泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

Home > 【学会報告】 > 第77回日本泌尿器科学会東部総会のご報告

第77回日本泌尿器科学会東部総会のご報告

**********************************************

77回日本泌尿器科学会東部総会
2012年10月18日(木)
会場:東京ドームホテル
シンポジウム変貌する尿道炎座長:高橋聡先生 清田浩先生 
【演題】蔓延する淋菌・クラミジアの咽頭感染 宮本町中央診療所 尾上泰彦

**********************************************

①第77回 日本泌尿器科学会東部総会 20121029_01.png

以下、講演論旨

泌尿器科医にとって男性の淋菌性、クラミジア性尿道炎の最大感染要因はオーラルセックスであることは周知の事実である。

しかしながら淋菌性・クラミジア性咽頭炎の実態は知られていない。これに泌尿器科医が如何に対応すべきか検討を加えた。

淋菌・クラミジア咽頭感染の特徴、臨床例、検査法、検体採取法の実際、その成績および今後の課題について述べる。

淋菌性・クラミジア性咽頭炎は他覚的・自覚的な咽頭所見をほとんど認めないことが特徴である。

淋菌・クラミジアの尿道炎を認めれば、そのパートナーの口腔咽頭に淋菌・クラミジアが存在している可能性がある。

咽頭の淋菌検査法としては淋菌の分離培養がゴールドスタンダードであるが、現在あまり用いられていない。

PCR(核酸増幅法)は口腔内の非病原性Neisserria属との交差反応があるため口腔の淋菌検査に適さない。

現在、淋菌・クラミジアの検査法として核酸増幅法のSDA,TMA法が保険適用である。

検体採取法としてはスワブ法、うがい液法があり、うがい液法の方が淋菌、クラミジアいずれも陽性率がやや高い。

子宮頸管ではクラミジア陽性率が淋菌陽性率より高い。しかし咽頭では淋菌陽性率がクラミジアより高い。

今後の課題としては咽頭淋菌・クラミジア感染の病態解明、無症候性感染の増加に対するスクリーニング法の確立、耳鼻咽喉科医のSTIへの参加、咽頭感染の疫学調査、咽頭感染症に関する保険診療の環境整備などがある。




2012年10月29日

Entries

Archives