泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2013年10月12日

ウイルス抗体検査(HSV抗体価) gG ELISA(エライサ)法

前回まで≪ウイルス抗体検査(HSV抗体価)≫であるCF法(補体結合反応)、
NT(中和反応)法、EIA(酵素抗体)法についてお話いたしました。
ウイルス抗体検査は、ウイルスに対して血液中に生じた抗体の有無や量を調べる検査です。 血液検査であるため、簡便に施行できますが、病変部位のウイルス感染を証明できませんし、 HSV-1、HSV-2の型別判定もできません。

今回は保険が適用されていない“HSV‐gG ELISA(エライサ)法”についてお話いたします。 この血液検査では、HSV(単純ヘルペスウイルス)のエンベロープ(*1)に存在する、 gulycoproteinG(糖タンパクG、略してgG)を抗原として用います。

現在では、HSⅤ-1とHSⅤ-2で共通部分がほとんどないgGを用いた
識別方法が開発され、利用可能となりました。

今までお話した抗体価検査とは違い、血清診断でありながらHSV-1、
HSV-2の型別判定が可能なのです。
これが最大のメリットです。欧米では広く用いられています。
他の抗体価検査では型別判定は不可能です。

感染後、上昇するまでには比較的日数を要するため、
初感染の診断に用いる場合には注意が必要となります。
定期的に測定し続けて変化を調べ、陽転した場合は感染を推測できます。

注意点としては、gG欠損株(*2)の存在が報告されていることと、
HSV-1の初感染では、HSV‐1のgG-1抗体の陽転率が低く、
感染していても陰性となる可能性があることがあげられます。
次回はウイルス遺伝子検査についてお話する予定です。


(*1)エンベロープ:ウイルス粒子のもっとも外側にある膜構造。
(*2)gG欠損株:株(ウイルス株)は、検体から採取したウイルスを人工的に培養したもの。 gG欠損株は、そのうち糖タンパクGのないもの。

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投稿者 aids : 00:04 | トラックバック

2013年10月11日

ウイルス抗体検査(HSV抗体価)NT(中和反応)法、EIA(酵素抗体)法

前回は、≪ウイルス抗体検査(HSV抗体価)≫の一つであるCF法(補体結合反応)をご紹介いたしました。

ウイルス抗体検査は、ウイルスに対して血液中に生じた抗体の有無や量を調べる検査です。 血液検査であるため、簡便に施行できますが、病変部位のウイルス感染を証明できませんし、 HSV-1、HSV-2の型別判定もできません。

今回はNT(中和反応)法、EIA(酵素抗体)法についてお話いたします。
NT(中和反応)法は感度(*1)、特異度(*2)はともに高いのですが、組織培養が必要なため測定に時間がかかります。保険は適用されます。

感染初期血清と回復期血清のペア血清を比較すると、初感染では抗体価の上昇がみられますが、 再発時には抗体価の変化がとらえられないことが多い点に注意すべきです。
実際、臨床的にはあまり使用されていないと考えられます。

他方、EIA(酵素抗体)法は、感度、特異度はともに高く、
Ig(免疫グロブリン=抗体)M(*3)とIgG(*4)を区別して測定できます。
この方法も保険が適用されます。 初感染ではIgM陽性化がみられますが、再発時には抗体価の変化がとらえられないことが多いようです。

また、健康人でもHSV(単純ヘルペスウイルス)‐IgMが陽性になることがあるため、
IgM陽性のみでは初感染の証明ができず、誤診のもとにもなりかねません。
次回は保険適用外のHSV‐gG ELISA法についてお話する予定です。


(*1)感度:陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率
(*2)特異度:陰性のものを正しく陰性と判定する確率
(*3)IgM:細菌やウイルスに感染した時、最初に作られる抗体
(*4)IgG:免疫グロブリンの大半を占めており、感染時にはIgMの後に作られ、治癒後も一定の値をとるので、感染既往の有無判定材料になる。

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投稿者 aids : 06:24 | トラックバック

2013年10月07日

ウイルス抗体検査(HSV抗体価)

前回まで<ウイルス抗原検査>の中で 
1.ウイルス分離培養 
2.Tzanck test(ツァンク・テスト)
3.HSV(単純ヘルペスウイルス)特異抗原(蛍光抗体直接法)
4.イムノクロマト法
のお話をしてきました。

今回からは ウイルス抗体検査(HSV抗体価)についてお話をいたします。
ウイルス抗体検査は、ウイルスに対して血液中に生じた抗体の有無や量を調べる検査です。

血液検査であるため、病変の有無にかかわらず簡便に施行できます。
血清中の抗HSV抗体価を測定する方法として、
CF法(補体結合反応)、NT法(中和反応)、EIA法(酵素免疫測定法)などがあります。

ただし、感染の既往は証明できますが、病変部位のウイルス感染を直接証明する方法ではありません。 あくまでも、抗体価は診断の参考にとどめ、臨床症状による診断が必要です。 また、現在日本で行われている保険適用となっている検査法(CF法、NT法、EIA法)では、 HSV-1,HSV-2の型別判定はできません。

複数の検査がありますが、保険適用検査の場合、 「ウイルス抗体価を調べるために、同一検査について同ウイルスに対する複数の測定方法を 行った場合であっても、所定点数しか算定できない」 という制約があることに注意が必要です。

次回からはCF法、NT法、EIA法、gG ELISA法についてお話する予定です。


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投稿者 aids : 08:11 | トラックバック

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