泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2017年06月29日

パートナーと一緒に検査

6月22日(木) 讀賣新聞 医療ルネサンス 「性感染症のいま」

5回シリーズの5回目に私の記事が掲載されましたので報告いたします。

■パートナーと一緒に検査

Q&A

性感染症の特徴や治療について、

東京都新宿区のプライベートケアクリニック東京名誉院長の尾上泰彦さんに聞いた。

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-性感染症の中でも梅毒の患者が増えてきています。

「最近まで男性の同性カップルが中心でした。

昨年1,000人以下で推移していましたが、

2011年頃から増え始め、15年には異性カップルの感染者数が

同性カップルの数を追い越し、昨年は4,500人を超えました。

20歳代前半の女性が多いです」

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-梅毒の特徴を教えてください。

「口腔性交でも移ります。感染3週間で菌の侵入部位に

潰瘍などができ、3か月で体にバラ疹と呼ばれる発疹などが出ます。

時期がずれたり症状が出なかったりすることも多く、

症状が出ても数週間で消えます。

数年で神経が侵され、失明や知能低下などを招きます。

また、梅毒に感染した妊婦から生まれた先天性梅毒の子供も最近は報告が増えています。

死産や流産となったり、肝臓や脾臓が腫れて生まれたりします」

-治療法と増加の背景を教えてください。

「戦後は多くの感染者がいましたが、以前は抗菌薬のペニシリン注射で治療でき、

減っていきました。しかし、アレルギーによるショックで死者が出てから、飲み薬の抗菌薬に変わり、今は一定期間飲んでもらいます。

症状が消えると薬をやめてしまう人がいることが問題です」

「増加の背景ははっきりしません。

中国といった外国でも流行しているので、性風俗店などを介して入ってきた可能性もあります。

スマートフォンの普及で、誰とでも簡単につながれることも原因かもしれません。

梅毒に詳しくない医師が症状を見落とし、感染を拡大させてしまっていることも課題となっています」

-梅毒以外に注意すべき性感染症はありますか。

「感染者数が一番多いのがクラミジアで、口腔性交でも感染します。

特に女性は性器に症状が出にくく、気付かず進行して不妊症の原因となることもあります。また淋菌も不妊症に結びつく感染症の一つ。抗菌薬に耐性を持つ菌が出ていて、

効く薬が少なくなっているのが喫緊の課題です。

性器ヘルペスやB型・C型肝炎など、日本性感染症学会の指針には

17種類の性感染症が記載されています」

-性感染症の予防はどうしたらいいですか。

「不特定多数との性行為は避けましょう。

また、全ての感染症を防げるさけではありませんが、

コンドームを正しく使用することは基本です」

「そして、定期的に検査を受けましょう。

私がみてきた中では、感染者の3割はパートナーも感染していました。

結婚する時や新しいパートナーができた時など、

一緒に検査を受けることをおすすめします」

【参考】性感染症の予防

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投稿者 aids : 19:30 | トラックバック

2017年06月27日

クラミジア 感染気づかず

6月20日(火)讀賣新聞 朝刊 医療ルネサンス「性感染症のいま」

5回シリーズの3回目に私のクリニックのクラミジア感染症に関する記事が

掲載されましたので報告いたします。

■クラミジア 感染気づかず

「性器と喉、両方からクラミジアが見つかる人も多いんだよ」。

東京都新宿区にあるプライベートケアクリニック東京。

検査を受ける男性に医師が説明する。

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若い人への感染が多いクラミジア。

感染すると女性はおりものの変化など比較的軽い症状があるか、

表れない場合もある。

男性は性器の異常で気づくことが多い。

国が定めた約1,000か所の医療機関から報告があった性感染症は、

ピークだった2002年の4万3,000人に比べ、昨年は2万人近く

減っているが、他の性感染症に比べれば圧倒的に多い。

一般的な性生活を送っている人にも感染が見つかる身近な病気だ。

身近な理由は、感染者との1回の性行為で、

30~50%の確率でうつると言われる感染力の強さにある。

1%未満とされるHIV(エイズウイルス)と比べるとよく分かる。

口と性器の間で感染することも多いほか、キスだけでも感染する

と言われ、カップルが互いに完治と感染を繰り返す

「ピンポン感染」が問題となっている。

パートナーの男性と一緒にクリニックを訪れた女性(41)は最近、

別の病院でクラミジアの治療を受けた。

「思い当たることが全然なかった。本当に不思議ですよね」と首をかしげる。

女性がクラミジアに感染したのは約4年ぶり。2回目だった。

前回は検査で見つかるまで症状は一切なかったといい、

クラミジアの症状も知らなかった。今回は性器にかゆみが出た。

当初はナプキンのせいだと思っていたが、その後、

ナプキンを使っていない時でも、かゆみは治まらなかった。

人前ではかくことができない部分だ。

我慢できず受診した結果、クラミジア感染が判明した。

クラミジアの恐ろしさは特に女性の場合、感染に気づかない

まま症状が進行しやすいこと。

男性の場合、尿道から分泌物が出たり、排尿時の違和感や痛み

があるので気づきやすい。

一方、女性は症状が出るのは2~3割。

おりものの色や量が変化したり、下腹部の痛みが出たりするが症状は軽い。

感染に気づかないまま、子宮頸管や卵管が炎症を起こし、

不妊や流産などの原因にもなりうる。

【参考症例】女性 クラミジア性子宮頸管炎

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女性は完治したものの、今度はパートナーの性器に異変があるように感じた。

心配になり、一緒に全ての性感染症を受けようとクリニックを訪れた。

検査の結果、幸い2人とも感染はないことが分かった。

「今、不妊治療を受けています。今後のことを考えると、しっかり調べてもらい、

お互いに安心できました」と頬を緩ませた。

投稿者 aids : 19:53 | トラックバック

2017年06月18日

讀賣新聞 掲載 : 梅毒「まさか自分が」

6月16日 讀賣新聞 朝刊 医療ルネサンス 「性感染症のいま」 5回シリーズの1回目に私のクリニックの梅毒に関する記事が掲載されましたので報告いたします。

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■梅毒「まさか自分が」

「偽装の達人」と呼ばれる性感染症がある。

最近、感染者数の急増が指摘されている梅毒のことだ。

これまで年間1,000人に満たなかった感染者数が、2011年頃から増加し、昨年は4,500人を超えた。

「感染するような性行為は思い当たらないのですが」

40歳代の会社員の男性が、医師に手を差し出す。男性の手や体に突然、赤い発疹が現れたのは6月初め。東京都新宿区のクリニックを初めて訪れた時、医師は皮膚を見るなり、梅毒と言い当てた。

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発疹は梅毒の症状の一つでバラの花のように見える「バラ疹」だった。

血液検査の結果はやはり、陽性だった。初診時に処方された抗菌薬を飲むと、バラ疹は一週間できれいに消えた。

それでもまだ感染を示す数値は高く、性行為で相手に感染するリスクがある。
症状の進行度合いにもよるが、この男性の場合は4~8週間、薬を飲み続ける必要がある。

医師は「決められた量の薬を飲み終わるまで、ちゃんと治療に来てください」と、継続して薬を処方した。

 感染している人と1回の性行為でも、梅毒は比較的感染が起きやすい。
性器からではなく、口からも感染は起きる。

 一般的に、感染から約3週間で性器など病原体が入った部分に潰瘍などができる。
次に血中で病原体が増殖して全身に広がり、約3か月で体にバラ疹などが出る。

無治療なら数年で意識障害や知能低下、失明などにいたると言われている。
しかし、潰瘍などの初期症状は出なかったり、

発症時期がずれたりすることも多い。症状の出方も様々。

 潰瘍は唇や喉にできることもある。バラ疹が出る部位も一定ではない。
痛みやかゆみをほとんど伴わず、放っておくと数週間で表面的な症状は消えてしまう。
多様な症状を伴いながら、何事もないかのように潜伏する様子は、まさに「偽装の達人」。

梅毒をよく理解する医師でなければ、見逃してしまう可能性がある。

【参考症例】梅毒 第2期 バラ疹 20代の女性

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 実際に現場の医師からは、皮膚科でバラ疹を別の皮膚疾患と

診断されていたケースや、産婦人科で性器のしこりを見落とされ、多くのパートナーと性行為を持った後にバラ疹が出た例などが報告されている。

パートナーを次々に代える人や不特定多数と性行為を持つ人の間では、本人も気付かないうちに梅毒に感染したり、拡大させたりしているかもしれないのだ。

クリニックを訪れた会社員の男性も、バラ疹が出るまで体の異変に気付かなかった。
梅毒の名前は知っていたものの、「まさか自分が」という驚きは今も隠せない。
「しっかり治るまでは不安。他の人にうつしていなければいいのですがー」

投稿者 aids : 16:23 | トラックバック

2017年06月04日

梅毒、尾上泰彦医師に聞く

時事メディカルにインタビュー取材されましたので報告いたします。

インタビュー  2017/5/31

梅毒、尾上泰彦医師に聞く(上)=患者急増、4000症例突破

梅毒患者が急増している。国立感染症研究所の報告によると、2016年第1~47週(1月4日~11月27日)に梅毒と報告された症例数は4077例で昨年同時期(2328例)の1.8倍。一時減少傾向にあったが10年以降増加傾向に転じた。男性では40~44歳、女性では20~24歳の報告例が最も多い。梅毒が流行している背景などについて、性感染症に詳しいプライベートケアクリニック東京(東京都新宿区)の名誉院長、尾上泰彦氏に聞いた。

◇過去の病気、一転再燃

―梅毒はいつから始まった病気か。

①   梅毒患者の症例数の推移

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尾上 梅毒は、梅毒トレポネーマという病原菌がセックスなどの性的な接触によってうつる感染症。1492年に「新大陸」を発見したコロンブスが、欧州に持ち帰ったため全世界に広まったという説があり、日本でも20年後の1512年に病気についての記録がある。国内では1940年代に報告数が20万例を超えた。死を招くこともある病気として知られたが、抗菌薬であるペニシリンが戦後広く普及。小流行はあったものの、2010年には621例で過去の病気となりつつあった。ところが同年以降は増加傾向が続き、昨年1年間で4518例(速報値)と1974年以来42年ぶりに4000例を超えた。

―梅毒の再燃には、どのような理由が考えられるのか。

尾上 感染経路の大半は性的接触。口腔(こうくう)内に感染していたらキスでもうつる。インターネットやSNSの普及で交遊関係が広がり、性行為を目的として不特定多数と出会うケースが大幅に増えたことが背景にあるとされる。しかし、それなら梅毒以外の性感染症も同じように増えているはず。けれども、そのような結果は報告されていない。プライベートなことだけに調査には限界があり、原因ははっきりと分かっていない。

梅毒、尾上泰彦医師に聞く(上)=患者急増、4000症例突破

◇無症状でも強い感染力

―感染したらすぐに分かるのか。

尾上 梅毒は症状によって第1期から第4期まで四つのステージに分類される。初期である第1期は接触してから3週間後、3割の人に陰部、口腔内、口唇部などに硬いしこりができる。

②   第1期顕症梅毒 硬性下疳

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人によっては股の付け根のリンパ節が腫れることもある。それまでは何の症状も表れない。痛みもかゆみもなく、自然に症状がなくなる。残りの7割の人は無症状なので気付かないことが多い。この時期は感染力が強く、他の人に感染する可能性が高い。知らないうちにパートナーに感染させているケースも多く、これが感染拡大につながっている。さらに妊娠中のパートナーに感染すると、胎盤を通して胎児に感染する。これは「先天梅毒」といって区別され、死産、早産、奇形など、胎児や新生児にさまざまな影響が及ぶ。

―それ以降はどういう経過をたどるのか。

尾上 さらに3カ月放置すると病原体が体中に回り、第2期の症状として体全体や手のひら、足の裏に赤い発疹が出る、あるいは肛門にいぼができる。ほとんどの人はこの段階で異常に気付き、皮膚科で梅毒の診断を受けることが多い。この時点であれば、数週間の抗菌薬の服用で完治する。ただ、かゆみも痛みもないのが特徴で、治療しなくても数日から数週間で発疹は消えるため、ここでも放置されることがある。

③   第2期顕症梅毒 手掌・足底(梅毒性乾癬)

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第3期の症状が表れるのは、その数年後。皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがある。皮膚が溶けだし、外見的にもすぐ分かる症状が表れるが、かゆみも痛みもない。また、心臓、血管、脳などの体全体の臓器にさまざまな影響を及ぼし、第4期になると、死の危険性もある重篤な状態となる。現在は、治療のための抗菌薬が普及し、比較的早期から治療を開始する例が多い。第3期、第4期の晩期の梅毒に進行する人はほとんど見られなくなった。(ソーシャライズ社提供)

梅毒、尾上泰彦医師に聞く(下)=感染拡大どう対処する?

梅毒は主に同性愛者の間で流行していたが、最近は異性間での感染も多くなっている。知らないうちに多くの人にうつしてしまうだけでなく、パートナーが妊娠していたら母子感染の可能性もあり、小さな命にも影響する。梅毒は適切な治療で確実に治る病気。まずは一人一人ができることから始めることで感染拡大を抑えたい。治療、予防方法について、プライベートケアクリニック東京(東京都新宿区)の名誉院長、尾上泰彦氏に聞いた。

◇検査キットも、陽性なら受診を

④   尾上泰彦医師

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―どのような検査をすれば、梅毒感染の有無が分かるのか。

尾上 梅毒の抗体を見つける「梅毒血清反応検査」で調べる。「脂質抗原検査(STS法)」と「TP抗原に対する検査(TP法)」の2種類がある。

⑤   梅毒血清反応検査の種類

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STS法は感染してから4週間程度で陽性反応が出るが、TP法はさらに2週間程度の時間を要する。一方、STS法は10~20%の確率で偽陽性(BFP)が出るともいわれる。感染の疑いがある場合、両方の検査を組み合わせて行う。
検査はどの医療機関でも行っており、保健所などは原則無料で検査してくれる。病院に行くことに抵抗があれば、自分で検査できるキットがある。少しでも心配な場合は検査を受けることをお勧めする。

―陽性反応が出た場合、どの医療機関にかかればよいのか。

尾上 検査結果が陽性と出たら、専門の医療機関を速やかに受診する。梅毒は症状に苦痛を伴わないことが多いため、放置したり見逃したりすることも少なくない。早期に発見し治療を開始すれば、治療がスムーズに終わり、体への負担も少ない。一度感染しても再感染する可能性もあるので、パートナーと一緒に受診するとよい。
通常は泌尿器科、婦人科、皮膚科にかかる。ただ梅毒は過去のような大流行はなく、最近まで減少傾向が続いたため、若い医師にとってはなじみが薄い。症状があっても視診では他の疾患と間違え、梅毒の疑いを持たずに血液検査まで進まないこともある。感染の不安を持った場合には性行為から3週間を過ぎた後、検査を依頼しよう。性感染症に詳しい医師であれば安心だ。

梅毒、尾上泰彦医師に聞く(下)=感染拡大どう対処する?

◇完治後も抗体はできず

―治療はどのように行われるか。

尾上 症状や病期によっても違うが、抗菌薬の内服治療が一般的。第2期までであれば、4週間の内服で病原菌はほぼ死滅する。その後も医師の指示に従い、完全に死滅するまで内服を続ける。治療薬は耐性の報告がないペニシリン系抗生物質が第1選択。アモキシシリンが使用されることが多い。

⑥   梅毒の治療 日本性感染症学会 治療ガイドライン2016

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欧米では飲み忘れの心配がない1回の注射で終わる治療が行われているが、日本はアレルギー反応で死亡するリスクを考慮し、現時点では未承認だ。死亡のリスクが100万人に1人という低リスクなことから、将来的には承認されるだろう。

⑦アメリカCDC 2015年 ガイドライン

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―一度治療すれば、再発しないか。

尾上 梅毒は強い抗体ができるわけではなく、完治しても、また接触すれば感染する可能性はある。けれども、抗菌薬を飲んで治療すれば確実に治る病気だ。今のところ、抗菌薬に対抗する耐性菌の報告もない。一度感染すると体内には抗体が残るため、数値は高いままになっていることが多い。「治りきってない」「また感染した」と心配になる人もいるが、適切な治療を行えば、数値は高くても病原菌自体は死滅して完治している。数字に惑わされる必要はない。

―感染を予防するにはどうすればいいか。

尾上 100%とはいえないが、性交の際にコンドームを使用することでの有効性は確認されている。梅毒の感染予防の基本は▽不特定多数の人とセックスをしない▽性行為では最後までコンドームを使う▽オーラルセックスは安全とはいえない▽性行為では、この人は大丈夫と思い込まない▽不安な場合は時機をみて検査を受ける▽感染が分かれば徹底治療をする―などが重要だ。(ソーシャライズ社提供)

⑧梅毒の感染予防の基本

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投稿者 aids : 17:31 | トラックバック

2017年06月01日

注目すべき梅毒の高濃度アモキシシリン治療法など

日本における梅毒感染報告数は爆発的に伸びており社会問題になっております。

今回はその梅毒の治療について勉強したいと思います。


"1950年代、日本ではペニシリンの筋注による「ペニシリン・ショック」で多くの方が死亡し、マスコミで大きく報道され社会問題となりました。

従って、日本では、ペニシリン系抗菌薬の筋肉注射が行えない状況から外国の標準的治療とは異なった独自の治療法となっています。

●日本における梅毒の治療

梅毒の治療には多くの症例で、梅毒トレポネーマの細胞壁合成を阻害し、殺菌的に働き耐性の報告が無いペニシリン系抗生物質が使用されています。


①梅毒の治療薬(参考)

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梅毒の治療は日本性感染症学会の梅毒治療ガイドライン2016によりますと下記のごとくです。

●第1期

バイシリンG:1日120万単位/分3(現在、品不足)

アモキシシリン(サワシリンなど)1日1,500mg/分3

アミノベンジルペニシリン1日1,500mg/分3

2~4週間内服投与する。

●第2期

バイシリンG:1日120万単位/分3(現在、品不足)

アモキシシリン(サワシリンなど)1日1,500mg/分3

アミノベンジルペニシリン1日1,500mg/分3

4~8週間内服投与します。

●第3期以降では8~12週間投与します。

②梅毒の治療 日本性感染症学会ガイドライン

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③日本ではアモキシシリンが最も使用されている

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●ペニシリン・アレルギーの場合は

塩酸ミノサイクリン 1日 100mg×2回を服用します。

あるいは

ドキシサイクリン 1日 100mg×2回を服用します。

投与期間は第1期では2~4週間です。

第2期では4~8週間です。

●妊婦の場合は

アセチルスピラマイシン 1日 200mg×6回を服用します。

④ペニシリン・アレルギー&妊婦の場合

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●世界的にはCDCの治療指針が採択されています。

米国CDCの2015年のガイドラインを見ますと

●ペニシリンGの筋注が推奨されています。

●妊婦に対してはペニシリンGの筋注のみが推奨されています。

⑤米国CDC 2015年のガイドライン

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世界の標準はベンザチンペニシリン 240万単位 1回 筋注です。しかし世界的にこの薬剤が不足しています。

しかも、日本ではベンザチンペニシリンが発売されておらず、現状では多くの国で行われている標準的な治療を行うことができません。



⑥梅毒の世界的標準治療

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海外における標準治療のベンザチンペニシリン 240万単位 筋肉注射(早期:単回投与、後期:週1回3週間)の治療効果は、80~100%と報告されています。

 
⑦梅毒の世界的標準治療

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日本性感染症学会 診断・治療ガイドライン2016では、アモキシシリン1500mg/日の内服を推奨していますが、臨床的な効果を示したエビデンスは乏しく、あまり報告がありません。

 
⑧アモキシシリンの臨床的効果のエビデンスが乏しい

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一方、英国の梅毒ガイドラインでは、ベンザチンペニシリンG(BPG)の代替薬としてアモキシシリン(AMPC)とプロベネシドの併用を推奨しています。
 

⑨英国の梅毒ガイドライン

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日本でもアモキシシリン(AMPC)3000mg/日とプロベネシドによる治療成功率が95.5%という報告があります。内服薬の1日量が2倍になりますが、投与期間が短縮され治療成績も良好です。

 
⑩アモキシシシリン+プロベネシドの治療成功率

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●神経梅毒の治療

ベンジルペニシリンカリウム(結晶ペニシリンGカリウム)を1日200~400万単位×6回

(すなわち1日1,200~2,400万単位を投与)を

点滴静注で10日~14日間投与します。

●先天梅毒の治療

ベンジルペニシリンカリウム(結晶ペニシリンGカリウム)の点滴静注を行います。

⑪梅毒の治療 神経梅毒&先天梅毒

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●HIV患者の梅毒治療については

世界的にはベンザチンペニシリン筋肉注射が標準的治療薬となっています。

●単回投与で感染性の高い第1期、第2期梅毒の治療が完了できます。

●日本では現在、長期間の内服が必要なため、内服コンプライアンスを保つ努力が必要となります。

●HIV患者の梅毒の治療におけるアモキシリン+プロベネシド内服投与の治療効果を検討した結果、

2015年に内服アモキシシリンにプロベネシドを加えた治療がHIV感染者の梅毒合併例に対して高い治癒率を示すとの報告がされています。HIV感染を合併した梅毒症例では、HIVを合併していない梅毒症例よりも治療効果が低いため、この研究成績は梅毒の治療に貢献できる可能性があります。

⑫HIV患者の梅毒治療

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梅毒治療として国際的標準治療薬はベンザシンペニシリンGの筋肉注射ですが、日本では発売されていません。
そこで、日本でも梅毒をきちんと治療できないか、ということで考え出されたのがアモキシシリン+プロベネシドの併用療法です。

 ペニシリンは腎臓から尿中に排泄される抗生物質です。また、プロベネシドは抗生物質であるペニシリンの排泄を抑制するために開発された薬とも言われています。

プロベネシドは高尿酸血症の治療薬ですが、アモキシシリンの尿排泄を抑制するという薬物相互作用があり、併用によりアモキシシリンの血中濃度を高く維持することが可能です。

 プロベネシドを使用することでペニシリンが排泄されにくくなるため、病原菌に対抗しやすくなります。
 
●薬剤の適応や日本性感染症学会のガイドラインにはない投与方法ですから担当医個々の判断が求められますが、1日3gなどの高用量のアモキシシリンを1日750mgなどのプロベネシドと併用して早期顕症梅毒や早期無症候梅毒には2週間、晩期もしくは罹患時期の分からない無症候梅毒には4週間の投与を推奨する報告もあり、このアモキシシリンにプロベネシド併用する医療機関が増加傾向にあります。

ここで、高用量アモキシシリン+プロベネシドの駆梅療法を紹介いたします。

●早期顕症梅毒・早期無症候梅毒では1日3gの高用量アモキシシリンと1日750mgのプロベネシドの併用療法を行います。2週間内服投与します。

●晩期無症候梅毒・罹患時不明の無症候梅毒では1日3gの高用量アモキシシリンと1日750mgのプロベネシドの併用療法を行います。4週間内服投与します。

⑬高用量アモキシシリン+プロベネシド 駆梅療法

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確かに"現在、日本ではベンザチンペニシリンが発売されておらず、世界的に行われている標準的な治療を行うことができません"

しかしながら、最近の梅毒患者の急増によりペニシリン系の筋肉注射を見直す気運が高まっています。

●2017年1月23日に「エイズ・性感染症に関する小委員会」が開催されました。〝梅毒に対するペニシリンGの筋注“について、国内でも使えるようにしてはどうかという提案がありました。

●現在、厚労省は、梅毒の感染拡大に対処するため、1回の筋肉注射で済むペニシリンGの必要性を性感染症の予防指針に盛り込む方向で調整中です。

●しかしながらまだまだ「(ペニシリンGも含めた)国際標準で使用されている薬剤が国内でも使えるようにすることが重要だという認識を共有した」というレベルであることがわかりました。

⑭梅毒治療にペニシリンG(筋注)

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以上。

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