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第77回日本泌尿器科学会東部総会のご報告
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第77回日本泌尿器科学会東部総会
2012年10月18日(木)
会場:東京ドームホテル
シンポジウム“変貌する尿道炎”座長:高橋聡先生 清田浩先生
【演題】蔓延する淋菌・クラミジアの咽頭感染 宮本町中央診療所 尾上泰彦
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①第77回 日本泌尿器科学会東部総会
以下、講演論旨
泌尿器科医にとって男性の淋菌性、クラミジア性尿道炎の最大感染要因はオーラルセックスであることは周知の事実である。
しかしながら淋菌性・クラミジア性咽頭炎の実態は知られていない。これに泌尿器科医が如何に対応すべきか検討を加えた。
淋菌・クラミジア咽頭感染の特徴、臨床例、検査法、検体採取法の実際、その成績および今後の課題について述べる。
淋菌性・クラミジア性咽頭炎は他覚的・自覚的な咽頭所見をほとんど認めないことが特徴である。
淋菌・クラミジアの尿道炎を認めれば、そのパートナーの口腔咽頭に淋菌・クラミジアが存在している可能性がある。
咽頭の淋菌検査法としては淋菌の分離培養がゴールドスタンダードであるが、現在あまり用いられていない。
PCR(核酸増幅法)は口腔内の非病原性Neisserria属との交差反応があるため口腔の淋菌検査に適さない。
現在、淋菌・クラミジアの検査法として核酸増幅法のSDA法,TMA法が保険適用である。
検体採取法としてはスワブ法、うがい液法があり、うがい液法の方が淋菌、クラミジアいずれも陽性率がやや高い。
子宮頸管ではクラミジア陽性率が淋菌陽性率より高い。しかし咽頭では淋菌陽性率がクラミジアより高い。
今後の課題としては咽頭淋菌・クラミジア感染の病態解明、無症候性感染の増加に対するスクリーニング法の確立、耳鼻咽喉科医のSTIへの参加、咽頭感染の疫学調査、咽頭感染症に関する保険診療の環境整備などがある。
投稿者 aids : 13:23
小児の水いぼ治療(後編)
今回は、水いぼの治癒経過について、お話したいと思います。
伝染性軟属腫の潜伏期間はだいたい2~7週間ぐらいで、長くても半年ぐらいまでではないかと考えられています。水いぼ一つ一つには寿命があると考えられていて、いつかは自然になくなるということです。
経皮接種でだんだんうつって増えてしまうこともあります。どこまで増えるか、何時になったら消えるかというのには、かなり個人差があります。だいたい数週間から数カ月で軟属腫は自然消退します。場合によっては、年単位で続くこともあるでしょう。
いずれにしても何年かのうちに全部治るということは、まず間違いあません。
最後に治療方法です。治療方法に良い方法がない、というのが大きな問題です。
確実に治療をしようと思うと、一つひとつ摘まみ取らなければなりません。それが痛みを伴ったり、場合によっては少し出血してしまったり。お子さんにとっては苦痛を強いることになってしまいます。
それを踏まえた上で治療をすべきかどうかというのには、いろいろ議論があって、まだ結論が出ていないのが現状です。
私は今のところ、ケース・バイ・ケースというふうに考えています。
水いぼを取ってあげる方が、患者さんにとってメリットが大きいと考えられる場合には取るようにします。
しかし、苦痛を与えてまで取ってもメリットが少ないという場合には、あえて取ることはお勧めしていません。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
それではご機嫌よう。
投稿者 aids : 13:15
小児の水いぼ治療(中編)
今回は、水いぼの感染経路について、お話いたしましょう。
プールに小さい子が通っていると、水いぼに感染する事がしばしばあります。感染は経皮感染で、主に接触でうつると考えられます。
兄弟間など、お子さんの間でうつるという事がよくあります。特に、プールでうつるとよく言われますが、それは脇の下などにできることが多く、ビート板を介してうつっているのではないかと考えられています。
また、保育園や幼稚園、学校などに登園、登校しても大丈夫なのかという問題があります。
伝染性軟属腫は「学校保健安全法施行規則第18条」において、法的には学校感染症の中の第3種「その他の感染症」というところに定義づけられています。
これらの感染症は、条件によっては出席停止の措置が必要と考えられる疾患ですが、普通は出席停止などの措置は必要ないと思われます。
プールに関しては、入ってよいかどうかというのは、施設によって対応が異なるでしょう。最近はプールを禁止する必要はないという指針が示されています。
ただ、水いぼが多発しているようなお子さんには、ビート板を共用しない、あるいはタオルを共用しないという注意が必要でしょう。それから、
プールの後にはよくシャワーを浴びるよう、しっかり指導しましょう。
皮膚の経皮感染ですので、掻いたりすると接触で周りに広がってしまいます。特に、アトピー性皮膚炎のお子さんなどは、もともとバリア機能が少し弱いので、更にかゆくて掻いてしまうと、次々と湿疹のところに経皮接種して、水いぼを増やしてしまうということがあります。
スキンケアをしっかりして皮膚の健康を保つという事が、水いぼを増やさないためには大切となります。
次回は、水いぼの治癒経過についてお話します。
投稿者 aids : 13:03
小児の水いぼ治療(前編)
今回からしばらく、水いぼの治療について、勉強したいと思います。
当院には、しばしば、近所のお母さんが、小児の水いぼを取って下さいと言って、来院します。
先日も、あるお母さんが、5歳の女の子(姉)の水いぼを取った数日後に、3歳の弟を連れてきました。弟を診察すると、やはり水いぼが数個できており、ピンセットで摘まんで取りました。
水いぼの中からは、お粥状のものが出てきました。
さて、まず、水いぼとはどんなものなんでしょうか。そこから勉強を始めたいと思います。
俗に水いぼと言われていますが、正式な名称は伝染性軟属腫といいます。ポックスウイルスの一種の、伝染性軟属腫ウイルスによる、皮膚のウイルス感染症です。
幼児から小学生の低学年ぐらいまでのお子さんに多くみられる疾患です。まれに大人に性感染症として見られることもあります。
では、症状はどんな感じで表れ、どう診断するのでしょうか。
症状としては、だいたい大きさが2~3mmぐらいまでの小さい丘疹が、多発して見られます。一つ一つ、よく観察してみると、真ん中がちょっとへこんで見えます。この窪みを専門用語で臍窩といいます。
また、水いぼは光沢があって、少し透明に見えることがあります。ですから、ほとんどは肉眼所見で診断できます。
いわゆるあせも、水晶性汗疹、普通のいぼや尋常性疣贅であったり、炎症を伴っていれば虫さされ、また水疱様に見えると水痘などと、区別が必要になることがあります。(鑑別診断といいます)
水いぼの場合は、摘まみ取ってみると、中から透明でういろうのような粥状のものが出ますので、それを確認する事で、伝染性軟属腫と診断できます。
肉眼で見る以外の方法で診断をするには、ダーモスコピーという反射を抑えた拡大鏡のようなものを、皮膚科で使用する場合があります。そういうものを使って見ると、普通のいぼと水いぼの鑑別は、かなり正確にできると考えられます。
次回は、水いぼの感染経路についてお話したいと思います。
投稿者 aids : 12:57
性風俗嬢のアメーバー肝膿瘍(後編)
今回も引き続き、「赤痢アメーバー症」と「アメーバ―肝膿瘍」について勉強していきます。
この症状には、早期発見・早期治療が肝要なのですが、実際には、患者から性風俗店等での性行為歴を聞きだすことは難しいことをお話しました。
さらに重要な点は、感染源となった相手が特定できず、仮に特定できても患者のプライバシーが優先され、感染源となった相手にたどりつけないという問題が残ることです。
また、肝膿瘍が縮小しているとわかったら、患者は自らの判断で、外来通院を自己中断する傾向もあります。
患者側に、治療が重要なものであることへの認識がまだまだ低いことが想像されますので、この点に対する啓蒙も重要です。
このように、感染源である人物の治療が困難であり、また患者自身が今までの性嗜癖から円滑に脱却できることは難しく、治療後再発したという報告もあり,赤痢アメーバーがひそかに蔓延するのではないかと憂慮されるところです。
これらの問題を解決する組織だった体系、ならびに法を整備することは、大変困難と思われます。
医師と患者間の信頼関係を築き、アメーバ肝膿瘍の感染経路にたどりつけば、アメーバーを持っている者の蔓延を防ぐことができ、その集められた情報を、医療現場に役立つ情報として逐次発信していくことが可能となりますが、残念ながらその情報をコントロールする組織がありません。
まだまだ、日本における性感染症としての赤痢アメーバ症に対する医療従事者・患者の認識度は低く、現行の性感染症検査項目にさらに、赤痢アメーバを加えるなど、総合的な赤痢アメーバ感染拡大防止対策が望まれます。
投稿者 aids : 14:27
性風俗嬢のアメーバー肝膿瘍(中編)
さて、今回からは「赤痢アメーバー症」と「アメーバ―肝膿瘍」について少し勉強していきます。
前回は、特殊な性風俗業に従事している女性が、以前この「アメーバー肝膿瘍」を患っていたことをお話しました。
「赤痢アメーバー症」の、人への感染は便中に排泄された囊子を経口摂取することにより成立します。
経口された囊子は小腸の下部で脱囊し,栄養型になります。それが、大腸腔に移行して粘膜組織内へと侵入します。
さらに、栄養型虫体が血行性に転移し,肝や肺に膿瘍を形成します。
以前では赤痢アメーバー症は、細菌性赤痢に準じ、消化管感染症と認識されていました。
そのため、赤痢アメーバー症患者の届出があった場合、疫学調査の対象が性的パートナーにまでおよぶことはなく、患者と食事などを共にした接触者を中心に糞便検査が行われていました。
ところが、最近では性風俗店で働く女性にも、赤痢アメーバー患者が出ていることが指HIV陽性の者が、赤痢アメーバー抗体を持っている可能性が高いことも知られています。
一方、最近では、女性が赤痢アメーバーを持っている率も高くなっており、赤痢アメーバ症はもはや特殊な集団における感染症とは言えず、日本国内に蔓延している疾患と捉えるべきです。
赤痢アメーバ感染症は、今後も増加が予想される疾患であり、診断の遅れは重篤な状態を引き起こすため、早期診断が重要となります。
また、アメーバ肝膿瘍と診断するための重要な点の一つは、STIを疑った患者の性生活についての問診です。
患者の背景として、同性愛歴や性風俗店での性行為歴などを、患者自ら医師に告げるケースは決して多くありません。
また、プライバシーの観点から、医師の方から強引には聞き出せないというジレンマもあり、診断の遅れに繋がる懸念があります。
問診のテクニックが重要となります。医師側が心を開いておかないと、患者の心は直ぐに閉じてしまいます。
次週も引き続き、この話題について勉強していきます。
投稿者 aids : 14:15
性風俗嬢のアメーバー肝膿瘍(前編)
最近、40代の女性が、辛そうな表情をして来院してきました。
訴えは「身体がだるいんです」ということから始まりました。
話を聞くと、数年前にアメーバ―肝膿瘍で東京の某病院に入院していたといいます。
前回の血液検査でgamma;GTPが高値であったようです。
患者の置かれた環境等を知るために問診を進めると、彼女は性風俗従事者であることが分かりました。かなりマニアックな性風俗店に勤めていました。
『男性の肛門を責める専門です。アナルを口で舐めたり、大人のおもちゃなどを使ってアナルを責めたり…など沢山あります。それが私の仕事です。一方的に肛門を責めるんです。M男性専門なので、私が男性から責められることはありません。』
彼女はおそらく、この特殊な性風俗業(肛門専門職)により、客の糞便から感染したものと考えられます。それでも、彼女はこの特殊な性風俗業(肛門専門職)はやめられないそうです。
彼女の体調不良の原因は、この「アメーバ―肝膿瘍」なのですが、今回は次週より、この「アメーバ―肝膿瘍」と「赤痢アメーバー症」について少し勉強してみたいと思います。
少し専門的になり、恐縮ですが、ぜひお付き合いください。
それでは、続きを。
投稿者 aids : 14:01