泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2016年10月29日

梅毒検査の結果について

20代後半の男性から「梅毒検査の結果」について相談がありましたので、報告いたします。

【相談内容】

はじめまして、お世話になります。

先日感染機会から約6週(44日)で市の保健所にてHIV及び梅毒RPR法定性、TPHA法定性検査を受け共に(-)で陰性でした。

しかし一つだけ気になっている点がございます。

検査を受ける3週間前(感染機会から7~21日の間)まで尿道炎の治療で抗生物質(クラリス、グレースビット)を2週間服用しておりました。

この3週間前に服用していた抗生物質が影響し、梅毒陽性が陰性に変わってしまうということはございますでしょうか?

また、前回血液検査を受けてからさらに3週間(計65日)経ちましたので念のため再検査へと行きますがこの結果で陰性であれば心配は無用と思って大丈夫でしょうか。
 
長い間不安の日々を過ごしておりますのでお答えいただけると幸いでございます。
 
①「體性」 昔の『STI』医学雑誌創刊号
2016102901.jpg  

【回答】

ご心配ですね。感染機会から約6週(44日)で保健所にてHIV及び梅毒RPR法定性、TPHA法定性検査を受け共に陰性であった。
 
この結果は喜ばしいことだと思います。
 
ただし、問題は貴男が気にしている、検査を受ける3週間前(感染機会から7~21日間)に尿道炎の治療で抗生物質(クラリス、グレースビット)を2週間服用したことです。
 
こういう事例は沢山あることだと思われますが、抗生物質が検査結果に影響を及ぼすかどうかの研究報告はありません。

ですからこれについては、コメントできません。
 
しかし、さらに3週間(計65日)経過してからの再検査で、その結果が陰性であれば心配は無いと考えます。

再検査を受けて安心してください。
 
お大事になさってください。
 
②キューイ・フルーツ 2016102902.jpg

投稿者 aids : 17:58 | トラックバック

2016年10月27日

「カップ麵オナニー」

男子学生から「カップ麵オナニー」について相談がありましたので報告いたします。

【内容】

学生の頃カップ麺オナニーというものをしました。
カップ麺にぺニスを挿入しそのまま射精するものです。
射精時は射精官が開くと聞きましたが、その時に精巣内にカップ麺の汁等が入り込み精子に異常がでることはありますか?
バカみたいな質問ですみません。

【回答】

私は「カップ麺オナニー」という言葉を聞いたことがありません。
 
①カップ麺オナニー
20161027_01.jpg  

検索してみました。
 
<どこかのネット・サイトで見つけた方法>

⑴フタの真ん中を縦に切る

⑵お湯を入れてスープを捨てる(3回くらい)

⑶半分程お湯を入れて待つ、ふやけるまで(10分くらい)

⑷お湯を捨て、冷めたらフタの穴からチンチンを挿入する

なるほど、とても簡単ですね。
 
でもあまり気持ち良くないとの感想ですね!
さて相談の回答ですが、射精時には「射精管」が開きますが、カップ麺のスープ汁が、
尿道の奥(後部尿道)まで入り込むことはありません。
ポンプや注射器などを用いて、スープに圧力をかけて尿道に無理やり注入すれば、尿道の奥まで入り込みますが、ペニスをカップ麺の中に入れただけであればご心配いりません。
ノーマルなオナニーはいくらしても構いませんが、あまり奇抜なことはなさらないでください。
貴男の性の健康をお祈りいたします。

②白い薔薇
20161027_02.jpg

投稿者 aids : 18:26 | トラックバック

2016年10月23日

ブログ:【図説100】子宮腟部、腟壁にヘルペス所見を認めた性器ヘルペス初感染の3例

日本性感染症学会誌(Japanese Journal of Sexually Transmitted Infections)
第27巻 第1号 2016年 の【図説100】に『子宮腟部、腟壁にヘルペス所見を認めた性器ヘルペス初感染の3例』が掲載されましたので報告いたします。
掲載頁(p.163~167)

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【図説100】
「子宮腟部・腟壁にヘルペス所見を 認めた性器ヘルペス初感染の3例 」
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尾上泰彦 Yasuhiko ONOE
 
女性の性器ヘルペス初感染について

 
女性の性器ヘルペス初感染患者の診察に際して、外陰部の診察は丁寧に行うものと思われるが、皮膚科、泌尿器科などでは子宮腟部あるいは腟壁の所見を見落としがちとなる。

性器ヘルペスの所見は外性器のみならず、他の皮膚・粘膜部に現れることを忘れてはならない。

特に女性の初感染時には子宮腟部、腟壁にヘルペス所見が現れることがしばしばある。

今回、初感染症例において子宮腟部および腟壁に水疱、潰瘍、ビランなどのヘルペス所見を呈する症例とエルスバーク症候群を併発した症例を経験し、比較的稀な子宮腟部と腟壁の臨床写真を撮影できたので報告する。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
症例:1

患者 : 20 歳 、 女性 、未婚
職業 : CSW   
主訴:発熱、外陰部の水疱、疼痛、激しい膀胱炎様症状
既往歴 :特記すべきことなし
現病歴:来院4日前の夜、発熱(38℃)し、その2日後より外陰部の疼痛、水疱、タダレ、激しい膀胱炎様症状を認めたため、心配で来院した。
初診時現症:外陰部所見;大陰唇、小陰唇、腟前庭に水疱、潰瘍、ビランを認める(図1)。
子宮腟部所見;子宮腟部に水疱、ビランを多数認める(図2)。
両側鼠径部リンパ節有痛性腫脹あり。
体温:36.8 ℃    排尿障害なし
患者背景:CSW、特定のセックス・パー トナーはいない
 
初診時検査成績
ウイルス同定:PCR;HSV-1、
直接蛍光抗体法:HSV-1
子宮頸管検査:クラミジア(SDA法);陰性
 
 
図1 大陰唇、小陰唇、腟前庭に水疱、潰瘍、ビランを認める。
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図2 子宮腟部に水疱、ビランを多数認める。

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治療と経過
問診、臨床症状および検査所見より、性器ヘルペスの初感染と診断した。

直ちに抗ウイルス剤としてバラシクロビル(バルトレックス):1回500mg、1日2回、10日間経口投与し、鎮痛消炎剤としてジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)25mg 1 日3回、5日間経口投与した。

5日後には疼痛はなくなり、外陰部、子宮腟部の潰瘍、ビランは縮小し、鼠径部のリンパ節有痛性腫脹も改善された。
10日後には外陰部、子宮腟部のヘルペス所見は消失し治癒とした。
 
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症例:2
患者:23歳、女性、未婚
職業:CSW
主訴:発熱、外陰部の疼痛、鼠径部の痛み、膀胱炎様症状
既往歴:特記すべきことなし
現病歴:来院3日前に、外陰部の疼痛に気付いていたが 仕事(CSW)が
忙しいため受診が遅れた。発熱 、外陰部の疼痛、鼠径部の痛み、 胱炎様
症状を認め来院した。
初診時現症:外陰部所見;大陰唇、小陰唇、腟前庭に水疱、潰瘍、ビランを
認める(図3)。子宮腟部・腟壁所見;子宮腟部にビラン、浅い潰瘍を認め、
さらに腟壁には明らかなビランを多数認める(図4)。両側鼠径部リンパ節有
痛性腫脹あり。
体温:36.9℃    排尿障害なし
患者背景:CSW、特定のセックス・パ ートナー はいない
 
初診時検査成績
ウイルス同定:PCR;HSV-1 、
直接蛍光抗体法:HSV-1
子宮頸管検査:クラミジア(SDA法);陰性
 
 
図3 大陰唇、小陰唇、腟前庭に水疱、潰瘍、ビランを認める 。
20161023_04.png
 
図4 腟壁にビランを多数認め、子宮腟部にビラン、浅い潰瘍を認める 。
20161023_05.png  
 
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治療と経過
問診、臨床症状および検査所見より、性器ヘルペスの初感染と診断した。
バラシクロビル(バルトレックス):1回 500mg、1日2回、10日間経口投与し、鎮痛消炎剤としてジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)25mg、1 日3回、 5日間経口投与した。3日後には外陰部のビランは縮小し、疼痛も軽減し、腟壁のビランも縮小し、子宮腟部のビランも改善傾向となった。
7日後には外陰部の疼痛、ビランは消失し、腟壁、子宮腟部のビランも軽快し治癒とした。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
症例:3
患者:16歳、女性、未婚、未婚
職 職業 業: :菓子職人   
主訴:外陰部の激痛があり尿が出ない
既往歴:特記すべきことなし
現病歴:来院2日前にパートナーと性交渉あり 、オーラルセックスも行ったという。

翌日、発熱(37.5℃  ) 、外陰部の痛みがあり、某産婦人科を受診し解熱鎮痛消炎剤ロキソプロフェンナトリウムを投与された。

夜間、体温(38.5℃ )がさらに上昇し、排尿痛と外陰部の激しい疼痛のため排尿ができなくなり、その翌朝に当院に受診となる。
 
初診時現症: 下腹部が膨隆し排尿困難の状態のため、直ちに尿道に14Frのカテーテルを挿入し尿道カテーテル留置とした。約800ml の黄褐色尿を採した。

カテーテル挿入時に外尿道口周囲の腫脹を認めたが、挿入は容易であった。

外陰部所見:大陰唇、小陰唇、腟前庭に水疱、潰瘍、ビランを認める(図5)。

肛囲にも複数の水疱を認める(図6)。

子宮腟部・腟壁所見:子宮腟部にビラン、浅い潰瘍を多数認め、子宮腟部粘膜より少量の出血を
認める(図7)。両側鼠径部リンパ節有痛性腫脹あり。

体温:36.8℃、血圧120/70mmHg
全身状態:良好
患者背景:特定のセックス・パートナーは彼のみ
 
初診時検査成績
肛囲の水疱よりウイルス型判定用の検体を採取した。
ウイルス同定:PCR ;HSV-1
直接蛍光抗体法:HSV-1
子宮頸管検査:クラミジア(SDA法);陰性
血液一般検査:異常なし
生化学:TP  7 .8g/ dl    TTT 2 2.3U    ZTT 13.3U
AST  17 IU/l     ALT 13 IU/l    
TBL L  0.8mg/dl   ALP 403 IU/l  
γ-GTP 47 IU/l   TCH 342mg /dl
 
図5 大陰唇、小陰唇、腟前庭に左右対称性に潰瘍、ビランを多数認め、尿道にカテーテル挿入中。
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図6 肛囲の左側に複数の水疱を認める。

20161023_07.png  

図7 子宮腟部にビランを多数認め、子宮頸管、子宮腟部より少量の出血を認める。

20161023_08.png

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治療と経過
問診、臨床症状から性器ヘルペス初感染時に生じた排尿困難で神経因性
膀胱と診断した。治療はバラシクロビル(バルトレックス):1回 500mg、1日
2回、10日間経口投与。鎮痛消炎剤としてロキソプロフェンナトリウム(ロキ
ソニン)60mg、1日3回、5日間経口投与した。尿道留置カテーテルは挿入
のまま帰宅とした。翌朝、来院しカテーテルを抜去した。その後の自然排尿
は可能となった。
  7日後、来院時の所見では外陰部、肛囲、子宮腟部の水疱、潰瘍、ビランと
も消失し、治癒とした。 自然排尿は良好であった。
 
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解説
3症例はいずれも性ヘルペスの初感染例であるが、症例1は子宮腟部にヘルペス所見をきれいに認め、症例2は腟壁に明らかなヘルペス所見を認める臨床写真を撮影できた症例である。

症例3は子宮腟部にヘルペス所見を認め、エルスバーグ症候群を併発した症例である。
 
性器ヘルペス感染の発症メカニズムについて
 
性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルス(HSV)による皮膚粘膜感染症である。

性交渉によりHSVは皮膚粘膜の小さな傷から侵入し、皮膚粘膜内でHSVは増殖し、感染が成立し皮膚粘膜症状が発症する。

この間の潜伏期間は約2~10 日である。同時にHSVは、知覚神経終末から取り込まれて、神
経軸索を上行して脊髄後根神経節に入り込み、神経節(神経細胞体)内で増殖して、神経節内で遺伝子の形で潜伏感染する。

その後、何らかのストレスにより潜伏していたHSVが再活性化し神経線維内を下行して、皮膚粘膜で、水疱やビランを形成し、その後回復する。
 
女性の性器ヘルペス初感染について
 
初感染時はウイルスに対する免疫がないため,臨床症状が激しく、発熱などの全身症状を伴うことがあり、疼痛、鼠径部リンパ節有痛性腫脹などを認める1)。

特に女性では膀胱炎様症状、歩行障害をはじめ、排尿障害、便秘などの末梢神経麻痺を伴うこともあり、時に強い頭痛、項部硬直などの髄膜刺激症状を伴う2)。男性では神経症状は女性に比して非常に少ない。
 
女性の性器ヘルペス初感染は男性に比して深刻な疾患であり、その罹患率は男性の2倍以上高いといわれており、20歳代前半では男性の7~8倍に達している。

また男性と女性とどちらが性器ヘルペスに感染しやすいかを調査した米国の研究では、男女どちらかが性器ヘルペスに罹患しているカップル144組を対象として観察した結果、性器ヘルペスが、男性から女性へ感染する確率(16.9%)は、女性から男性に感染する確率(3.8%)の4倍以上高いことが示されている3)。

女性に多い理由は性器の構造上の差から、感染部位が大陰唇、小陰唇、腟前庭、腟壁、子宮腟部などで、性器の粘膜部分が広範囲であることが挙げられ、感染しやすく重症化しやすい。それに
比して男性は、粘膜の部分が少ないため感染しにくいといえる。

また、女性は免疫能力を低下させる黄体ホルモンの影響で、妊婦や排卵後は感染しや
すいと考えられている4)。

オーラルセックスの時代、初感染例はHSV-1が多く臨床的にHSV-1の方が強い症状を生じる。HSV-1による再発は少ないが、HSV-2は再発を繰り返す場合が多い。
 
エルスバーグ症候群(Elsberg syndrome)について 5)
 
初感染例では、HSVが上行性に仙骨神経根に直接進展し、限局性の髄膜脊髄炎が起き排尿障害などを生じ、尿意を感じない神経因性膀胱となり、カテーテルの挿入が必要となるケースもある。

また、初感染例に限らず、再発例でも稀に無菌性髄膜炎に伴い、一過性に排尿平滑筋の障害が生じ排尿障害(尿閉)が起きることがある。

Elsberg syndrome は狭義には性器ヘルペスに併発する脊髄神経根炎に伴った尿閉を指し、より広義には尿閉を伴う無菌性髄膜炎全般を指すと言われている。
 
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謝辞
本稿の作成にあたり、貴重なご意見、ご指導を頂いた神戸大学大学院医学研究科 特命教授 荒川創一先生に深謝申し上げます。
 
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文献
1)尾上泰彦:日常診療で盲点となる皮膚科疾患 毛・爪・粘膜を中心とするQ&A 3 粘膜  5 外陰部・肛囲
Q38 性感染症を疑うポイントは?,皮膚臨床,2011;53:1671-9.

2)性器ヘルペス,性感染症 診断・治療ガイドライン 2011,日性感染症会誌,2011;22(supp):65‐9.

3)Mertz GJ,Benedetti J,  Ashley R,Selke SA,Corey L:Ann Intern MED. 1992;116:197-202.

4)早川謙一:女性の性器ヘルペス(GH).1 冊でわかる性感染症,本田まりこ編,文光堂, 東京,2009;p106-9.

5)尾上智彦,伊東秀記,松尾光馬,尾上泰彦:8 単純ヘルペス初感染.宮地良樹編,皮膚科治療最前線シ リーズ外来皮膚科ER,メディカルレビュー社,2011;p154-8.

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2016年10月22日

『射精は1日にしてならず』

『性の医学財団』から「性の健康」秋号 が 2016年9月30日発行されました。
 
①鈴木春信画 「鞠と男女」
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その中の 特集 性の健康関連学会 最新情報の特集2に第46回全国性教育研究大会の報告がありました。   
演題:  男の性をめぐって~思春期男子への性教育再考~
聖隷浜松病院泌尿器科  今井 伸先生の講演がありました。
 
その記録集の中で興味ある記載がありましたので報告いたします。
 
『射精は1日にしてならず』

②ライフル銃
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男性不妊外来では、「まず、精液検査をしてください」と言われてコップを渡される。

検尿の時におしっこを採るのと同じような感覚で、マスターベーションで精液を出して提出しなければならない。

施設によっては、トイレで採らなけれはならない。

これは、「男性はいつでもどこでも精液を出して提出できる」ということが前提となっている。

つまり、男性は「用手的なマスターベーションで射精する技術を習得している」と考えられているということになる。

しかし、この精液検査の時に、精液をうまく取れない男性が少なからず存在する。

夢精でしか射精をしたことがない男性、射精しそうになると怖くなって刺激をやめてしまう男性、うつ伏せになって布団にペニスをこすりつけることでしか射精できない男性など。

そういった男性の多くは、結婚して子供を作る段階になって、初めて深刻な問題に直面する。

一体誰が、いつマスターベーションを教えるのか。

教えられるのでなければ、どうやってマスターベーションの方法を学習するのか。

マスターベーションを学習する機会はすべての男性に存在するのか。

用手的なマスターベーションで射精できて当たり前なのか。

などということを、精液検査がうまくできない人たちを見るたびに考えさせられてきた。

夢精や勝手に出てしまう射精(遺精)以外、意図的に射精をするということはもともと備わった能力ではなく、試行錯誤を繰り返して習得していく技術である。

だから、箸や鉛筆の持ち方を習うように、ペニスの持ち方や使い方(マスターベーションのやり方)も習う必要があるのではないかと思う。

また、射精は取りあえず出ればいいというものではなく、勢いよく射出させることも、出すタイミングをコントロールすることも必要である。

「射精してもあまり気持ちがいいとは思わない」とか、
「出たみたいだけどよくわからない時がある」とかいう男性もいるが、
これでは完全に射精をマスターしているとは言えない。

多くの男性はいろいろな射精を多数経験し、その結果射精がコントロールできるようになったことを忘れている。

それは、自転車に乗れるようになることや泳げるようになることに似ている。

当たり前のようにしていることであっても、過去に地道な訓練をしてできるようになったのだ。
まさに、「射精は1日にしてならず」なのである。
 
③ライフル銃
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射精の技術は、性欲の強い思春期から20歳代前半に習得を開始しなければ、なかなか上達できない。

射精の技術を習得するための訓練は、マスターベーションである。

男性がマスターベーションをする最大の理由は、「オーガズムが得られる」からである。

「うまく射精できない」ということは、「オルガズムが得られない」ということであり、「オルガズムが得られない」から「射精の訓練をやってもしょうがない」ということになってしまう。

うまく射精できないまま30歳代に近くなると、性欲が低下してきて、覚えようという意欲が薄れてしまう。

そして、射精をコントロールすることをあきらめてしまうのである。

したがって、思春期男子への性教育において、最も重点を置くべきことは「射精教育」であると考える。

ただ、学校の先生方や産婦人科医には、男子の射精(マスターベーション)については扱いづらい領域だと聞く。

泌尿器科医の中でも、日本性機能学会や思春期学会に所属する医師を中心に、男子性教育に積極的にかかわっていくという機運が高まりつつあるので、地域によって泌尿器科医との協力体制が組める可能性がある。
 
④ライフル銃
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また今井 伸先生は「射精」を覚えていくうえで守らなければならないルールがあると述べている。

すべての男子の共通認識として、「射精とはこうあるべきだ」という考えを示している。

武士道ならぬ「射精道」を提唱している。

彼は草案であり皆様からご意見をいただき、随時改正していきたいと述べている。下記にその『射精道』の草案(16か条)をしめします。
 
射精道(思春期編) 草案

1.オナニーを基本とする。
2.セックスは心技体が伴うまで行うべからず。
3.他人に迷惑をかけるべからず。
4.一人になれる空間を確保すべし。
5.勃起した陰茎を軽く握り、亀頭部を刺激するようにしごくべし。
6.汚い手で行うべからず。
7.陰茎を布団や壁にこすりつけるオナニー(床オナ)は禁止。
8.必ず勃起した状態で射精すべし。
9.少し我慢してから射精すべし。
10.出てくる精液はティッシュで受け止めるべし。
11.オナニーは一日に何回してもよし。
12.気持ちのいいオナニーを追及すべし。
13.射精を自在にコントロールできるようになることを目標とすべし。
14.強い刺激のネタばかりを続けるべからず。
15.時々、空想オナニーを行うべし。
16.セックスしたいと思っても、まずオナニーすべし。
(冷静になれる)
 
さらに、今井 伸先生は『射精を制する者は人生を制す』と述べている。
参考にすべし。
 
⑤『透明な鮑』築地の貝
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2016年10月17日

特集・原著「若年者の性感染症患者を対象とした再発予防策」

本論文の要旨は日本性感染症学会第28回学術大会 卒後・生涯学習プログラムシンポジウム(2015年12月6日於:東京都)において発表した。


① 日本性感染症学会誌 第27巻 第1号 2016
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テーマは特集 『性感染症、一次医療機関での実際』
 
「若年者の性感染症患者を対象とした再発予防策」
宮本町中央診療所  尾上泰彦
 
下記に本論文の要旨を示す。
❝若年者の性感染症❞というと、クラミジア感染症と淋菌感染症が代表的疾患である。
これらの再発防止にむけて如何に対応するかが問題である。
 
② 若年者の性感染症
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オーラルセックスの時代、口腔咽頭は性感染症の温床である。
 
③ オーラルセックスの時代、口腔咽頭は性感染症の温床
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男性のクラミジア、淋菌感染症の原因はCSWによるオーラルセックスである。

④ 風俗嬢の口腔咽頭は性感染症の温床

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⑤ 性感染症の背景 
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⑥ 淋菌性咽頭炎、生殖器は淋菌・クラミジア感染症

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⑦ 淋菌性・クラミジア性咽頭炎(生殖器・咽頭重複感染例)

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再発防止には患者だけでなく、パートナーとの関係性が重要となる。
 
⑧ パートナーとの関係性が重要
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⑨ 性感染症の再発防止策

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二人、一緒に検査を受け、再発が起きないように治療し、感染予防のための啓発指導を受け、健康なセックスができることを目標とする。
 
⑩ STI検診を勧める
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⑪ 人生の節目STI検診

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臨床の立場から再発防止策として、口腔咽頭感染を制御できれば性感染症は激減すると考える。
 
そのためには口腔咽頭の専門家である耳鼻咽喉科医が性感染症に対し積極的に参加してくることを期待する。
 
⑫ 耳鼻咽喉科医の積極的参加

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性感染症の再発防止策には耳鼻咽喉科医の関与が不可欠である。
 
⑬ 性感染症 再発防止のために
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以上、若年者の性感染症患者を対象とした再発予防策について言及した。

投稿者 aids : 10:53 | トラックバック

2016年10月14日

原著「川崎市において分離されたNeissera gonorrhoeaeの背景と感染経路に関する検討」

本論文は「原著」で私は共著者でありますので、ご報告いたします。
 
本論文は日本性感染症学会第28回学術大会(2015年12月5日)に発表し、同学会誌から投稿の推薦を受けた内容を改変したものである。
 
井村幸恵 金坂伊須萌 金山明子 小林寅喆 尾上泰彦
日本性感染症学会誌,2016;103-109.
 
(写真は参考です)
 
①日本性感染症学会誌 第27巻 第1号 2016
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②原著「原著「川崎市において分離されたNeissera gonorrhoeaeの 背景と感染経路に関する検討」 論文要旨

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2013~2014年に淋菌感染症の疑いで来院した190例(男性111例、女性79例)の尿道・腟分泌物および咽頭ぬぐい液から培養されたNeissera gonorrhoeaeの患者背景および、感染様式を調査した。

さらに生殖器および咽頭より同時に分離した菌株においてClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)の寒天平板希釈法で各種抗菌薬感受性を測定し、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法による遺伝子パターンの解析を行った。

男性111例および女性79例中培養陽性例は、それぞれ80例(72.1%)および36例(45.6%)であった。

生殖器陽性例は男性80例(72.1%)、女性28例(35.4%)、咽頭のみ陽性を示した例は男性には見られず女性にのみ8例(10.1%)認められた。

③淋菌はグラム陰性双球菌です。
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④咽頭の淋菌培養検査法
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⑤淋菌性尿道炎の特徴
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⑥淋菌性子宮頸管炎の特徴
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男性患者の生殖器陽性例における性交渉相手の背景で最も多かったのはCommercial Sex Worker(CSW)51例(63.8%)、次いでパートナー22例(27.5%)であった。

男性の咽頭陽性例において感染経路はCSW6例(46.2%)、パートナー6例(46.2%)からと同等で、また、性行為様式ではオーラルセックスが関連する場合が最も高く、男性の生殖器陽性患者の62.6%、女性の生殖器陽性患者の75.0%であった。

咽頭と生殖器から同時に検出された分離株のPFGEパターンは男性13例中11例が一致し、女性では8例中全て一致した。
 
⑦生殖器・咽頭の淋菌・クラミジアの重複感染症例
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男性の淋菌感染症患者において性交渉相手がパートナーおよびCSWに関わらず咽頭感染例が多いことが明らかとなった。

⑧CSWの口腔咽頭は性感染症の温床
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感染様式では男女問わずオーラルセックスを介した感染が主流となっていることが判明した。

パートナー間においても高い頻度で咽頭感染が生じることから、このような感染経路についても一般の人々に対して広く啓発することが急務であると考える。
 
⑨CSWの口腔咽頭は性感染症の温床
20161014_09.png  

⑩CSWの口腔咽頭は性感染症の温床

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2016年10月12日

特別講演『兵庫県感染症セミナー』

2016年9月15日に神戸で私の講演がありましたので報告いたします。

 

開催要綱は下記の如くです。

第13回 兵庫県感染症セミナー

日時:2016年(平成28年)9月15日(木)

場所;神戸ポートピアホテル本館 地下1階 『布引の間』

神戸市中央区港島中町6-10-

 

教育講演:

演題 『注射用抗菌剤の使い方:尿路・性器感染症を中心に』

講師 岐阜大学医学部泌尿器科 講師 安田満先生

 

特別講演:座長 三田市民病院 病院長 荒川 創一先生

演題 『アトラスで見る これが性感染症だ』(19:30~20:30)

講師 宮本町中央診療所 院長 尾上泰彦

 

【共催】 兵庫県感染症セミナー・大正富山医薬品株式会社

 

①第13回 兵庫県感染症セミナーのご案内

講演要旨は下記の如くです。

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1.性感染症の疫学

②講演中の私!

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2.最近、若い女性に急増し社会問題化している

梅毒について詳しく解説いたしました。

 

③梅毒年齢群別報告数

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④梅毒患者の報告数の推移

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3.クラミジア感染症

4.淋菌感染症

5.咽頭感染

6.性器ヘルペス

7.尖圭コンジローマ

8.性器伝染性軟属腫

9.軟性下疳

10.亀頭粘膜下血腫

 

⑤右から座長の荒川創一先生、私、岐阜大学の安田満先生

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大正富山医薬品株式会社の報告によると、参加人数は、

コメディカル19名、医師26名で総参加者は45名でした。

毎回40人位の規模だそうです。

 

荒川創一先生には公私に渡り、お心遣いいただき感謝申し上げます。

 

最後に大正富山医薬品株式会社の担当者:増田浩一さまには、

大変お世話になり、ありがとうございました。

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2016年10月11日

『STI性感染症アトラス』 男性クラミジア性尿道炎

学研メディカル秀潤社(東京都品川区西五反田)より、『STI性感染症アトラス 改訂第2版』(160頁) が発刊されました。

発行日:2016年10月1日
編集;安元慎一郎・今福信一   定価:本体7,000円(税別)
8年ぶりの改訂!
性感染症に関する最新のデータと貴重なアトラスが満載されています。
 
①『STI性感染症アトラス』 改訂第2版
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私は、今回、分担執筆で荒川創一先生(三田市民病院 院長)と共著で【3】クラミジア感染症の中の 「2.男性クラミジア性尿道炎」(p.81)を担当いたしましたので報告いたします。

②【3】 クラミジア感染症 2.男性クラミジア性尿道炎
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③男性クラミジア性尿道炎の解説

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下記に「男性クラミジア性尿道炎」の解説をいたします。
 
男性クラミジア性尿道炎の多くは、感染機会後1~3週間で発症するが無症候に経過し、感染時期を特定できない場合もある。
 
症状は淋菌性尿道炎と比べ軽微で、軽い排尿痛や尿道の瘙痒感程度であり、主に漿液性の尿道分泌物が少量みられる(表A)、淋菌性尿道炎と主に異なるのは分泌物の性状で(図B)、黄色粘稠であれば淋菌性と推定する。
 
尿道分泌物のグラム染色で多核白血球内細胞質にグラム陰性双球菌を認めれば、淋菌感染症が確定するが、逆にその場合でも20~30%にクラミジア感染が合併していることを念頭に置く。
 
クラミジア性尿道炎の確定診断は初尿を用いて、核酸増幅法であるSDA法
(BDプローブテック クラミジア・トラコマチス ナイセリア・ゴノレア)、
 TMA法(アプティマCombo2 クラミジア/ゴノレア)、
 Taqman PCR法(コバス4800システム)あるいは
 Real-time PCR法(アキュジーンm-CT/NC)により行うが、前二者では淋菌も同時検索できる。
 
治療は、クラミジアに抗菌力を有するマクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の中から薬剤を選択する
 
(➡p.78 クラミジア感染症の診断と治療を参照)
 
④A.クラミジア性尿道炎を淋菌性尿道炎と鑑別するポイント
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⑤クラミジア性尿道炎:B.クラミジア性尿道炎と淋菌性尿道炎との比較

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⑥淋菌性尿道炎:B.クラミジア性尿道炎と淋菌性尿道炎との比較

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2016年10月09日

左側の睾丸の痛み

30代前半の男性から「左睾丸部の痛み」について相談がありましたので報告いたします。
 
【相談内容】

お忙しいところすみません。

病名や対策がはっきりしないので、困っています。

長文ですみませんが、よろしくお願いします。

現在30代前半です。14歳の時から、年に6回程度の左側の睾丸の痛みがあります。

右側は1度もありません。

ふと、わずかな鈍痛を感じて「あ、来たかな?」と思う。
 
精巣上体のあたり。股間を打ったときのような、ずーんとした痛み。
 
その痛みに耐えながら歩いたりコンビニバイトしたこともあります。

座ったり寝ていればほとんど痛まない。
 
痛みは左下腹部のそけい部のあたりまで広がることも。
 
鈍痛からはじまり、痛みのピークを迎え、やがて痛みが引いていく。

時間は10分から最長で2時間、平均して60分で痛みが完全に引く。
 
その後は若干、違和感があるようにも感じるが、痛みはない。
 
数時間もすればもういつも通り。
 
黙視確認では腫れはなし。体温も普通。自分自身の触診では、
 
この痛みがあるときは精巣上体付近の血管?などがいつもより膨らんでいるというか、体積が増えているように感じます。

睾丸上部にぽちっとしたふくらみがあるが、そこを押すと特に痛い。
 
ただしこのふくらみは常にある。睾丸自体は変化なし。

この痛みがある時は、排便がしたくなることが多く、排便を終えると治りが早いことが多い。

下痢はしない。

原因は不明ながら、さあ気合い入れていくぞ!と気を引き締めた後に起きやすい。
 
重いものを変に持ったとき(よろめいたりした時に左下腹部の腹筋に変に力が入ったとき)などになりやすい。
 
しかし、通常の筋トレ(腹筋など)の後には起きない。

この症状の特徴として、風呂にはいると数分で治る。
 
風呂に入って、「あーーーー・・・」とリラックスして陰嚢がゆるむと治る。
 
風呂の時間でない時にも、できるだけ下腹部をリラックスさせて陰嚢の袋をゆるめるようにすると治りが早いように思えるが、なかなか入浴時のようにはいかない。

半年以上起きないこともあれば、1週間しかたっていないのに起きることもある。
 
疲労具合や性行為の有無、季節に関係なく起きる。

一度病院に行ってエコー検査で見たときは、平常時だったので分からず。
 
医者からは、症状のあるときにまた来てくれと言われた。のちに閉院。

別の病院に行った時は、行くときは痛みがあったものの
待っている間などにほとんどおさまり、原因不明。
 
問診のみで、おそらく精索軸捻転の軽いものではないかと言われた。のちに閉院。
 
なお、発生したら睾丸を下に引っ張ってみろ、と言われたので
 
やってみたこともあるものの、効果は実感できず。
 
また別の病院では、症状のない時だったが、病状から精索垂捻転ではないかと言われた。
 
精索軸捻転なら、転げ回るほど痛いし、これまで何回も起きているのに全部自然におさまるというのは不自然なことと思います。

こういった状況です。痛みがピークの時は、ポーカーフェイスは保てますが、激しく動くのはかなり辛くなります。
 
根治療法、発生時の対処法などがありましたら、ご教示頂きますと助かります。
 
①左精索静脈瘤(症例1)
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【回答】

私は、貴男の診察をしておりませんから、はっきりとはアドバイスができません
 
貴男がおっしゃる通り、精巣捻転(睾丸回転症、精索軸捻転など)の臨床症状(七転八倒する強度な疼痛など)がなく精巣の腫脹もないので、精巣捻転は否定できると考えます。
 
臨床症状から考えられるのは、左精索静脈瘤です。
 
精索静脈瘤とは、睾丸(精巣)から心臓に戻る静脈(蔓状静脈叢)内の血液が逆流してしまい、
睾丸の周りに静脈のこぶ(瘤)ができてしまう状態をいいます。

乏精子症や精子の運動率低下、男性不妊症のおおくは精索静脈瘤が原因の一つとされています。

腹部から流れてくる暖かい血液が睾丸の温度を上げ、精子を作る機能に悪影響を与えると考えられています。
 
男性の約20%にこの症状、現象が起こる可能性があります。
 
この左精索静脈瘤の症状はほとんど左側に起こります。
 
左鼠径部から陰嚢にかけて鈍痛、違和感、不快感、時には股間を蹴られた、打った時に生じる、
ズーンとした痛みを感じる場合もあります。

また睾丸を握られている感じがする場合もあります。
 
そして、左下腹部から鼠径部あたりまで痛みが広がることもあります。
 
立位で診察すると、左陰嚢内の睾丸の横から下方にかけてないか柔らかい膨らみ(塊)を触れることがあります。

これが精索静脈瘤と言って静脈のこぶ(瘤)です。
 
貴男の臨床症状から、左精索静脈瘤を考えます。
 
②左精索静脈瘤(症例2)
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左の鼠蹊部あるいは陰嚢内の違和感があれば精索静脈瘤が考えられます。
 
長時間の立位の仕事、長時間のデスクワーク(パソコン業務など)、長距離ドライブ(トラック運転手など)、タクシー運転手など立位あるいは座位で長時間同じ姿勢を保っていると違和感が出てくるかもしれません。
 
運動不足も一つの誘因になることがあります。
 
この症状、現象が生じた場会は寝てしまうことです。
 
痛みはおそらく和らぐでしょう。
 
チョコット運動、コーヒーブレイクなどは有効と考えます。
 
ある意味、女性の骨盤内で生じるエコノミークラス症候群に似ています。
 
飛行機の中でジット座っていますと、骨盤の中が充血し血栓症などのトラブルの誘因になると考えられています。
 
貴男が考えているように、一度泌尿器科の専門医に診てもらうことをお勧めいたします。
 
お大事になさってください。
 
③ハロウィン
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2016年10月08日

梅毒の数値が下がらない

30代後半の男性から、梅毒のことで相談がありましたので、報告いたします。


【相談内容】

はじめまして。 去年の夏、梅毒であることがわかりました。

検査の結果はRPR64倍、TPHA10240倍でした。

そのため9月上旬からパセトシンカプセル250mg、1回2錠を朝昼晩3回の服用を開始しました。

しかし、4ヶ月薬を服用してもこの数値は全く変わらなかったため、大きな病院を紹介されました。

その病院の先生からは、数値は年単位で下がるものだから、そんなにすぐには下がらない。

だから定期的に検査をするように言われました。

薬が効いていないことはないので、もう服薬もしなくて大丈夫で、感染力もないのでセックスもしてよいと言われました。

しかしその半年後に、再度血液検査をしたら、やはり上記の数値と全く変わっていませんでした。

梅毒は治っていないのではと不安になりました。

そこで質問なのですが?

こんなに長い間数値が高いまま全く変わらないということがあるのでしょうか?

このまま数値が下がらない場合、再度服薬治療を行った方がよいのでしょうか?

この高い数値でセックスしても本当に大丈夫なのでしょうか?

結婚をしていて、子供がほしいと思っています。

でも、子供は作らない方がよいのでしょうか。

ちなみにHIVの検査は陰性でした。

お忙しいとは思いますが、回答よろしくお願いいたします。
 

① 吉原病院 花魁の検診風景
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【回答】

大変不安ですね!

大切なことですが、梅毒の治療の目的は、原因微生物である梅毒スピロヘータを死滅させることであり、血液検査(TPHA)の抗体価を下げることではありません。

2013年に修正された、日本性感染症学会の治療ガイドラインに則った治療を行えば、心配ありません。

薬を4ヶ月服用してもこの数値は全く変わらないのは、貴男が梅毒に罹患した時期が不明で、恐らく梅毒の発見時期が遅れたため、治療のスタートも遅れることとなり、薬の影響、効果がデータに反映しなかったのでしょう。

しかしながら、駆梅治療は、パセトシンカプセル(AMPC)250mgを1回2錠、朝昼晩3回の服用を8週間(最大12週間)すれば治療ガイドラインに則った治療になります。

貴男の場合は8週間ではなく、それ以上の4カ月(16週間以上)服用したわけですから、治療は十分にできていると考えてください。

言い換えると、駆梅治療は既に終了していると考えてください。

通常は梅毒の治療効果はRPR検査で経過観察いたします。

一方、TPHA検査は治療効果をみるには適さないとされています。

先ほども申し上げましたが、数値が期待通り下がらないのは、病気の発見が遅れためと考えてください。

私見で恐縮ですが、駆梅治療は既に終了していますから、他人への感染力はありません。
ですから、性的な行動をしても心配ありません。

貴方は結婚しているのですから、子供さんをつくってもかまいません。

先天梅毒児が生まれる危険性もありません。

冒頭にも申し上げましたが、最後に、我々臨床医に言いたいことですが、❝梅毒の治療の目的❞で一番大事なことは、梅毒の病原微生物であるTreponema pallidumを死滅させることであって、梅毒血清反応の検査成績(Tp抗体価)を陰性化させることではないということです。

これは、臨床医の「落とし穴」ともいえます。

臨床医は心しておかなければなりません。

お大事になさってください。

② 「築地の貝」 鮑のステーキ!素敵です!旨いス! 20161008_02.jpg

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2016年10月02日

TBS ニュースの視点『梅毒患者急増 99年以降最多に』

TBSニュースバードのニュースの視点 『梅毒患者急増 99年以降最多に』に生出演いたしましたので報告いたします。
(放送日:2016年9月21日 午後2時40分から3時15分)

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(キャスター:菊野理沙)
ニュースの視点です。

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性的接触によって感染する病気のひとつ「梅毒」。
皮膚や粘膜の傷から病原菌の梅毒トレポネーマが侵入して感染します。

今、この梅毒の患者が急増しています。

今年の患者数は1999年以降、年間の数で過去最多になっています。

きょうのニュースの視点は、およそ40年に渡り性感染症の診療を続けている

尾上泰彦(おのえ・やすひこ)さんに急増する背景とともに、その症状や予防法を

詳しく解説していただきます。

尾上(おのえ)さん、どうぞよろしくお願いします。



 ●よろしくお願いいたします。(尾上)


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(キャスター:菊野理沙)
Q:こちらは1999年以降の梅毒患者の報告数の推移ですが、
今年の報告数は、【今月11日】時点で【2991】人とすでに去年1年間を上回っていて、
3000人に届く勢いとなっています。 

2010年を境に増加傾向に転じ、2015年以降、そして今年にかけ驚くほど
急増しているわけですが、この背景には何が考えられるのでしょうか?

 

●疫学的調査が行われておりませんから急増した原因ははっきりとは分かりません・・・

*1999年に施行された感染症法によって、保健所への届け出る報告が厳しく
義務づけられたことも一因かもしれません。

*「日本人の性行動が急に活発化したわけでもないので急増したのは、外的な要因が
考えられます。

*「なぜ女性に増えているのか、理由は分かりません。
ただ、20代前半の女性に急増していることを考えると、中国人向けの風俗嬢を中心に
発症が増えている可能性は否定できません。」

追加
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*確かに近年、中国では梅毒が爆発的に増えており、日本の300倍以上という指摘も
あるからです」

*また2014年の中国・江西省南昌での調査によりますと、ストリートガール(いわゆる街娼)361人中の梅毒感染率は43.5%と、半数近くにのぼっています。
これは驚くべきことです。 

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(キャスター:菊野理沙)
Q:クラミジアや淋菌感染症(りんきんかんせんしょう)など、他の性感染症は
おおむね減少傾向にあるようですが、なぜ、梅毒だけが突出しているのでしょうか。



●・・そうですね!・

*「たとえばクラミジアには痒み、淋菌感染症には排尿痛など
自覚症状がはっきりでますが、初期の梅毒は痛くも痒くもないのが特徴です。
症状が出ればよいのですが、症状が出ない方が多く気付かないまま感染を
広げてしまうことになります」 


(キャスター:菊野理沙)
Q:ではここからは梅毒の具体的な症状や予防法を詳しく解説していただこうと思います。

梅毒には症状のある【顕症(けんしょう)梅毒】だけでなく、今、お話にあったように
症状のない、【無症候性(むしょうこうせい)梅毒】また生まれながら罹患している
【先天的】なものもあります。
症状がないケースも多いのですか?


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●・・・その通りです。

*実は、しこりもできず、リンパも腫れていないのに、血液検査だけが陽性になる
無症候性の梅毒の方が多くみられます。

*陳旧性梅毒といって随分昔に感染し、何の症状も出ず自然治癒したのに
10年くらいたっても梅毒の抗体だけが残り、血液検査の種類によっては陽性が
持続するケースもあります。

陳旧性は症状も感染力もないので、通常は治療いたしません。

ところが現実には陽性であることを理由に、老人ホームによっては入所を断られる
高齢者がいらっしゃいます。

不当な差別と問題視しております。

 
(キャスター:菊野理沙)
Q:若い女性に流行することで、先天性梅毒患者として生まれてくる
赤ちゃんの増加が心配されますよね?



●そうですね。胎児感染で重い障害が出てくる恐れがあります
そのため大変危惧されており、社会的に憂慮すべき問題ですね。

*梅毒にかかった母親の胎盤を介して感染します。
決して多くはないのですが、年々増加傾向にあります。
基本的に妊婦検診で発見されるものの撲滅はされておりません。
「先天梅毒は出生時に肝臓や脾臓がはれたり、低体重であったり、学童期になってから
難聴を発症したりします。
20代の女性に梅毒が増えている現状を踏まえれば見過ごすことはできません」


  (キャスター:菊野理沙)
Q:そして、梅毒にかかるとどんな症状を発症するのでしょうか。
症状のある「顕症梅毒」は進行具合によって早期の1~2期と晩期の3~4期に
分けられます。
1期目はどんな症状がでるのでしょうか?


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●・・・それでは第1期の説明をいたします。
 
*顕症梅毒の第1期では感染部位に小豆大のしこり(初期硬結)が生じます。

次第にしこりが崩れて潰瘍を形成(硬性下疳)、さらに両足の付け根のリンパ節が
腫れてきます。

感染からおよそ3週間後に発症いたします。

「ただ、いずれも痛みや痒みを伴わず、発熱もないため、1期で医療機関を受診する方は
あまりいらっしゃいません。

しこりは性器に限らず、オーラルセックスの場合は唇や舌、咽頭や尿道に、
アナルセックスの場合は肛門にできます。

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放置していても数週間で消えてしまうため、自然に治ったと思い込んでしまう人も
多くみられます」
自己診断は非常に危険ですね。


(キャスター:菊野理沙)
Q:1期の症状が消失しても自然治癒しない限り、2期に進んでしまうんですね。


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●・・・そうですね!3カ月から3年までを第2期といいます。

*1期の症状が消失しても自然治癒しない限り、3カ月~3年の間、梅毒トレポネーマが
血液に乗って全身にまわり、2期に進みます。

*「ここで初めて皮膚・粘膜の発疹や臓器梅毒の症状が出てまいります。
主に皮膚症状が出てきます。
ですから2期になりますと皮膚科を受診する人が大半です。
最も特徴的なのが手のひらや足の裏に広がる赤い紅斑です。
梅毒性乾癬という発疹です。これも痛みや痒みがないので、放置する人もいます」

「梅毒性の脱毛もあり頭髪がまばらに抜けるのが特徴です。
また、2期の段階で紅斑を見つけ、皮膚科に駆け込んでも、皮膚科医が梅毒を
疑わなければ、ただの湿疹と片付けられるケースもあります。」

「2期では血液検査は陽性になりますから、心配な方は必ず検査を受けてください。
1期、2期は感染力が強いため、人にうつしてしまう可能性がございます」

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(キャスター:菊野理沙)
Q:そして晩期の3期、4期になるとかなり深刻な症状に陥ってしまうようですね?

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●・・・そうですね! いよいよ3期、4期ですね。

*感染後、3年以上経過しますと、結節性梅毒疹や皮下組織に鶏卵大のしこり
(いわゆるゴム腫)が生じることがあります。
鼻の骨が破壊されるのもこの時期です。

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感染から10年たちますと4期に入り、心臓、血管、神経などに障害が出て、
大動脈炎や大動脈瘤、進行麻痺など重篤な症状に進むことがあります。


(キャスター:菊野理沙)
Q:ただ、現在では3期、4期に進行することはほとんどないんですよね?



●・・・おっしゃる通りですね。よくご存じですね!

*「現在は特効薬ペニシリンのおかげで、早期に治療を行えば、3期、4期に
進行することはありません。
また3期、4期は感染力が弱く、人にうつす心配もほとんどありません」

ペニシリンのない時代の写真
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(キャスター:菊野理沙)
Q:ただ、注意しなければいけないのがHIVとの重複感染のようですね。


 ●・・・そうですね! 最近の報告では

*HIV(ヒト免疫不全ウイルス)にも重複感染している場合は、梅毒の時期に関係なく、1期~4期の段階を経ず、様相が変わるという報告が増えています。

「梅毒に感染していると、その病変部位、特に潰瘍があるとその部位からHIVにも
重複感染しやすい傾向があります。
1期や2期でも重篤な症状が表れやすくなります。
脳に菌が回り、神経を侵される場合もあります。
梅毒の検査をする場合はHIVの検査も同時に受けることをお勧めいたします」

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(キャスター:菊野理沙)
Q:基本的には梅毒と診断されても、早期であれば確実に治ると考えていいのですか?

 
●2013年に修正されました日本性感染症学会の治療ガイドラインに則った治療を
行えば心配ございません。

*昔とちがって、梅毒が死に至る病ではなくなった現在、防ぐ術と治す術は確かにあります。

*急増しているからといって、パニックになる必要はございません。


 (キャスター:菊野理沙)
Q:怖いのは、気付かず放置すること。
ちょっとでも、感染を疑う行為があったら、医療機関を受診することが大事なんですね?


●・・・その通りですね!
*「顕症梅毒の第1期では、しこりや腫れの症状があっても、感染から3~4週間までは
血液検査が陰性になることがあります。
その場合、病変部を採取し、暗視野顕微鏡で検査しますが、病原体の採取と視認に
習熟を要するため、 あまり用いられておりません。
多くの病院では通常、血液検査を行って診断しています。


(キャスター:菊野理沙)
Q:検査を受ける時期というのもポイントのようですね?


 

●・・・そうですね
*感染機会から、すぐの検査では正しい結果がでません。
血液検査は感染機会から3~6週間以降に受けるようにしてください。


(キャスター:菊野理沙)
Q:最後に梅毒を防ぐポイント、治すポイントをまとめました。
あらためて解説をお願いします。


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●・・・大事なことは
*まず、不特定多数の人と性的接触をしないこと。

*する場合は、はじめから終わりまでコンドームをしっかりとつけること。
性交時はもちろん、オーラルやアナルセックスでも同様です。

*コンドームは避妊だけでなく、梅毒を含めた性感染症予防の手段と考えてください
 
*しかし、不特定多数ではなく特定のパートナーとだけセックスしていても、
パートナーが風俗通いをしたり、違う相手と接触していれば、
結果的に感染の恐れがあります。

*いくら自分が気をつけていても、相手が「潔白」で、感染していないかどうかは
分からないものです。

*現実には難しいでしょうが、2人そろって検査をするのが理想的です。

*まずは1回でも、感染を疑う行為があったら、3~6週間置いてから、
医療機関を受診してください。
 
*加えて医師選びも重要です。梅毒症状を見たことがない若い医師がいるからです。

*迷ったら、性感染症に精通した専門医を受診してください。

*最近では、自己検査キットもありますが、うまく採取できないことがあるので、
注意してください。

 
(キャスター:菊野理沙)
Q:「梅毒は終生免疫を得られず再感染する」ということは何度もかかる、
つまり、一度かかって完治したからといって安心してはいけないということですね?



●・・・その通りですね。何回でも感染いたします。 


(キャスター:菊野理沙)
きょうのニュースの視点は急増する梅毒の背景とともに、その症状や予防法を
日本性感染症学会代議員で医学博士の尾上泰彦(おのえ・やすひこ)さんに
解説していただきました。
尾上(おのえ)さん、きょうはありがとうございました。


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●皆様の性の健康をお祈りいたします。
ありがとうございました。(尾上泰彦:終了)


(キャスター:菊野理沙 )
以上、ニュースの視点でした。
(お疲れさまでした!)

 
 
放映終了後
キャスター:菊野理沙さまとツーショット!

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●最後になりましたが、担当ディレクターの鶴岡正典さまには、
大変お世話になりました。厚くお礼申し上げます。

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