泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

« 2011年03月 | メイン | 2011年05月 »

2011年04月28日

東日本大震災とCSW

yuu0112-039_m.jpg


4月1日、首都圏では桜の花が咲きました。
しかし、私の心にはまだ春が訪れません。

先日、私の診療所に28歳の女性が訪れてきました。
その日は東日本大震災から3週間が経った日でした。彼女の受診の目的はCSW(性風俗従事者)の性感染症検診。

彼女は実は某被災地の漁師の娘でした。
4年前に結婚し、1年後には子供に恵まれましたが、その後間もなく離婚。子供の親権は彼女が受けました。

そして、2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が起きました。
その直後の想像を超えた大津波で、彼女の故郷の漁業の町は一変してしまいました。
それと同時に彼女の人生も一変してしまったのです。

漁師である父親は、事情はよくは分かりませんが、とにかくあの大津波の中を泳ぎぬき、九死に一生を得ることができたそうです。
母親も海岸線近くの自宅から緊急避難し、津波から逃れることができましたが、夫婦の住んでいた家は津波に流されてしまいました。

また彼女の祖母は彼女の父母とは別に住んおり、本人は無事であったが、津波で家が半壊。
そして、彼女自身の家は少し内陸にあったため、家も母子も無事だったということでした。
震災後、彼女は両親と祖母を自分の家に呼び、その家族に3歳になるわが子を託し、
この川崎にやってきたそうです。

彼女は自分が経済的支柱にならなければならないと考えて上京してきたのでしょう。
そして、おそらく相当、悩んだ挙句、CSWという道を選ばざるをえなかったことは想像に難くありません。
いつまで続くかわからない、性風俗業という名のいばらの道。
故郷にいる家族への想いを胸に、彼女は毎日を必死に戦っているのです。

『女は強い』・・・この言葉が適切ではないかもしれませんが、彼女のたくましい生きざまを見て、この言葉を思い出しました。

彼女の人生の春がいつ訪れるのであろうか。
そして、故郷に残した子供や家族と笑顔で一緒に暮らせる日がいつ訪れるのであろうか。
彼女のけなげな笑顔を思い出しながら、一刻も早い被災地の復興を願わずいられない毎日です。

すべての皆様の、性の健康と心の健康を心よりお祈りいたします。

投稿者 aids : 09:58

2011年04月23日

東日本大震災と再発するヘルペス(その2)

ant0028-012_m.jpg


前回は、大震災以降、当院に口唇ヘルペスや性器ヘルペスの再発の方があきらかに増えていること。
またそれが大震災やその余震によるストレスが原因であることをお話ししました。
詳しくはバックナンバーをご覧ください。

ヘルペスの再発はさまざまなストレスをきっかけとして、皮膚・粘膜症状として表れます。
神経節で眠っていたウイルスが、何らかのストレスで目を覚まし増殖し、神経線維を通って皮膚・粘膜に水疱として表れるのです。

それでは、このようなヘルペスの再発にどのように対処したらよいのでしょうか。
再発型のヘルペスの治療法は、既に確立されています。
バルトレックスという抗ウイルス薬を服用すれば、早く症状が落ちついてきます。
 
この病気は神経のウイルス感染症ですから、外用薬(塗りくすり)では良くなりません。
もちろん、放置しておいても、そのうちに皮膚粘膜症状は落ちついてきますが、神経節にウイルスは残存しており、小さなストレスでも再発する傾向になります。

完全に治療するには、是非、内服薬を服用しヘルペスウイルスの量を減らしましょう。
内服薬のバルトレックスが有効であることを、ぜひ覚えておいてください。
専門医でなくても処方してもらえます。

被災された皆さんを、日本中、世界中が応援しています。
被災地の一刻も早い復興を心よりお祈りいたします。

投稿者 aids : 01:20

東日本大震災と再発するヘルペス(その1)

ant0024-012_m.jpg


去る2011年3月11日午後2時46分18秒の三陸沖を震源とした東北地方太平洋沖地震とともに東日本大震災は始まりました。
 
東北・関東は1000年に1度あるかないかの未曾有の地震と津波に襲われ、東北地方の沿岸の各地は瓦礫の地と化し甚大な被害をもたらしたことは、皆さんもご存知のことと思います。
 
加えて、それに伴う福島原発事故の発生、放射能や汚染水の被害等、今まで想像できなかった悪夢がまだ続いています。被災地の方々のことを考えると毎日、胸が痛みます。
 
この震災以降、気になっている現象があります。
それは、私の診療所に訪れる方の中に口唇ヘルペスや性器ヘルペスの再発の方があきらかに増えていることです。おそらく、他の医療機関でも同様な現象が見られていると思われます。
 
実はこの現象は、今回の大震災の影響の一つと考えられます。
たとえば、被災地ではいまだに、避難所等の劣悪な環境の中で生活をせざるを得ません。
また住みなれた地を離れ、関東地方などに移られた方も多いと思います。
慣れない地に疎開、避難されている皆さんも、さぞかしつらい日々を送られてことでしょう。

また、東北地方はもちろん、関東地方に住んでいる我々も、たび重なる大きな地震・余震を毎日のように経験しています。
私自身も“地震酔い症候群”のような症状に悩まされています。
これらは大変、大きなストレスです。
このストレスがヘルペス再発の原因であると考えられます。
当院のある都会でも増えているわけですから、東北の被災地ではヘルペスの再発が確実に増加していると考えられます。

ではストレスとヘルペス再発にはどんな関係があるのか、また、ヘルペスの治療法とはどんなものなのか?
これについては次回お話しすることにしましょう。

投稿者 aids : 01:03

Entries

Archives