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『日本の異なる2地域において分離された淋菌のazithromycin耐性とsequence typeに関する検討』

第64回 日本感染症学会東日本地方会学術集会
第62回 日本化学療法学会東日本支部総会の合同学会が
 2015年10月21日(水)~23日(金)
札幌の「ロイトン札幌」で開催されました。

今回は私の診療所の淋菌に関する研究発表がありましたので報告いたします。
その演題は『日本の異なる2地域において分離された淋菌のazithromycin耐性とsequence typeに関する検討』
演者は東邦大学看護学部感染制御学教授の小林寅喆先生です。
私は共同演者です。
以下にその研究発表要旨を示します。

【背景】淋菌感染症において抗菌薬耐性淋菌が増加し世界的にも問題となっ
ている。特に第3世代セフェム系薬剤耐性株は治療において深刻な問題で、
azithromycinとの併用が推奨されている。今回、日本の異なる2地域において
分離された淋菌に対するAZM耐性とSequence Type(ST)について
検討した。

【方法】福岡および川崎の2地域において2012年および2013年の間に淋菌
感染症患者より分離された淋菌それぞれ234株、150株を対象とした。
抗菌薬感受性はCLSIに準じた寒天平板希釈法によりAZMおよび各種抗菌薬
のMICを測定した。
分離株のNG-MASTはMartinらの報告を参考にSequence Typingを行った。

【結果】各種抗菌薬感受性の比較では川崎分離株においてPCG,CTRX,TC
のMIC50および90の値が福岡分離株に比べ2倍高かった。一方、AZM耐性株は
福岡分離株の方が多く、17.5%に対し、川崎分離株は10.7%と差が見られた。
これらAZM耐性株のSTは福岡分離株に偏りが見られ41株中20株はST6798で
高い割合を占めていた。一方、川崎分離株のうち型別が可能であった11株中
4株はST1407であった。AZMを含む複数薬剤に耐性を示した株の割合は福岡
分離株に多かった。

【考察】日本の異なる地域において近年分離された淋菌の抗菌薬感受性全体と
して大きな差は見られなかったが、AZM耐性を含む多剤耐性株も福岡分離株に
多く、同じST型によるものと考えられた。
 
以上。

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懇親会会場にて。川崎市立井田病院 感染症科 中島由紀子先生と共に。

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2015年11月18日

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