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第44回 東京泌尿器科医会学術集会
第44回 東京泌尿器科医会学術集会で梅毒の講演をいたしました。
その抄録が東京泌尿器科医会ニュース No.57に
掲載されましたので報告いたします。
日時:2017年2月25日(土)
場所:京王プラザホテル 本館 4階「花」
特別講演:
『泌尿器科医のためのアトラスで見る これが梅毒だ』
宮本町中央診療所 院長 尾上 泰彦
「梅毒」という病名の由来は第2期の赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので
楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていた。いつの間にか「楊」の字が取れて、
次第に梅瘡⇒黴毒⇒梅毒と変化したと言われている。
また、梅毒はクリストファー・コロンブス一行が1492年、新大陸の発見と共に
❝原住民の風土病❞をヨーロッパに持ち帰ったとされ、「悪魔のお土産」といわれた。
その後、爆発的に全世界に拡がり、日本への伝来は永正九年(1512年)で、
約20年足らずで日本にやってきた。恐るべし、セックスのパワー。
梅毒のヨーロッパ伝播の通説である。
本講演では、私が経験した梅毒症例を中心に臨床写真を提示しながら
視診技術のポイントについて述べる。
ご存知の通り「今や、梅毒はパンデミック状態」であり、 大きな社会問題になっている。
忘れられていた梅毒。昔の病気と思われていた梅毒。若い医師が見たことがない梅毒。
そういう意味では再興感染症でもある。
臨床医は忙しい。多くの医師は届けない。届け出は氷山の一角。
梅毒は全数報告で、どんな医師でも「梅毒」と診断したら
都道府県知事に7日以内に届け出る義務がある。
それでも梅毒は2011年以降、大都市を中心に徐々に増加し、現在、
アウトブレイクしている。
それでは何故、梅毒が増加しているのか?
何故、この5年間で梅毒が急増したのか?
しかも、なぜ、若い女性に急増しているのか。
確かに、先天梅毒児も毎年増加傾向を示し、胎児感染で重い障害の恐れもあり、
社会的に危惧されている。
疫学調査によると、年齢群別報告数の男性のピークは 20~40歳代である。
それに比して、何故か、女性のピークは20代前半の20~24歳にある。
その原因、理由はわからない。 しかも、この謎に迫る疫学的調査は、
内容があまりにもプライベートでプライバシーにかかわるため調査の仕様がない。
日本人の性行動様式が急に変わることは考え難い。
しかし、若い20代前半の女性に急増している。
急増の原因は、内的因子では考え難く、外的因子も考えなければならない。
一説に、2016年外国人旅行者が、初めて2400万人を超えた。
中国などアジア地域の旅行者が大幅に増加した。これが原因の一因なのか。
日本政府観光局の報告によると来日する中国人は、2008年に初めて
100万人を突破し、徐々に増加し、2016年には637万人以上と急伸している。
この外的要因が原因とは、根拠がないためはっきりとは言えないが、
一因の可能性もある。
中国衛生部が発表した「全国法定伝染病疫情状況」によると、
2013年度の梅毒感染者数は406,772人で、
これは15年前の10倍以上とのことである。
また、中国国家衛生・計画出産委員会HPによると、
2015年のみの中国の梅毒患者数は433,974人
(参考:2015年の日本の患者数は2,698人)である。
つまり、中国における梅毒患者数は日本をはるかに上回る増加をみせている。
中国の総人口は日本の11倍以上あるが、梅毒患者数は日本の160倍超というから、
梅毒の急伸状態には驚きである。
こうした経路で日本の若い女性に梅毒患者が増え、
日本での感染が増えたという可能性は考えられる。
梅毒に国境はないともいえる。
梅毒の病因、分類、臨床症状
(第1期:初期硬結、硬性下疳、鼠径部リンパ節無痛性腫脹)、(図1.図2.)
第2期(バラ疹、梅毒性乾癬、脱毛、扁平コンジローマ、口腔咽頭粘膜斑など)
第3期、第4期の臨床像、悪性梅毒。
HIV感染症との関係。
眼科領域の梅毒。輸入感染症である軟性下疳の臨床像。
梅毒の診断・検査、治療、臨床医の落とし穴。
そして梅毒の感染予防の基本。
これらの臨床現場のアトラスを提示しながら紹介・概説した。
図1.初期硬結
図2.硬性下疳
情報交換会にての写真
情報交換会にて
情報交換会にて