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2010年11月17日
性器伝染性軟属腫(ミズイボ)
ある秋の日の夕刻、27歳の主婦が私の診療所に受診してきました。受診理由を聞いてみると、「先生、実は“あそこ”にイボができました。
2日前にお風呂に入っているときに気が付いたんです」という訴え。
早速診察いたしますと、左右の大腿部の内側と恥丘部に、
灰白色の直径1.5~2mm大のイボがパラパラと10個近くできていました。
専門医が診れば一目でわかります。
これは「伝染性軟属腫」で、通常は良く幼稚園児にできる、いわゆる「ミズイボ」です。
ミズイボの病原微生物は伝染性軟属種ウイルスです。
大人では性行為(スキンシップ)を通じて外陰部やその周辺によくできますから、
「性器伝染性軟属腫」とも言われています。
潜伏期間は2週~6ヶ月。タオルやバススポンジなどから間接的に感染することもあります。
また子供から移ることもあります。
イボの大きさは粟粒大~大豆大。中心に臍のあるドーム状の腫瘍で、表面は滑らかで、
蝋様の光沢があり、専門のピンセットでつまむと乳白色の粥状の内容物が出てくることが特徴的です。
イボは外陰部、恥丘部、肛門周囲、大腿内側などに多くできます。
治療は専用のピンセットで一つ一つ摘んで取ります。
大きな場合はレーザーによる蒸散あるいは液体窒素による凍結療法などを行います。
このイボは、乾燥肌の人に多く見られ、白色ワセリンなどの保湿剤だけでも治癒することがあります。
従って、入浴後は保湿剤でスキンケアーをすることが治療には効果的です。
タオルは患者と別のものを使用し、感染を防ぐためにスキンシップはやめましょう。
患者の衣類などは熱湯消毒を推奨します。
また顔面にミズイボがたくさんできたら、AIDS(HIV感染)を疑わなければならないことも覚えておきたい知識です。
この主婦の方の場合は、ピンセットでの処置でイボの治療をいたしました。
幸い、お子さんにはミズイボが移っていないということで、私も安心いたしました。
投稿者 aids : 11:01
症状がないクラミジアの悲劇
すっかり秋も深まった11月上旬に、29歳で既婚の会社員男性が、私の診療所に受診してきました。
彼に受診の目的を尋ねると、「クラミジアの検査をお願いします」とのこと。
そこで私が
「では、パートナーの方がクラミジアになっていたんですか?」
とたずねると、彼はすぐさま答えました。、
「さすが先生、よく分りますね!そうなんです。
実は妻が妊娠し産婦人科に行ったらクラミジアが分ったんです」
「なるほど。こういうパターンが一番多いんです。
ところであなたは、奥さん以外の女性との交渉がありましたか?」
「あ・・・。」と彼はちょっと口ごもった後で
「お恥ずかしいことですが、3ヶ月ほど前に会社の同僚と、酔っ払った勢いでソープランドに行ってしまいました。魔がさしたとでも言うんでしょうか・・・」
と、告白しました。
クラミジア感染症は女性の70~80%は症状がでません。
男性でも50%は症状がまったくでません。
女性の場合の症状は、オリモノが増えたり、下腹部痛、不正出血、排尿痛、性交痛などを認めます。
男性で症状が出る場合は、感染1~3週間後、尿道から少量の分泌物、尿道のかゆみ、
違和感、不快感などを認めます。
この男性の場合、ソープランドで感染したクラミジアに症状が出れば、
病院に行って治療を受けることができたのですが、症状がでなかったばっかりに、
自分で感染に気がつかなかったのでしょう。
そして無自覚のうちに妻にクラミジアを移してしまい、妻の妊娠によってこの事実が発覚したわけです。
私が彼にこの推理を伝えますと、彼はもう彼は顔面蒼白。半分パニック状態でした。
その後、この男性の検査をおこなったところ、案の定クラミジアが検出されましたので、治療を行いました。
まさに、”君子危うきに近寄らず”。
彼はちょっとした出来心で、とんだ代償を払うはめになってしまいました。
事実を知った奥さまに、さぞかし絞られたことでしょう。
でも今頃は、立派なパパになっているかもしれませんね。
それではごきげんよう。
投稿者 aids : 10:40
2010年11月16日
EVOLUTION STUDY
宮本町中央診療所は、下記の研究の実施施設に参加いたしました。【研究】
『過活動膀胱患者に対するイミダフェナシンの夜間頻尿改善効果は睡眠障害に貢献する(EVOLUTION STUDY)』
著者:武田 正之、高橋 悟、他
泌尿器外科 2010年23(10)、1443~1452.に掲載
【研究要旨】
過活動膀胱患者における夜間頻尿はQOLへ与える影響が大きく、睡眠障害の一因となる。
われわれはEPOCH Studyにおいてイミダフェナシン投与により夜間頻尿およびそれに伴う睡眠障害が改善することを報告した。
そこで今回新たにイミダフェナシン投与による夜間頻尿に伴うQOLの変化について、新規に開発された夜間頻尿の質問票である N‐QOLを用いて検討した。
その結果、イミダフェナシン治療により夜間頻尿の改善およびそれに伴うQOLの向上が示された。
投稿者 aids : 17:44
2010年11月05日
ED治療薬はふたりの愛の架け橋
最近、都内の某ホテルで「ED治療薬」のフォーラムがありました。今回のお話は、その印象記と私見です。
日本に「ED治療薬バイアグラ」が鳴り物入りで上陸したのは約11年前。
これにより、勃起不全に悩んでいた多くの紳士諸君は救われたことでしょう。
“夜の生活”に自信ができた結果、“昼間の仕事”も頑張れるようになり、
人生が豊かになった。言いかえれば“人生のQOL”が向上したことでしょう。
VIAGRAは服用して適度な性的刺激を与えれば、
約30分~1時間でその効果がでてきます。
今まで男性自身の自信をなくしていた方も、女性に「性の満足感」を
与えることが可能になり、それによって男性の自尊心が大きく向上いたします。
つまり、男性の自信の回復は、
単に自分が充分な勃起を得ることだけでは達成できません。
そこには、パートナーである女性にも「満足感を得てもらうこと」がとても重要だと私は考えます。
しかし「ED治療薬」の謳い文句は“硬さは男の勲章”となっていました。
この謳い文句は、正直言ってあまり好きではありません。
確かに男性自身は硬くなり、強くなり、男性は自信を回復することでしょう。
でもパートナーである女性にも目を向けなければ、この「自信」は、
男性側の自己満足で終わるかもしれません。
“硬さは男の勲章”というキャッチは、あまりにも男性中心の謳い文句です。
この感覚でセックスをして、はたして女性を充分に満足させられるのか・・・?
私は甚だ疑問に思います。
「ED治療薬」の真の目的はセックスを通じてパートナーとの関係が良くなることです。
それには男と女の間の“愛”がかかせません。
セックスには愛がなくてはいけないのです。
人は愛のあるセックスをしなくてはなりません。
ですから、ED治療薬に関するキャッチコピーも、愛をイメージする言葉がよいと考えます。
“硬さは男の勲章”の文句は、悪く言うと、パートナーではなくセックス自体を愛している
イメージさえあります。
セックスには愛が必要なのですから、セックスを愛するのではなく、パートナーを
愛してるイメージがよろしいかと思います。
私は以前から、“ED治療薬”は「ふたりの愛の架け橋」「男と女の愛の絆」あるいは
「ふたりの愛のごほうび」などと表現しております。
皆様は如何でしょうか。
最後に皆様の性の健康をお祈りいたします。
投稿者 aids : 18:33
肛門にできた巨大尖圭コンジローマ(その2)
前回は少し前に私の診療所を訪ねてきた、36歳のある男性会社員の話をご紹介しました。
詳しくはバックナンバーをご覧ください。
今回は、肛門の周りに巨大尖圭コンジローマができていた彼を、「ベセルナクリーム5%」を
使って治療した時の様子をご紹介しましょう。
「ベセルナクリーム5%」の使い方は、一般的には就寝前に患部を中心に、
クリームを手指で塗ります。
そして約8~10時間後に入浴し、そのクリームを石ケンで洗い流す作業をします。
この一連の作業を1週間に3回行います。
今回の彼にも、ベセルナクリーム5%を処方し、肛門周囲への塗布療法を開始しました。
開始から2週間後には全体的に尖圭コンジローマのボリュームが約10%減少。
さらに4週間後には肛門周囲皮膚が発赤し、一部ビラン面(タダレ)がでてきましたが、
尖圭コンジローマのボリュームは約40%減少しました。
長期間にわたるべセルナクリーム5%の治療は、患者さんが塗布を忘れてしまったり、
怠けてしまったりすると効果が表れにくいこともあるのですが、この彼の場合は治療意欲が
高く、そのまま順調にベセルナクリーム5%の塗布療法を継続することができました。
治療を開始してから8週間後には多少のタダレはあるものの、ボリュームは約90%減少と、
私の予想よりも早く進行。
12週間後にはボリュームは約98%減少し、尖圭コンジローマは3スポットのみに
認められる状態になりました。
ここまで来たところで、彼と相談し、レーザー治療に踏み切りました。
今月でレーザー治療後3ヶ月になりますが、術後経過は順調です。
心配していた再発も認められず、「良かった、良かった」という心境です。
ちなみに、彼の話によると、婚約中の彼女の尖圭コンジローマの方は、
他の婦人科でレーザー治療を受け、こちらも経過は順調とのことでした。
尖圭コンジローマの治療は再発との戦いでもあります。
完全に治癒するには、患者さんと医師の信頼関係に基づく、
長期間の「共同作業」が必要です。
一般的には、経過が長くなり患者さんの治療意欲が低下すると、治療成績も低下します。
そこで、患者さんの患部の状態だけでなく、精神状態をしっかり見極め、
適切なアドバイスをしたり、根気よく励ましたりする医師のサポートが
大変重要になってきます。
ですからこの治療は、ある意味、患者と医師の“愛の共同作業”とも言えるかもしれません。
この彼とフィアンセの治療努力が実り、結婚、そして新しい命の誕生となりますことを、
心より祈念しています。
投稿者 aids : 11:21
肛門にできた巨大尖圭コンジローマ(その1)
先日、私の診療所を訪ねてきた、36歳のある男性会社員のお話です。
本人いわく、1ヶ月前に肛門の周りにイボができているのに気づき、痔の病気だと思って
近所の医師に診てもらったのだそうです。
その医師には「肛門の周りが荒れている」といわれ、外用薬を処方されたそうなのですが、
それをつけても、一向に症状は改善しない。
不審に思った彼は、自分でいろいろとネットで調べたところ、
「どうも自分は尖圭コンジローマではないか」と考え、当院に受診してきたというのです。
さらに話を聞いてみると、現在、婚約中の彼女が尖圭コンジローマであることも判明。
さっそく患部の診察を開始しました。
彼の性器、肛門を診察すると肛門全周にわたって、尖圭コンジローマがびっしり
多数、隆起状にできており、巨大尖圭コンジローマと診断しました。
幸なことにペニスには尖圭コンジローマは認められません。
また、肛門周囲にできる尖圭コンジローマ患者はHIV感染者、
梅毒患者であることが多いので、あわせてその検査も行いました。
検査の結果はHIV検査
陰性、梅毒血清反応:陰性でありましたので、先ずはホッといたしました。
彼のような巨大尖圭コンジローマの治療は、20年程前だったら、
まず炭酸ガスレーザーで蒸散、Vaporizationを行うことが一般的でした。
しかし、私の経験上、レーザー治療をして再発した場合、
その後の治療に難渋することが多いと
わかっていましたので、今回はいきなりのレーザー治療は施行しないことにしました。
先ず使用したのは約3年前から、日本でも保険承認された免疫調整剤である
「ベセルナクリーム5%」です。
名前だけは聞いたことがあるという方も多いかもしれませんね。
では、このクリームを使った治療法とその経過は、次回にお話しすることにしましょう。
投稿者 aids : 09:50