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2014年03月30日
ピンポン感染
ピンポン感染未婚、40代の男性が受診してきました。
主訴は性感染症の疑いでした。 来院の2日前から尿道から黄色い膿が出てきて、下着が汚れる。 そして排尿の初めに尿道が激しく痛いとのことでした(排尿初期痛)。
感染機会があったのは、来院の5日前で、ある飲み屋で知り合った 女性とホテルで性交渉をもったそうです。いわゆるゆきずりの女性 との交渉(ナンパ)です。
男性の局所を診察すると、確かに訴え通り、尿道口から黄色の膿が 排出していました。
直ちに尿道分泌物の細菌顕微鏡検査で淋菌性尿道炎 と臨床診断をくだしました。
また咽頭の淋菌検査(SDA法遺伝子検査) では、淋菌は検出できず、陰性でした。
日本性感染症学会の推奨薬(グレードA)の点滴治療で翌日には排膿が なくなりました。
その2週間後の治癒判定検査で淋菌は検出されず、淋菌性尿道炎は治癒と 判定しました。患者の男性も喜んでいました。
ところが、また2週間後にその男性が来院してきました。 主訴は、また同じ症状で、排膿、下着汚染そして排尿初期痛です。 話しを聞くと、ゆきずりの女性との交渉(ナンパ)の3日後、 自分の本命の彼女とも性交渉をもっていたそうです。
ピンポン感染(あるいはキャチボール)と直ぐに推測しました。
女性の淋菌感染症は臨床症状(黄色帯下の増量、下腹部痛、不正出血、 排尿痛、性交痛など)が出る方は少なく、 20~30%は無症状と言われています。 折角、淋病が治ったその男性は、治癒したと喜んでいた数日後、自分が 移した彼女と交渉をもってしまったのです。 彼女は自分の淋菌感染を知らずして、男性に淋菌感染症をプレゼント したことになります。これが典型的な“ピンポン感染”です。 男性にこのことを話し、再検査、再治療を行いました。
もちろん彼女にはっきりとこの事実を話し、謝罪したそうです。 当たり前ですが、彼女を愛していればこそ、しなければならないことです。 その後、彼女を連れて来院してきました。 もちろん彼女は淋菌感染症であることが判明し、めでたく治療もできました。
めでたし、めでたし。彼は、深く反省していると思います。
成人T細胞白血病ウイルス 性交渉で年4000人感染
「成人T細胞白血病ウイルス 性交渉で年4000人感染」平成26年3月19日(水)発行の読売新聞(夕刊) に次のような記事が報道された。
「成人T細胞白血病ウイルス 性交渉で年4000人感染」 重い白血病や徐々に歩けなくなる神経難病の原因となる 「成人T細胞白血病ウイルス」に、母子感染以外の性交渉などで 感染する人が年間推定3000~4000人いることが、 日赤中央血液研究所の佐竹正博副所長のグループによる調査でわかった。
性交渉による感染者で重い白血病を発症する人はほとんどないとされているが、 未解明の部分も多く、実態調査を進める。 2005~06年の献血者のうち、11年までに新たに感染が分かった人が 532人おり、年代や地方ごとの人口割合を補正して、全国の感染者数を計算した。 10万人当たりの年間の感染は男性2.3人、女性6.9人と、女性が3倍多かった。
成人T細胞白血病は、母乳などで感染した子どもの発症確率が5%と高く、 国は授乳前の妊娠の時点でウイルス検査を行い、母子感染の予防を進めている。
一方、性交渉などで感染した場合、神経難病は0.3%が発症すると言われているが、 詳しい実態は分かっていない。
同グループは14年度から、性交渉で感染した人がどの程度発症するか、 調査を始める予定だ。
投稿者 aids : 22:53
「日本性感染症学会第26回学術大会 教育セミナー」の記録集
タイトル:「日本性感染症学会第26回学術大会 教育セミナー」の記録集
「日本性感染症学会第26回学術大会 教育セミナー」
【企画:持田製薬(株) 編集・制作:(株)メデイカルトリビューン】 の記録集が、できあがりましたので報告いたします。
開催日:2013年11月16日(土)
会場:長良川国際会議場第2会場(大会議室)
日本性感染症学会第26回学術大会 教育セミナー2
座長: 新村眞人先生 東京慈恵会医科大学名誉教授
講演Ⅰ: 「尖圭コンジローマの治療戦略」
尾上泰彦 宮本町中央診療所 院長
講演Ⅱ: 「単純ヘルペスウイルスを用いた腫瘍溶解療法」
渡辺大輔 愛知医科大学皮膚科教授
ヒトパピローマウイルス(HPV)の接触感染のよって発症する尖圭コンジローマは、再発率が高いこともあり、症状改善はもちろん、患者のQOLに考慮した治療戦略が求められる。
日本性感染症学会第26回学術大会 教育セミナー2では、尖圭コンジローマの治療経験が豊富な宮本町中央診療所院長の尾上泰彦氏がイミキモド5%クリーム(ベセルナクリーム5%)を中心とする治療のポイントについて論じた後、話題は一転、同じウイルス感染でも、がんに対する極めて有望な治療法として期待を集めている単純ヘルペスウイルス(HSV)を用いた腫瘍溶解療法について、愛知医科大学皮膚科教授の渡辺大輔氏が解説した。
なお、座長は東京慈恵会医科大学名誉教授の新村眞人氏が務めた。
詳細はPDFにて閲覧できます。