« 2009年10月 | メイン | 2009年12月 »
2009年11月24日
顔にヘルペスが出て心配!彼の口唇ヘルペスがうつったの!?(その2)
前回、彼から口唇ヘルペスをうつされたという女性の相談をご紹介しながら、
ヘルペスの感染原因についてお話ししました。
今回はヘルペスの治療や再発と初感染の違いについてお話ししましょう。
ご相談者の彼は「放置しても治ってしまうので心配ない」と言っていたそうですが、
実はそうではありません。放置していて、そのうちに見かけ上では治っても、顔面の神経節にはウイルスが増えたままになっています。
そうすると何度も、何度も再発する傾向になります。
ヘルペスができた時には、是非、抗ウイルス剤を飲んでウイルスの量を減らしておきましょう。それが自分のためにもパートナーのためにもなるのです。
そして口唇ヘルペスの治療で大事なことは、バルトレックスという抗ウイルス剤を内服することです。
塗り薬では傷の保護にはなりますが、良くはなりません。
また、性行動のマナー、エチケットとして口唇にヘルペスが出ている時にはキスやセックスはやめましょう。
口腔内の唾液の中に多量のヘルペスウイルスが排泄されていますから、キスやセックスをすると、パートナーにヘルペスがうつる危険性が高くなります。
また、症状がでていない時にも、極少量のヘルペスウイルスが口腔内に排泄されていますから、キスやセックスをするとうつる可能性はゼロではありません。
しかし症状がでていない時に、キスやセックスをしないと、一生、キスもできないし、セックスもできなくなってしまいますからね・・・!
我々人類は、長い間、このウイルスとうまく付き合ってきたんです。
必要以上に恐れることはありません。
さて、次に、相談者の女性について考えてみましょう。
セックスをして、その5日後から、唇とあごに小さな水ぶくれができ、しかもその時、風邪をひいていた。
ということは、彼と同じでこの女性も、ご幼少の頃にご両親からたくさん愛されて、ヘルペスウイルスをもらっていたものが、今回初めて口唇にでてきた可能性もあります。つまり、いわゆる『風邪の華』=ヘルペスの再発で、いままではたまたま症状がでなかっただけかもしれません。
しかし、日に日に悪化してきたという状態を考えると、「再発」ではなく口唇ヘルペスの「初感染」かもしれません。
また普通は小児に多いのですが「成人の急性ヘルペス性歯肉口内炎」「カポジ水痘様発疹症」といって顔面全体や口腔内に水疱が拡大するものもあります。
もし、今回初めて彼からヘルペスウイルスをもらったのだとすれば、口唇、口腔内、口の周囲、そして顔などに激しく症状が出る場合もあります。
さらに高熱、首のリンパ節腫脹など全身症状を伴うこともあります。
ヒトの身体は、初めて感染したウイルスには、その増殖を抑える能力がないため、激しい症状をしばしば引き起こすことが知られています。
普通、キスやセックスをしてから3~7日で感染部位が赤く腫れあがり、その後、水ぶくれが多数でて きます。激しい症状がでてきた所を見ると、初感染の可能性も高そうです。
このような場合は、さらに悪化しないうちに、もう一度、皮膚科を受診してみることが大切です。
場合によっては早急に抗ウイルス剤の点滴が必要かもしれません。
「たかがヘルペス」と甘く見ないで、パートナーのためにも、適切な治療をすることが大切ですね。
投稿者 aids : 12:56
顔にヘルペスが出て心配!彼の口唇ヘルペスがうつったの!?(その1)
最近、30歳の女性から電話相談がありました。相談内容は次のようなものでした。
先日のデートのとき、彼が『唇が荒れて少し腫れてるんだ』と言っていました。 が、特に気にせず、濃厚なキスとコンドームなしでのセックスをしたんです。 そうしたら、その5日後から、私の唇とあごにブツブツした小さな水ぶくれができました。 ちょうど風邪をひいていたこともあったので、体調が悪いだけかと軽く思っていましたが、 日に日に悪化していくので、皮膚科を受診したところ口唇ヘルペスだと言われました。 皮膚科でもらった資料を見ると、唾液や精液からもうつるのだとか・・・! ということは『彼からうつされた!?』と思い、彼に確認してみると、 彼は年に数回、口唇にヘルペスができると言っていました。 『俺はいつもそのままにしているけど、そのうち治るから心配ないよ』と、 彼は気にもしていない様子ですが、私のヘルペスは、病院の薬を塗ったり飲んだりしているのにますます悪化してきているような感じです。 顔のことなのでとても心配です。本当に大丈夫でしょうか? |
電話口の彼女の声は、とても心配そうでした。
顔のことですから、女性なら特にご心配なさるお気持ちは良くわかります。
口唇ヘルペスは比較的良くみられる感染症で、お悩みの方も多いかと思いますので、
今回と次回にわたって、この彼女の例を題材に、ヘルペスについてお話ししましょう。
先ず、この彼女の「彼」について、考えてみましょう。
「彼の唇が荒れて少し腫れていた」ということの原因は、おそらく口唇ヘルペスだったのでしょう。
口唇ヘルペスだとすれば、彼が赤ちゃんの時、お父さんやお母さんから、たくさんキスをされていたのかもしれません。愛されてもらったウィルスですから、私は『愛情ヘルペス』と呼んでいます。
ある意味、両親の愛情につつまれて、育った証拠であるとも言えます。
彼の唇の症状は、今回、何らかのストレスがあって、そのストレスで顔面神経に眠っていたヘルペスウイルスが目を覚ましでてきたと考えられます。
これが再発で、いわゆる「風邪の華」「熱の華」と言われるものです。
そして、最近の研究では、口唇ヘルペスを持っていますと、口腔内の唾液の中に少量ながら絶えずヘルペスウイルスが排泄されていることがわかっています。
ですからキスやセックスをすると、パートナーにヘルペスがうつる可能性があるわけです。
また、彼は「放置しても治ってしまうので心配ない」と言っていますが、本当にそうでしょうか?
次回はヘルペスの治療についてお話ししましょう。
投稿者 aids : 12:47
2009年11月04日
日本性感染症学会誌掲載
「日本性感染症学会誌2009年7月号」に掲載されました。著者名 | 余田敬子(東京女医大 東医療セ 耳鼻咽喉科)、尾上泰彦(宮本町中央診療所)、海野壮(ロシュ・ダイアグノスティックス) |
資料名 | 日本性感染症学会誌 |
巻号ページ (発行年月日) |
Vol.20, No.1, Page.127-133 (2009.07.10) |
抄録 | 性感染症クリニック女性受診者116例(19-57歳)を対象とし、淋菌およびChlamydia trachomatisの検査としてリアルタイムPCR法を用いた新しい核酸増幅検査法COBAS TaqManCT/NG(CTM)の有用性をBDプローブテックET CT/GC(SDA)、AMPLICOR STD-1(PCR)と比較検討した。検体は、うがい液(CTMでのみ検出)、咽頭スワブ、子宮頸管スワブとした。陽性者数は咽頭淋菌がCTMうがい14例、スワブ11例、SDA15例、咽頭クラミジアはCTMうがい7例、スワブ4例、SDA8例、PCR6例、性器淋菌はCTM9例、SDA9例、PCR6例、性器クラミジアはCTM27例、SDA26例、PCR30例であった。以上、うがい液、咽頭スワブ、子宮頸管スワブのいずれの検体でもCTMは淋菌とC.trachomatisの検査として有用と考えた。 |
シソーラス用語 | *淋菌、*トラコーマ病原体、淋疾/診断(DI)、クラミジア感染症/診断(DI)、細菌検査、PCR法、検査キット、遺伝学実験技術、*遺伝子診断、微生物検査、咽頭、子宮頚管、生体試料、罹患率、女性、ヒト |
投稿者 aids : 17:51
院長掲載記事「Foresight」
2009年11月号 フォーサイト「Foresight」(新潮社)に記事が掲載されました。
記事のタイトルは
『性感染症の「全体抑制」でエイズを封じ込めよ』です。
投稿者 aids : 17:37