性交渉はいつありましたか?」とたずねると、
「ソープに3日前に行きました。」との返事。
「なるほど、それが原因ですね!」と言いますと、
彼は「え~!マジー!?クソッ!!」とかなりショックを受けた様子でした。

次に、確認検査のため、早速外尿道口から膿を検体として採取しました。
その際、念のため外尿道口を、手指で拡げて観察してみたところ、これはビックリ!
尿道内の粘膜に大きさ直径8mm大の白色潰瘍が見つかったのです。

ピンときた私はもう一度彼に尋ねました。
「3日前のほかに、約3週間ぐらい前に、性風俗かどこかに、行きましたか?」
彼はギョッとしたように私を見つめ、
「先生!何でわかるんですか!?3週間前にピンサロに行きましたけど・・・」
と、びっくりした顔で答えました。

彼はとても驚いたようですが、専門医が診れば直ぐわかります。
この白色潰瘍は、梅毒の初期症状である“硬性下疳”です。
 
この硬性下疳は感染の機会があってから、3週間ほどで見つかることが多く、
しかも、潰瘍ができても、痛くも何ともないことが多いのです。
このイケメン君も、今日ここに来るまでまったく気づいていなったとようでした。
 
つまり彼は、3週間前にピンクサロンで「梅毒」をもらい、
それに気づかず3日前にソープランドで淋病をいただいたということ。

結局このイケメン君は、詳しい尿検査で淋菌性尿道炎、血液検査で
早期顕性梅毒の診断を受け、治療をして、ことなきを得ました。
 
彼にとっては、風俗での軽い遊びが大きな代償を払う羽目になったようです。
それでは、ご機嫌よう!

投稿者 aids : 11:23

2009年10月01日

尿管結石でも、セックスして大丈夫?

先日、32歳の既婚女性からの電話相談を受けました。
相談者の旦那さんは、腹部に痛みを感じて病院に行ったところ、尿管結石という診断を受けたそうです。
幸い、今は痛みもおさまっているとのことですが、
彼女の心配は、「結石があっても、セックスして大丈夫でしょうか?激しく動いたらまた痛くなるのでしょうか?」ということでした。

尿管結石は、決して特別な病気ではありませんので、同じような悩みをお持ちの方もあるかもしれません。
そこで今回は、尿管結石とセックスについてお話してみましょう。
 
先に結論から申し上げると、尿管結石があってもセックスはOKです。
もちろん、発作があるときは痛くて何もできませんが、発作時でなければ、尿管結石があっても大丈夫。
セックスしてもかまいません。
むしろ、セックスは夫婦でできる運動療法になりますから、良いかもしれません。
 
と言いますのも、セックスで体を動かすことにより、尿管結石が自然に排出する可能性があるからです。
もしセックスした後に排尿し結石が出てきたら、最高に幸せですね。
セックスして結石が治るとは、何とラッキーなことでしょうか!
 
ただ、注意しなければいけないのは、しばしば「尿管結石」と「尿道結石」を間違えてしまうことです。
「尿管」とは、腎臓で作った尿を膀胱に運ぶ管です。
「尿道」とは、尿が膀胱から体の外へ排泄されるときに通る管のことです。
 
そして、男性の尿道は2つの役目(機能)があります。
一つは尿が通る尿路(尿の道)、二つ目は、精液が通る精液路です。
男性の場合、膀胱の出口付近の前立腺部尿道に精管が接続されています。
射精の時、その前立腺部尿道に精液が飛び出してきます。
つまり尿道は精液を運ぶ管でもあるので、生殖器でもあるわけですね。
 
ですから、もし、この尿道に結石があると、結石自体の尿道を刺激する痛みと射精障害が生じるかもしれません。
 
殊に陰茎部(ペニス)の尿道に結石があると、おそらく痛くてセックスはできないでしょう。
まずは旦那さんの結石が“尿管”の結石であることを確認して、夫婦で運動療法に励んでください。
そのことにより結石が自然排石されんことを祈念し、さらには貴女の心に平和が訪れることをお祈りいたします。

 
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投稿者 aids : 10:56 | トラックバック

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