泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2011年09月28日

HPV感染について(後編)

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今回は、HPVウィルスが引き起こすその他の病気についてお話いたしましょう。 

HPVは、子宮頸癌以外の病気を引き起こすことがあります。
少し専門的になりますが、高リスクの16型、18型で生じるのが、外陰上皮内腫瘍、腟上皮内腫瘍であり、低リスクの6型、11型で生じるのが、尖圭コンジローマという病気です。

そして 尖圭コンジローマ が、妊婦の体内で母子感染を起こすと、赤ちゃんが 再発性呼吸器乳頭腫症(RRP)になることがあります。 
これは、妊娠している女性が、尖圭コンジローマを発症していると、出産するときに、産道で赤ちゃんにHPVが感染してしまう可能性があるということです。 

生まれてきた赤ちゃんがHPVに感染した場合、ごくまれですが、喉にイボができる 再発性呼吸器乳頭腫症(RRP)を発症してしまうことがあります。 
この場合、声がかれたり、イボが大きくなることで呼吸困難になり、命にかかわる場合もあります。イボを取り除くため、頻回に何度も手術を繰り返すこともあります。 

腟内に尖圭コンジローマが多発している場合や、非常に大きな尖圭コンジローマでは、帝王切開が必要になることがあります。 
ですから、女性は定期的に子宮頸癌の検診を受けることが必要なんですね。

しかし、日本はこの検診率が世界的にみてまことに低く、寂しい限りです。
私の願いの言葉で、この回を結びたいと思います。 
「女性たちよ、良き人生を!」
(尚、MSD株式会社の資料を参考にいたしました)

投稿者 aids : 23:25

HPV感染について(中編)

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前回は、子宮頚癌の原因となるHPVウィルスがどういうものかをご説明しましたね。
今回は、子宮頚癌の症状についてお伝えしたいと思います。

子宮頸癌の恐ろしいところは、初期にはほとんど症状が表れないことです。
気付いた時には、すでに進行していたというケースも少なくありません。 

病気が進行してから現れる症状は、性交渉の時に出血する、生理に関係のない出血がある、茶色のおりものが増える、悪臭を伴うおりものがでる、下腹部や腰が痛むなどがあります。 
子宮頸癌の発見が早ければ、子宮の摘出手術などをせずに、子宮を守ることも可能です。 

子宮頸癌の進行は5期に分類できます。
その5期とは0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期そしてⅣ期です。

各期の状態は、以下の通りです。
0期の状態は、子宮頸部の上皮内に癌細胞がとどまっている。
Ⅰ期の状態は、癌細胞が子宮頸部のみにある。
Ⅱ期の状態は、癌細胞が子宮頸部を超えて、周囲に広がっている。
Ⅲ期の状態は、癌細胞が子宮頸部を超えて、骨盤壁や腟の下部まで達している。
Ⅳ期の状態は、癌細胞が子宮を超えて、膀胱や直腸まで広がっている。 

しかし幸いに、0期の状態の時期に発見できれば、子宮を温存する治療ができ、治療後の妊娠や出産も可能となります。 
また、HPVというウイルスが原因となるのは子宮頸癌だけではありません。
このことについては、次回に詳しくお話いたしましょう。
(尚、MSD株式会社の資料を参考にいたしました)

投稿者 aids : 23:14

HPV感染について(前編)

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今回は、「HPV感染」について勉強いたしましょう。
最近、20~30代の若い女性の子宮頸癌が増えています。
子宮頸癌は子宮の入り口(頸部)にできる癌です。
子宮頸癌の原因は、高リスクのヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することです。 
HPVはとてもありふれたウイルスで、性交渉の経験のある女性の80%以上が、
50歳までに感染を経験すると言われています。
特に若い年代の感染率は非常に高いです。
 
150種類以上の型があるHPVの中でも、15種類程度が癌を引き起こす可能性がある
「高リスク型」と呼ばれています。
このうち「16型」、「18型」が子宮頸癌の原因の約65%を占めています。 
高リスク型のHPVに感染するとどうなるか、簡単にご説明いたしましょう。 

感染したからといって症状は、特に何もありませんし、すぐに癌が発症するわけではありません。人間の免疫力によって多くの場合、ウイルスは体から自然に排除されます。 
しかし、この機能がうまく働かずにウイルスが子宮頸部に残り、長い間感染が続いた場合に、
その部分の細胞が5年以上かけて癌細胞へと進行していく場合があります。

では子宮頸癌の症状はどんなものなのでしょうか?
次回は、その症状について詳しくみていくことにいたしましょう。
(尚、MSD株式会社の資料を参考にいたしました)

投稿者 aids : 10:01

2011年09月12日

単純ヘルペス特異抗原検査法とは?(後編)

性器ヘルペスの特異抗原検査の検体採取方法について、お届けしています。
前回に引き続いて今回は、採取した検体の塗抹方法について説明いたします。

塗抹というのは、塗りつけること、塗布することを意味します。
① スライドグラスの2つのウェル(くぼみのある受け皿・直径約5mm大)に内側から円を描くように、こすらず、軽く叩くように塗抹します。
その際、綿棒に付着している検体すべてが塗抹されるよう、綿棒を少しずつ回転させ、ウェルからはみ出ないように塗抹する必要があります。
② 風乾:操作中検体が剥がれ落ちる原因となりますので、完全に乾燥させます。 ドライヤーの冷風で乾燥させることも可能です。
③ アセトン固定:検体の塗布してあるウェルにアセトンを滴下して固定し、蒸発させます。
以上で検体採取の作業は終了です。
あとは、検体がうまく採取できていれば成績報告が約5~7日後に出てきます。
この報告により、HSVの1型なのか2型なのかが判定できます。

このようにして、医師は検査をしているんですね。
お分かりいただけましたでしょうか?

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投稿者 aids : 16:29

単純ヘルペス特異抗原検査法とは?(前編)

今回は少し専門的になりますが、性器ヘルペスの水疱の病巣基底部から
検体を採取し、性器ヘルペスの原因がHSVの1型なのか2型なのか
判定する検査法について具体的に勉強いたしましょう。

これは蛍光抗体法を用いて、型別判定を行う検査法です。
現在、性器ヘルペスの検査(単純ヘルペス特異抗原検査)の中で健康保険を適用でき、
かつ信頼できるものは、この検査法だけです。
水疱を認める状態で受診してきた場合にこの検査が可能です。
もちろんタダレ、ビランの状態でも検体採取は可能ですが、かなり検出率は低くなると思われます。
今回は、この単純ヘルペス特異抗原検査の検体採取方法について具体的にご説明することにいたします。

≪性器ヘルペスに水疱が形成している場合≫
①水疱に針を挿入し、上部の皮あるいは痂皮を剥がします。
②小ピンセットで、剥がした皮を除去します。
③ポリエステル綿棒を生理食塩水や精製水で軽く湿らせ、病巣基底部前面を綿棒で強くぬぐいます。

また、検体採取の注意点としては4つあります。
①早期の水疱病巣が検体としては最適です。
②水疱内容液は検体としては不適です。
③ウイルス感染細胞は病巣基底部にありますので、患者が痛いというくらい強くぬぐい、基底部の細胞を採取します。
④膿が出ている場合は、病巣基底部をかき乱さないように注意し、綿棒でまず膿をぬぐい去り、別の綿棒で検体を採取します。

次回は、検体の塗抹方法について説明します。
 (注:塗抹=塗りつけること、塗布すること)

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投稿者 aids : 16:16

第2回 日本性感染症学会関東甲信越支部総会

9月4日(日)に講演会がありましたので下記にご報告いたします。

第2回 日本性感染症学会関東甲信越支部総会
日時:平成23年9月4日(日)
会場:東京慈恵会医科大学大学1号館3階講堂

学術講演2
演題:「梅毒の臨床 最前線」
宮本町中央診療所 尾上 泰彦(おのえ やすひこ)
略歴:
昭和44年 日本大学医学部卒業 泌尿器科学教室入局
昭和56年 宮本町中央診療所 開設
・日本大学泌尿器科学非常勤講師
・日本性感染症学会 代議員・認定医
・性の健康医学財団 評議員
・神奈川性感染症学会 幹事
・川崎STI研究会 代表世話人 抄録


梅毒というと、過去の病気である、AIDSが出現して以来忘れられている、全数報告であるのに医師が届け出ていない、感染しても症状がでない事が多い、検査結果はどう読むのか分からない、治療はどうするのか、抗生物質天国の日本では知らないうちに治療されているのではなどのイメージがある。
また最近は皮疹を主訴に受診してくる顕症梅毒患者は少ない。
むしろ献血、集団検診、妊婦健診、入院や術前などの血液検査で偶然発見されることが多い。
その多くは陳旧性で梅毒治癒後の抗体保有者である。
従って、スクリーニング検査で陽性を呈した場合はSTSとTPHAの定量検査により、 陳旧性梅毒か無症候梅毒かを見極めることが必要である。
また、わが国では、2010年の感染症発生動向調査によると、梅毒の総報告数は2008年をピークに減少に転じているが、性行為によるHIV感染は増加している。
梅毒を診断した際には、HIV感染の有無を検査することが推奨される。
今回の講演では当院で経験した顕症梅毒の第1期梅毒、第2期梅毒の臨床症例などを中心に診断、治療、治癒判定などについて解説する。
さらに会員の先生方に検査結果の読み方、治癒判定、治療法などについてご意見を伺いたい。

投稿者 aids : 16:07

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