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2010年05月24日
【第75回泌尿器科東部総会】 開催日時:平成22年9月15日~17日 開催場所:宇都宮 演題: 「男性性器の状態を問う質問紙の妥当性の検討」 演者:国立感染症研究所細菌第二部 山岸拓也先生 共同演者:尾上泰彦 |
私のクリニックで施行した包茎のアンケートに関して、第75回泌尿器科東部総会に演題として出しました。
演題名は「男性性器の状態を問う質問紙の妥当性の検討」です。
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「男性性器の状態を問う質問紙の妥当性の検討」
国立感染症研究所細菌第二部 山岸拓也
宮本町中央診療所 尾上泰彦
飯塚クリニック 飯塚典男
国立保健医療科学院疫学部 今井博久、中尾裕之
国立感染症研究所感染症情報センター 大山卓昭、八幡裕一郎
宮本町中央診療所 尾上泰彦
飯塚クリニック 飯塚典男
国立保健医療科学院疫学部 今井博久、中尾裕之
国立感染症研究所感染症情報センター 大山卓昭、八幡裕一郎
【目的】
近年環状切除が性感染症に予防効果があるという研究がなれているが、日本ではこの分野の研究が乏しい。日本で研究をするに当たり、診察に代わり得る質問紙があれば有用であると思われ、男性性器の状態を問う質問紙の妥当性を評価した。
【方法】
対象は18歳以上の成人男性とした。
神奈川県の2クリニックで男性性器の状態を記した質問紙を診療前に患者に配布し記入、その後実際の医師の診察を同質問紙に記載してもらい結果を比較した。
【結果】
合計166枚が配布、回収された。
対象者の年齢は範囲が18~89歳で中央値が40歳であり、初診時の診断は尿路性器の疾患を持つ患者が約9割を占めていた。環状切除に関しては患者の申告と医師の診察はすべて一致していた。ペニスの状態は5段階で評価するとkappa係数は0.66(%agreement0.75)、包皮なし、仮性包茎、真性包茎という3段階に直して評価すると kappa係数は0.89(%agreement0.94)、また包皮なし、包皮ありという2択に直して評価するとkappa係数は 0.88(%agreement0.94)、感度90%、特異度98%であった。環状切除を16人(9.9%)の人が受けており、環状切除を受けていない146人では包皮なしが55人(37.7%)、包皮ありが91人(62.3%)でそのうち真性包茎が2人(1.4%)であった。環状切除を受けていた16人のうち4人で残存包皮が認められた。
【結論】
ペニスの状態と環状切除の有無を問う本質問紙は妥当である。
投稿者 aids : 16:12
陰茎持続勃起症(priapism)その3
前回、痛みを伴った勃起が数時間も続くという『陰茎持続勃起症(priapism)』のうち、「静脈流出不良型」についてご説明をしました。詳しくはバックナンバーをご覧ください。
今回は『陰茎持続勃起症』の二つ目、「動脈流入過剰型」についてお話ししましょう。
「動脈流入過剰型」の原因としては、会陰部の鈍的外傷(騎乗型損傷=会陰部の外傷)が多く、動脈血が絶えず流入するため,陰茎海綿体内は低酸素状態になることはありません。従って、器質的勃起障害になることはあまり多くありません。
しかも「動脈流入過剰型」は疼痛が軽度で勃起が不完全であるため,診断・治療が遅れることがしばしばあります。しかし,この状態が長く続けば,組織の線維化をきたし勃起障害を生じる可能性が高くなります。
動脈流入過剰型の治療は、過剰に流入する動脈血流量を減少させることです。血管造影を行い,血管の破裂した箇所を確認し、塞栓術(血管をある物質でふさぐ手術)を行う事が標準的治療になっています。塞栓物質として,自己血餅やゲラチンが使用されています。動脈流入過剰型は器質的勃起障害になることはあまり多くはありませんが,勃起機能が回復しなかった報告もあります。その原因として治療開始の遅れが指摘されていますので、やはり早い治療が肝心です。
いずれにしても持続勃起症は陰茎の組織が破壊され、陰茎海綿体の線維化さらには将来勃起障害が発生する可能性もあるということを、患者さんは理解しておくことが重要です。
投稿者 aids : 15:52
陰茎持続勃起症(priapism)その2
前回、痛みを伴った勃起が数時間も続くという『陰茎持続勃起症(priapism)』の症状を訴えた男性の例をご紹介しました。詳しくはバックナンバーをご覧ください。
今回はこの『陰茎持続勃起症(priapism)』について詳しくお話ししましょう。
「持続勃起症」を大きく分けると「動脈流入過剰型」(陰茎の動脈血の流入量が過剰になるタイプ)「静脈流出不良型」(陰茎の静脈が閉塞し血液流出量が減少するタイプ)に分けられます。
まずは「静脈流出不良型」についてお話しましょう。
「静脈流出不良型」は持続勃起症では多くみられ,その原因は白血病などの血液疾患、骨盤の腫瘍、脊髄の損傷、糖尿病、EDの治療として行われている陰茎海綿体内自己注射や、アルコール、麻薬などの常習でも起こることがあります。しかし、原因不明のことが多いのが実状です。
ここで特記すべきは、最近ではED改善剤(バイアグラ、レビトラ、シアリスなど)が最も多い原因となってきているようです。これには紳士諸君、注意が必要です。
「静脈流出不良型」は静脈血の停滞により,陰茎海綿体内は低酸素状態となり,器質的勃起障害になりやすくなります。そのため緊急に治療を開始しなければなりません。
まず交感神経刺激薬により平滑筋を収縮させ、勃起を抑制します。もし薬物療法で効果がなければ直ちに陰茎海綿体のなかを生理食塩水で洗浄したり、血管収縮薬を注射したりします。しかしそれでも改善しなければ、陰茎にたまった血液を取り除く手術や、血管のシャント手術を施行することも必要です。
もし貴方が持続勃起症を疑ったら、早急に手術が可能な泌尿器科のある総合病院を受診する必要があります。1日以上たってしまうと、海綿体が変性して将来勃起障害を来す危険性が高くなりますのでご注意ください。
「持続勃起症」のもうひとつのパターン「動脈流入過剰型」については、次回にお話ししましょう。
投稿者 aids : 15:43
陰茎持続勃起症(priapism)その1
ある朝、33歳のサラリーマン男性が、私の診療所に受診してきました。
症状を伺ってみると
「昨日の夜9時から勃起が続いていて、ペニスに痛みがあります。何とかしてください。」という訴え。
さっそく診察をすると確かに、ペニスは腹壁に対し90度に直立し、正に勃起状態です。
そこでまず陰茎を触診してみます。
亀頭に硬さはなく、温かみもなく、柔らかい状態です。
しかし陰茎の柱(さお=体部)は硬く、疼痛を訴えています。
このことから、私は「陰茎持続勃起症」の疑いがあると判断し、某大学病院に連絡しますと、
「受け入れるから、急いで患者さんをよこしてください」との了解を得ました。
そこで簡単な医療情報提供書を作成し、患者さんを大学病院に送ったのでした。
「陰茎持続勃起症」といっても、初めて耳にする方が多いかもしれませんね。
そこで今回はこの陰茎持続勃起症について、少し詳しくお話してみましょう。
陰茎持続勃起症は,日常の泌尿器科救急疾患では多くはありませんが、的確な診断と治療を早急に求められる疾患です。また外性器という肉体的、心理的な特殊性(形態、性機能)を考えて診察する必要があります。
しかも男性器特有のことですので、女性には理解し難い病気(トラブル)であり、これが原因で離婚したり、婚約解消になるケースもあります。
陰茎持続勃起症(プリアピスムpriapism)とは,性欲や興奮と無関係に4~6時間以上勃起が持続し、痛みを伴う状態です。
ではなぜ興奮とは無関係に勃起が持続してしまうのでしょうか?
持続勃起症には、陰茎の血液の流入と深い関係があるのです。
投稿者 aids : 14:44
2010年05月20日
尖圭コンジローマは再発するの?(その2)
前回、ベセルナクリーム5%を塗布したものの、尖圭コンジローマが再発してしまった女性の例をご紹介しました。詳しくはアーカイブをご覧ください。
今回はもう少し詳しくべセルナクリーム5%の効果と正しい使用法についてご説明しましょう。
ベセルナクリームの作用機序はウイルスから身体を守る能力(免疫能)を高め、尖圭コンジローマの原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)の増殖を抑制 したり、ウイルスが感染した細胞を障害することでイボを治します。
現在、多くの専門医が使用しており、塗布は1日1回、1週間に3回行います。
一般的には就寝前にイボとその周辺にうすく塗布し、6~10時間後の起床時に石鹸を使って洗い流します。
もちろんクリームを塗布するタイミングは、患者さんの生活スタイルに合わせて決めても構いません。
最低2週間程度(8回塗布)塗ると、イボやその周辺の赤み(紅斑)、ただれ(ビラン)、表皮がはがれる(表皮剥離)などが高い頻度であらわれます。
この頃になるとイボが少し小さくなってきます。
患者さんも治療の効果が出てくると治療に積極的に取り組む意欲が出てきます。
このクリームは最大16週間まで保険適用です。
尖圭コンジローマの治療は、目視でイボがまず無くなることが第1目標ですが、イボが無くなってから3ヶ月の経過観察が非常に大切です。それは30%以上が再発するからです。
まさに尖圭コンジローマの治療は再発との戦いです。
今回のご相談者の場合、先ずベセルナクリーム5%の使用期間・回数があまりにも少なく、経過観察も充分とはいえませんでした。そして残念ながら再発につながったと考えられます。
しかし、尖圭コンジローマの治療方法は大きく分けて外科的療法、薬剤塗布療法、内服療法の3つがあり、レーザー治療等の手段もあります。
尖圭コンジローマの治療は一つの治療法にこだわらず、効果が無いと感じたら他の治療法に切り替えたり、いろんな治療法を組み合わせて行うこともお勧めです。
ウイルスが根絶されるまで、粘り強く治療することを心がけてください。
投稿者 aids : 18:49
尖圭コンジローマは再発するの?(その1)
先日、30代の既婚女性から尖圭コンジローマに関する電話相談を受けました。
この女性は、今年の2月に婦人科を受診した際、外陰部のイボを「尖圭コンジローマ」と診断されたそうです。そして医師からの指示は、「ベセルナクリーム5%の塗布」による治療。
何回か塗っているうちに症状が改善され、お医者様に報告したところ、
『症状がなくなったなら、クリームの塗布はもう終了していいですよ』と言われました。
と彼女は状況説明をしてくれました。
私はこの話にちょっと疑問を覚えたので
「トータルで何回ぐらい塗られましたか?」と質問をしました。
するとこの女性はちょっと考えた後、
「多分4回ぐらいだと思います。」という答え。
「4回だけですか?それでは、もしかして今回のご相談は、尖圭コンジローマの再発に関することですか?」
と私が再度質問をすると、
彼女はびっくりしたように言いました。
「そうなんです!再発してしまったんです。なぜお分かりになったのですか?」
私が「再発したのでは」とピンと来たわけは、べセルナクリーム5%の塗布の回数にあります。
ベセルナクリーム5%は保険適用になっており、尖圭コンジローマに対する日本性感染症学会の第一選択の治療法です。
しかし、その使用はルールに従って行わないと、正しい効果が得られません。
塗布は1日1回、1週間に3回行い、最低でも2週間程度(8回塗布)続けることが必要です。
なぜなら、イボが消えても、まだしばらくはウィルスが体内に残った状態だからです。
尖圭コンジローマの治療は、目視でイボがまず無くなることが目標ですが、真の目標はイボの原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)を消失させることにあります。
そのためには薬を正しい使い方で塗布することが大切です。
そこで次回は、もう少し詳しくべセルナクリーム5%の効果と正しい使用法についてご説明しましょう。
投稿者 aids : 18:37