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第101回日本泌尿器科学会総会
第101回日本泌尿器科学会総会
4月25日(木)札幌にてシンポジウム「新しい治療戦略シリーズ 性感染症」のシンポジストに田中 正利(福岡大学)先生よりを要請され学会に参加してきた。私に与えらたテーマは「尖圭コンジローマ」であった。シンポジウムは盛況であり活発な議論が交わされた。
シンポジウム4 「新しい治療戦略シリーズ 性感染症」
(16:00~18:00)
座長:田中 正利(福岡大学) ・山本 新吾(兵庫医科大学)
1.淋菌感染症 ―現状と治療戦略― 安田 満(岐阜大学)
2.クラミジア 濱砂 良一(産業医科大学)
3.性器ヘルペスの治療 本田まりこ
(東京慈恵会医科大学
葛飾医療センター 皮膚科)
4.尖圭コンジローマの治療戦略 尾上泰彦 (宮本町中央診療所)
以下に私の講演要旨を示す。
演題名: 『尖圭コンジローマの治療戦略 』
講演要旨:尖圭コンジローマ(condyloma acuminatum:CA)は、性器へのヒトパピローマウイルス
(human papillomavirus:HPV)感染症で、大部分が性行為あるいはその類似行為で感染する。
HPVは、接触により、皮膚や粘膜の微小な傷から侵入し、基底細胞を含む分裂可能な細胞に感染する。
感染後、視診で観察できるまでに3週~8か月(平均2.8か月)を要するので、感染機会を特定できないことも多い。
原因となるのはHPV6型あるいは11型である。
感染部位は男性では、陰茎の亀頭、冠状溝、包皮内外板、陰嚢、女性では、大小陰唇、会陰、腟前庭、腟、子宮頸部、また、男女の肛囲、肛門内や尿道口に好発する。
乳頭状、鶏冠状の外観を呈し、淡紅色ないし褐色で、ときに巨大化する。
肛門内のCAは、同性愛者の肛門性交によることが多い。
一般に自覚症状はないが、大きさや発生部位などにより掻痒がみられることもある。
診断は臨床症状により可能であるが、診断が困難な場合は生検して組織診断を行う。
病原体を検出するには核酸検出法があり、その方法として、Hybrid Capture(HCⅡ)法とPCR(polymerase chain reaction)法がある。
治療については、日本性感染症学会の診断・治療ガイドライン(2011年)の「ファーストライン」ではイミキモド5%クリーム(ベセルナクリーム5%)の外用をはじめ、凍結療法(液体窒素)、80~90%の三塩化酢酸または二塩化酢酸などの外用、外科的切除(電気メスによる焼灼・ハサミで切除)などが推奨されている。
「セカンドライン」ではレーザー蒸散(炭酸ガスやホルミウムレーザー)、インターフェロンの局所注射などが挙げられている。
CA治療のゴールドスタンダードはあるが、現在すべてのCAを確実に治療できる絶対的な治療法はなく、どの治療法でもある頻度で再発する。
CAの治療は正に再発との戦いであり、再発をいかにコントロールできるかが治療の奏功を左右する。
完全に治癒しない場合には、治療法を見直したり、種々の方法を組み合わせて治療する。
治癒判定は臨床的には視診で行うが、最低3か月は再発がないことを確認する必要がある。
予防については、コンドームの使用は大切であるが、広範囲に感染がある場合には完全に予防することはできない。
既にCAに対して予防効果が期待できる4価(6,11,16,18型)HPVワクチン(Gardasil)が本邦でも発売されている。
4価HPVワクチンを若年女性に広く接種してきたオーストラリアでは、CAが減少したことが報告されており、またそのパートナーである男性のCAも減少傾向のあることは興味深い現象である。
『ドクターズガイド』に紹介・掲載されました。
『ドクターズガイド』に紹介・掲載されました。治せる医師を本気で探す 全国861人の専門医を紹介
身近な慢性疾患を中心とした72の疾病について、各専門学会のトップやガイドライン作成者、
その分野をリードする専門医に聞き取り調査を行い、疾病の解説と医師選びのポイント、
国内を代表する861人の専門医を紹介。病気を本気で治したい人必見の医師ガイド。
単行本: 309ページ
出版社: 時事通信出版局
健康医療情報班
『ダクターズガイド』編集部
発売日: 2013年4月12日
【最も参考になったカスタマーレビュー】
これまで、病院を中心に紹介したガイドブックは多かったですが、最近は医師を紹介する新しい本がなかったのでこの本を購入しました。一つの病気に12人の医師が紹介されています。どうしても東京や大都市圏の医師が多いように感じます。臨床を積極的にやっている医師が多く、ファーストコンタクトのアドバイスもあります。顔写真も掲載されており便利です。病気の概要についても解説があり親切な編集だと思いました。
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この『ダクターズガイド』に性感染症の専門医として紹介されましたので報告いたします。
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尾上泰彦 (おのえやすひこ) 医師
宮本町中央診療所(神奈川県)
院長 性感染症科、婦人科、泌尿器科、皮膚科
専門
性感染症全般、特に性器ヘルペス、尖圭コンジローム、咽頭感染(淋菌・クラミジア)、梅毒などの講演活動、学会発表。
コメント
医師の紹介
尾上医師は、性感染症学会の代議員を務め、厚生労働省のHIV研究に協力するなど、
わが国における性感染症予防・治療を牽引している。診療所には、日々多くの悩める患者が来院し、患者の不安を取り除こうとする親身な対応と、豊富な経験と知識をいかした的確な診断には定評がある。
一人でも多くの人が病気についての正しい知識を持てるよう、講演会や研修会を開催するほか、雑誌をはじめとするメディアへも積極的に寄稿。さらに、ブログやホームページも立ち上げ、性感染症に関するさまざまな情報を発信している。
診療を受けるには
予約不要。
月~金曜10:00~12:30(受付11:30まで)、14:00~18:00(受付17:30まで)
土9:30~13:00(受付12:30まで)木・日曜・祝日休診。
診療内容
同診療所は、性感染症(STI)外来を備え、クラジミア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペス、
尖圭コンジローマ、梅毒、腟トリコモナス症、カンジダ症、毛虱、B型肝炎、HIV感染(AIDS)、
咽頭感染(淋菌・クラミジア)など、あらゆる性感染症について、的確な検査、正確な診断、
最新の治療を実践している。その昔、性感染症が“性病”と呼ばれていたころは、
感染するとある程度はっきりとした症状が現れ、本人も気づきやすかった。ところが、
抗生物質の普及とともにはっきりとした症状が出ない疾患が主流となり、発見が遅れがちになる傾向がある。
例えば、いま国内で最も流行しているクラミジア感染症は、女性の場合はおりものが増える、
下腹部痛、不正出血、排尿痛、性交痛など、男性の場合は尿道からの少量の分泌物、尿道のかゆみ、違和感、不快感といった症状を認めることがある。しかし、女性の70~80%、男性の50%にはまったく症状が現れない。このため病気の発見が遅れ、本人が気づかないままに悪化したり、知らず知らずのうちにパートナーにうつしてしまい、感染が拡大したりする例が後を絶たない。
面倒くさいからとコンドームをつけずに性交渉する若者や、過激なサービスを売り物にする
フーゾクに通う人などは、感染の危険性は極めて高いといえる。こうした現状に対応するため、同診療所ではSTIの予防教育に力を入れている。
講演会、研修会といったイベントに加え、書籍、雑誌、インターネットなど、多種類のメディアを通して、役立つ情報を提供。さらに、性感染症を中心に、性に関するさまざまな悩みについて専門家のアドバイスが聞ける電話相談(044-211-6581)窓口も開設している。
パートナーの検査・治療、治療後のSTI教育、精神面でのケアーなども、悩みを抱きがちなSTI 患者にとって非常に頼もしい取り組みといえるだろう。
検査の受診率を上げることも、STI 予防の大切なポイントだ。同診療所では、つい足が遠のきがちなHIVの検査について、厚生労働省「HIV検査法・検査体制研究班」の協力のもと、HIV抗体の即日20分検査(迅速抗体検査)を毎日実施している。
匿名(仮名)での受付も可能で、担当医と簡単な面接をして、少量の採血だけで検査は終了。
約20~30分後には担当医より検査結果を聞くことができ、希望者には無料の証明書も発行してもらえる。
ただし、感染が心配される性交渉などがあってから、2ヶ月以上たたないと正確な結果は出ない。また、1,000人に数人の割合で、HIVに感染していないのに検査結果が陽性(偽陽性)となる人がいる。
この場合、HIV感染の有無を確認する検査を受ける必要があることを憶えておきたい。
性感染症の心配がある場合は、1日でも早く専門家に診てもらうことで、病気を治癒し、不安が解消できるだけでなく、大切なパートナーや家族を守ることにもつながる。
一人で不安を抱えていても、何の解決にもならない。
「わたしの診療所には、毎日多くの悩みを抱えた患者さんが来られ、ここで病気を見つめ、治療を受けることで少しずつ明るくたくましくなっていかれます」と、尾上医師は言う。
身に覚えのある人は、一刻も早く受診して心の平安を取り戻してほしい。
累積症例数または患者数
HIV抗体検査の累積症例数:63,179人
年間症例数
約15,000人
医師のプロフィール
経歴
1969年3月 日本大学医学部 卒業
1969年4月 日本大学医学部泌尿器科学教室入局
1978年3月 医学博士(学位)取得
1978年4月 日本大学医学部専任講師
1981年7月 宮本町中央診療所開設
所属学会・認定・資格
日本性感染症学会(代議員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、
厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、
川崎STI研究会代表世話人、神奈川性感染症学会幹事、
日本泌尿器科学会、日本レーザー医学会、日本感染症学会、
日本口腔・咽頭学会、日本大学医学部兼任講師
主な著書(編集・共著含む)
『アトラスでみる 外陰部疾患 プライベートパーツの診かた』(2010年 学研メディカル秀潤社) amazonでみる ⇒
『皮膚病 予防と治療』(1983年 日東書院) amazonでみる ⇒
予防に心がけたいこと
特定のパートナーとのセックス。性交時のコンドーム装着。
費用のめやす
基本的には保険診療。ただし、性感染症検診(例:ブライダルチェック)などは自費診療となる。詳細は要問合せ。
発信メディア(個人ホームページ、ブログ、Twitter、facebook等)
宮本町中央診療所ホームページhttp://www.aids-free.net/
宮本町中央診療所院長ブログhttp://www.dr-onoe.com
性の健康管理教室http://www.stispecialist.com
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以上報告いたします。
『第9回 川崎STI研究会』
今回は毎年恒例の性感染症研究会の報告です。今年は 『第9回 川崎STI研究会』 を 2月23日(土) 午後4時から
川崎日航ホテルにて開催いたしました。
まず開催に際して、当研究会の当初より世話人をなさっておられた
吉邨泰弘先生(ヨシムラ医院)が逝去されましたので、哀悼の意を表し黙祷を行いました。
引き続いて講演会が行われました。
【講演】総合司会 よしかわ耳鼻咽喉科 院長 吉川琢磨先生
演題1.座長 宮本町中央診療所 院長 尾上泰彦
「性感染症予防につながる発達段階に応じた性教育」
演者: 東京医療保健大学 医療保健学部 看護学科 准教授
住民とともに活動する保健師の会 代表 渡會 睦子先生
性教育に関するお話で、大変わかりやすくお話していただきました。
渡會先生が性教育の世界ではトップランナーとして活躍されていることが良く分かりました。
演題2.座長 帝京大学医学部付属溝口病院 皮膚科教授 清 佳浩先生
「性器ヘルペスの最近の話題」
演者: 帝京大学医学部附属溝口病院 産婦人科 助手 土屋 裕子先生
性器ヘルペスの母子感染についてのお話は大変、勉強になりました。
研究会出席者は80名を超え、成功裏に終えることができました。
また研究会終了後 情報交換会を行い、和やかなうちに終了いたしました。
ご出席いただきました方々の感謝いたします。
代表世話人 尾上泰彦(宮本町中央診療所)
世話人 清 佳浩(帝京大学医学部付属溝口病院
世話人 吉川琢磨(よしかわ耳鼻咽喉科)
主催 ファイザー株式会社
性器ヘルペスと口唇ヘルペスの関係は?
30代の男性からヘルペスについて質問がありました。
「先生、性器ヘルペスと口唇ヘルペスの関係について教えてください」
それでは、今回は性器ヘルペスと口唇ヘルペスの関係について勉強しましょう。 単純疱疹(単純ヘルペスともいいます)の原因は単純ヘルペスウイルスです。 単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、どちらの型でも性器ヘルペスになりえます。 しかし、性器ヘルペの再発は主に2型が原因となります。 なぜなら、これらのウイルスは感染後、潜伏する場所が異なり、 1型は主に頭部にある神経(三叉神経節)、2型は主にお尻のあたりにある 神経(腰仙髄神経節)に潜伏します。 症状は潜伏した神経の近くに出やすいため、1型は口唇ヘルペス(くちびるやその周りに、 痛みを伴う水ぶくれができる病気)、2型は性器ヘルペスとして再発しやすくなります。 性器ヘルペスの症状が出ている時にセックスをすると、 パートナーが性器ヘルペスになる可能性があります。 また、口唇ヘルペスの症状が出ている時にオーラルセックスをしても、 パートナーが性器ヘルペスになる可能性があります。 さらに、口唇ヘルペスの症状が出ている時にキスやほおずりをすると、パートナー が口唇ヘルペスになる可能性があります。 その理由は口唇ヘルペスの症状が出ている時は、 口腔内の唾液の中に単純ヘルペスウイルスが多量に排泄されているからです。 少しむつかしかったですか! 「ありがとうございました」
投稿者 aids : 10:40
抗ヘルペスウイルス薬を服用しているときに授乳してもよいですか?
産後、3ヵ月になる30代の女性から相談がありました。
「先生、性器ヘルペスが再発してしまい、抗ヘルペスウイルス薬を服用していますが、授乳してもよいでしょうか?」
『『そうですね、母乳のメリットを考える、母乳を与えたいという気持ちや考え方は、よく分かります。 でも、抗ヘルペスウイルス薬は母乳中に移行することが報告されていますから、 抗ヘルペスウイルス薬を服用中の授乳は避けましょう』 「わかりました。ありがとうございます」 『早く、性器ヘルペスを治しましょう』
投稿者 aids : 10:35
性器ヘルペスに感染していますが、母乳を与えてもよいですか?
産後の30代前半の女性から相談がありました。
「先生、性器ヘルペスに感染していますが、母乳を与えてもかまいませんか?」
『そうですね、この質問は大変難しい問題ですね。母乳により単純ヘルペスウイルスに感染したという報告はあることはありますが、 母乳感染の可能性はきわめて低く、授乳しても問題ないと考えられています。 また母乳のメリットを考える、母乳を与えた方がよいとも考えられます。 ただし、乳頭や乳房にヘルペスの皮膚症状がある場合には 新生児への感染の可能性が高くなるので、授乳は避けましょうね』 「ありがとうございます」 『赤ちゃんが健やかに育つことをお祈りいたします』
投稿者 aids : 10:33
妊娠中のセックスについて
30代の女性から相談がありました。
「先生、もう一つ教えてください。妊娠中にセックスをしてもかまいませんか?」
『セックスをしてもかまいませんが、もし性器ヘルペスの症状が出ている時にセックスをすると パートナーに感染するリスクが高いため、症状の出ていない時にセックスをしましょう。 ただし、症状が出ていなくても体液にウイルスが含まれていることがあるため、 パートナーの感染を完全に防ぐことはできません。 できたら、コンドームを使用しましょう。 貴女の彼にも伝えてください。 貴女への感染を避けるため、妊娠後期のセックスは避けるようにしましょう。 また、口唇ヘルペスに感染している場合はキスやオーラル・セックスも避けましょう。 心配や不安がある場合は、専門医を受診して相談いたしましょう』 「先生! ありがとうございます。良くわかりました」 『それではご機嫌よう!』
投稿者 aids : 10:31
妊娠中に再発した場合、どのような治療が行われますか?
30代の妊娠3カ月の女性から相談がありました。
「先生、妊娠中に性器ヘルペスが再発した場合、どんな治療をするのですか?」
『そうですね、基本的に妊娠中は、抗ヘルペスウイルス薬の塗り薬(外用薬)で経過観察いたします。 しかし、臨床症状が激しい場合、妊娠の時期、安全性などを総合的に判断し、飲み薬(内服薬)を使用することもあります。 また、妊娠中は規則正しい生活を心がけましょう』 「わかりました」 『健康な赤ちゃんに恵まれますようにお祈りいたします。それでは!』
投稿者 aids : 10:19