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エイズと梅毒だけ医者に「全数報告」義務
2017年7月28日(金)に発刊されました日刊スポーツに私のクリニックの記事が掲載されましたので報告いたします。
早期発見、早期治療
性感染症に気をつけろ②
エイズと梅毒だけ医者に「全数報告」義務
梅毒は、戦後間もない日本では患者数が20万人を超えてまん延していた。
治療薬の普及で激減。
一時的な増加はあったが、さらに減り、1997年にはわずか500人を切るまでに。
しかし、2011年からは明らかな増加傾向となり、昨年には患者数は4518人に達した。
行政への報告は、大きく2つに分けられる。
1つめは決められた内容に基づき、医師が保健所へ1週間以内に届け出ることが義務づけられている「全数報告」。
それと、全国の指定された約1000の医療機関から報告される「定点報告」だ。
東京・西新宿にオープンした性感染症専門治療機関「プライベートケアクリニック東
京」名誉院長の尾上泰彦医師はこう話す。
「全数報告では、どの医師であっても、それを診断した場合にすべて届け出なければならないのです。対象になっているのは、後天性免疫不全症候群(エイズ)と梅毒の2つのみ。
定点報告は、産婦人科、皮膚科、泌尿器科、性病かの医師からの報告で、
淋病(りんびょう)、性器クラミジア、性器ヘルペス、尖圭(せんけい)コンジ
ローマの4つです」
梅毒の報告数は、男女とも「早期顕症1期と「2期」が急増している。
「顕症」とは、梅毒が皮膚や内臓に症状として現われる時期を指す。症状がない「無
症候」もあり、そちらも急増した。
尾上医師が続ける。
「2014年以降はパンデミック状態(感染症の大きな流行)にあると言ってもいい。」
専門医らによる「日本性感染症学会」では、性感染症診断治療ガイドラインの中で、
「17」の疾患を性感染症に多く取り上げられている。
梅毒、淋菌(りんきん)感染症(淋病)、性器クラミジア感染、性器性器ヘルペス、
尖圭コンジローマ、性器伝染性軟属腫、腟(ちつ)トリコモナス症、細菌性腟症、ケジラミ症、性器カンジダ症、非クラミジア非淋菌性尿道炎、軟性下疳(なんせいげかん)、HIV感染症とエイズ、肝炎(A型、B型、C型)、赤痢アメーバ症だ。
なじみの薄いものもある。
梅毒 急増‼
2017年7月27日(木)発行の日刊スポーツに私のクリニックの記事が掲載されましたので報告いたします。
早期発見、早期治療
性感染症に気をつけろ①
毎年、夏に患者数が増える性感染症。
特に「梅毒」は近年増加の一途をたどり、
昨年は42年ぶりに全国で4000人を超えました。
今年はさらにそれを上回るペースで、
「昔の病気」というイメージは変わってきています。
社会面では本日から、さまざまな性感染症の現状、対処法などを紹介していきます。
■昔の病気じゃない
梅雨が明け、夏も本番。
暮らしと密接する「性感染症」は、
誰もが注意すべき病である。
過去最悪のペースと言われる「梅毒」をはじめ、
淋病(りんびょう)、性器クラミジア、そしてエイズまで、
この数年間で大きく変わったもの、あるいは、そうではないが要注意なものと、
病気を正しく知り、安心できる毎日を送ろう。
今年5月、東京の西新宿に、
性感染症の治療を専門とする「プライベートケアクリニック東京」がオープンした。
クリニック名誉院長の尾上泰彦医師はこう話す。
「この時期になると、毎年増えてくるのが性感染症です。
多くの人が気持ちも身体も開放的になるからでしょう」。
尾上医師は、早くから性感染症に取り組んできたこの分野のエキスパート。
豊かな臨床経験と診断技術で、医師の間からの信頼も厚い。
患者の負担をより軽くー。
そんな尾上医師が今、最も懸念している病気が「梅毒」である。
尾上医師がこう警告する。
「この数年の大きな変化は、何と言っても梅毒の急増です。
梅毒は昔の病気だと思われていますが、そうではない。
梅毒は今、再興感染症として注目すべきでしょう」。
昨年1年間、全国の患者数は4518人に上った。
患者数が4000人を超えたのは、1974年依頼と実に42年ぶり。
97年には500人以下にまで減少した病気が、
再び脅威になろうとしている。
急増ぶりが明らかになったのは2011年だが、
その後も一貫して右肩上がりという状況が続く。
直近をみても、1671人(14年)→2660人(15年)→4518人(16年)というのが実態だ。
医療現場では、梅毒をみたことがないという医師や、
忙しさに追われ、正確な数が報告されていないといった指摘がある。
「こうした数字は氷山の一角です」と心配する尾上医師。
実は、昨年をさらに上回る勢いが今年、続いている。
国立感染研究所の速報データでは、昨年の同時期2202人(28週)から678人増え、
今年は2880人(同)に。
いよいよ“危険水域”に近づいたか!?
讀賣新聞 掲載 : 梅毒「まさか自分が」
6月16日 讀賣新聞 朝刊 医療ルネサンス 「性感染症のいま」 5回シリーズの1回目に私のクリニックの梅毒に関する記事が掲載されましたので報告いたします。
■梅毒「まさか自分が」
「偽装の達人」と呼ばれる性感染症がある。
最近、感染者数の急増が指摘されている梅毒のことだ。
これまで年間1,000人に満たなかった感染者数が、2011年頃から増加し、昨年は4,500人を超えた。
「感染するような性行為は思い当たらないのですが」
40歳代の会社員の男性が、医師に手を差し出す。男性の手や体に突然、赤い発疹が現れたのは6月初め。東京都新宿区のクリニックを初めて訪れた時、医師は皮膚を見るなり、梅毒と言い当てた。
発疹は梅毒の症状の一つでバラの花のように見える「バラ疹」だった。
血液検査の結果はやはり、陽性だった。初診時に処方された抗菌薬を飲むと、バラ疹は一週間できれいに消えた。
それでもまだ感染を示す数値は高く、性行為で相手に感染するリスクがある。
症状の進行度合いにもよるが、この男性の場合は4~8週間、薬を飲み続ける必要がある。
医師は「決められた量の薬を飲み終わるまで、ちゃんと治療に来てください」と、継続して薬を処方した。
感染している人と1回の性行為でも、梅毒は比較的感染が起きやすい。
性器からではなく、口からも感染は起きる。
一般的に、感染から約3週間で性器など病原体が入った部分に潰瘍などができる。
次に血中で病原体が増殖して全身に広がり、約3か月で体にバラ疹などが出る。
無治療なら数年で意識障害や知能低下、失明などにいたると言われている。
しかし、潰瘍などの初期症状は出なかったり、
発症時期がずれたりすることも多い。症状の出方も様々。
潰瘍は唇や喉にできることもある。バラ疹が出る部位も一定ではない。
痛みやかゆみをほとんど伴わず、放っておくと数週間で表面的な症状は消えてしまう。
多様な症状を伴いながら、何事もないかのように潜伏する様子は、まさに「偽装の達人」。
梅毒をよく理解する医師でなければ、見逃してしまう可能性がある。
【参考症例】梅毒 第2期 バラ疹 20代の女性
実際に現場の医師からは、皮膚科でバラ疹を別の皮膚疾患と
診断されていたケースや、産婦人科で性器のしこりを見落とされ、多くのパートナーと性行為を持った後にバラ疹が出た例などが報告されている。
パートナーを次々に代える人や不特定多数と性行為を持つ人の間では、本人も気付かないうちに梅毒に感染したり、拡大させたりしているかもしれないのだ。
クリニックを訪れた会社員の男性も、バラ疹が出るまで体の異変に気付かなかった。
梅毒の名前は知っていたものの、「まさか自分が」という驚きは今も隠せない。
「しっかり治るまでは不安。他の人にうつしていなければいいのですがー」
梅毒、尾上泰彦医師に聞く
時事メディカルにインタビュー取材されましたので報告いたします。インタビュー 2017/5/31
梅毒、尾上泰彦医師に聞く(上)=患者急増、4000症例突破
梅毒患者が急増している。国立感染症研究所の報告によると、2016年第1~47週(1月4日~11月27日)に梅毒と報告された症例数は4077例で昨年同時期(2328例)の1.8倍。一時減少傾向にあったが10年以降増加傾向に転じた。男性では40~44歳、女性では20~24歳の報告例が最も多い。梅毒が流行している背景などについて、性感染症に詳しいプライベートケアクリニック東京(東京都新宿区)の名誉院長、尾上泰彦氏に聞いた。
◇過去の病気、一転再燃
―梅毒はいつから始まった病気か。
① 梅毒患者の症例数の推移
尾上 梅毒は、梅毒トレポネーマという病原菌がセックスなどの性的な接触によってうつる感染症。1492年に「新大陸」を発見したコロンブスが、欧州に持ち帰ったため全世界に広まったという説があり、日本でも20年後の1512年に病気についての記録がある。国内では1940年代に報告数が20万例を超えた。死を招くこともある病気として知られたが、抗菌薬であるペニシリンが戦後広く普及。小流行はあったものの、2010年には621例で過去の病気となりつつあった。ところが同年以降は増加傾向が続き、昨年1年間で4518例(速報値)と1974年以来42年ぶりに4000例を超えた。
―梅毒の再燃には、どのような理由が考えられるのか。
尾上 感染経路の大半は性的接触。口腔(こうくう)内に感染していたらキスでもうつる。インターネットやSNSの普及で交遊関係が広がり、性行為を目的として不特定多数と出会うケースが大幅に増えたことが背景にあるとされる。しかし、それなら梅毒以外の性感染症も同じように増えているはず。けれども、そのような結果は報告されていない。プライベートなことだけに調査には限界があり、原因ははっきりと分かっていない。
梅毒、尾上泰彦医師に聞く(上)=患者急増、4000症例突破
◇無症状でも強い感染力
―感染したらすぐに分かるのか。
尾上 梅毒は症状によって第1期から第4期まで四つのステージに分類される。初期である第1期は接触してから3週間後、3割の人に陰部、口腔内、口唇部などに硬いしこりができる。
② 第1期顕症梅毒 硬性下疳
人によっては股の付け根のリンパ節が腫れることもある。それまでは何の症状も表れない。痛みもかゆみもなく、自然に症状がなくなる。残りの7割の人は無症状なので気付かないことが多い。この時期は感染力が強く、他の人に感染する可能性が高い。知らないうちにパートナーに感染させているケースも多く、これが感染拡大につながっている。さらに妊娠中のパートナーに感染すると、胎盤を通して胎児に感染する。これは「先天梅毒」といって区別され、死産、早産、奇形など、胎児や新生児にさまざまな影響が及ぶ。
―それ以降はどういう経過をたどるのか。
尾上 さらに3カ月放置すると病原体が体中に回り、第2期の症状として体全体や手のひら、足の裏に赤い発疹が出る、あるいは肛門にいぼができる。ほとんどの人はこの段階で異常に気付き、皮膚科で梅毒の診断を受けることが多い。この時点であれば、数週間の抗菌薬の服用で完治する。ただ、かゆみも痛みもないのが特徴で、治療しなくても数日から数週間で発疹は消えるため、ここでも放置されることがある。
③ 第2期顕症梅毒 手掌・足底(梅毒性乾癬)
第3期の症状が表れるのは、その数年後。皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがある。皮膚が溶けだし、外見的にもすぐ分かる症状が表れるが、かゆみも痛みもない。また、心臓、血管、脳などの体全体の臓器にさまざまな影響を及ぼし、第4期になると、死の危険性もある重篤な状態となる。現在は、治療のための抗菌薬が普及し、比較的早期から治療を開始する例が多い。第3期、第4期の晩期の梅毒に進行する人はほとんど見られなくなった。(ソーシャライズ社提供)
梅毒、尾上泰彦医師に聞く(下)=感染拡大どう対処する?
梅毒は主に同性愛者の間で流行していたが、最近は異性間での感染も多くなっている。知らないうちに多くの人にうつしてしまうだけでなく、パートナーが妊娠していたら母子感染の可能性もあり、小さな命にも影響する。梅毒は適切な治療で確実に治る病気。まずは一人一人ができることから始めることで感染拡大を抑えたい。治療、予防方法について、プライベートケアクリニック東京(東京都新宿区)の名誉院長、尾上泰彦氏に聞いた。
◇検査キットも、陽性なら受診を
④ 尾上泰彦医師
―どのような検査をすれば、梅毒感染の有無が分かるのか。
尾上 梅毒の抗体を見つける「梅毒血清反応検査」で調べる。「脂質抗原検査(STS法)」と「TP抗原に対する検査(TP法)」の2種類がある。
⑤ 梅毒血清反応検査の種類
STS法は感染してから4週間程度で陽性反応が出るが、TP法はさらに2週間程度の時間を要する。一方、STS法は10~20%の確率で偽陽性(BFP)が出るともいわれる。感染の疑いがある場合、両方の検査を組み合わせて行う。
検査はどの医療機関でも行っており、保健所などは原則無料で検査してくれる。病院に行くことに抵抗があれば、自分で検査できるキットがある。少しでも心配な場合は検査を受けることをお勧めする。
―陽性反応が出た場合、どの医療機関にかかればよいのか。
尾上 検査結果が陽性と出たら、専門の医療機関を速やかに受診する。梅毒は症状に苦痛を伴わないことが多いため、放置したり見逃したりすることも少なくない。早期に発見し治療を開始すれば、治療がスムーズに終わり、体への負担も少ない。一度感染しても再感染する可能性もあるので、パートナーと一緒に受診するとよい。
通常は泌尿器科、婦人科、皮膚科にかかる。ただ梅毒は過去のような大流行はなく、最近まで減少傾向が続いたため、若い医師にとってはなじみが薄い。症状があっても視診では他の疾患と間違え、梅毒の疑いを持たずに血液検査まで進まないこともある。感染の不安を持った場合には性行為から3週間を過ぎた後、検査を依頼しよう。性感染症に詳しい医師であれば安心だ。
梅毒、尾上泰彦医師に聞く(下)=感染拡大どう対処する?
◇完治後も抗体はできず
―治療はどのように行われるか。
尾上 症状や病期によっても違うが、抗菌薬の内服治療が一般的。第2期までであれば、4週間の内服で病原菌はほぼ死滅する。その後も医師の指示に従い、完全に死滅するまで内服を続ける。治療薬は耐性の報告がないペニシリン系抗生物質が第1選択。アモキシシリンが使用されることが多い。
⑥ 梅毒の治療 日本性感染症学会 治療ガイドライン2016
欧米では飲み忘れの心配がない1回の注射で終わる治療が行われているが、日本はアレルギー反応で死亡するリスクを考慮し、現時点では未承認だ。死亡のリスクが100万人に1人という低リスクなことから、将来的には承認されるだろう。
⑦アメリカCDC 2015年 ガイドライン
―一度治療すれば、再発しないか。
尾上 梅毒は強い抗体ができるわけではなく、完治しても、また接触すれば感染する可能性はある。けれども、抗菌薬を飲んで治療すれば確実に治る病気だ。今のところ、抗菌薬に対抗する耐性菌の報告もない。一度感染すると体内には抗体が残るため、数値は高いままになっていることが多い。「治りきってない」「また感染した」と心配になる人もいるが、適切な治療を行えば、数値は高くても病原菌自体は死滅して完治している。数字に惑わされる必要はない。
―感染を予防するにはどうすればいいか。
尾上 100%とはいえないが、性交の際にコンドームを使用することでの有効性は確認されている。梅毒の感染予防の基本は▽不特定多数の人とセックスをしない▽性行為では最後までコンドームを使う▽オーラルセックスは安全とはいえない▽性行為では、この人は大丈夫と思い込まない▽不安な場合は時機をみて検査を受ける▽感染が分かれば徹底治療をする―などが重要だ。(ソーシャライズ社提供)
⑧梅毒の感染予防の基本
注目すべき梅毒の高濃度アモキシシリン治療法など
日本における梅毒感染報告数は爆発的に伸びており社会問題になっております。
今回はその梅毒の治療について勉強したいと思います。
"1950年代、日本ではペニシリンの筋注による「ペニシリン・ショック」で多くの方が死亡し、マスコミで大きく報道され社会問題となりました。
従って、日本では、ペニシリン系抗菌薬の筋肉注射が行えない状況から外国の標準的治療とは異なった独自の治療法となっています。
●日本における梅毒の治療
梅毒の治療には多くの症例で、梅毒トレポネーマの細胞壁合成を阻害し、殺菌的に働き耐性の報告が無いペニシリン系抗生物質が使用されています。
①梅毒の治療薬(参考)
梅毒の治療は日本性感染症学会の梅毒治療ガイドライン2016によりますと下記のごとくです。
●第1期
バイシリンG:1日120万単位/分3(現在、品不足)
アモキシシリン(サワシリンなど)1日1,500mg/分3
アミノベンジルペニシリン1日1,500mg/分3
2~4週間内服投与する。
●第2期
バイシリンG:1日120万単位/分3(現在、品不足)
アモキシシリン(サワシリンなど)1日1,500mg/分3
アミノベンジルペニシリン1日1,500mg/分3
4~8週間内服投与します。
●第3期以降では8~12週間投与します。
②梅毒の治療 日本性感染症学会ガイドライン
③日本ではアモキシシリンが最も使用されている
●ペニシリン・アレルギーの場合は
塩酸ミノサイクリン 1日 100mg×2回を服用します。
あるいは
ドキシサイクリン 1日 100mg×2回を服用します。
投与期間は第1期では2~4週間です。
第2期では4~8週間です。
●妊婦の場合は
アセチルスピラマイシン 1日 200mg×6回を服用します。
④ペニシリン・アレルギー&妊婦の場合
●世界的にはCDCの治療指針が採択されています。
米国CDCの2015年のガイドラインを見ますと
●ペニシリンGの筋注が推奨されています。
●妊婦に対してはペニシリンGの筋注のみが推奨されています。
⑤米国CDC 2015年のガイドライン
世界の標準はベンザチンペニシリン 240万単位 1回 筋注です。しかし世界的にこの薬剤が不足しています。
しかも、日本ではベンザチンペニシリンが発売されておらず、現状では多くの国で行われている標準的な治療を行うことができません。
⑥梅毒の世界的標準治療
海外における標準治療のベンザチンペニシリン 240万単位 筋肉注射(早期:単回投与、後期:週1回3週間)の治療効果は、80~100%と報告されています。
⑦梅毒の世界的標準治療
日本性感染症学会 診断・治療ガイドライン2016では、アモキシシリン1500mg/日の内服を推奨していますが、臨床的な効果を示したエビデンスは乏しく、あまり報告がありません。
⑧アモキシシリンの臨床的効果のエビデンスが乏しい
一方、英国の梅毒ガイドラインでは、ベンザチンペニシリンG(BPG)の代替薬としてアモキシシリン(AMPC)とプロベネシドの併用を推奨しています。
⑨英国の梅毒ガイドライン
日本でもアモキシシリン(AMPC)3000mg/日とプロベネシドによる治療成功率が95.5%という報告があります。内服薬の1日量が2倍になりますが、投与期間が短縮され治療成績も良好です。
⑩アモキシシシリン+プロベネシドの治療成功率
●神経梅毒の治療
ベンジルペニシリンカリウム(結晶ペニシリンGカリウム)を1日200~400万単位×6回
(すなわち1日1,200~2,400万単位を投与)を
点滴静注で10日~14日間投与します。
●先天梅毒の治療
ベンジルペニシリンカリウム(結晶ペニシリンGカリウム)の点滴静注を行います。
⑪梅毒の治療 神経梅毒&先天梅毒
●HIV患者の梅毒治療については
世界的にはベンザチンペニシリン筋肉注射が標準的治療薬となっています。
●単回投与で感染性の高い第1期、第2期梅毒の治療が完了できます。
●日本では現在、長期間の内服が必要なため、内服コンプライアンスを保つ努力が必要となります。
●HIV患者の梅毒の治療におけるアモキシリン+プロベネシド内服投与の治療効果を検討した結果、
2015年に内服アモキシシリンにプロベネシドを加えた治療がHIV感染者の梅毒合併例に対して高い治癒率を示すとの報告がされています。HIV感染を合併した梅毒症例では、HIVを合併していない梅毒症例よりも治療効果が低いため、この研究成績は梅毒の治療に貢献できる可能性があります。
⑫HIV患者の梅毒治療
梅毒治療として国際的標準治療薬はベンザシンペニシリンGの筋肉注射ですが、日本では発売されていません。
そこで、日本でも梅毒をきちんと治療できないか、ということで考え出されたのがアモキシシリン+プロベネシドの併用療法です。
ペニシリンは腎臓から尿中に排泄される抗生物質です。また、プロベネシドは抗生物質であるペニシリンの排泄を抑制するために開発された薬とも言われています。
プロベネシドは高尿酸血症の治療薬ですが、アモキシシリンの尿排泄を抑制するという薬物相互作用があり、併用によりアモキシシリンの血中濃度を高く維持することが可能です。
プロベネシドを使用することでペニシリンが排泄されにくくなるため、病原菌に対抗しやすくなります。
●薬剤の適応や日本性感染症学会のガイドラインにはない投与方法ですから担当医個々の判断が求められますが、1日3gなどの高用量のアモキシシリンを1日750mgなどのプロベネシドと併用して早期顕症梅毒や早期無症候梅毒には2週間、晩期もしくは罹患時期の分からない無症候梅毒には4週間の投与を推奨する報告もあり、このアモキシシリンにプロベネシド併用する医療機関が増加傾向にあります。
ここで、高用量アモキシシリン+プロベネシドの駆梅療法を紹介いたします。
●早期顕症梅毒・早期無症候梅毒では1日3gの高用量アモキシシリンと1日750mgのプロベネシドの併用療法を行います。2週間内服投与します。
●晩期無症候梅毒・罹患時不明の無症候梅毒では1日3gの高用量アモキシシリンと1日750mgのプロベネシドの併用療法を行います。4週間内服投与します。
⑬高用量アモキシシリン+プロベネシド 駆梅療法
確かに"現在、日本ではベンザチンペニシリンが発売されておらず、世界的に行われている標準的な治療を行うことができません"
しかしながら、最近の梅毒患者の急増によりペニシリン系の筋肉注射を見直す気運が高まっています。
●2017年1月23日に「エイズ・性感染症に関する小委員会」が開催されました。〝梅毒に対するペニシリンGの筋注“について、国内でも使えるようにしてはどうかという提案がありました。
●現在、厚労省は、梅毒の感染拡大に対処するため、1回の筋肉注射で済むペニシリンGの必要性を性感染症の予防指針に盛り込む方向で調整中です。
●しかしながらまだまだ「(ペニシリンGも含めた)国際標準で使用されている薬剤が国内でも使えるようにすることが重要だという認識を共有した」というレベルであることがわかりました。
⑭梅毒治療にペニシリンG(筋注)
以上。
梅毒血清反応の結果について
①梅毒の病原体名ある泌尿器科医より梅毒に関する質問がありましたので報告いたします。
患者さんは31歳の男性です。
結婚していてパートナーの奥様も梅毒に罹患していたそうです。
お二人とも標準的な駆梅療法をすでに行っております。
今回は旦那さんの梅毒相談です。
梅毒血清反応の結果(成績)は時系列で以下の写真(図)にお示しいたします。
②梅毒血清反応の結果(成績)
体重は約120kgで巨漢です。梅毒に関する臨床症状は特になく、
たまたま人間ドックで梅毒の罹患を知らされたそうです。
感染した時期がわからない無症候梅毒ということですね。
③梅毒の分類
体重が120kgと巨体ですから、アモキシシリン製剤のパセトシンの投与量を増やし、2016年4月から駆梅療法としてパセトシン2.0gを 8週間投与し治療は終了いたしました。
④梅毒の治療
2ヶ月後(6月)に梅毒血清反応検査を行い数値は順調に低下いたしました。
5カ月後(9月)には経過は良好で抗体価はさらに低下いたしました。
しばらく振りに来院され、梅毒罹患後、約1年になりますが、
梅毒血清反応検査をしましたらTP法がかなり高値になっていました。
とりあえず再検査を至急、行い抗体価の変動をみるように指示いたしました。
⑤梅毒血清反応
また検査法は前回までと同じ方法なのでしょうか?
これは検査センターや試薬(検査キット)が変わると比較できなくなるからです。
⑥梅毒血清反応 定性検査の結果の解釈
治療は副作用はないと思われますので、行った方が安心できると考えます。
再感染の機会はなかったのかの問診も必要です。
もし感染機会があればそれが原因で再び感染(再感染)したとも考えられます。
梅毒は終生免疫がなく再感染いたします。
以上、ご検討ください。
講演「アトラスで見る梅毒の臨床現場」
2017年3月9日(木) 19:30~21:00
都筑区医師会会議室 2階で私の「梅毒」に関する講演がありましたので
報告いたします。
主催:都筑区医師会泌尿器科医会
共催:都筑区医師会皮膚科医会、産婦人科医会、内科医会
司会:深澤 立先生
座長:木村 明先生(木村泌尿器科皮膚科 院長)
【講演】
『アトラスで見る梅毒の臨床現場』
宮本町中央診療所 院長 尾上泰彦
①第9回都筑区医師会泌尿器科医会学術集会
「梅毒」という病名の由来は第2期の赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の
果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていました。
いつの間にか「楊」の字が取れて、
次第に梅瘡⇒黴毒⇒梅毒と変化したと言われています。
また、梅毒はクリストファー・コロンブス一行が1492年、新大陸の
発見と共に❝原住民の風土病❞をヨーロッパに持ち帰ったとされ、
「悪魔のお土産」といわれました。その後、爆発的に全世界に拡がり、
日本への伝来は永正九年(1512年)で、
約20年足らずで日本にやってきました。
恐るべし、セックスのパワー。
梅毒のヨーロッパ伝播の通説であります。
②恐るべし『悪魔のお土産』梅毒?
本講演では、私が経験した梅毒症例を中心に臨床写真を提示しながら
視診技術のポイントについて述べました。
ご存知の通り「今や、梅毒はパンデミック状態」であり、
大きな社会問題になっております。
忘れられていた梅毒。
昔の病気と思われていた梅毒。
若い医師が見たことがない梅毒。
そういう意味では再興感染症でもあります。
臨床医は忙しい。多くの医師は届けない。
届け出は氷山の一角。
梅毒は全数報告で、どんな医師でも「梅毒」と診断したら
都道府県知事に7日以内に届け出る義務があります。
それでも梅毒は2011年以降、大都市を中心に徐々に増加し、
現在、アウトブレイクしています。
③梅毒の発症届け出 診断後7日以内に!
2016年(12月31日現在)の梅毒患者数は4518人と
激増しています。
それでは何故、梅毒が増加しているのか?
何故、この5年間で梅毒が急増したのか?
しかも、なぜ、若い女性に急増しているのか。
確かに、先天梅毒児も毎年増加傾向を示し、
胎児感染で重い障害の恐れもあり、社会的に危惧されています。
疫学調査によりますと、年齢群別報告数の男性のピークは20~40歳代です。
それに比して、何故か、女性のピークは20代前半の20~24歳にあります。
その原因、理由はわかりません。
④梅毒患者の報告数推移2007~2016年(12月31日現在)
しかも、この謎に迫る疫学的調査は、
内容があまりにもプライベートでプライバシーにかかわるため
調査の仕様がありません。
日本人の性行動様式が急に変わることは考え難い。
しかし、若い20代前半の女性に急増しています。
⑤何故、ここまで急増したのか?
急増の原因は、内的因子では考え難く、外的因子も考えなければなりません。
2017年1月6日の 讀賣新聞夕刊では
「梅毒患者5年で5倍」と報道されました。
この原因として一説に、2016年外国人旅行者が、初めて
2400万人を超えました。
中国などアジア地域の旅行者が大幅に増加しています。
これが原因の一因なのかもしれません。
日本政府観光局の報告によりますと来日する中国人は、
2008年に初めて100万人を突破し、徐々に増加し、
2016年には637万人以上と急伸しています。
この外的要因が原因とは、根拠がないためはっきりとは
言えませんが、 一因の可能性もあります。
確かに来日する中国人が急伸しています。
中国衛生部が発表した「全国法定伝染病疫情状況」によりますと、
2013年度の梅毒感染者数は406,772人で、
これは15年前の10倍以上とのことであります。
また、中国国家衛生・計画出産委員会HPによりますと、
2015年のみの中国の梅毒患者数は433,974人
(参考:2015年の日本の患者数は2,698人)です。
つまり、中国における梅毒患者数は日本をはるかに
上回る増加をみせています。
中国の総人口は日本の11倍以上ありますが、
梅毒患者数は日本の160倍超といいますから、
梅毒の急伸状態には驚きであります。
こうした経路で日本の若い女性に梅毒患者が増え、
日本での感染が増えたという可能性は考えられます。
⑥梅毒流行の原因?
また、2014年の中国 江西省南昌におけるストリートガールの
梅毒血清反応検査の陽性率を見てみますと
40%以上とかなり高率で驚きを隠せません。
⑦江西省南昌における娼婦の梅毒血清反応陽性率
まさに梅毒に国境はないともいえます。
梅毒の病因については写真を参考にしてください。
⑧梅毒 Syphilis
梅毒の病原体である梅毒トレポネーマはスピロヘータ科のトレポネーマ属に属するグラム陰性菌です。
⑨梅毒の病原微生物 はSpirochaeta pallidum
梅毒トレポネーマの特徴は写真を参考にしてください。
⑩梅毒トレポネーマの特徴
梅毒の分類は
1.先天梅毒、後天梅毒
2.顕症梅毒、無症候梅毒
3.早期梅毒、晩期梅毒
の3つに分類されています。
臨床症状としては第1期に生じる初期硬結はめったに遭遇しません。
硬性下疳は比較的多く経験できます。
硬性下疳は、周辺が隆起し、軟骨様の硬さがあり疼痛を伴わないのが特徴です。
女性の硬性下疳は比較的稀です。
鼠径部リンパ節無痛性腫脹は腫脹はありますが、
痛みがないので注意しなければなりません。
⑪硬性下疳は周辺が隆起し、軟骨様の硬さがあり疼痛がない。
第2期(バラ疹、梅毒性乾癬、脱毛、扁平コンジローマ、
口腔咽頭粘膜斑など)になりますと、梅毒は非常に多彩な症状を呈します。
⑫症例:女性 第2期 梅毒性乾癬 手掌・足底
⑬症例:男性 第2期梅毒 口腔咽頭粘膜斑
第3期、第4期の臨床像、悪性梅毒。HIV感染症との関係。
⑭第3期 結節性梅毒疹 ペニシリンのない時代!
眼にも梅毒は感染します。
梅毒性ぶどう膜炎、梅毒性網膜炎が代表的です。
眼科領域でもHIVとの併発症例も多く報告されています
⑮眼の梅毒感染
梅毒の診断・検査、治療さらには
臨床医の落とし穴について解説しました。
梅毒の感染予防の基本ですが、
臨床現場での患者への説明と指導が最も大切です。
また、梅毒の感染予防の基本は
1.不特定多数の人とセックスをしない.
2.最初から最後までコンドーム.
3.オーラルセックスも安全ではない.
4.この人は大丈夫と思いこまない.
5.不安行為があれば時期をみて検査を受ける.
6.感染がわかれば徹底治療.
⑯梅毒の予防 感染予防の基本
これらの臨床現場のアトラスを提示しながら紹介・概説しました。
⑰座長:木村 明先生と共に
参加された先生方は非常に熱心に聴講されていました。
泌尿器科医、皮膚科医、産婦人科医、内科医と幅広く参加されていました。
司会の深澤 立先生(泌尿器科医会会長)には企画の段階から大変お世話になり、
深く感謝申し上げます。
以上、報告いたします。
梅毒血液検査「偽陽性か既感染の判断 」
30代後半の男性から梅毒の血液検査の判断について相談がありましたので報告いたします。
①クリストファー・コロンブス1492年新大陸発見
【相談内容】
30代後半の男性です。
お世話になります。
梅毒の検査で偽陽性か既感染の判断について教えてください。
梅毒の血液検査前の感染症検査でRPR陰性、TPHA陽性(80倍)と
いう結果を得ました。
皮疹や初期硬結を疑う梅毒の症状はありませんでした。
性風俗は年に数回、性交渉は数回程度です。
この血液検査の結果から、通常だと既感染ということになりますが、
私の成績は抗体価も低く、TPHAも稀に偽陽性があると言われていますが、
これを判別する方法はありますでしょうか。
ちなみに二ヶ月後に再検査して同じ結果を得ました。
またFTA-ABSは(2+)でした。
サワシリンは溶連菌感染で10日間内服したことはあります。
また、この数年間、特に自覚症状はありませんが、それでも感染していることはよくあるのでしょうか?
なお、FTA-ABSは(2+)という結果は偽陽性ではなく既感染を意味するのでしょうか?
②梅毒 Syphilis 名称の由来
③梅毒血清反応
【回答】
貴男の血液検査の結果から推察するに、数年前の既感染ということで、
すでに感染力はほとんどなく
一般日常生活、性的行動を行なっても
先ずは問題はないと考えられます。
しかし、FTA-ABSは(2+)ということは、偽陽性ではなく既感染を意味します。
貴男の場合、症状がない無症候梅毒で感染時期が不明ですが、検査成績でRPR陰性、
TPHA
陽性(80倍)で
FTA-ABS(2+)
ですから既感染と判断いたします。
ただ、感染力があるか無いないかというと、はっきりとは分かりません。
④梅毒血清反応
貴方が梅毒の治療をしたことがない(未治療)のであれば
サワシリン1日量、1500mg(250mg,6cap)を28日間、服用され、
安心されたら如何ですか。
なお、この治療は日本性感染症学会 治療ガイドラインの標準的な治療です。
その後は、定期的に検査されて経過観察されてください。
お大事になさってください。
⑤梅毒血清反応 定性検査の結果の解釈
さて、ここで、梅毒の血液検査についてお話しておきます。
梅毒血清反応には、カルジオリピン(リン脂質)を抗原とする脂質抗原試験と、
TP(Treponema pallidium)を抗原とするTP抗原試験があります。
脂質抗原試験には、STS法と呼ばれる緒方法、凝集法、ガラス板法、などがありますが
現在実施されていません。
RPRカード法(倍数希釈法)は用手操作で行い、結果判定は目視で行うために客観性に
乏しいという問題があり、代わりにRPR自動化法は自動分析器で自動測定が可能な
新しい検査方法であり普及しつつあります。
TP抗原試験には、TPHA法、FTA-ABS法があります。
脂質抗原試験(STS法)では、生物学的偽陽性(BFP)の出現することがあり、
その頻度は陽性の10~20%といわれています。
⑥梅毒の治療
このBFPを除外するために、TP抗原試験が開発され広く用いられています。
FTA-ABS法は患者血清を非トレポネーマの吸収液で吸収することにより特異性を
高めた方法で、鋭敏性、特異性ともに優れた検査法として認められています。
なお、特異性が極めて高いので、梅毒の診断には有用ですが、
治療効果の判定などには不適当とされています。
その理由として、一度抗体価がある程度以上に上昇してしまうと、
治療が行われても抗体価の低下が安易にはみられずに、
また半永久的に陽性を持続するからです。
⑦桜咲く!
一般的には、STS法のうちの二法をまず実施します。
その結果、一法もしくは二法とも陽性の場合はTPHA法で確認します。
TPHA法が陰性の場合はFTA-ABS法で最終確認をします。
多くの検査室ではSTS法と同時にTPHA法を実施しています。
初感染の場合は、TPに感染してから約1週間程でTPに対するIgM抗体が生産されて、
その後にIgG抗体が生産されます。
陽性になる順序は、STS法とFTA-ABS法がほぼ同時で、
TPHA法が最も遅くに陽性になります。
また、STS法が陽性で、TPHA法が陰性のときは、感染初期が考えられ、
3~4週間後に再度検査を実施し、
感染初期またはBFPかの判定をする必要があります。
⑧梅毒は相手が増えればリスクも増える!
講演「泌尿器科医のためのアトラスで見る これが梅毒だ」
2017年2月25日(土) 18:15~19:15京王プラザホテル 本館 4階『花』で私の特別講演がありましたので報告いたします。
【特別講演】
『泌尿器科医のためのアトラスで見る これが梅毒だ』
宮本町中央診療所 院長 尾上泰彦
①第44回東京泌尿器科医会学術集会
「梅毒」という病名の由来は第2期の赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていました。
いつの間にか「楊」の字が取れて、次第に梅瘡⇒黴毒⇒梅毒と変化したと言われています。
また、梅毒はクリストファー・コロンブス一行が1492年、新大陸の発見と共に❝原住民の風土病❞をヨーロッパに持ち帰ったとされ、「悪魔のお土産」といわれました。
その後、爆発的に全世界に拡がり、日本への伝来は永正九年(1512年)で、約20年足らずで日本にやってきました。
恐るべし、セックスのパワー。
梅毒のヨーロッパ伝播の通説であります。
本講演では、私が経験した梅毒症例を中心に臨床写真を提示しながら視診技術のポイントについて述べました。
②吉原病院 花魁 検診風景
ご存知の通り「今や、梅毒はパンデミック状態」であり、大きな社会問題になっております。
忘れられていた梅毒。
昔の病気と思われていた梅毒。
若い医師が見たことがない梅毒。
そういう意味では再興感染症でもあります。
臨床医は忙しい。多くの医師は届けない。
届け出は氷山の一角。
梅毒は全数報告で、どんな医師でも「梅毒」と診断したら都道府県知事に7日以内に届け出る義務があります。
それでも梅毒は2011年以降、大都市を中心に徐々に増加し、現在、アウトブレイクしています。
③梅毒は全数報告
それでは何故、梅毒が増加しているのか?
何故、この5年間で梅毒が急増したのか?
しかも、なぜ、若い女性に急増しているのか。
確かに、先天梅毒児も毎年増加傾向を示し、胎児感染で重い障害の恐れもあり、社会的に危惧されています。
疫学調査によると、年齢群別報告数の男性のピークは20~40歳代です。
それに比して、何故か、女性のピークは20代前半の20~24歳にあります。
その原因、理由はわかりません。
しかも、この謎に迫る疫学的調査は、内容があまりにもプライベートでプライバシーにかかわるため調査の仕様がありません。
日本人の性行動様式が急に変わることは考え難い。
しかし、若い20代前半の女性に急増しています。
急増の原因は、内的因子では考え難く、外的因子も考えなければなりません。
④ 2017.1.6 讀賣新聞夕刊「梅毒患者5年で5倍」
一説に、2016年外国人旅行者が、初めて2400万人を超えました。
中国などアジア地域の旅行者が大幅に増加しています。
これが原因の一因なのかもしれません。
⑤外国人旅行者数が2400万人を超えた。
日本政府観光局の報告によりますと来日する中国人は、2008年に初めて100万人を突破し、徐々に増加し、2016年には637万人以上と急伸しています。
この外的要因が原因とは、根拠がないためはっきりとは言えませんが、一因の可能性もあります。
⑥来日する中国人 急伸!
中国衛生部が発表した「全国法定伝染病疫情状況」によりますと、2013年度の梅毒感染者数は406,772人で、これは15年前の10倍以上とのことであります。
また、中国国家衛生・計画出産委員会HPによると、2015年のみの中国の梅毒患者数は433,974人(参考:2015年の日本の患者数は2,698人)です。
つまり、中国における梅毒患者数は日本をはるかに上回る増加をみせています。
⑦2015年の中国の梅毒患者数
中国の総人口は日本の11倍以上ありますが、梅毒患者数は日本の160倍超というから、梅毒の急伸状態には驚きであります。
こうした経路で日本の若い女性に梅毒患者が増え、日本での感染が増えたという可能性は考えられます。
⑧梅毒流行の原因?
梅毒に国境はないともいえます。
⑨めったに遭遇しない初期硬結
梅毒の病因、分類、臨床症状(第1期:初期硬結、
硬性下疳、鼠径部リンパ節無痛性腫脹)、
⑩硬性下疳は周辺が隆起し、軟骨様の硬さがあり疼痛がない。
⑪女性の硬性下疳は比較的稀である。
第2期(バラ疹、梅毒性乾癬、脱毛、扁平コンジローマ、
口腔咽頭粘膜斑など)、
⑫梅毒は非常に多彩な症状を呈する!
⑬症例:女性 第2期 梅毒性乾癬 手掌・足底
⑭症例:男性 第2期梅毒 口腔咽頭粘膜斑
第3期、第4期の臨床像、悪性梅毒。HIV感染症との関係。
眼科領域の梅毒。輸入感染症である軟性下疳の臨床像。
⑮梅毒の治療 治療ガイドライン 2016
梅毒の診断・検査、治療、臨床医の落とし穴。
そして梅毒の感染予防の基本。
⑯梅毒の予防 感染予防の基本
これらの臨床現場のアトラスを提示しながら紹介・概説しました。
「東京の若い女性の梅毒患者、なぜ5年で25倍の激増?」
http://biz-journal.jp/2017/03/post_18252_3.htmlhttp://biz-journal.jp/2017/03/post_18252_3.htmlWeb上の「Business Journal」に、私が取材を受けた記事がUpされましたので以下の如く報告いたします。
①「東京の若い女性の梅毒患者、なぜ5年で25倍の激増?」
東京の若い女性の梅毒患者、なぜ5年で25倍の激増?
中国人観光客の「夜の爆買い」が原因か?
重症化すれば「死に至る恐ろしい病」として、古くから知られてきた性感染症「梅毒」。
名軍師の黒田官兵衛をはじめ、歴史上の戦国武将のなかにも梅毒にかかって命を
落としたとされる例は多い。
この梅毒の感染者が近年、日本国内で急激に増加し、大きな問題になっている。
国立感染症研究所は今年1月、昨年1年間の梅毒患者数が4518人に上ったと発表した。
梅毒の感染者が4000人を超えたのは、1974年以来42年ぶりのことだという。
なぜ今、梅毒の感染者が急増しているのか。性感染症の臨床分野の権威であり、
梅毒の症例について詳しい泌尿器科専門医の尾上泰彦氏は、
「現在の梅毒の患者数は、氷山の一角にすぎません」と指摘する。
「東京の若い女性」の梅毒患者は5年で約25倍に!
梅毒が最初に流行したのは15世紀末のこと。
新大陸を発見したクリストファー・コロンブスが現地の風土病だった梅毒を
ヨーロッパに持ち帰り、それによって世界中に広まったというのが定説だ。
日本でも江戸時代に遊郭が発達したことで広がり、その後、1940年代には
感染者が20万人を超えるなど爆発的に流行した。
②梅毒の年次推移
しかし、第二次世界大戦後の45年に抗生物質のペニシリンが民間に
開放されたことで梅毒の患者数は一気に減少。
90年代には年間の患者報告数が600人を下回るなど、長らく横ばい状態にあった。
ところが、2011年ごろから再び増加傾向に転じると、患者数は年々増加。
16年には、ついに4500人を突破してしまったのだ。
③参考
「梅毒の初期症状は性器のしこりやリンパ節の腫れが見られ、
進行すると体に発疹が現れます。しかし、患部には目立った痛みがなく、
見過ごしてしまいやすいのが特徴です。
さらに、症状がまったくない『無症候梅毒』のケースも多い。
自覚症状のないまま病気が進行してしまう場合もあるため、
潜在的な患者数はもっと多いと考えられます」(尾上氏)
なかでも目立つのが、都市部に住む若い女性の感染だ。
国立感染症研究所が昨年1月から11月の患者を分析したところ、
約3割が女性で、そのうちの約半数が20代だったという。
同研究所の15年の集計データを見ても、全国の患者数2690人のうち、
20~24歳の女性が240人と約1割を占めている。
そして、そのうち約4割の99人が東京都に住む女性なのだ。
10年には東京都に住む20~24歳の女性の患者数はわずか4人だったので、
5年間で約25倍に激増したことになる。これは、もはや由々しき事態といってよく、
尾上氏は「まさに『パンデミック(広範囲におよぶ流行病)』といえるでしょう」と語る。
実際、事態を重く見た厚生労働省は、若い女性に親しみのある
「美少女戦士セーラームーン」をキャラクターに起用して啓発ポスターや
特製コンドームを作成。
「検査しないとおしおきよ!!」とのキャッチコピーで予防や早期検査を呼びかけている。
④「美少女戦士セーラームーン」の啓発ポスター
梅毒流行は中国人観光客の“夜の爆買い”が原因?
それにしても、なぜ現代の日本で梅毒が再び流行し始めたのだろうか。
患者数増加の背景はまだわかっていないが、一説として指摘されているのが、
訪日中国人観光客の増加との因果関係だ。
日本政府観光局の統計によると、訪日中国人観光客が初めて100万人を
突破したのは08年。彼らによる家電製品や日用品の“爆買い”が話題となり、
16年には訪日中国人観光客が初めて600万人を超えた。
⑤いつまで続く 中国人の爆買い!
そして、同時に増えたのが、実は中国人観光客たちの“夜の爆買い”だという。
「昔から、梅毒は夜の世界と切っても切れない関係にある病気です。
私は、以前から性感染症ハイリスク群のCSW(コマーシャルセックスワーカー)
の患者を多く診察してきました。
彼女たちの治療をしていると、訪日中国人観光客の増加に合わせて、
数年前から中国人団体客の話を聞くことが非常に多くなったのです」(同)
中国国家衛生・計画出産委員会が作成し、東京大学医科学研究所・
アジア感染症研究拠点がホームページで公開している
「2015年全国法定伝染病流行状況」によれば、中国の梅毒感染者数は
15年で43万3974人、そのうち死亡症例数は58人。
法定伝染病で報告発症例がもっとも多いのはウイルス性肝炎で、
次が肺結核、これに続くのが梅毒だ。
⑥梅毒に国境はない!
「中国の総人口は日本の約11倍ですが、梅毒患者は日本の約160倍も
いるのですから、驚異的な数字です。中国人観光客が感染経路というのは
ひとつの仮説ではありますが、日本人の性事情が数年間でここまで急激に
変化するとは考えにくい。なんらかの外的要因があると考えるのが、
自然ではないでしょうか」(同)
セックスワーカーには、夜の性風俗だけではなく昼間の仕事もしている女性も多い。
尾上氏は「彼女たちが夜の仕事で感染し、無自覚にパートナーに感染させている
可能性は十分に考えられます」と指摘する。
コンドーム着用でも完全に予防できない梅毒
しかも、恐ろしいのは、梅毒が誰でも感染し得る病気だということだ。
尾上氏によれば、「梅毒は性器同士の接触だけでなく、
オーラルセックスでも感染します。コンドームの着用だけでは、
万全な予防にはなりません。性交渉を持つ以上、誰にでもリスクはあります」という。
⑦梅毒の予防!コンドーム着用でも万全ではない!
では、再び流行し始めた梅毒から身を守るにはどうすればいいのか。
もし心当たりがあるなら、まずは早めに検査をすることが大切となる。
梅毒感染の有無がわかる梅毒血清反応検査は各種病院で受けられるほか、
自宅でできる検査キットも販売されている。
「まさか自分が……」と他人事のように考えるのではなく、
それぞれが当事者意識を持つことが必要だという。
「最近では、結婚前の女性が妊娠・出産に影響のある疾患があるかを調べる
『ブライダルチェック』もメジャーになりました。
結婚だけではなく、新しいパートナーができたときなど、
人生のターニングポイントに『節目検診』として検査を受けることを、
男女ともにおすすめします」(同)
そして、万が一感染してしまった場合は、しかるべき医療機関で
「適切な処置を受けてほしい」と尾上氏は語る。
「40歳以下の若い医師には梅毒患者を診察した経験がない人も多い。
そのため、なかには誤った診察をして治療を遅らせてしまうケースもあります。
戦前と違い、現在の梅毒は初期段階で治療をすれば必ず完治する病気です。
感染拡大を防ぐには、産婦人科、皮膚科、泌尿器科などの医師たちが
梅毒の初診に対して適切な処置を行うことが重要となるでしょう」(同)
⑧梅毒の治療
梅毒はもはや「過去の性感染症」ではない。
この病気を再び大流行させないためには、
一人ひとりの意識の向上こそが最良の対策となるのだ。
(文=森江里子/清談社)
ニュースサイトで読む:
http://biz-journal.jp/2017/03/post_18252_3.html
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ありがとうございました。
高齢者梅毒再発の可能性(女性)
2017年2月10日に本ブログに掲載されました≪高齢者の梅毒: 「高齢者梅毒再発の可能性 (女性)」≫について
相談者からご返信がありましたので報告いたします。
①世界らん展 2017 東京ドーム
お忙しいところ、早々にお返事をいただきありがとうございました。
再燃の可能性は無いとのこと。安心いたしました。
最初に、罹患歴があるとおっしゃった先生が「治療するほどではない。」と
いう言い方をされたので、素人考えで、水疱瘡のように、感染させるほどの
強さはないまま何十年も身体の中で眠っていて、抵抗力が無くなると再燃し、
病原体の宿主に少しずつ悪さをする可能性があるのではと思っていました。
そのため、原因不明でCRP高値になって体調不良になるたびに、再燃の
心配をしていました。
今思えば、その時の治療には無関係にも関わらず、わざわざ娘に罹患歴を
告げた意味がわかりません。
告げられた場所も、ナースセンターの片隅で他の患者さんも近くにいるところでした。
普通の主婦であった母が罹患歴があると聞き少なからずショックを受けましたが、
「心配するな。」とおっしゃった先生が「今でこそ少ないが、戦中戦後の方には多かった」
と言われたことで自分を納得させ、また、再燃の心配ばかりして、
不思議に日常生活での感染の心配はしませんでした。
しかし、原因不明で体調不良が続く母の姿を見るのがかわいそうで辛く、
主治医の先生には聞きづらく、ネットで検索しても高齢者の再燃といった
内容は見つからず途方に暮れていました。
このような信頼できる医療相談の場所があったことに本当に感謝します。
尾上先生、ありがとうございました。
②梅毒血清反応検査
以上のように身に余る感謝の言葉をいただき、大変うれしく思います。
梅毒の血清反応検査は駆梅療法を行っても、何十年も前の過去の
歴史(罹患歴)をほじくり返すような結果になってしまうことが大変多くみられます。
ほとんど意味のない検査です。がこれしか検査の方法がないのです。
困ったものですね。
ある専門家はこのような患者さんの「心を傷つける検査」はやらない方が良い、
とも言っています。
お大事になさってください。
④梅毒の治療はいつまで続けるの?
高齢者の梅毒:「高齢者梅毒再発の可能性 (女性)」
高齢の母親の梅毒再発の可能性について息子さんから 、
相談がありましたので報告いたします。
【相談内容】
86歳の母親のことでご相談します。
10年ほど前に体調不良で入院した時の血液検査の結果から、
治療が必要な値ではないが、以前梅毒に罹患していたことがあると言われました。
その医療機関では嘔吐や食欲不振に応じて、どんどん薬を増やすだけで、
母は末期癌患者のように痩せてしまい、その医療機関には不信感を持つようになりました。
さすがに本人には梅毒のことは聞けないまま、かかりつけにしていた整形外科の先生に、
高齢者の梅毒再発の可能性を問い合わせたところ、
可能性は低いので心配しない方が良いと言われました。
結果的に転院し、服用していた心臓の薬の副作用だということで、
服用を中止したら食欲も戻って元気になり、梅毒のことは忘れていました。
①昔の著名人には梅毒が多い!
ここ数年、原因不明でCRP高値、微熱が続くことが多く、軽い肺炎や、
レントゲンには写らないけれど気管支炎か肺炎の可能性?
と言われ入院することが度々ありました。
毎回、抗生物質の点滴や服用の治療を受けました。
今回も、半月以上続く発熱(36.8~37.5~38.3 1日で変動あり)
CRP8.4(10月1.75で徐々に上昇気味でした)で入院しましたが原因不明です。
今回、大変気になることが一つあります。
年明けごろから、右下唇の端1cmほどが、はみ出した口紅を拭き取ったような感じで、
粘膜部分がはみ出したように少し赤く腫れていました。
本人は、痛くもかゆくもないし大丈夫と気にしていませんでしたが、
10日あまりすると、潰瘍ほどではないのですが、ちょっと湿ったような感じ見えたり
かさっと見えたりしながら赤みが強くなってきました。
全体が赤くなく中ほどが少し肌色だったので押してみても化膿しているような
痛さは無いとのことでした。
最終的には大きな黒いかさぶたになり、数日で剥がれ落ちました。
今回の診療で、このことは先生に伝えましたが全く聞いていらっしゃらない感じでした。
2年ほど前に入院した時も下肢に何箇所も赤くなった後かさぶたになることがあり、
ドキッとしましたが老人性の湿疹だと言われました。紫斑とは違います。
ワーファリンを服用しているため、紫斑はできやすいのですが、
今も腕に何箇所か1~2cmの紫斑はあります。薔薇疹の写真をみるとドキッとします。
質問です。 薬で免疫力の低下した高齢者の治療済みの梅毒が再発する可能性はありますか?
CRP高値の場合は梅毒感染が疑われるという記事を読み不安になっています。
心臓とリウマチ、甲状腺と多剤服用中です。
リウマトレックスを何年も服用していましたが、一昨年原因不明でCRP11超え
(それまでは1以下にコントロール)で中止して、
プログラフカプセルとアザルフィジンに変更されましたが、免疫力は健常な方より
抑えられていると思います。プレドニゾロンも服用中です。
原因不明でCRPが高値になるたびに、梅毒再燃の可能性はないのかと心配になります。
よろしくお願いします。
②葉キャベツ
【回答】
先ず言葉の意味ですが、「再発」とは、また新たに感染したということになります。
お母さまには、そういうことは考えられません。
ですから「再発」ではなく、貴方のお母さまに、梅毒の「再燃」の可能性はないのかということになります。
10年ほど前に体調不良で入院した時の血液検査の結果で、
治療が必要な値ではないが、以前梅毒に罹患していたことがあると言われたという事ですが、
お母さまが梅毒に感染した時期がわかりません。
恐らく若い時に感染したと推測いたします。
それに梅毒の治療済み(駆梅療法終了)ということであれば、何らご心配ありません。
また、お母さまは入院することが度々あり、毎回、抗生物質の点滴や服用の治療を受けたということですが、
これは 抗生物質の点滴や服用の治療をしたということは、梅毒の治療もしたということにもなります。
ただし、内容が不明なため梅毒に対し適切な抗生物質とはいえませんが、梅毒の原因のスピロヘータは
原始的な細菌で多くの抗生物質に反応いたします。
ですから、知らないうちに梅毒の治療もしたということにもなります。
CRPが高値になるのは何らかの感染症・炎症があるのでしょうが、分からないということですね。
このことについては、内科の主治医に経過観察してもらってください。
かかりつけの整形外科の先生に、高齢者の梅毒再発の可能性を問い合わせたところ、
「可能性は低いので心配しない方が良い」と言われたそうですが、その通りです。
③臨床医の落とし穴!
一般的に梅毒は無治療の第1期及び第2期は感染力ありますが、
適切な治療を行っていれば、約4数週間ほどで感染力はなくなります。
また、陳旧性梅毒の場合は、梅毒血清反応で抗体は陽性になる場合があります。
しかし、梅毒の原因となるトレポネーマ病原体はいないと考えてください。
ですから、一般の日常生活で感染することはありません。
貴方のお母さんのように、高齢者で過去に感染したしたことを示すTPの抗体を認めることはがあっても、
現在、感染させる病原体を持っている高齢者はいないと考えてください。
④梅毒 :スピロヘータ科 トレポネーマ属に属するグラム陰性菌
⑤梅毒トレポネーマの特徴
梅毒治療 ペニシリンG解禁の方向性も
CareNet 日刊 医療ニュースに梅毒治療に関する情報が掲載されました ので報告いたします。
公開日:2017年2月1日
『 梅毒治療、指針にペニシリン解禁の方向性も
―厚労省、厚科審小委に論点案提示』
厚生労働省は23日、厚生科学審議会感染症部会のエイズ・性感染症に 関する小委員会に対し、1回の筋肉内注射で済む梅毒治療薬「ペニシリンG」 の効果などを検討する論点案を示した。
海外では同剤による治療が標準的だが、国内では副作用を懸念して行われていない。
ただ、1回の注射で済むため、複数回の投与が必要な従来の薬と比べ、 途中で治療を止める患者が減ることが期待できる。
梅毒の感染拡大に対処するため、厚労省と小委員会は今後、同剤の“国内解禁”の 必要性を性感染症の予防指針に盛り込む方向で調整する。
①梅毒の治療薬などに関する論点案を議論した 小委員会(23日、厚労省)
梅毒の患者報告数は男女ともに増加傾向が続いている。
国立感染症研究所がまとめた患者報告によると、 2016年の患者報告数は前年比約70%増の4518人で、 感染症法に基づき1999年から始まった感染症発生動向調査で過去最多の 報告数を記録した。
梅毒の治療薬については、海外では筋肉内に注射して1週間ほど効果が 持続する「ペニシリンG」を使うことが標準的な治療(梅毒1期と2期) とされている。
しかし、日本国内では、過去にペニシリンアレルギー によるショック死が発生したため、筋肉内への注射は行われていない。
この日の会合で厚労省の担当者は、 「現在日本で承認されている梅毒の治療薬は、複数回の治療が必要であり、 脱落する患者がいる」といった課題を挙げ、 「国際標準で使われている治療薬が国内でも使えることが重要であることを (予防指針に)記載してはどうか」と提案した。
委員からは、1回の治療で済む同剤を評価する意見が出た一方、 梅毒と診断できない若い医師がいることを懸念する声も出た。
こうした意見を踏まえ、厚労省は今後、同剤の重要性だけでなく、 梅毒の診断や治療に関する最新の情報といった医療者向けの啓発活動を 重視する考えも指針に盛り込む方向で、委員の意見を集約する方針。
2月下旬に予定している次回の会合までに同剤に関する事項を盛り込んだ 指針の改定案をまとめたい考えだ。 (2017年1月23日 新井哉・CBnews) 以上。
②日本で現在、梅毒治療に用いられている内服薬
③米国CDC 2015年のガイドライン
④日本における梅毒治療の問題点
梅毒の再感染について
30代後半の男性から梅毒の再感染について相談がありましたので報告いたします。【相談内容】
2016年12月7日に、尾上先生に相談した30代後半の男性です。
(概要)13年前に梅毒に感染し治療済です。
が、新規に梅毒に再感染しました。
梅毒(+)でTP抗体定量354.0U/ml(再検同値)、
RPR定量276.0R.U.(希釈再検済 20倍)で、
アモキシシリンカプセル250を1日1錠4回を処方され、1カ月間服薬しました。
このたび血液検査をしました。
結果は、TP抗体定量16324.0U/ml(希釈再検済 20倍)
RPR定量35.0R.U.(希釈再検済 5倍)でした。
①梅毒の診断・検査
主治医の先生は、TP抗体が急激に上昇している意味がわからないとおっしゃっており、念のため再度28日分のアモキシシリンカプセル250を1日1錠4回を処方されました。
今回、尾上先生に教えていただきたいことは、TP抗体値が急激に上昇した理由を教えてください。
また、前回の検査報告書には、TP抗体定量の欄外に、(再検同値)と記載されていたのに対し、今回は(希釈再検済 20倍)となっておりました。
どのような違いなのか教えて頂きたいです。
あと、尾上先生は、梅毒に関する各投稿に対して1カ月間アモキシシリンカプセル250を服薬すれば、感染能力は消滅し完治と判断できるとご回答されておりますが、私も同じように完治と判断できるのでしょうか?
その際は、処方された薬はどうしたらよいのでしょうか?
彼女との性行為が可能なのかも含めてご回答頂ければ幸いです。
お忙しいところ誠に恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。
お忙しいところ有難うございます。
お返事が遅いのでお身体悪いのかと心配してました。
薬は服用しており、処方の不足分として個人輸入したアモキシシリンカプセル250を追加して1日2錠×3回服用しております。
お時間できましたら、ご返信お願い致します。
②梅毒血清反応
【回答】
TP抗体値が急激に上昇した理由ですが、
通常は再感染した場合は、TPHAの値が、 急激にかなり上昇するのが特徴的です。
しかし、貴男は アモキシシリンカプセル250mgを1日4錠を処方され、1カ月間服薬した。
それなのに(服薬前)の TP抗体定量値が 354.0U/mlから
(服薬後)には16324.0U/ml とかなり上昇しています。
これは、血液検査のタイミングの問題が考えられます。
丁度、服薬、1カ月前に検査したタイミングが早かったのかもしれません。
もし、服薬しないで1~2週間後に検査していたら、もっと上昇していたかもしれません。
服薬したからTP抗体定量値が16324.0U/mlまで下がったのかもしれません。
③梅毒の診断・検査
これは、無いとは思いますが、また、貴方にその後、性的接触(性行動)があったとすれば梅毒の再々感染の可能性があります。その場合もかなり上昇いたします。
梅毒は終生免疫が得られませんから、何回でも再感染いたします。
④パーカーインク染色 ・ ライトギムザ染色
例えはあまり良くないですが、自動車事故と同じです。
事故車を修理すれば、また快適に走行できるようになります。
が、運悪く、また交通事故を起こすかもしれません。
修理して、さらにまた走行していれば事故を起こす可能性があります。
何回でも事故を起こす可能性があります。
⑤梅毒の治療 治療ガイドライン2016
ですから、感染したら駆梅療法を再スタートすれば、良いわけです。
2016年11月1日に改訂された日本性感染症学会の治療ガイドラインに則った治療をすれば問題なく完治します。
貴男の場合は、アモキシリンカプセル250mg(サワシリンなど)1日6cap/分3を8週間服用することをお勧めいたします。
1日量は4capではなく6capです。
この駆梅療法が終了すれば、もちろん、服薬の必要はありません。
日常生活、性的行動も普通にできます。
あとは、定期的(1~3カ月)毎に血液検査をして経過観察することです。
⑥臨床医の落とし穴!
貴男の別のご質問ですが、≪前回の検査報告書には、TP抗体定量の欄外に、(再検同値)と記載されていた≫
≪今回は(希釈再検済 20倍)となっておりました≫≪どのような違いなのか教えて頂きたいです≫
TP抗体定量354.0U/ml(再検同値)とは定量検査ですから検査データに誤りがあるといけないので、念のため検査センターが、同じ検査をしてくれて、同じ成績データだったという意味です。
親切に再検査をしてくれたわけです。
(希釈再検済 20倍)の意味ですが、希釈法を再度行い、その結果が2回とも20倍を示したという意味です。
従来は梅毒血清反応は人間による用手操作、目視判定による倍数希釈法が一般的でしたが最近では利便性、簡便性、効率性に勝る、自動分析装置による検査法(自動化法)が一般的になっています。
しかし臨床現場において自動化法の普及を知らない医師が直面する問題にその結果の取り扱いの解釈があります。
問題点の第一には結果の表記方法が異なるということです。
第二には倍数希釈法と自動化法がどのように対応するのか明確に示されていないことです。
希釈液法は、現在はある意味では過渡期で行っていますが、将来はやらなくなると思います。
これからは自動化法に向かっていくと考えます。
ただ、現在は医師のデータの解釈の混乱を避ける意味で参考値として付記されていると考えてください。
⑦梅毒治療の経過観察
また貴男はTP法を気になさっていますが、梅毒の経過観察はTP法ではなく、RPR法で行ってください。
RPRの値が下がっていれば、良い方向に向かっていると考えてください。
貴男の成績はRPR定量276.0R.U.(希釈再検済 20倍)がRPR定量35.0R.U.(希釈再検済 5倍)に下がっていますから、治療効果が上がっていると考えられます。
良かったですね。
お大事になさってください。
「梅毒患者5年で5倍」
ご存知の通り、梅毒がこの5年間で5倍に増加しています。このことは憂慮すべき社会問題です。
先天梅毒児が年々増加傾向にあります。
胎児感染で重い障害の恐れがあり、危惧されています。
今年に入り、3大新聞が昨年の「梅毒の激増」について報道いたしました。
2017年1月6日の讀賣新聞 夕刊紙によりますと以下の様です。
『梅毒患者 5年で5倍』
①2017年1月6日の讀賣新聞夕刊「梅毒患者5年で5倍」
昨年は4000人超 40年前と同水準
②梅毒患者について
日本性感染症学会の荒川創一理事長は讀賣新聞のインタビューに応え
「不特定多数との性接触を避け、妊娠の可能性のある女性は必ず妊婦健診を受けてほしい」
とコメントしています。
③讀賣新聞 荒川創一理事長のコメント
しかも、何故か、若い20代前半の女性に急増しています。
男性は20~40歳代にピークがある。
それに反して女性は20代前半の女性にピークがある。
④梅毒:年齢群別報告数
⑤昨年:梅毒患者全国報告数 2016年12月18日現在
ご存知の通り昨年の、IDWR (感染症発生動向調査週報)2016の50号(~12月18日まで)によりますと、梅毒患者の全国報告数は、なんと 4336人となり、大都市でみますと、東京 1610人、大阪 562人、神奈川 270人の順になっております。
梅毒患者は激増しており、2016年の全国報告数は、4500人に迫る勢いになっております。
全国報告数も、この5年間で5倍に増加しています。
この激増している原因、理由が判明していません。
国立感染症研究所も この原因はわかりませんと、言って沈黙しています。
内容が内容だけに調査のしょうがないのでしょうね。
しかしながら真に憂慮すべき社会問題です。
これは正にパンデミック状態と言っても過言ではないでしょう。
日本人の性行動のパターンが急に変化したとは考えられません。
激増したのは何故でしょうか?
以下の写真を参考にしてください。
⑥何故、ここまで急増したのか?
⑦何故、ここまで急増したのか?
⑧何故、ここまで急増したのか?
⑨梅毒流行の増加原因?
『梅毒』の日本語版 パンフレット 完成
昨年12月末のブログに、2015年9月30日に作成した「梅毒の中国版のパンフレット」について報告いたしましたが、今回はそのオリジナルの2011年12月19日に作成されていた
日本語版の『梅毒のパンフレット』について報告いたします。製作会社はSysmexです。
パンフレットの内容は写真を参考にしてください。
参考写真④⑤⑫⑬は新しくいたしました。
① Sysmex 梅毒(日本語版)パンフレット
② Sysmex 梅毒(日本語版)パンフレット
Sysmex (日本語版) 性感染症 Up to Date
『梅毒』 宮本町中央診療所 尾上泰彦
③表1.梅毒の分類 日本版
④男性:梅毒:病型別報告数推移 (日本版)
⑤女性:梅毒:病型別報告数推移(日本版)
⑥Sysmex 梅毒(日本語版)パンフレット
⑦梅毒の病期分類(後天梅毒の一般経過)日本語板
⑧症例:梅毒第1期 初期硬結
⑨Sysmex 梅毒(日本語版)パンフレット
⑩Sysmex 梅毒(日本語版)パンフレット
⑪症例:悪性梅毒 Malignant Syphilis
⑫参考:性感染症 梅毒治療ガイドライン2016
⑬参考:梅毒血清反応検査の結果の解釈
この梅毒(日本語版)パンフレット作成にあたり、
Sysmexの関係者に深く感謝申し上げます。
⑭お正月:葉牡丹
梅毒の治療
20代の男性から梅毒の治療について相談がありましたので報告いたします。
【相談内容】
私は20代後半の男性です。
現在、梅毒治療中ですが、いつからセックスできますか?
梅毒は、一生反応が消えないと聞いてますが、
治療の終了(完治)は、どのタイミングで判定されますか? 具体的に知りたいです。
あと、彼女とのセックスはいつから可能になるのでしょうか? 具体的に知りたいです。
お願い致します。
①梅毒の分類
【回答】
貴方がどのような治療をされたか分かりませんが、基本的には2016年11月に
発行された日本性感染症学会の梅毒の治療ガイドラインに則った治療(駆梅療法)
をすれば、約4週間で他人に対する感染力はなくなります。
ですから、4週間後からは普通の日常生活ができるようになります。
また、性的交渉(セックス)も可能となります。
②日本性感染症学会 梅毒治療ガイドライン2016
③アモキシシリン製剤 サワシリン
ただし、駆梅療法は合成ペニシリン製剤であるアモキシリン製剤
(サワシリン、パセトシンなど)250mg、1回2錠、朝昼晩3回(1日量
1500mg)の服用を4~8週間継続することです。
④梅毒血清反応 定性検査の結果の解釈
血液検査でRPRとTp抗原検査をされていると思いますが、
治療効果を見る経過観察はRPRで行ってもらいましょう。
大切なことですが、梅毒の治療の目的は、原因微生物である梅毒スピロヘータを
死滅させることであり、血液検査(Tp抗原)の抗体価を下げることではありません。
⑤日本性感染症学会 診断・治療ガイドライン2016
先ほども申しあげましたが、2016年11月1日に修正された、日本性感染症学会の
「梅毒 治療ガイドライン」に則った治療を行えば、心配ありません。
一方、Tp抗原検査は治療効果をみるには適さないとされています。
数値が期待通り下がらなくても、ガイドラインに則った基本的な駆梅療法を行えば
心配ありません。
⑥梅毒治療:臨床医の「落とし穴」
先ほども申し上げましたが、最後に、我々臨床医に言いたいことですが、
❝梅毒の治療の目的❞で一番大事なことは、梅毒の病原微生物である
Treponema pallidumを死滅させることであって、梅毒血清反応の
検査成績(Tp抗体価)を陰性化させることではないということです。
これは、我々、臨床医の「落とし穴」ともいえます。
臨床医は心しておかなければなりません。
お大事になさってください。
『梅毒』の中国版 パンフレット 完成
『梅毒は5年前の5倍に!知っておきたい性感染症の知識と対策』
2016年12月7日(水) TBSラジオ に生出演いたしましたので報告いたします。以下にその概要を示します。
TBSラジオ 発信型ニュースプロジェクト ・荻上チキ・Session―22
生出演 2016年12月7日(水) ■スタジオ:尾上泰彦(おのえやすひこ)さん
【メイン・セッション】 22:45~23:42
PMD: 「知る・わかる・動かす」 SS
南部: 「Session-22」 TBSラジオをキーステーションに
荻上:荻上チキと
南部:南部広美が生放送でお送りしています。
①TBSラジオ 『荻上チキ・Session―22』
荻上:ここからは「メイン・セッション」。 今夜のテーマはコチラです!
SS 探究モード
南部: 『梅毒は5年前の5倍に!
知っておきたい性感染症の知識と対策』 (エコー)
②『梅毒 若い女性に急増』
BGM
南部:
▼性感染症の梅毒に感染した患者の数がここ数年、急激に増加しています。
▼1990年代から、年間1千人を下回り「一昔前の病気」と思われていましたが
国立感染症研究所によりますと、先月27日までに報告された
今年はじめからの梅毒の患者数は4077人で、2011年の827人から
5年でおよそ5倍に急増。
都道府県別では東京が最も多く、次いで、大阪、神奈川となっています。
また、年代別で見ると、多くの年代で男性の患者数が多い一方、
10代後半から20代前半では、女性の方が多くなっていて、
厚生労働省は従来の男性中心の啓発運動に加え、
若い女性などにも訴えるため、人気キャラクターの
「美少女戦士セーラームーン」をキャンペーンに起用。
決め台詞の「月に代わっておしおきよ」をもじった
「検査しないとおしおきよ!!」をキャッチコピーに
検査を呼びかけるポスターやチラシなどを作り、
自治体を通じて全国に配布するということです。
③性感染症の予防啓発「美少女戦士セーラームーン」
▼そこで今夜は、そもそも梅毒とはどんな病気で、
どのような対策があるのか。また、そのほかの性感染症についても
専門家の方にお話を伺います。
南部:まずはゲストの紹介です。性感染症専門の泌尿器科医で
日本性感染症学会・代議員の
▼【尾上泰彦(おのえやすひこ)さん】です。
④尾上泰彦:性感染症専門
南部:尾上さんのプロフィールを紹介したいと思います。
尾上さんは日本大学医学部を卒業後、日本大学医学部の専任講師など
を務め、1981年にクリニックを開設。性感染症の治療を専門に行い、
厚生労働省のHIV研究に協力するなど、わが国における性感染症の
予防や治療を牽引されています。
⑤TBSラジオ:スタジオ 生放送中<br />
荻上:
Q. 診察していて「梅毒」患者が増えてきたという実感や業界の中で
増えてきているという話はありましたか?
爆発的増加あり。
⑥2016年梅毒患者数;激増!
Q.そもそも梅毒はどんな病気?
梅毒トレポネーマ
Q. いつごろ発見された病気?
ヨーロッパでは1492年
日本には1512年伝来
Q. 日本には昔からあった?
諸説あり。
Q.梅毒はどういった症状がでる?
硬結、潰瘍、皮膚粘膜症状、口腔粘膜症状、肛門症状、眼症状
Q.かかったら自覚症状はあるもの?(男女で自覚症状違う?)
自覚症状があるものと、ないものがある。あればラッキー!
Q.感染力は強い?
殊に第1期は強い
Q.どういう感染経路で感染する?
性的接触、その類似行為。オーラルセックス。アナルセックス。
Q.放って置くとどうなる?
脳、神経梅毒になる可能性。
Q.妊婦さんが感染するとどうなる?
胎児感染、先天梅毒児、低体重新生児
Q.どう治療する? ➡ペニシリンが特効薬
2016年11月1日発行、日本性感染症学会誌。
梅毒治療ガイドライン推奨。
⑦TBSラジオ:放送中 右はTBSの南部広美さん
Q.どのぐらいで治る?
初期であれば1~2カ月
Q.もし違和感があった場合、どうすれば良い?
専門医療機関受診 、検査。
Q.保健所の検査はどういうもの?匿名?
梅毒血清反応 匿名可。
Q.これまで梅毒の数が少なかったということは、
医療体制が整備されていない懸念もある?
多くの若い医師は梅毒を診察したことがない。
届け出が徹底していない。氷山の一角。
外人の入国者の増加が原因の一つ?
Q.症状は性器だけに出るもの?
症状は全身的にでる。
➡オーラルセックスでも感染する。
が、口腔系の医師の性感染症に対する意識が低い。
⑧TBSラジオ:スタジオ 生放送中
Q.梅毒だけ増えているという事だが、性感染症をめぐる全体の数字は
どうなっている? 減っている? 増えている?
➡減っているか横ばい。従来と変わりなく患者数は梅毒患者よりかなり多い。
Q.世界的には梅毒は蔓延している?
世界的に増加している傾向。
⑨江西省南昌のストリートガールの梅毒血清反応陽性率
Q.なぜ日本で梅毒だけが増えている?
➡おそらく外的要因(要するに外国から持ってこられている)
➡ただ疫学調査が行われておらず、明確に関連は証明されていない。
⑩梅毒流行の増加原因?
Q.女性が増えているのはなぜ?
若い20代前半の女性に増加が顕著。外的要因:外国入国者?
外国人に日本の若い女性が爆買されたのが、影響しているのか?
⑪若い女性の梅毒: 20~24歳にピーク!
荻上:お知らせの後も、リスナーからのメールも交えながら、引き続き性感染症に
ついてのお話を伺います。
≪ 23時25分 CM ≫
SS+BGM~
南部: TBSラジオをキーステーションにお送りしている
「荻上チキ・Session-22」。
今夜は『梅毒患者は5年前の5倍に増加!
知っておきたい性感染症の知識と対策』 と題して、
お送りしています。
スタジオに性感染症専門の泌尿器科医の尾上泰彦(おのえやすひこ)さんを
お迎えしています。引き続き、よろしくお願いいたします。
※リスナーメールを読みましょう!!※
荻上:Q.世界的にみて性感染症の現状はどうなっている?
厳しい状況。
Q.実態はつかめている?
難しい。
Q.薬が開発されても、性感染症は完全になくならないもの?
イタチごっこ!
Q.国ごとに性感染症の種類に特徴はある?
それはある。地域差は激しい。
Q.感染症の種類によって予防や対策は異なる?
異なるが、先ずはコンドーム。
Q.日本の性感染症対策は十分? 不十分なら足りないところは?
十分とはいえないが、色々対策している。教育現場の意識の高低差が激しい。
Q.改めてわれわれはどういうことをすべき?
検査、コンドーム、パートナーと健康なセックス。
正しい性教育。純潔教育ではなくコンドーム教育。
厚生労働省の努力不足。マスコミの報道不足。
≪ 23時42分までに〆 ≫
南部:きょうは『梅毒患者は5年前の5倍に増加!
知っておきたい性感染症の知識と対策』 と題して、
スタジオには、泌尿器科医の尾上泰彦(おのえやすひこ)さんを
お迎えしてお送りしました。ありがとうございました。
尾上:ありがとうございました。皆様の性の健康をお祈りいたします。
*************************************
【尾上泰彦:放送後の印象記】
当日、午後、TBSラジオ関係者から出演依頼がありました。
21時まで銀座で会議をしておりました。
その後、22時過ぎにTBSラジオに局入りし、用意なし、22時45分から、
ほとんどぶっつけ本番で、生出演いたしました。
原稿はありません。それがかえって良かったのかもしれません。
前半は、過緊張状態でした。何を話したのか覚えていません。
終了は23時42分でした。
夜遅くなりましたが、終われば楽しい経験と感じました。
TBSラジオの関係者に感謝いたします。
また、荻上チキさま、長谷川 裕さま、澤田 大樹さまには大変お世話になりました。
帰りに、局が用意していただいたタクシーに乗車いたしました。
運転手さんが、いきなり直ぐに「尾上先生、梅毒、大変良く分かりました。
勉強になりました。1時間以上前から先生が乗るのを待っていました。
全部聞きました。いい声ですね」
とほめてくださり、何かホット安堵いたしました。
家に着いたのはもちろん、午前さまでした。
妻から「こんな時間までなにをしていたのですか!」
年寄りには少しつらいですね。
*************
http://www.tbsradio.jp/98412
あるいは YouTube でみることができます。
サワシリンカプセル:梅毒の治療薬の内服量について
20歳代の女性から梅毒の治療薬の内服量について相談がありましたのでご報告いたします。
【投稿者】
梅毒の治療について (女性)
【相談内容】
こんばんわ。 先日はありがとうございました。
12月7日に梅毒の陽性反応が出て、12月12日に再度血液検査をし、
12月20日に血液検査の結果がでました。
RPR 48 TPHA 108 でやはり陽性でした。
①梅毒血清反応:陽性
さっそく治療に入ることになったのですが、
サワシリンカプセル250を1日16カプセル(朝8カプセル、夜8カプセル)
飲むよう言われ、その時は「治るなら飲みます」と答えたのですが、
その後薬局で薬剤師の方に「1日16カプセルになってるんですけど、
本当にあってますか?」と言われ、「そう言われました」と答えました。
薬剤師の方に「一応こちらからも先生に連絡をしてみて、
もし間違いがあれば連絡しますね」と言われたのですが、
今日は何も連絡ありませんでした。
②サワシリンカプセル・錠250mg
③サワシリンカプセル125mg
なんだか不思議に思いネットで調べていると1日1500mgというものが
ほとんどだったのですが、こんなにたくさん摂取して大丈夫なのでしょうか?
【回答】
このサワシリンの投与量は一般的な投与量に比較してかなり多いと考えます。
梅毒の治療に関して明確なエビデンスはありませんが、
貴方が調べた通り、1回500mg 1日3回の処方が、日本では一般的に
多用されています。
1日16カプセル投与した件に関しては、ここからは邪推です。
1.単に梅毒治療を知らない医師なのか。
2.患者が想像を絶する体重のため投与量を増量したのか。
3.サワシリンカプセル250mg と 125mgのカプセルと勘違いしたのか。
125mgカプセルの場合は、500mgで1日4回投与量で考えれば1日16capとなります。
4. いつもその量で梅毒治療している実績を持っているエキスパートな医師なのか。
5.その他の理由があるのか。
などが考えられます。
ご質問の 「こんなにたくさん摂取して大丈夫なのでしょうか?」 に関しては
投与経験がないのでコメントできません。
日本性感染症学会 性感染症 診断・治療ガイドライン2016 が
2016年11月1日に発行されました。
日本においてはこれに則った治療をされることをお勧めいたします。
以下に梅毒の治療ガイドライン2016をお示しします。参考にされてください。
治療ガイドライン2016 には、殺菌的に働き、耐性の報告もないペニシリンを
第一に選択すべきであります。
≪梅毒の治療≫
バイシリンG(ベンジルペニシリンベンザチン)投与が基本になります。
合成ペニシリンではなく天然であり、経験的に他のペニシリンよりも有効であると
いわれています。
バイシリンG:1 日120万単位/分3またはアモキシシリン(サワシリン等)
1日1,500 mg/分3を内服させます。
ぺニシリン・アレルギーの場合には、塩酸ミノサイク リンまたはドキシサイクリン
1日100mg×2を、ただし、妊婦の場合にはアセチルスピラマイシン
1日200mg×6を、内服投与します。
④梅毒第2期 バラ疹
投与期間は、第1期は2~4週間、第2期では4~8週間、第3期以降では8~
12週間を必要とします。
無症候梅毒では、カルジオリピンを抗原とする検査で抗体価が16倍以上を示す
症例は、治療することが望ましいとされています。
投与期間は、感染時期を推定し、その期の梅毒に準じますが、感染後1年以上
経過している場合や、感染時期の不明な場合には、8~12週間とします。
神経梅毒では、ベンジルペニシリンカリウム(結晶ぺニシリンGカリウム)を
1日200~400万単位×6
(すなわち、1日1,200~2,400万単位を投与)点滴静注で10日から2週間
投与します。
先天梅毒の治療も、ベンジルペニシリンカリウムの点滴静注を行います。
治療開始後数時間でT.p.が破壊されるため、39℃前後の発熱、全身倦怠感、
悪寒、頭痛、筋肉痛、発疹の増悪がみられることがあり、この状態は
Jarisch -Herxheimer現象と呼ばれています。
この現象が薬の副作用でないことを、あらかじめ患者に説明しておくことが必要です。
妊婦は、この反応で流産または早産になることがあるので、注意を要します。
⑤ピンクローズ
●米国CDCの2015年のガイドラインでは、ぺニシリンGの筋注がすすめられて
いますが、日本ではペニ シリンアレルギーによるショック死が発生したために、
筋注が行われなくなりました。
このために現在もペニシリンGの筋注の使用はできません。
バイシリンGは現在、品不足であり、梅毒の治療には当面使用することはできません。
また日本のHIV患者の梅毒の治療に対して、アモキシシリン3.0gとプロベネシド
の併用、2~4週間の効果 が95.5%という報告があります。
●米国CDCの2015年のガイドラインでは、妊婦に対してはぺニシリンGの筋注のみ
がすすめられています。
お大事になさってください。
⑥2016年12月21日 冬至
梅毒の再感染患者の悩み
40代の男性から梅毒の再感染の悩みについて相談がありましたので報告いたします。【相談内容】
13年前に梅毒に感染して治療済の者です。
定期的に自費のSTD郵送検査で梅毒とHIVを検査しており、今まで陰性でした。
しかし、今回、梅毒が陽性反応となり、皮膚泌尿器科を受診しました。
結果は、HIV(-)梅毒(+)でした。
TP抗体定量354.0U/ml(再検同値) RPR定量276.0R.U.(希釈再検済 20倍)で、処方はアモキシシリンカプセル250を1日1錠4回です。
この数値からみて、梅毒感染何期になるのか教えて頂けますでしょうか?
また、感染してからどれくらい経過しているかわかりますでしょうか?
また、治療期間はどれくらいと推計されますでしょうか?
主治医の先生は、質問しても不機嫌な感じであまり詳しく答えてくれず悩んでいます。
彼女に、感染の事実を伝え謝罪したところ許してくれて、彼女も検査を受けてくれることになりました。
お忙しいところ誠に恐縮ですが、彼女のためにも何卒宜しくお願い申し上げます。
①参考症例:オーラルセックスで発症した硬性下疳
【回答】
今回の血液検査の成績は、TP抗体定量354.0U/ml(再検同値) RPR定量276.0R.U.(希釈再検済 20倍)であった。
上記ように血液検査の数値が、やや高値なのは今回、再感染したからだと考えます。
13年前に梅毒に感染して治療済ということですが、血液検査の成績は陰性にはなりません。
治療済の時点で梅毒の感染力がなくなったと考えてください。
②参考症例:口唇に発症した硬性下疳(性器外硬性下疳)
RPRは低値になっても、TP抗体の値は段々低値に向かってはいきますが、長期間(半永久的)陽性が持続し、特に再感染するとさらに高値になります。
これが、再感染の血液検査成績(結果)の特徴です。
しかし、これは検査成績上のことですから、今回、普通に駆梅療法を行えばなんの心配もありません。
③参考:昔の著名人には梅毒が多い!
貴男が受けていた性感染症の郵送検査は、その事業会社により検査方法が異なり、感度の違いがあるため限界が出てくる可能性があります。そのため、梅毒検査が陰性とでたのかもしれません。
そして、今まで、定期的に性感染症の郵送検査をして陰性だとすれば、今回は最後に検査をしてから感染したと考えられます。
厳密に言えばそれよりもさらに3〜6週間前に感染していた可能性もあります。
症状がなく血液検査を受けて、梅毒とわかったのですから、無症候梅毒となります。
第1期または第2期あるいは第1期から第2期の移行期と考えられます。
ご自分で感染機会や最後に検査をしてからの期間を考えてみましょう。
たとえ、感染時期が分からなくても、2016年の日本性感染症学会の治療ガイドラインに則った治療をすれば、何の心配もいりません。
アモキシリン250mg 6cap/1日 を4〜8週間、服用してください。
それすれば、梅毒の治療(駆梅療法)は終了です。
その後は、定期的に血液検査を受けて経過観察をしてください。
これからの、お二人の性の健康をお祈りいたします。
④参考:著名人のサロン文化は梅毒の温床!?
梅毒の感染経路
20代の男性から梅毒の感染経路について相談がありましたので報告いたします。【相談内容】
いきなりの相談失礼いたします。
よくあることだとは思いますが先日飲み会にて同僚と口をつけた食器の使いまわしや同じ飲料を飲みまわしをしてしまいました。
(言わば間接キスのような状態です)
このような行為でHIVなどの感染はまず無いと思っております。
しかし最近急増している梅毒の感染が「食器の使いまわしでも感染する」などと書かれている情報を多々発見し不安になりました。
仮に梅毒感染者と同じ食器やコップを使いまわした場合、その中に入っている飲料やコップに付着した唾液からの感染はあり得るでしょうか?
また、そのような事例というのは存在するのでしょうか?
お忙しい中大変申し訳ございませんが正しい知識を持っておきたいのでお答えいただけると幸いでございます。
【回答】
オーラルセックスは体液、唾液などの交換、粘膜と粘膜の接触がありますから、色々な性感染症のリスクが出てきます。
貴方の場合は同僚と口をつけた食器の使いまわしや同じ飲料を飲みまわした、と言うことですが、そのような行為で感染したと言う報告は、学術的にはないと考えてください。
①冠状溝に深く潰瘍化した硬性下疳を2つ認める
②オーラルセックスで尿道粘膜に発症した硬性下疳
現在はインターネットが広く普及し、誤った情報にいわば洗脳されてしまうケースも
しばしば見受けられます。これは難しい問題ですね。
あとは貴方の心の問題です。
梅毒がご心配であれば、その時期から6週間後に梅毒血清反応検査を受けて、心に平和を勝ち取ってください。検査は簡単にできます。
貴方の性の健康をお祈りいたします。
③赤い薔薇
「梅毒患者急増 99年以降最多に」TBSキャスターの放送後記
TBS ニュースバード 「ニュースの視点」『梅毒患者急増 99年以降最多に』に生出演した際のキャスターの放送後記(菊野理沙)ができ上がりましたので、報告いたします。①TBS ニュースバード 「ニュースの視点」
TBS ニュースバード 「ニュースの視点」
事件・事故や政局、環境や教育問題、経済の動向から国際政治まで・・・。
限られた時間では、伝えきれない事実や真実、捉え方があります。
「ニュースの視点」では、時事問題の中から毎日一つのテーマを絞り、
時にはゲストや専門家を招いたり、現場から生中継を繋いだり、
ニュースバードのキャスターが、政治部、経済部、社会部、
海外特派員などの現役記者や解説委員と共に、ニュースの本質に迫ります。
2016年9月21日放送(午後2時40分~3時15分)
②ニュースバード 「ニュースの視点」 放送中
≪キャスターの放送後記≫
#2407 「梅毒患者急増 99年以降最多に」
ゲスト:医学博士・尾上泰彦さん
キャスター:菊野理沙
【テーマ】
性的接触によって感染する病気のひとつ「梅毒」。皮膚や粘膜の傷から病原菌の梅毒
トレポネーマが侵入して感染する。今、この梅毒の患者が急増、今年の患者数は1999年以降、年間の数で過去最多となっている。
急増する背景とともに、その症状や予防法を日本性感染症学会代議員で医学博士の尾上泰彦氏に聞いた。
③キャスター菊野理沙さま 【放送後記】
【放送後記】
梅毒は昔は死に至る病でしたが、現在は治療法も確立され治すことができる病気です。
しかし症状が出ない、もしくは症状が出ても受診しない方も多くいるそうです。
自分でも無自覚のまま人に移してしまう可能性のある梅毒。感染を疑うことがあれば早期に医
療機関を受診することが大切です。
(菊野理沙)
④放送後、キャスター菊野理沙さまと共に
お世話になりました編集部の鶴岡正典さまとキャスター菊野理沙さまに感謝申し上げます。
梅毒が心配!
25歳の女性から梅毒について相談がありましたので報告いたします。【相談内容】
初めまして。梅毒が心配です。梅毒なのでしょうか 。
私は25歳の女です。
性交渉した人が今日梅毒だったことがわかりました。
その人と性交渉したのは11月14日、21日です。
14日の日に彼の亀頭にしこりのようなものがあったのですが、性病だとわからず、コンドームをつけて性交渉をしました。
21日もコンドームをつけました。14、21日ともにキスはしましたが、フェラチオはしてません。
彼曰く14日よりも前から腫れて膿がでていたらしいです。
梅毒のことを調べていると、第一段階でしこりや出来物ができる、太ももにしこりができるとありましたが、私は出来てはいません。
ですが、第二段階目のバラ疹とよく似たものが10月頭ぐらいから出ていて、10月の頭に皮膚科で「皮脂欠乏性湿疹」だと言われていました。
かゆみはありません。そのこのは先生にも伝えました。
普段はうっすらと出ており、お風呂上がりにはっきりとでます。
出る場所は胸から足首までで手のひらや足の裏にはでていません。
質問です。私が梅毒を持っていた(る)可能性はあるのでしょうか?
また普通の皮膚病と梅毒のバラ疹は見分けがつかないものなのでしょうか?
本日梅毒の検査を受けてきましたが怖くて仕方ありません。
よろしくお願い致します。
①男性 梅毒第2期 バラ疹
【回答】
貴女は25歳。パートナーが12月1日に梅毒と診断された。
貴女の相談内容を次のようにまとめてみました。
パートナーと性交渉したのは 11月14日と21日。
彼の亀頭にしこりのようなものがあったが、コンドームを装着して性交渉した。
②梅毒の極初期に発症する初期硬結
キスはしたがフェラチオはしてない。
彼が言うには、11月14日以前に腫れて膿がでていた。
(彼の尿道から膿が出ていたのでしょうか?)
③淋菌性尿道炎の特徴
貴女は10月の初めに、第2期にでる「バラ疹」とよく似た痒みのない皮膚症状がでた。
某皮膚科で「皮脂欠乏性湿疹」だと言われた。
皮膚症状は、いつもはうっすらと出ており、お風呂上がりに、はっきりと出てくる。
また、皮膚症状は胸から足首まででており、手のひらや足の裏にはでていない。
梅毒が心配です。 以上、まとめてみました。
さて、梅毒の皮膚症状は多彩ですから、皮膚科の診察だけではわかりません。
梅毒血清反応検査をしなければ診断はできません。
パートナーとの最後の性交渉があってから、約3週間以上たってから血液検査を受けましょう。
またさらに3~4週後にも血液検査を受けましょう。
これで陰性であればご心配ありません。運悪く「陽性」と出たら駆梅治療をいたしましょう。
AM-PC(アモキシシリン)1日1.5g、 4~8週間を服用されれば治療は終了です。
その後は定期的に血液検査を受けて、経過観察をいたします。
この梅毒という病気は原始的な病気で、耐性などは報告されていませんから、
ちゃんと薬を服用すれば治ります。結婚、出産もできます。
ご存知の通り最近若い女性(20~25歳)に梅毒が急増しており社会問題化しております。
あと心配なのは、パートナーの尿道から膿が出ていたのであれば、貴女も症状がなくてもクラミジア、淋病の検査を受けましょう。この検査は痛くもなく、簡単にできます。
HIVの検査も受けて安心いたしましょう。
さて、パートナーはどこから梅毒をもらってきたのでしょうか。
一度、パートナーと一緒に専門医を受診さてれは如何でしょうか。
お二人の性の健康をお祈りいたします。
④緑色の薔薇
梅毒検査の結果について
20代後半の男性から「梅毒検査の結果」について相談がありましたので、報告いたします。【相談内容】
はじめまして、お世話になります。
先日感染機会から約6週(44日)で市の保健所にてHIV及び梅毒RPR法定性、TPHA法定性検査を受け共に(-)で陰性でした。
しかし一つだけ気になっている点がございます。
検査を受ける3週間前(感染機会から7~21日の間)まで尿道炎の治療で抗生物質(クラリス、グレースビット)を2週間服用しておりました。
この3週間前に服用していた抗生物質が影響し、梅毒陽性が陰性に変わってしまうということはございますでしょうか?
また、前回血液検査を受けてからさらに3週間(計65日)経ちましたので念のため再検査へと行きますがこの結果で陰性であれば心配は無用と思って大丈夫でしょうか。
長い間不安の日々を過ごしておりますのでお答えいただけると幸いでございます。
①「體性」 昔の『STI』医学雑誌創刊号
【回答】
ご心配ですね。感染機会から約6週(44日)で保健所にてHIV及び梅毒RPR法定性、TPHA法定性検査を受け共に陰性であった。
この結果は喜ばしいことだと思います。
ただし、問題は貴男が気にしている、検査を受ける3週間前(感染機会から7~21日間)に尿道炎の治療で抗生物質(クラリス、グレースビット)を2週間服用したことです。
こういう事例は沢山あることだと思われますが、抗生物質が検査結果に影響を及ぼすかどうかの研究報告はありません。
ですからこれについては、コメントできません。
しかし、さらに3週間(計65日)経過してからの再検査で、その結果が陰性であれば心配は無いと考えます。
再検査を受けて安心してください。
お大事になさってください。
②キューイ・フルーツ
梅毒の数値が下がらない
30代後半の男性から、梅毒のことで相談がありましたので、報告いたします。
【相談内容】
はじめまして。 去年の夏、梅毒であることがわかりました。
検査の結果はRPR64倍、TPHA10240倍でした。
そのため9月上旬からパセトシンカプセル250mg、1回2錠を朝昼晩3回の服用を開始しました。
しかし、4ヶ月薬を服用してもこの数値は全く変わらなかったため、大きな病院を紹介されました。
その病院の先生からは、数値は年単位で下がるものだから、そんなにすぐには下がらない。
だから定期的に検査をするように言われました。
薬が効いていないことはないので、もう服薬もしなくて大丈夫で、感染力もないのでセックスもしてよいと言われました。
しかしその半年後に、再度血液検査をしたら、やはり上記の数値と全く変わっていませんでした。
梅毒は治っていないのではと不安になりました。
そこで質問なのですが?
こんなに長い間数値が高いまま全く変わらないということがあるのでしょうか?
このまま数値が下がらない場合、再度服薬治療を行った方がよいのでしょうか?
この高い数値でセックスしても本当に大丈夫なのでしょうか?
結婚をしていて、子供がほしいと思っています。
でも、子供は作らない方がよいのでしょうか。
ちなみにHIVの検査は陰性でした。
お忙しいとは思いますが、回答よろしくお願いいたします。
① 吉原病院 花魁の検診風景
【回答】
大変不安ですね!
大切なことですが、梅毒の治療の目的は、原因微生物である梅毒スピロヘータを死滅させることであり、血液検査(TPHA)の抗体価を下げることではありません。
2013年に修正された、日本性感染症学会の治療ガイドラインに則った治療を行えば、心配ありません。
薬を4ヶ月服用してもこの数値は全く変わらないのは、貴男が梅毒に罹患した時期が不明で、恐らく梅毒の発見時期が遅れたため、治療のスタートも遅れることとなり、薬の影響、効果がデータに反映しなかったのでしょう。
しかしながら、駆梅治療は、パセトシンカプセル(AMPC)250mgを1回2錠、朝昼晩3回の服用を8週間(最大12週間)すれば治療ガイドラインに則った治療になります。
貴男の場合は8週間ではなく、それ以上の4カ月(16週間以上)服用したわけですから、治療は十分にできていると考えてください。
言い換えると、駆梅治療は既に終了していると考えてください。
通常は梅毒の治療効果はRPR検査で経過観察いたします。
一方、TPHA検査は治療効果をみるには適さないとされています。
先ほども申し上げましたが、数値が期待通り下がらないのは、病気の発見が遅れためと考えてください。
私見で恐縮ですが、駆梅治療は既に終了していますから、他人への感染力はありません。
ですから、性的な行動をしても心配ありません。
貴方は結婚しているのですから、子供さんをつくってもかまいません。
先天梅毒児が生まれる危険性もありません。
冒頭にも申し上げましたが、最後に、我々臨床医に言いたいことですが、❝梅毒の治療の目的❞で一番大事なことは、梅毒の病原微生物であるTreponema pallidumを死滅させることであって、梅毒血清反応の検査成績(Tp抗体価)を陰性化させることではないということです。
これは、臨床医の「落とし穴」ともいえます。
臨床医は心しておかなければなりません。
お大事になさってください。
② 「築地の貝」 鮑のステーキ!素敵です!旨いス!
TBS ニュースの視点『梅毒患者急増 99年以降最多に』
TBSニュースバードのニュースの視点 『梅毒患者急増 99年以降最多に』に生出演いたしましたので報告いたします。
(放送日:2016年9月21日 午後2時40分から3時15分)
(キャスター:菊野理沙)
ニュースの視点です。
性的接触によって感染する病気のひとつ「梅毒」。
皮膚や粘膜の傷から病原菌の梅毒トレポネーマが侵入して感染します。
今、この梅毒の患者が急増しています。
今年の患者数は1999年以降、年間の数で過去最多になっています。
きょうのニュースの視点は、およそ40年に渡り性感染症の診療を続けている
尾上泰彦(おのえ・やすひこ)さんに急増する背景とともに、その症状や予防法を
詳しく解説していただきます。
尾上(おのえ)さん、どうぞよろしくお願いします。
●よろしくお願いいたします。(尾上)
(キャスター:菊野理沙)
Q:こちらは1999年以降の梅毒患者の報告数の推移ですが、
今年の報告数は、【今月11日】時点で【2991】人とすでに去年1年間を上回っていて、
3000人に届く勢いとなっています。
2010年を境に増加傾向に転じ、2015年以降、そして今年にかけ驚くほど
急増しているわけですが、この背景には何が考えられるのでしょうか?
●疫学的調査が行われておりませんから急増した原因ははっきりとは分かりません・・・
*1999年に施行された感染症法によって、保健所への届け出る報告が厳しく
義務づけられたことも一因かもしれません。
*「日本人の性行動が急に活発化したわけでもないので急増したのは、外的な要因が
考えられます。
*「なぜ女性に増えているのか、理由は分かりません。
ただ、20代前半の女性に急増していることを考えると、中国人向けの風俗嬢を中心に
発症が増えている可能性は否定できません。」
追加
*確かに近年、中国では梅毒が爆発的に増えており、日本の300倍以上という指摘も
あるからです」
*また2014年の中国・江西省南昌での調査によりますと、ストリートガール(いわゆる街娼)361人中の梅毒感染率は43.5%と、半数近くにのぼっています。
これは驚くべきことです。
(キャスター:菊野理沙)
Q:クラミジアや淋菌感染症(りんきんかんせんしょう)など、他の性感染症は
おおむね減少傾向にあるようですが、なぜ、梅毒だけが突出しているのでしょうか。
●・・そうですね!・
*「たとえばクラミジアには痒み、淋菌感染症には排尿痛など
自覚症状がはっきりでますが、初期の梅毒は痛くも痒くもないのが特徴です。
症状が出ればよいのですが、症状が出ない方が多く気付かないまま感染を
広げてしまうことになります」
(キャスター:菊野理沙)
Q:ではここからは梅毒の具体的な症状や予防法を詳しく解説していただこうと思います。
梅毒には症状のある【顕症(けんしょう)梅毒】だけでなく、今、お話にあったように
症状のない、【無症候性(むしょうこうせい)梅毒】また生まれながら罹患している
【先天的】なものもあります。
症状がないケースも多いのですか?
●・・・その通りです。
*実は、しこりもできず、リンパも腫れていないのに、血液検査だけが陽性になる
無症候性の梅毒の方が多くみられます。
*陳旧性梅毒といって随分昔に感染し、何の症状も出ず自然治癒したのに
10年くらいたっても梅毒の抗体だけが残り、血液検査の種類によっては陽性が
持続するケースもあります。
陳旧性は症状も感染力もないので、通常は治療いたしません。
ところが現実には陽性であることを理由に、老人ホームによっては入所を断られる
高齢者がいらっしゃいます。
不当な差別と問題視しております。
(キャスター:菊野理沙)
Q:若い女性に流行することで、先天性梅毒患者として生まれてくる
赤ちゃんの増加が心配されますよね?
●そうですね。胎児感染で重い障害が出てくる恐れがあります
そのため大変危惧されており、社会的に憂慮すべき問題ですね。
*梅毒にかかった母親の胎盤を介して感染します。
決して多くはないのですが、年々増加傾向にあります。
基本的に妊婦検診で発見されるものの撲滅はされておりません。
「先天梅毒は出生時に肝臓や脾臓がはれたり、低体重であったり、学童期になってから
難聴を発症したりします。
20代の女性に梅毒が増えている現状を踏まえれば見過ごすことはできません」
(キャスター:菊野理沙)
Q:そして、梅毒にかかるとどんな症状を発症するのでしょうか。
症状のある「顕症梅毒」は進行具合によって早期の1~2期と晩期の3~4期に
分けられます。
1期目はどんな症状がでるのでしょうか?
●・・・それでは第1期の説明をいたします。
*顕症梅毒の第1期では感染部位に小豆大のしこり(初期硬結)が生じます。
次第にしこりが崩れて潰瘍を形成(硬性下疳)、さらに両足の付け根のリンパ節が
腫れてきます。
感染からおよそ3週間後に発症いたします。
「ただ、いずれも痛みや痒みを伴わず、発熱もないため、1期で医療機関を受診する方は
あまりいらっしゃいません。
しこりは性器に限らず、オーラルセックスの場合は唇や舌、咽頭や尿道に、
アナルセックスの場合は肛門にできます。
放置していても数週間で消えてしまうため、自然に治ったと思い込んでしまう人も
多くみられます」
自己診断は非常に危険ですね。
(キャスター:菊野理沙)
Q:1期の症状が消失しても自然治癒しない限り、2期に進んでしまうんですね。
●・・・そうですね!3カ月から3年までを第2期といいます。
*1期の症状が消失しても自然治癒しない限り、3カ月~3年の間、梅毒トレポネーマが
血液に乗って全身にまわり、2期に進みます。
*「ここで初めて皮膚・粘膜の発疹や臓器梅毒の症状が出てまいります。
主に皮膚症状が出てきます。
ですから2期になりますと皮膚科を受診する人が大半です。
最も特徴的なのが手のひらや足の裏に広がる赤い紅斑です。
梅毒性乾癬という発疹です。これも痛みや痒みがないので、放置する人もいます」
「梅毒性の脱毛もあり頭髪がまばらに抜けるのが特徴です。
また、2期の段階で紅斑を見つけ、皮膚科に駆け込んでも、皮膚科医が梅毒を
疑わなければ、ただの湿疹と片付けられるケースもあります。」
「2期では血液検査は陽性になりますから、心配な方は必ず検査を受けてください。
1期、2期は感染力が強いため、人にうつしてしまう可能性がございます」
(キャスター:菊野理沙)
Q:そして晩期の3期、4期になるとかなり深刻な症状に陥ってしまうようですね?
●・・・そうですね! いよいよ3期、4期ですね。
*感染後、3年以上経過しますと、結節性梅毒疹や皮下組織に鶏卵大のしこり
(いわゆるゴム腫)が生じることがあります。
鼻の骨が破壊されるのもこの時期です。
感染から10年たちますと4期に入り、心臓、血管、神経などに障害が出て、
大動脈炎や大動脈瘤、進行麻痺など重篤な症状に進むことがあります。
(キャスター:菊野理沙)
Q:ただ、現在では3期、4期に進行することはほとんどないんですよね?
●・・・おっしゃる通りですね。よくご存じですね!
*「現在は特効薬ペニシリンのおかげで、早期に治療を行えば、3期、4期に
進行することはありません。
また3期、4期は感染力が弱く、人にうつす心配もほとんどありません」
ペニシリンのない時代の写真
(キャスター:菊野理沙)
Q:ただ、注意しなければいけないのがHIVとの重複感染のようですね。
●・・・そうですね! 最近の報告では
*HIV(ヒト免疫不全ウイルス)にも重複感染している場合は、梅毒の時期に関係なく、1期~4期の段階を経ず、様相が変わるという報告が増えています。
「梅毒に感染していると、その病変部位、特に潰瘍があるとその部位からHIVにも
重複感染しやすい傾向があります。
1期や2期でも重篤な症状が表れやすくなります。
脳に菌が回り、神経を侵される場合もあります。
梅毒の検査をする場合はHIVの検査も同時に受けることをお勧めいたします」
(キャスター:菊野理沙)
Q:基本的には梅毒と診断されても、早期であれば確実に治ると考えていいのですか?
●2013年に修正されました日本性感染症学会の治療ガイドラインに則った治療を
行えば心配ございません。
*昔とちがって、梅毒が死に至る病ではなくなった現在、防ぐ術と治す術は確かにあります。
*急増しているからといって、パニックになる必要はございません。
(キャスター:菊野理沙)
Q:怖いのは、気付かず放置すること。
ちょっとでも、感染を疑う行為があったら、医療機関を受診することが大事なんですね?
●・・・その通りですね!
*「顕症梅毒の第1期では、しこりや腫れの症状があっても、感染から3~4週間までは
血液検査が陰性になることがあります。
その場合、病変部を採取し、暗視野顕微鏡で検査しますが、病原体の採取と視認に
習熟を要するため、 あまり用いられておりません。
多くの病院では通常、血液検査を行って診断しています。
(キャスター:菊野理沙)
Q:検査を受ける時期というのもポイントのようですね?
●・・・そうですね
*感染機会から、すぐの検査では正しい結果がでません。
血液検査は感染機会から3~6週間以降に受けるようにしてください。
(キャスター:菊野理沙)
Q:最後に梅毒を防ぐポイント、治すポイントをまとめました。
あらためて解説をお願いします。
●・・・大事なことは
*まず、不特定多数の人と性的接触をしないこと。
*する場合は、はじめから終わりまでコンドームをしっかりとつけること。
性交時はもちろん、オーラルやアナルセックスでも同様です。
*コンドームは避妊だけでなく、梅毒を含めた性感染症予防の手段と考えてください
*しかし、不特定多数ではなく特定のパートナーとだけセックスしていても、
パートナーが風俗通いをしたり、違う相手と接触していれば、
結果的に感染の恐れがあります。
*いくら自分が気をつけていても、相手が「潔白」で、感染していないかどうかは
分からないものです。
*現実には難しいでしょうが、2人そろって検査をするのが理想的です。
*まずは1回でも、感染を疑う行為があったら、3~6週間置いてから、
医療機関を受診してください。
*加えて医師選びも重要です。梅毒症状を見たことがない若い医師がいるからです。
*迷ったら、性感染症に精通した専門医を受診してください。
*最近では、自己検査キットもありますが、うまく採取できないことがあるので、
注意してください。
(キャスター:菊野理沙)
Q:「梅毒は終生免疫を得られず再感染する」ということは何度もかかる、
つまり、一度かかって完治したからといって安心してはいけないということですね?
●・・・その通りですね。何回でも感染いたします。
(キャスター:菊野理沙)
きょうのニュースの視点は急増する梅毒の背景とともに、その症状や予防法を
日本性感染症学会代議員で医学博士の尾上泰彦(おのえ・やすひこ)さんに
解説していただきました。
尾上(おのえ)さん、きょうはありがとうございました。
●皆様の性の健康をお祈りいたします。
ありがとうございました。(尾上泰彦:終了)
(キャスター:菊野理沙 )
以上、ニュースの視点でした。
(お疲れさまでした!)
●放映終了後
キャスター:菊野理沙さまとツーショット!
●最後になりましたが、担当ディレクターの鶴岡正典さまには、
大変お世話になりました。厚くお礼申し上げます。
梅毒検査時の薬の影響
20代後半の男性から、梅毒検査時の薬の影響について相談がありましたので報告いたします。
【相談内容】
私は20代後半の男性です。お世話になります。
梅毒の感染不安行為がありもうすぐ6週経とうとしているのですが、
別の病気でグレースビット50mgを1週間、クラリス200mg×2を
1週間服用し合計2週間で本日飲み終わりました。
保健所の方へ2~3日後に検査へ行こうと思っておりますが、
この服用していた抗生物質で血液検査に影響が出ますでしょうか?
例えば陽性なのに陰性になってしまうなど。
お忙しいところ申し訳ございませんがご教示いただけると幸いでございます。
①梅毒の薬
【回答】
梅毒の血清検査はリン脂質であるカルジオリピン(CL)を抗原とした
脂質抗原法と菌体自体を抗原として用いる梅毒トレポネーマ抗原法があり、
それぞれに定性法と定量法があります。
脂質抗原法は通常STS法とよばれ脂質抗原をプローブとして用いる抗体検査法です。
用いられるプローブはCLといわれる脂質抗原です。この検査法はたくさんありますが、
最近では自動分析器による自動測定が可能なラテックス凝集法(RPR自動化法)が普及しています。
このSTSは感染後3~4週で陽性となります。梅毒の治療効果をよく反映するため、
治療後の経過観察に用いられます。
一方、梅毒トレポネーマ(Tp)抗原法はTpに特異的な抗体を測定する検査法です。
Tpの菌体成分を血球にまぶし、血清中の特異抗体による架橋で生じる凝集反応を
判定するTPHA法とアセトン固定した菌体そのもので蛍光抗体間接法を行う
FTA-ABSなどがあります。FTA-ABS法は手技が煩雑なため、
比較的簡便なTPHA法が頻用されています。
なお、TP抗原法では治癒後も抗体価が下がりにくいので、
治療効果や治癒の判定には適しません。
また、病初期において、TPHA法はSTSより2~3週遅れて陽性化します。
そのため、多くの医療機関では、通常はSTSとTp抗原の2つの血清検査が行われています。
②梅毒2期:バラ疹
貴男は保健所に行くそうですが、貴男が行く保健所で2種類の検査を施行してくれるかどうか確認いたしましょう。
もし1種類しか検査をしてくれない場合は、医療機関を受診いたしましょう。
さて貴男の梅毒検査時の薬の影響についてお話します。
私見で恐縮ですが、感染機会が3~4カ月以上前でしたら、
検査結果にあまり抗生物質の影響はないと考えます。
ただ貴男は感染機会からまだ6週間ですから、検査結果に影響がでる可能性がないとは言えません。
梅毒はグラム陰性細菌で、かなり原始的な細菌ですから、ほとんどの抗生物質に
反応すると考えられます。
ですから、もし不幸にも、貴男が梅毒に感染し、極初期であれば検査結果に
影響が出るかもしれません。
結果が陰性であった場合は、3~4週間後に再検査を受けて、
陰性を再確認することをお勧めいたします。
お大事になさってください。
③カナダ Van Dusen Botanical Gardens
梅毒の症状に関して
20代の男性から梅毒の症状に関して相談がありましたので報告いたします。
【相談内容】
はじめまして。私は20代の男性です。
最近梅毒のニュースをよく見かけるようになり不安になりまして質問致しました。
梅毒の初期症状に感染後約3週間後に初期硬結というものができるとのことですが、
人によるかとは思いますがこれはいきなりそれなりの大きさのものができるのでしょうか?
それとも毎日気にして見ていれば徐々に大きくなり始めるのがわかるものなのでしょうか?
約十日前に都内の風俗店で手のサービスを受け、梅毒のニュースを見て
以降今ではすっかりノイローゼ気味で自分もかかってしまっているのだろうと
思い込み夜もあまり眠れず食も喉を通らない状態です...
病院で相談したところ「症状が出てないのなら診察も意味がないし、検査もできない。
珍しい病気だからそんなに心配しなくていい。」とそのまま帰されてしまいましたので、
今後症状が現れなくても時期を見て保健所へ検査へと行きたいと思っております。
①初期硬結
【回答】
顕症梅毒では、初期症状としてに感染後、約3~4週間後に初期硬結や
硬性下疳というものが、性器に発症する場合があります。
顕症梅毒になり、貴男がいう通り、性器を毎日、毎日気にして見ていれば、
初期硬結や硬性下疳が徐々に大きくなり始めるのが、分かるかもしれません。
しかし、むしろ症状の出ない無症候性梅毒の方がかなり多くみられます。
貴男は風俗店で手のサービスを受け、不安になっています。
しかしこの性行動では、常識的には梅毒には罹患しません。
体液の交換、粘膜と粘膜の接触がなければ性感染症は先ず、心配ありません。
でも貴男は心に傷ができてしまいました。
いつまでも悩んでいることは、精神衛生上好ましくありません。
貴男がいう通り6週間、経ったら保健所や医療機関で、
梅毒の血清反応検査を受けて心に平和を勝ち取りましょう。
お大事になさってください。
②飛行機の窓からのアラスカの眺望
「 サンデー毎日」8月30日発売 急増する「梅毒」
「 サンデー毎日」8月30日発売9.11特大号201641~43頁に
梅毒に関する私の記事が掲載されましたので、報告いたします。
記事の内容は下記に示します。
①「 サンデー毎日」8月30日発売 9.11特大号2016
急増する梅毒 2016.8.31.
『早期発見のススメ』
●梅毒が過去の病気ではなくなっている。6年ほど前から増加傾向に転じ、
今年の報告数は、すでに昨年1年間の数に迫る勢いだ。
感染初期は痛くも痒くもないため、放置してしまう人が少なくない。
長年、梅毒を診てきた尾上泰彦医師(72)に症状や予防法を聞いた。
②急増する梅毒「早期発見のススメ」
梅毒は1492年、新大陸を発見したコロンブスの一行が、その地の風土病を持ち帰ったのが始まりといわれる。
世界的に爆発的流行となり、日本には16世紀に上陸した。国内で初めて梅毒が記録されたのは1512年。
梅毒は当時「瘡」と呼ばれ、特効薬のないまま感染が広がった。
1563年に来日したポルトガルの宣教師ルイス・フロイスは〈男も女もそれ(梅毒)を普通の事として、
少しも恥じない〉と書き、江戸時代には医師の橘南谿が『西遊記』(1795年)で、
京都の人の半分が梅毒にかかっていたと記したほど。
症状が進行すれば鼻が欠け、命を落とす危険もあったため、各地では梅毒平癒を願う「瘡守稲荷」が信仰を集めた。
徳川家康の次男、結城秀康や、肥後熊本藩初代藩主の加藤清正も梅毒で亡くなったといわれる――。
こう書くと、梅毒はひどく昔の病気に感じられる。実際、1943年にはペニシリンによる投薬治療が成功し、
患者数は激減。国立感染症研究所によると、67年には1万1000例だったが、近年は87年の2928例を
ピークに減少傾向にあった。
ところが2010年を境に増加傾向に転じ、特に今年の増え方は顕著だ。感染研によると、8月14日までの
報告数は2591例。昨年の2698例(*今年3月30日時点の暫定値。以下*印同)に迫る勢いだ。
宮本町中央診療所(川崎市)の元院長で、40年近く性感染症の診療を続けている尾上泰彦医師は、こう指摘する。
「梅毒の症状を診たことがない医師が増えたので、病変を見ても梅毒を疑わず、血液検査すらしないケースがある。
そのため梅毒患者は報告数より、もっと多いと思われます」
【爆買いとの関係】
梅毒は性感染症の一種で、皮膚や粘膜の傷から病原菌の梅毒トレポネーマが侵入して感染する。
セックスレスが問題化して久しい昨今の日本で、なぜ急増しているのか。
1999年に施行された感染症法によって、保健所への報告が厳しく義務づけられたことも一因と考えられる。
尾上医師は「疫学調査がないため、理由は断定できない」としながらも、こう推測する。
「日本人の性行動が急に活発化したわけでもないのに増えているのは、外的な要因が考えられます。
爆買いで来日する中国人が、風俗店に団体で出入りする影響は否定できません。
近年、中国では梅毒が爆発的に増えており、日本の300倍という指摘もあるからです」
2014年の中国・江西省南昌での調査によると、ストリートガール(街娼)361人中の梅毒感染率は
43.5%と、半数近くにのぼっている。
来日する中国人も急増しており、政府観光局の統計では08年に100万人を初めて突破し、
昨年は約499万人。今年も7月までに380万人に達している。
14年比で2倍超、10年比では実に3.5倍超と急伸しているのだ。
風俗に詳しいコラムニストの木村和久氏は、爆買いと梅毒との関係を、こう分析する。
「中国人お断りの風俗店がある一方、中国人を歓迎する高額な店もある。
建前上、性交が禁じられているためコンドームを置いておらず、感染しやすい環境にある。
また中国人にチップをはずまれ、過剰なオーラルセックスをしてしまう風俗嬢がいることも、
感染を広げている一因かもしれません」(木村氏)
男女比でみると、増加が著しいのは女性。感染研によると、10年には124例だったのが、
昨年には764例(*)と、5年で約6倍に。
男性は497例(10年)から1934例(*)と数こそ多いものの、伸び率は4倍弱にとどまる。
「なぜ女性に増えているのか、理由は分からない。ただ、20代の女性に顕著なことを考えると、
中国人向けの風俗嬢を中心に発症が増えている可能性は否定できません。」(尾上医師、以下同)
【1期の症状】
注視すべきはクラミジアや淋菌感染症など、他の性感染症がおおむね減少傾向なのにもかかわらず、
梅毒だけが突出している点だ。
「たとえばクラミジアには痒み、淋菌感染症には排尿痛など自覚症状の出る場合がありますが、
初期の梅毒は痛くも痒くもないのが特徴。
気付かぬまま感染を広げてしまう事例が多いのです」(尾上医師)
それでも一定のシグナルがある。症状のある「顕症梅毒」は進行具合によって
早期(1~2期)と晩期(3~4期)に分けられる。
1期では感染部位にポツンと小豆大のしこり(初期硬結)が生じる。
次第にしこりが崩れて潰瘍を形成(硬性下疳)、さらに両足の付け根のリンパ節が腫れる。
感染からおよそ3週間後に発症するのが通常だ。
「ただ、いずれも痛み痒みを伴わず、発熱もないため、1期で医療機関を受診することは稀です。
しこりは性器に限らず、オーラルセックスの場合は唇や舌、咽頭や尿道に、
アナルセックスの場合は肛門にできる。
③1期顕症梅毒:口唇の硬性下疳
放置していても数週間で消えるため、自然に治ったと思い込んでしまう人も多い」(尾上医師)
中には自然治癒する場合もあるというが、自己診断は危険だ。
江戸時代、遊廓の吉原で梅毒が流行したのは、症状の消退を治癒と勘違いし、
客をとり続けたためといわれる。
「しこりや腫れがあっても、感染から3~4週間までは血液検査が陰性になることが多い。
その場合、病変部を採取し、暗視野顕微鏡で検査しますが、病原体の視認に習熟を要するため、
あまり用いられていない。
血液検査は3~4週間以降受けるようにしてください」(尾上医師)
【2期の症状】
1期の症状が消失しても自然治癒しない限り、3カ月~3年の後、梅毒トレポネーマが血液に乗って
全身にまわり、2期に進む。
「ここで初めて発熱があったり、全身のリンパ節が腫れたり、脱毛が始まる。
2期になって受診する人が大半です。
最も顕著なのが手のひらや足の裏に広がる赤い紅斑。梅毒性乾癬という発疹です。
それでも痛みや痒みを伴わないので、放置する人がいます」(尾上医師)
④2期顕症梅毒:手掌の梅毒性乾癬
⑤2期顕症梅毒:足底の梅毒性乾癬
また、2期の段階で紅斑を見つけ皮膚科に駆け込んでも、ただの湿疹と片付けられるケースもあるという。
「2期では血液検査で陽性になることが多いため、検査を受けてほしい。
1期、2期は感染力が強いため、人にうつしてしまいます」(尾上医師)
【3期、4期、HIVとの複合感染】
感染後、3年以上経過すると、皮下組織に鶏卵大のしこり(結節性梅毒疹、ゴム腫)が生じる。
骨が破壊されるのもこの時期だ。
感染から10年たつと心臓、血管、神経などに障害が出て、大動脈炎や大動脈瘤、進行麻痺など
重篤な症状に進むことがある。
「現在は特効薬ペニシリンのおかげで、早期に治療を行えば、3期、4期に進行することはほとんどいない。
また3期、4期は感染力が弱く、人にうつす心配もあまりありません」(尾上医師)
ただし、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)にも重複感染している場合は、1期~4期の段階を経ず、
様相が変わるという。
「梅毒に感染していると、その病変部分からHIVにも重複感染しやす傾向があります。
1期や2期でも重篤な症状が表れやすいのです。脳に菌が回り、神経を侵される場合もあります。
梅毒の検査をする場合はHIVの検査も同時に受けることを勧めます」(尾上医師)
【無症候性の梅毒も】
実は、しこりもできず、リンパも腫れないのに、血液検査だけが陽性になる無症候性の梅毒の方が多い。
感染研によると、14年の顕症梅毒(1期)は337例だったが、無症候は613例にのぼっている。
「1期から2期への移行期、また2期で発疹が消えた時に該当することが多い。
また、陳旧性梅毒といって随分昔に感染し、何の症状も出ず自然治癒したのに10年くらいたっても
梅毒の抗体だけが残り、血液検査によっては陽性が持続するケースもあります。
陳旧性は症状も感染力もないので、私は治療しません。
ところが現実には陽性であることを理由に、老人ホームなどの入所を断られる高齢者がいる。
不当な差別と問題視しています」(尾上医師)
【先天梅毒】
また、後天的に梅毒に罹患するのではなく、生まれながら罹患しているケースもある。
梅毒にかかった母親の胎盤を介して感染する「先天梅毒」だ。
昨年は13例(*)と決して多くはないが、微増傾向にある。
基本的に妊婦検診で発見されるものの撲滅はされていない。
「先天梅毒は出生時に黄疸や低体重であったり、学童期になってから難聴を発症したりする。
20代の女性に梅毒が増えている現状を踏まえれば看過できません」(尾上医師)
【予防法】
梅毒と診断されても、現在はペニシリンを一定期間内服することで、治癒する。
その前に感染を防ぐのが賢明だ。
「まず、不特定多数の人と性的接触をしないこと。
する場合は、はじめから終わりまでコンドームをつけること。性交時はもちろん、
オーラルやアナルセックスでも同様です。
コンドームは避妊だけでなく、梅毒を含めた性感染症予防の手段と考えてください」(尾上医師)
だが、不特定多数ではなく特定のパートナーとだけセックスしていても、
パートナーが風俗通いをしたり、違う相手と接触していれば、結果的に感染する恐れはある。
いくら自分が気をつけていても、相手が「潔白」で、感染していないかどうかは分からないものだ。
「現実には難しいでしょうが、2人そろって検査をするのが理想的です。
まずは1人でも、感染を疑う行為があったら、3~4週間置いて、医療機関を受診してください」(尾上医師)
加えて医師選びも重要だ。前に尾上医師が指摘した通り、梅毒症状を見たことがない若い
医師がいるからだ。
「迷ったら、性感染症に精通した専門医を選ぶのも一つの手段。
自己検査キットもありますが、うまく採取できないことがあるので、注意してください」(尾上医師)
怖いのは、気付かず放置すること。梅毒が死に至る病ではなくなった今、防ぐ術と治す術は確かにある。
本誌・菊地 香
⑥梅毒を防ぐ、治すポイント
●梅毒を防ぐ、治すポイント
▶コンドームを使わないセックス(オーラルやアナルも含む)や、不安な性的接触をしたら、
3~4週間後を目安に医療機関へ
▶性器や唇など接触のあった部位に痛みや痒みのないできものができたり、
痛くもないのに足の付け根のリンパ節が腫れたら医療機関へ
▶性感染症に精通した専門医を選ぶ
▶自己診断キットによる検査は採取に注意を
<急増する梅毒 尾上泰彦>
梅毒の無痛性横痃について
Visual Dermatology 2016 Vol.15 No.9 908~909頁
秀潤社(2016年8月25日発行)
特集: 皮膚科で診るSTI② 梅毒ーーthe great imitator
責任編集: 渡辺 大輔
私は分担執筆で「無痛性横痃」を担当いたしましたので報告いたします。
①Visual Dermatology 2016 Vol.15 No.9
②無痛性横痃
梅毒の初期症状は第1期梅毒とよばれ、陰部の初期硬結とそこに生じる無痛性潰瘍、
そして鼠径リンパ節の無痛性の腫脹からなる。
これらを初期硬結、硬性下疳、無痛性横痃とよぶ。
横痃は「よこね」ともよび、鼠径部リンパ節腫脹のことを指す。
③無痛性横痃(左鼠径部)
20代男性。陰茎部に直径15mm大の潰瘍がみられる(➡)。
また鼠径部リンパ節に示指頭大の腫脹が数個ある(囲み)。
いずれも無痛性である。
無痛性横痃とは、このリンパ節無痛性腫脹のことを示す。
④硬性下疳と無痛性横痃
参考症例:40歳代男性。
左側鼠径部リンパ節の腫大がはっきりわかる。無痛性である。
硬性下疳は放置すると数週間で自然消退し、梅毒トレポネーマが全身的に撒布され、
皮膚症状を主とする第2期梅毒に移行する。
無痛性横痃は初期硬結、硬性下疳に引き続いておこるのが通常であるが、
それ単独でおこる場合もある。
⑤初期硬結の典型例
30代、男性。 初期硬結はトレポネーマの侵入部位である。
診断については、血清学的検査は感染のごく初期では偽陰性を示すことが
しばしばあるため、上記の症候をみたら再検査が必要である。
患者がリンパ節腫脹のみを主訴として受診することはまずないが、
オーラルセックスの時代、男性では尿道内に、女性ではクリトリス周辺に
発症する場合があるので、丁寧な視診が必要である。
⑥20代、男性。尿道内に発症した硬性下疳
尿道内に無痛性潰瘍を認める。
痛みがないため患者は気づかない。
⑦20代、女性 陰核付近に発症した硬性下疳
陰核付近に潰瘍が存在する時は包皮をめくって確認する必要がある。
女性の場合、外陰部のみに硬性下疳が存在するとは限らないため、
腟壁、子宮腟部の視診も必要となる。
皮膚科医が女性患者で梅毒を疑ったら婦人科と連携し、腟壁・子宮腟部等の
梅毒所見の有無について確認してもらう必要がある。
また、梅毒を疑うポイントとして、感染機会が3週間前というキーワードは
非常に重要である。
同じ潰瘍をつくる性器ヘルペス初感染例では、感染機会ら2~10日で発症し、
潰瘍は痛みがあり、鼠径リンパ節有痛性腫脹を伴うことから、問診により鑑別できる。
他項でも述べられている通り、近年は都市部を中心として梅毒の爆発的増加がみられる。
筆者はこのままだと梅毒のパンデミックがおこるのではないかと危惧している。
初期段階で正確に診断し、最近改定された日本性感染症学会の
梅毒治療ガイドラインに則った適切な治療を行うことを推奨する。
梅毒の検査方法、病院による相違
前回相談の男性から梅毒の検査方法、病院による相違について
ご質問がありましたので報告いたします。
【相談内容】
お忙しい中とても詳しくお答えいただき誠にありがとうございます。
もう一点検査についてお聞きしたいことがございまして、
検査は病院、保健所、検査キットなどございますがどれ
も同じ検査方法となっておりますでしょうか?
また私は以前先生の宮本町中央診療所があった
川崎市在住なのですが、市内で検査をしていただけるおすすめの病院など
ございましたらご教示いただけると幸いでございます。
①ポケモン!?
【回答】
検査方法は病院や保健所では通常の梅毒血清反応検
査(STS法、TPHA法の両方)を行います。
3~5日間ほどで結果がでます。
しかし検査方法は、担当医、検査方法、試薬や検査セン
ター(研究所)などにより違う場合もあると思います。
これとは別に即日迅速検査もあります。
即日検査も種類があります。この検査は20~40分ほどで結果がでます。
自己採決してやる検査キットもあります。これは郵送検査です。
さてお勧めの病院ですが、JR鶴見駅前にある
コーリンビル5階 「まりこの皮膚科」をお勧めいたします。
院長は本田まりこ先生です。非常に著明な先生です。
安心して受診してください。
ネットで検索して必ず、予約して受診してください。
おだいじになさってください。
②赤倉にて
梅毒の血液検査時期に関して
20代の男性から梅毒の血液検査時期に関しての相談がありましたので報告いたします。
【相談内容】
お世話になります。私は20代の男性です。
梅毒の検査時期に関して教えてください。
梅毒の検査の時期につきまして、様々なサイトを見ているのですが、4週後、6週後、
はたまた2~3ヶ月経たないと正確な検査結果が出ないなど書かれており
どれが正しいんだろう?と少々混乱しております。
確実性が高いのはいつ頃となりますでしょうか?
よろしくお願い致します。
①築地の貝
【回答】
貴男の言うように、梅毒の血液検査時期には難しい問題点があります。
現在、梅毒の血清診断には多くの医療機関で、通常、STS法とTPHA法を併用して総合的に判断しています。
梅毒に感染していれば、STS法の方は3~4週間で陽性になり、TPHA法は少し遅れて4~6週間で陽性となります。
ですから、感染機会から6週間以上経過してから、STS法とTPHA法の両方の血液検査を行い、両方が陰性であれば心配ありません。
両方が陽性であれば現在、梅毒に感染しているか、過去に梅毒になったことを意味します。
しかしSTS法が陽性で、TPHA法が陰性を示すと、梅毒の極初期を表す場合と、本当に 梅毒に感染しているかどうか、判断に苦慮します。
梅毒に感染していないのにSTS法のみが陽性を示すことがあります。
これを生物学的偽陽性反応(BFP)といいます。
BFPについては後述いたします。
その場合、TPHA法より鋭敏な梅毒血清反応検査であるFTA-ABS法を行い、
総合的に判断します。FTA-ABS法が陽性になれば、梅毒の感染を意味します。
またSTS法が陰性で、TPHA法が陽性を示した場合は、過去に梅毒になったことを意味します。
【生物学的偽陽性(BFP)】
STS法では梅毒と関係なく、抗カルジオリピン抗体が出現する場合があります。
すると梅毒ではないのにSTS法のみ陽性を示すことがあります。
これを生物学的偽陽性反応(BFP)といいます。
BFPの頻度は陽性の10~20%といわれています。
例えば、癩,SLEをはじめとする自己免疫疾患,肝疾患,覚醒剤、妊娠、ウイルス感染症、麻疹、伝染性単核症、細菌感染症、ハンセン病、マラリア、ワクチン接種後 など、種々の疾患で生じてきますから診断には注意が必要となります。
さて少し専門的で分かりずらかったことをお許しください。
以上のことから、貴男は感染機会から6週間以上経過してから、STS法とTPHA法の両方の血液検査を行い、両方が陰性であれば心配ありません。
お大事になさってください。
②馬具
梅毒の感染リスクについて
20代の男性から、ある行動による梅毒の感染リスクについての相談がありましたので報告いたします。【相談内容】
はじめまして。
昨今梅毒患者が急増しているとの記事を読み非常に不安になりまして質問をさせていただきました。
数日前に付き合いで手とローションを使用した風俗店を利用してしまいました。
少し前にあった同様の質問から梅毒感染はほぼ無いかと思いますが、
私のペニスが少し肌荒れしていたことと、私の前の利用者のほんの5分ほど後に
サービスを受けたことが気になっていましてこの前の利用者の体液が
まだ軽く手に付着していた場合などにも梅毒感染は成立してしまうのでしょうか…?
最近亀頭部分がヒリヒリするので不安になりノイローゼ気味です…。
ぜひ先生のお考えを聞かせていただけると幸いでございます。
よろしくお願い致します。
①苔!
【回答】
貴男は数日前にローションによるハンドマッサージで射精させる
性風俗店に同僚と行ってしまった。
このことによる、性感染症のリスクについてお話しいたします。
貴男がご存じの通り、HIV感染、梅毒などの性感染症は基本的に
粘膜と粘膜の直接接触、体液の交換、腟性交、オーラルセックス、
アナルセックス、スキンシップなどがなければ感染は成立しません。
貴男の場合は、手でのみする行為ですからHIV感染や梅毒などの
性感染症にかかる可能性は先ずありません。
ただし、貴男のペニスの皮膚・粘膜が少し荒れていたことは気になります。
しかし、今回のこと以前から荒れていたのであれば心配いりません。
また、貴男のほんの5分ほど前にいた方の、体液の問題も気になりますね。
風俗嬢は前の客のローションや精液が、手に付いていれば、少なくとも洗剤で洗い落とすと考えます。
ですから、風俗嬢の手にその方の体液が付着していたという状況は、大変考えにくいですが、
絶対大丈夫とも言い切れません。
普通に考えれば、梅毒感染は成立しないと思います。
また、最近亀頭部分がヒリヒリするのは、別問題だと思います。
私の考えでは、恐らく亀頭包皮炎でしょう。
もしそうであれば、非ステロイド系の消炎鎮痛剤軟膏の塗布がよろしいかと思います。
でも貴男は、ご自分でしてしまった行動で不安になりノイローゼ気味になっている訳です。
これが現在の状態であれば、夜も眠れませんし、食欲もなくなっていることでしょう。
いつまでも悩んでいると精神衛生上好ましくありません。
性感染症の専門医に一度、貴男の悩みをぶつけてください。
相談されると、きっと心が楽になりますよ。。
お大事になさってください。
②草!草!
梅毒にのリスクついて
30代の若い男性から梅毒のリスクについて相談がありましたので報告いたします。
【相談内容】
今月の11日に友人との付き合いでピンサロに行ってしまいました。
性病が怖かったので、胸を舐められながらローションを使って手でしてもらいました。
最後のイク段階、少し前に口で、コンドームなしで、いきなりフェラを10~15秒ほどされたのが、気になって不安になっています。
梅毒などの感染は高いでしょうか?
よろしくお願いいたします。
① オーラルセックス:フェラチオ
【回答】
貴男が行った性行動において、リスクとすればオーラルセックスをしたことですね。
梅毒についてのリスクはそれほど高くはありませんが、他の性感染症については大丈夫とは言えません。
クラミジア感染症、淋菌感染症などは早く専門医に診てもらいましょう。
梅毒については症状がでなくても感染機会から6週間以上経過したら、梅毒血清反応を是非、受けて安心してください。
お大事になさってください。
②梅毒血清反応
③黄色い薔薇
週刊SPA 「梅毒」臨床症例写真
(株)扶桑社 2016年8月9日発売(8月16日、8月23日合併号)の週刊「SPA」26~27頁に私の臨床症例写真が掲載されましたので報告いたします。
①週刊SPA
ILLNESS OF DEATH3年で患者数が3倍、若い女性患者は10倍以上に・・・・・❝死に至る「梅毒」の本当の怖さ❞
②タイトル:死に至る「梅毒」の本当の怖さ
「梅毒」の流行に歯止めがかからない。特にここ数年は全国的にはもちろん、
若い女性に感染者が急増している。その原因、そして危険性とは?
今年の患者数は年間4000人!? に迫る勢い!
医師も危惧する異常事態である
③写真提供:尾上泰彦
死に至る危険な病でも自覚症状はほぼナシ!
④臨床症例:手掌の梅毒性乾癬(第2期):かゆくないのが特徴 数日から数週で消える
⑤臨床症例:足底の梅毒性乾癬(第2期):かゆくないのが特徴
⑥臨床症例:肛門周囲に発症した扁平コンジローマ(第2期)
梅毒トレポネーマの検出率が高いので診察の注意がいる。
風俗嬢、さらに一般女性にも拡大
梅毒の感染経験がある20代のデリヘル嬢は
「中国人のお客さんにうつされたかも」と語る。
『一般的な梅毒の治療』
今回は『一般的な梅毒の治療』についてお話しいたします。梅毒の治療は、日本性感染症学会誌 「性感染症 診断・治療ガイドライン」に沿った治療を推奨いたします。
最近、「2013年に修正された 性感染症 診断・治療ガイドライン」では梅毒の治療には、殺菌的に働き、耐性の報告もないペニシリンを第一に選択すべきであると言われています。
バイシリンG(ベンジルペニシリンベンザチン)投与が基本になります。
合成ペニシリンではなく、天然であり経験的に他のペニシリン(C‐R)よりも有効であるといわれています。
バイシリンG:1日量、120万単位を3回に分けて内服、
またはアモキシリン、アミノベンジルペニシリン250mg×6cap(1日量1,500mg)を3回に分けて内服させます。
ペニシリン・アレルギーがある場合には、塩酸ミノサイクリンまたはドキシサイクリン1日、1回100mgを2回内服させます。
ただし、妊婦の場合にはアセチルスピラマイシン1日、1回200mgを6回内服させます。
投与期間は、 梅毒第1期(感染後3カ月まで)に2~4週間、
第2期(感染後3カ月から3年まで)には4~8週間、
第3期以降には8~12週間を必要とします。
投与期間は、感染時期を推定し、その期の梅毒に準じますが、感染後1年以上経過している場合や、感染時期の不明な場合には8~12週間投与します。
我々臨床医に言いたいことですが、“梅毒の治療の目的”で一番大事なことは、梅毒の病原微生物であるTreponema pallidum(トレパネーマパリドュム)を死滅させることであって、梅毒血清反応の検査成績(Tp抗体価)を陰性化させることではないということです。
これは臨床医の「落とし穴」ともいえます。
一度梅毒になるとTPHAは陰性に転じることはないため不安に感じるかもしれませんが、「性感染症 診断・治療ガイドライン」にそった治療をなされば通常は心配ありません。
尚、私は駆梅療法に、今まで通常、アモキシリン製剤(合成ペニシリン製剤の一つ)1日、 250mg×6cap(1日量1,500mg)を3回に分けて投与し臨床的に奏効して来ました。
これからも使用する予定です。
(参考文献)2013年に修正された日本性感染症学会の診断・治療ガイドライン 梅毒
2016.4.25 尾上泰彦
①クリトリスの包皮に発症した梅毒の硬性下疳
②ヤマモモの果実 梅毒という病名の由来:
第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので
楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていました。いつの間にか、「楊」の字が取れて、
次第に梅瘡⇒黴毒⇒梅毒と変化したと言われています。
再相談、梅毒の検査と治療について
先日、梅毒について相談がありました、30代後半の男性から、お礼と再度の相談がありましたので報告いたします。
【相談内容】
先日は丁寧な回答をいただきありがとうございました。
そのせいか、心が大分楽になりました。
また一つ教えていただきたいのですが、今薬を飲んでいて、6月に再検査を受ける予定です。
その時、感染をしていなくても薬を飲んでいたら、RPRやTPHAは増加しますか?
【回答】
貴男は梅毒に治療効果のある合成ペニシリンである
≪アモキシリン250mg、1回2カプセル、1日3回(1日量1.5g)≫
薬を服用していますから、恐らくRPRやTPHAは増加しないと思います。
ただ検査結果にあまり左右されないでください。
検査成績は治療開始から落ち着くまでは、しばらく上降下いたします。
データが落ち着くのは個人差があります。だいたい1~2年とみてよいでしょう。
しかし、通常であれば徐々に下がっていき落ち着いてきます。
ですから、検査結成績が上がっても新たに薬を服用する必要はありません。
検査データの結果で一喜一憂しないことです。
しかしデータとしてはRPRが下がっていけば安心です。
RPRは治療効果を見ることができます。
RPRは経過観察するのに適しています。
RPRは治癒判定に役に立ちます。
それに反して、TPHAの成績は参考程度と思ってください。
治癒判定には用いられません。
TPHAの検査結果は、一度梅毒に罹患すると陰性化しません。
駆梅治療が終わっていれば心配いりません。
あとは、定期的に検査を受けて経過観察することが大切です。
梅毒の治療の目的は、検査結果の抗体価を下げることでも、陰性化させることでもありません。
病原菌のスピロヘータを死滅させることです。
このことは我々、臨床医が落ち込む、落し穴とも言われています。
大変、重要な注意点です。
そういう意味では梅毒の専門医に相談することをお勧めいたします。
前にも申し上げましたが、パートナーの女性が梅毒に罹患しているかどうか、はっきりしていない状態での性交渉はリスクがあります。
パートナーの女性には、梅毒の血液検査を必ず受けてもらってください。
また、性交渉の際にはコンドームを使用してください。
健康な、安全なセックスをしてください。
おだいじにしてください。
①包皮内板に発症した硬性下疳、痂皮形成している。 感染機会より4週間。
①②高野のフルーツパーラーにて
『緊急 STOP!! The 梅毒』
公益財団法人 性の健康医学財団が発刊している
「性の健康」(春号)に私の論文が掲載されましたので報告いたします。
「性の健康」(春号) Vol.15 No.1 (通巻23号) 2016年3月20日 発行
緊急特集 STOP!! The梅毒
特集1.梅毒の歴史 早川 智
特集2.梅毒の現状と傾向 岡部信彦
特集3.梅毒の臨床症状と予防 尾上泰彦 p.10~13
特集4.梅毒の検査と読み方 須崎 愛
私の論文は『梅毒の臨床症状と予防』
以下に要旨を示します。
1.はじめに
梅毒は潜伏期と顕症期を繰り返し進行する。
Treponema pallidum(TP)による慢性の全身性感染症である。
多くは性交渉により皮膚や粘膜の小さな傷からTPが侵入して感染する。
TPは直径が0.1~0.2μm、長さは6~20μmの螺旋状のグラム陰性菌で活発に
回転や屈曲運動を行う 。
温度変化に弱く39℃で5時間、4℃で24時間以内に死滅し、30~33時間で
横分裂し増殖する。
感染経路別では先天梅毒と後天梅毒、症状別では顕症梅毒と無症候梅毒、
病気別では早期梅毒と晩期梅毒に分類される。
2.梅毒の臨床症状と特徴
●顕症梅毒
a.第1期梅毒
b.第2期梅毒
c.第3期梅毒
d.第4期梅毒
●無症候梅毒
●先天梅毒
●HIV感染に併発した梅毒
3.梅毒に感染しないためには(予防)
以上。
①「性の健康」(春号)
②緊急特集 STOP!! The梅毒
③私の論文
④梅の実 小石川後楽園にて!
テレビASAHI AbemaPrime 「特集これってヤバくないですか」 梅毒特集
2016年4月28日(木) 21時30分放映 約15分間TV ASAHI AbemaPrime 『梅毒特集』(デイレクター:竹石 康晴・中村 稔)
に生出演いたしましたので報告いたします。
下記に流れをお示しします。
スタジオの風景、臨床写真(手掌・足底)、私の写真などをご覧ください。
MC:小松 靖 コーナーCG:椎木里佳 MC:蛭子能収
良くも悪くも「ヤバくない?」という話題を、
アベマプライム独自の目線で切り取る!
「これってヤバくないですか?」のコーナーです!
今夜のヤバい話は、「梅毒とエイズ」です!
実は、とんでもないことになっています。
「梅毒」自体を知らないと言った、
20代の番組スタッフもいました。
関係ないと思っているかもしれませんが、
実はいま、「梅毒」や「エイズ」が
大変なことに、ヤバいことになっているんです。
まずはVTRをご覧ください。
・1950年に日本で猛威を振るった「梅毒」。
⇒梅毒とは?どれだけひどい病気か
・今、「梅毒」を知っている人が減ってきている(街録)
・いま「梅毒」感染者が急増、女性の感染率は5倍増。若者
・そしてHIVの累積の感染者も増えている。
・梅毒とエイズのヤバい話に迫ります。
「宮本町中央診療所」尾上泰彦(おのえ・やすひこ)
院長にお越しいただきました。
(あいさつ よろしくお願いします)
まず、こちらが厚生労働省で公開している
「梅毒」の新規感染者のグラブですが、
ここ数年で、新たに感染する患者が激増しています。
先生、この衝撃の事実をどう考えていらっしゃいますか?
2014年以降に激増している。
まるで大流行の前兆ではないかと、我々専門家は
危機感を持っています。
男性感染者の方が数的には多いのですが、
気になるのは男性の増加率が2010年に比べて、
3倍なのに対し、女性の増加率は5倍と激増しています!
そもそも、新たな感染者が増えている原因はなんでしょうか?
これは大変難しい問題です。これに関して疫学的調査が行われていませんから、分からないというのが、現状です。
⇒新しい患者の特徴については風俗関係ではなく一般女性、若い女性が増えているといえます。
実際に厚労省の年齢分布データを見ると、
2015年10月までの報告数で、
「女性の年齢分布は、15〜35歳の全体に占める割合が、
およそ4分の3を超えた」とあります。
(437例:76%)。
「特に20〜24歳の若い女性が177例(同2.7倍)と、
全体に占める割合の最も高い年齢群であった。」と
あります。
先ほどのVTRにあったように、
「梅毒」は、とても恐ろしい病気です。
蛭子さんは「梅毒」の恐ろしさはご存知でしたか?
清潔にしていれば大丈夫ですよね?
蛭子さん、清潔にしていますか?
今日は,聞いたことはあっても
よく知らない梅毒について、きっちり理解していきたいと
思います
蛭子さん、椎木さん、梅毒、どうやって
感染すると思いますか?
尾上先生、合っていますか?
梅毒の病原菌はスピロヘータです。
性交渉やその類似行為で感染いたします。
※梅毒の感染について解説お願いします。
そして「梅毒」の恐ろしさは、その症状にもあります。
先生、こちらの9面マルチでご説明いただけますか。
(9面マルチで、梅毒の症状などについてお願いします)
梅毒は4段階で症状が進んできます。
まず第一期の症状は…。
パネルタッチ
【第一期】→痛くないしこり
まず感染した部分に痛みのないしこりが出来ます。
しかも一ヶ月でしこりは消えるので自覚しにくいです。
この時点で早期発見できれば本当にラッキーです!
パネルタッチ
【第二期】→全身に赤い斑点→「写真」
二期の症状は梅毒の名前の由来でもある全身の赤い斑点。
痛そうに見えますがこの時点でも痛みはありません。
6週間ほどで斑点が消えるので、治ったと勘違いしやすく
要注意です。
パネルタッチ
【第三期】→鼻や耳が壊死!?
ここまでくると最悪です。
鼻や耳など、顔の出ている部分が壊死する事もあります。
パネルタッチ
【第四期】→人格崩壊
最後は脳梅毒といって、人格が崩壊。
心臓や血管、神経などに重い障害が残ることも…。
痛みなどの症状がない分、診察に来るのをためらう方が
多いのですが…。少し気になった段階で診察するべきです!
末期の症状は本当に怖いですね…。
末期症状は今の日本ではほぼ見かけませんが、
治療せずに放置すると、菌が死滅した訳ではないので
第4期まで進んでしまう恐れもあります。
先生、完治はするんでしょうか?
昔は治らないと言われていましたが、現在では、治療方針が確立していますから完治できます。
症状の悪化を防ぐ意味でも、感染の拡大を防ぐ意味でも、
早期発見が大切なですね。
性病だとパートナーなど、
誰かにうつしてしまうこともあると思うのですが…。
先生、梅毒は、どのように予防すれば良いのでしょうか?
(予防対策についてお願いします)
不特定多数の方と性交渉しないこと。
どうしてもの場合は初めから最後までコンドームを使用すること。心配であれば専門医を受診すること。
もし仮に、感染するようなことをした場合、
どのような病院で検査をすれば良いのでしょうか?
でも、やっぱり恥ずかしくないですか?
そんな人の為に自分で性病を検査できる方法があります。
(検査キットを出して)
医療機関や、ネット通販などで、
梅毒や性病の検査キットが販売されています。
ネットで買って、自分で検体を採取してまた機関に返送すると、メールで検査報告が分かるんです!
(ただし、梅毒は感染してから4週間〜6週間は検査しても反応がないので注意。など)
私は梅毒と診断した患者にはエイズの検査も進めます。
私たちは、どうすればよいのでしょうか?
健康なセックスをすること!
つまり、不特定多数の人と性行為をしないという意味です。
お互いのために、コンドームを使う事。
ご心配であれば専門医を受診することが大切です。
ありがとうございました。
以上、「これってヤバくないですか?」のコーナーでした。
YouTubeになっていてかなり短縮されていますが、
ごらんになれます。
2016年4月28日(木) 21時30分放映
TV ASAHI AbemaPrime デイレクター 竹石 康晴
以下のURLでご覧になれます。
https://www.youtube.com/watch?v=EY9Ho5SEY40
梅毒の安心基準?について
37歳の男性から梅毒の治療について相談がありましたので報告いたします。
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37歳、男性。2016年1月末に、RPR(定性)にて陽性反応が出たため、再度定量検査を行いました。
2月18日に結果を聞いた所、RPR(64)TPHA(たしか1,280)と出た為、その日からアモリン250mgを1日3回内服し始めました。
約4週間飲み続け、3月11日に再検査をした結果、RPR(32) TPHA(320)、
約6週間のみ続け、3月25日に再検査をした所、RPR(32) TPHA(160)にまで下がっていました。
とりあえず、薬は4月16日迄(飲み始めてから8週間)飲むことにしています。
この、数値だけで見て、梅毒はまだ他人に感染する危険はありますでしょうか?
奥さんと不妊治療をするのに悩んでいます。
【回答】貴方は37歳の男性。相談内容をまとめますと以下のようです。
2016年1月末、RPR(定性)で陽性であったため、定量検査を行った。
2月18日の結果がRPR(64)TPHA(たしか1,280)であったため駆梅療法を開始した。
2月18日からアモリン(合成ペニシリンであるアモキシリン製剤)250mを1日3回(1日、750mg)服用した。
3月11日に再検査をした結果、RPR(32) TPHA(320)、
3月25日に再検査をした所、RPR(32) TPHA(160)と抗体価は順調に下降した。
駆梅療法の目標は8週間服用とされているようですね。
恐らく、この時点では梅毒の他人への感染力はないと考えます。セックスをしても心配ありません。子供を作っても大丈夫です。
奥様の検査はちゃんとしておいてください。
ただし、梅毒の治療は日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をお勧めします。
通常、アモキシリン製剤(合成ペニシリン製剤の一つ)1日、250mg×6cap(1日量1,500mg)を 3回に分けて服用します。
最近、修正されたガイドライン(2013年)では梅毒の治療には、殺菌的に働き、耐性の報告もないペニシリンを第一に選択すべきであると言われています。バイシリンG(ベンジルペニシリンベンザチン)投与が基本になります。
合成ペニシリンではなく、天然であり経験的に他のペニシリン(C‐tR)よりも有効であるといわれています。
バイシリンG:1日120万単位/分3またはアモキシリン、アミノベンジルペニシリン1日1,500mg/分3を内服させます。
ペニシリン・アレルギーの場合には、塩酸ミノサイクリンまたはドキシサイクリン1日100mg×2を内服させます。
ただし、妊婦の場合にはアセチルスピラマイシン1日200mg×6を、内服投与します。
投与期間は、 梅毒第1期(感染後3カ月まで)に2~4週間、第2期(感染後3カ月から3年まで)には4~8週間、第3期以降には8~12週間を必要とします。
投与期間は、感染時期を推定し、その期の梅毒に準じますが、感染後1年以上経過している場合や、感染時期の不明な場合には8~12週間投与します。貴男の場合、アモキシリン製剤(アモリン)を1日750mg投与されていますが、基本は1日1,500mgですから、少し足りないと考えます。副作用がないのでしたら、これからでも遅くはありませんから、主治医に追加投与していただいたらいかがでしょうか。
また、貴男の場合は今後、定期的に通院され血液検査で抗体価の推移をみていただきましょう。心の平安を得るためにも、お勧めいたします。
抗体価がさがってくると貴方も医師も安心されることでしょう。
医師に言いたいことですが、一番大事なことは、梅毒の治療の目的は、
梅毒の病原微生物であるトレパネーマパリドムを死滅させることであって、梅毒血清反応の検査成績(Tp抗体価)を陰性化させることではないということです。
一度梅毒になるとTPHAは陰性に転じることはないため不安に感じるかもしれませんが、日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をなされば心配ありません。
お大事になさってください。
①第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていました。いつの間にか「楊」の字が取れて、次第に梅瘡→黴毒→梅毒と変化したと言われています。
②青の洞窟
「梅毒の影が残っている」
梅毒について相談がありましたので報告いたします。
【相談内容】
現在、50歳の男性です。
22歳くらいの時に、梅毒と診断されました。
その時は錠剤の抗生剤を飲んでいましたが、長い間飲んでいても
梅毒血液反応はずっと陽性に出ていました。
医師からは、完治はしているものの、影のようなものだと言われました。
症状は全然出ていないんですが、血液検査をすると未だに反応が陽性に出ます。
この場合、感染したり、結婚して子供を作った場合、子供に影響が出るでしょうか?
病院で聞いても、はっきり答えてもらえませんでした
なので、結婚も今まで考えられませんでした。
専門家中の専門家とお聞きしたので、ご相談させていただきました。
よろしくお願いします。
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【回答】
まず、私は専門家ではありません。でもこのご相談にはお答えできます。
現在、貴男は50歳の男性。22歳の時に梅毒に感染し、治療は、ある抗生剤を長期間服用された。
しかし梅毒の検査結果がいつも陽性になることで悩まれている。
約28年の長期間、心にキズができたまま不安が続いて、大変つらい思いをされてきた訳です。
貴男の場合、担当医師が完治したというのであれば、ご心配はないと考えます。
担当された医師が言う、血液検査成績の“影”とは、血液の中に残った治癒性瘢痕のことです。
一般に少し深い傷(潰瘍など)が生じると、治っても傷痕が残ります。このことを瘢痕性治癒ともいいます。
恐らく、このことを“影”と言われたものと考えます。火事に例えると、鎮火しても火事場の焼け跡は残ります。
この焼け跡はブルドーザーでかたずけられますが、血液の中の瘢痕(焼け跡)はかたずけられません。
ですから、血液検査をすると、この瘢痕が必ず陽性となって出てきます。
心にキズを付けてしまう嫌な検査ともいえます。こんな検査があるから悩まれるのですね。
貴男の場合は治療した訳ですですから、なにもご心配いりません。
貴男の梅毒の血液検査はRPR(STS)とTPHAをやられている思います。
おそらくSTSは陰性化しており、TPHAのみいつも陽性に出てしまうという状態が続いているものと考えます。
日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をしているのであれば、投薬開始から1ケ月で梅毒の感染能力はなくなります。
それ以降は、一般的な日常生活はもちろん、キス、セックスも可能となります。
結婚もできますし、子供も作っても構いません。子供に影響はでません。
今まで症状がないのであれば、貴方が梅毒を移された原因は分かりませんが、多くの場会、献血、集団検診、人間ドック、入院や術前などの血液検査で偶然発見される潜伏梅毒で、
感染時期の特定は難しくなります。しかし梅毒は感染していることが分からず、放置していても約2年で感染力はなくなり、自然治癒するともいわれています。
専門的な知識になりますが、勉強いたしましょう。
梅毒の治療は日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をお勧めしております。
通常、サワシリン(アモキシリン製剤:合成ペニシリン製剤の一つ) 250mg×6錠
1日3回 4~8週間服用。感染時期が不明の場合は8~12週間服用していただきます。
最近、修正されたガイドラインでは梅毒の治療には、殺菌的に働き、耐性の報告もないペニシリンを第一に選択すべきであると言われています。バイシリンG(ベンジルペニシリンベンザチン)投与が基本になります。
合成ペニシリンではなく、天然であり経験的に他のペニシリン(C‐tR)よりも有効であるといわれています。
バイシリンG:1日120万単位/分3またはアモキシリン、アミノベンジルペニシリン1日1,500mg/分3を内服させます。
ペニシリン・アレルギーの場合には、塩酸ミノサイクリンまたはドキシサイクリン1日100mg×2を内服させます。
ただし、妊婦の場合にはアセチルスピラマイシン1日200mg×6を、内服投与します。
貴男の場合は今後、定期的検査は特に必要ありませんが、定期的に6カ月~1年毎に通院され血液検査で抗体価の推移をみることは良いことです。
心の平安を得るためにも、お勧めいたします。
抗体価がさがってくると貴方も医師も安心されることでしょう。
医師に言いたいことですが、一番大事なことは、梅毒の治療の目的は、
梅毒の病原微生物であるトレパネーマパリドムを死滅させることであって、
梅毒血清反応の検査成績(Tp抗体価)を陰性化させることではないということです。
一度梅毒になるとTPHAは陰性に転じることはないため不安に感じるかもしれませんが、
日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をなされば心配ありません。
貴男の担当医は大丈夫なのですが、我々、医師が注意すべきことは、
抗体価がさがらないからといって、患者にいつまでも必要のない薬を服用させてはいけないことです。
お大事になさってください。もし可能であれば、結婚なさってお子さまも作りましょう。
①梅毒か?性器ヘルペスか? 答えは性器ヘルペスです!
②ピンクローズ
「梅毒患者 若い女性に増えている」
日刊ゲンダイ( 2015年11月27日発行 )の7頁に私の関連する記事が掲載されましたので、報告いたします。
“梅毒患者 若い女性に増えている”
娘さんやフーゾク嬢に教えたい
女性の梅毒患者数が急増して深刻な問題となりつつある。
国立感染症研究所がまとめたデータによると、全国の梅毒患者の報告数は10年ほど前から増加傾向だったが、2008年の831人をピークに10年は621人まで減少。
ところが11年から増加に転じ、今年は10月末の時点で2037人に達した。昨年1年間の1671人を超えたのだ。
さらに深刻なのが20~24歳の若い女性だ。
女性の年齢別では177人と最も多く、なんと昨年同時期の2.7倍に急増している。
性感染症が専門の医学博士・尾上泰彦氏は「世界的なパンデミック状態です。
患者の中には来日中のアジア圏の女性もいると考えられます」と警告する。
なぜ、女性患者が増えているのか。
東京医科歯科大名誉教授・藤田紘一郎氏(感染症学)に聞いた。
「コンドームをつけずにセックスするからです。
若い女性は世間知らずで受け身になりがちだから、コンドームなしでしたがる男性につい押し切られてしまいます。
HIV感染が深刻だったころは注意の呼びかけが盛んで、若者もコンドーム装着を心がけましたが、最近はHIVを軽視し、梅毒を“昔の病気”だとみくびっているため予防が手薄になっているのです」
藤田氏によると、ビタミンB不足などで性器の粘膜が弱まったり、免疫力が低下しているときが要注意。
梅毒の感染者と1度セックスしただけでうつってしまう。
オーラルセックスでも感染する可能性があるという。
恐ろしいのは淋病と違って痛みなどの自覚症状がないこと。
女性が感染に気づかず妊娠すると、流産や死産に至ることも。
胎児の脳内に菌が入ると、知的障害が起きる危険性が生まれる。
梅毒にかかっている女性を見分けるにはどうすればいいのか。
「外見ではなかなかわかりません。顔色が悪い女性に注意というくらいです。
セックスの際は女性器に『硬結』というイボ状のかたまりや炎症が見られないかを確認。
海外の医師によると性器のにおいでも分かるそうです。
健康診断では必ず血液検査を受け、梅毒菌の有無を聞くようにしてください」(藤田紘一郎氏)
梅毒に罹患して放置しておくと、動脈瘤ができて破裂し、命にかかわるそうだ。
アタタもすぐ娘や風俗嬢に教えたほうがいい。
以上です。
日刊ゲンダイ タイトル 発行日
左図:新聞
右図:女性性器に発症した硬性下疳 この潰瘍は疼痛がないのが特徴 鼠径部リンパ節の無痛性腫脹
「若い女性に梅毒が増えている!」
2015年(平成27年)11月24日(火)発行の讀賣新聞の朝刊に梅毒に関する記事が掲載されましたのでご報告いたします。
梅毒 若い女性に急増!
20~24歳の若い女性に今年は昨年の2.7倍も多い
性感染症「梅毒」の患者が急増し、今年は10月の時点で昨年1年間の患者数を超え、現在の調査方法になった1999年以降で最多となったことが、国立感染症研究所のまとめでわかった。
胎児感染で重い障害恐れ
特に若い女性の増加が目立ち、妊娠中に胎児に感染すると重い障害が残る恐れもあることから、専門家は予防と早期の受診を呼びかけている。
感染研によると、梅毒患者の報告数は、10年ほど前から増加傾向にあったが、2008年の831人をピークに10年には621人まで減った。
しかし11年から急増し、今年はすでに2037人(10月28日時点)と、昨年1年間の1671人を超えている。
女性の年齢別では20~24歳が177人で最も多く、昨年同時期に比べ2.7倍となった。
胎児に感染し、死産や障害につながる「先天梅毒」も10例報告された。
梅毒は、患者との性的接触が主な感染ルート。
3~6週間の潜伏期間を経て、感染部分にしこりができ、それがいったん消えた後に体に発疹が現れる。
抗菌薬の使用で治癒する。
感染研の大西真・細菌第一部長は「不特定多数との性的接触を避けることが予防につながる。
妊娠初期に治療すれば胎児の感染を防げるので、疑いがあればすぐ受診してくほしい」と話す。
新聞の写真は「梅毒患者数の推移」を表しています。参考にしてください。
以下は私のコメントです。
男性では、2014年には3年ぶりに梅毒の異性間接触患者数が同性間接触患者数を上回っています。
この事実は2011年以降、男女間の異性間接触で男性にも女性にも梅毒が爆発的に増加していることを物語っています。
世界的流行「パンデミック」の前兆でなければよいのですが。
どのような理由、原因でこのように急激に梅毒が増加したのか、早期に解明し対策を立てる必要があります。
また行政、厚生労働省、専門家、医療機関などは、予防と早期の検査受診を啓蒙すべきです。
2015年11月24日讀賣新聞「梅毒 若い女性に急増」
東京ドームのイルミネーション
梅毒病原菌: トレポネーマ 螺旋状をしている.
梅毒の感染力について (女性)
女性から梅毒についての相談がありましたので報告いたします。
【相談内容】
はじめまして。
お教えいただきたく、メールにて失礼いたします。
9月末に梅毒初期と診断され サワシリン250mg×2錠を1日3回 4週間服用しました。
11月2日 再検査をし 現在結果を待っている状況です。
先生のブログを拝見し、投薬から1か月以上たてば感染力はなくなるとのこと。
これについて質問です。
投薬開始から1か月
投薬完了から1か月
どちらでしょうか??
何を調べても感染力の有無のことは書かれてなく、通院している医院のお医者さんもわからないようで返事があいまいなのです。
お忙しいところ申し訳ありませんが、回答をよろしくお願いします。
【解答】
日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をしているのであれば、投薬開始から1ケ月で感染能力はなくなります。
一般的な日常生活はもちろん、キス、セックスも可能となります。
1.貴方は9月末に梅毒初期と診断された。
梅毒は臨床的に第1期から第4期まであります。
貴方の梅毒初期とは、普通に考えれば第1期となりますが、貴方の主治医はどういう意味で梅毒初期と説明したのでしょうか?
何か貴方の身体の局所に症状がありましたか?
局所に症状(初期硬結、硬性下疳など)が出たのであれば、顕症梅毒の第1期梅毒(感染後約3週)です。
症状がなければ無症候梅毒です。これは症状は認められないが、梅毒血清反応が陽性のものをいいます。
あるいは皮膚症状がありましたか?
皮膚症状があれば顕症梅毒の第2期梅毒で、皮膚・粘膜の発疹や臓器梅毒の症状がみられます。
丘疹性梅毒疹(感染後約12週であらわれる)、梅毒性乾癬(手掌・足底にあらわれる)となります。
梅毒性バラ疹は身体を中心に顔面、四肢などにみられます。
扁平コンジロームは肛門周囲にできます。
梅毒性アンギーナといってビランや潰瘍を伴い、扁桃を中心として軟口蓋に及ぶ発赤、腫脹などもあります。
時に口腔内粘膜にバタフライ・アピアレンスという特徴的な所見があらわれることもあります
舌には、乳白色という所見があらわれることもあります。
また梅毒性脱毛もみられます。
第3期梅毒では感染後3年以上経過すると顔面に結節性梅毒疹、鼻にゴム腫などがあらわれることもあります。
第4期になりますと、大動脈炎、大動脈瘤あるいは脊髄癆、進行麻痺などの症状が現れることがあります。
時に、脳神経症状があらわれ人格が崩壊する場合もあります。
ただ、現在では第3期、第4期の症状があらわれる人はほとんどありません。
しかし、HIVに感染していると梅毒の症状が増悪してくることもあります。
2.貴方は、サワシリン(アモキシリン製剤:合成ペニシリン製剤の一つです)250mg×2錠を1日3回 4週間服用しました。
できたら日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をなされば良かったのですが。
つまり、薬の投与期間は、第1期であればサワシリン250mg×6錠 1日3回 2~4週間服用なされば良かったのです。
第2期であれば4~8週間、第3期以降であれば8~12週間を必要とします。
貴方の場合は第1期とすれば、治療としては恐らく大丈夫でしょう。
今後、可能であればサワシリン250mg×6錠 1日3回をあと2週間追加して服用なさればよろしいかと考えます
3.貴方は、11月2日 再検査の血液検査をして、現在結果を待っている状態です。
検査成績が良い方向に行く場合と、悪い方向に行く場合があります。
検査の結果がどうであれ、正しい治療さえしていれば、心配いりません。
検査の結果で一喜一憂することはありません。
ただ定期的に毎月、通院され1年ほどは血液検査で抗体価の推移をみることは必要ですし、お勧めいたします。
抗体価がさがってくると貴方も医師も安心されることでしょう。
医師に言いたいことですが、一番大事なことは、梅毒の治療の目的は、梅毒の病原微生物であるトレパネーマパリドムを死滅させることであって、
梅毒血清反応の検査成績(Tp抗体価)を陰性化させることではありません。
我々、医師が注意することは、抗体価がさがらないからといって、患者にいつまでも薬を服用させてはいけないことです。
必要のない治療になります。肝に銘じましょう。
梅毒性アンギーナ
『梅毒の診断と検査法について』6.梅毒の届け出
少し専門的になりますが、6回にわたって梅毒の診断・検査法・検査の問題点・治癒判定・梅毒の届け出などについて勉強しています。
今回は梅毒シリーズ(全6回)最後の6回目になりました。
最後まで、しっかり勉強いたしましょう。
6.梅毒の届け出
最後に感染症の届け出に関して説明します。梅毒は感染症法五類の全数把握疾患であり、診断した場合は全例届け出の義務があります。
質の高いサ-ベイランスの実現の為、罰則がないとしても診断した場合には必ず届け出ていただきたいと思います。
無症状病原体保有者、潜伏梅毒に関しては、「カルジオリピンを抗原とするRPRカ-ドテスト、凝集法若しくはガラス板法での検査で16倍以上又は自動化法での検査で概ね16.0R.U.、16.0U若しくは16.0SU/ml以上のもの」を届け出の対象としています。
この自動化法の基準に関しては「概ね」とある通り、臨床的に無症状病原体保有者と判断すれば16.0未満の値でも届け出をして問題はないし、16.0という値が臨床での判断を
制限するものではないと考えるべきです。
以上、今回で梅毒シリーズ(全6回)は終了いたします。
梅毒に興味のある方には面白かったと思います。
他の方には、少し専門的だったかもしれません。
お許しください。
少しは勉強になりましたでしょうか!
ありがとうございました。
①コロンブス:恐るべし『悪魔のお土産』梅毒?
コロンブス一行が1492年、新大陸の発見とともに“原住民の風土病”をヨーロッパに持ち帰った「悪魔のお土産」
爆発的に全世界に拡がり、日本への伝来は永正9年(1512年)で、約20年足らずで日本にやってきました。
恐るべし! セックスのパワー! 梅毒のヨーロッパ伝播の通説!
②やまもも:第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていましたが、いつの間にか「楊』の字が取れて、次第に梅瘡⇒黴毒⇒梅毒と変化したと言われています。
『梅毒の診断と検査法について』5.検査の問題点・治癒判定について
少し専門的になりますが、6回にわたって梅毒の診断・検査法・検査の問題点・治癒判定・梅毒の届け出などについて勉強しています。
今回は梅毒シリーズ(全6回)の5回目です。
5.検査の問題点・治癒判定について
さてこれら梅毒血清反応検査は従来、検査技師が用手的手技にて血清抗体を希釈し、目視で凝集反応の有無を確認する方法でした(以下「倍数希釈法」)。
前述したガラス板法およびRPRカ-ドテストなどはこの倍数希釈法の代表であり、
キット化されています。
倍数希釈法は本邦で広く用いられていましたが、用手操作による検査技師の感染の危険性や、結果の判定を目視で行うために客観性が乏しいといった問題点が指摘されていました。
こうした用手操作、目視判定が必要な検査に代わり自動分析器で自動測定が可能な新しい検査方法(以下「自動化法」)が本邦において普及しつつあります。
自動化法は主にラテックス凝集法を原理として凝集反応により生じる吸光度の変化から抗体価を測定します。
臨床において自動化法の普及を知らない医師が直面する問題はその結果の取り扱いです。
問題点の第一には倍数希釈法と自動化法では結果の表記方法が異なるという点があげられます。
前者は1倍をカットオフとして1倍未満、1倍、2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、・・・と2n乗倍の非連続値で表記されるのに対して、
後者は 1.0をカットオフとして小数点第一位まで記載する0から始まる連続値で示されます。
第二に倍数希釈法と自動化法がどのように対応するのか明確に示されていません。
自動化法の試薬メ-カ-は両者ができるだけ一致するように設計したと言っていますが、では自動化法を倍数希釈法にどのように置き換えればいいのか定義されているわけではありません。
さらに実際に同じ検体で自動化法と倍数希釈法を測定するとばらつきが出てしまいます。
私見を述べれば両者は結果に相関性のあるものの、一定の法則性をもって置き換えるような検査ではないと考えた方が混乱しません。
第三にこの自動化法を用いた治療の評価測定方法が明らかにされていません。
倍数希釈法では希釈系列で2管以上の変化(前後比較して4倍以上の変化)を有意な変化として治癒判定や再燃、再感染の判定に想定していましたが、自動化法ではどの程度変化することが有意なのか明らかになっていません。
本邦では外科処置の前や産科での妊婦のスクリ-ニングとして梅毒血清抗体検査が行われています。
つまり検体数の非常に多い検査ということもあり、利便性簡便性に勝る自動化法が普及しつつあります。
残念ながら自動化法による治癒判定の基準は現時点では示せませんが、私見を述べればまず前述したとおり自動化法の結果を倍数希釈法に当てはめようと考えることはしない方がよいといえるでしょう。
次に自動化法は従来の倍数希釈法よりも治療で大きく低下し陰性化する(1.0未満になる)傾向が比較的高いことと、わずかな変化も検出できる傾向があることを知っておくとよいでしょう。
この点は基本的には従来の方法よりも定期的な採血さえ欠かさなければ病勢や治癒の判定において有利に働きます。
倍数希釈法を使用していた場合と同じく大切なのは治療後に定期的に採血を行い、その推移をみることです。
減少する傾向があれば治療が奏功している可能性を示し、高値のまま不変な場合や、増加する傾向があれば治療の失敗や再感染の可能性を示します。
判定が難しい場合や再燃の可能性を考慮する場合には採血の間隔を短くしたりするなどで対応します。
こうしたことは別に自動化法でも倍数希釈法でも変わらないし、自動化法を特別に考える必要はありません。
たしかに本邦のガイドラインでは治癒判定に関して倍数希釈法で8倍以下を目標とする記載がありますが、これも絶対ではありません。
8倍だから大丈夫というものではないし、ある程度の目安でしかないと考えるべきです。
ではその目安が自動化法ではどの値になるのかに関しては、今後の課題にはなりますが
その目安が示されたとしても、それはあくまでも目安であり、治癒確実とするものではありません。
カルジオリピンを抗体とした抗体価は病勢を示してはいますが、その病勢を把握するためには臨床症状や抗体価の推移の情報が必要であるし、数値の絶対値で明確に評価できるものではありません。
数値が高いから病原体を保有していると断じるものではありません。
今後梅毒血清反応より鋭敏な治癒や再感染の判定方法、検査が望まれますが、現状ではこの検査を用いるしかありません。
患者には治療初期から定期的な通院と採血による抗体価の推移の評価が必要である旨を十分説明することを勧めます。
次回は、この梅毒シリーズ(全6回)の最後になりますが、「6.梅毒の届け出」について勉強いたします。
お楽しみに!
この絵は“性器を武器にして戦ったフランス女性”です。
「黒い襟巻をつけた婦人」 ロートレックス画
1870年代 フランス・プロシャ戦争
『…・私もやつらに、手あたり次第、梅毒をうつしてやりました・・・・』
『梅毒は彼女にとってプロシャ人と戦うための武器だった!』
新潮文庫「モーパッサン短編集3」より
『梅毒の診断と検査法について』4.梅毒の診断
少し専門的になりますが、6回にわたって
梅毒の診断・検査法・検査の問題点・治癒判定・梅毒の届け出などについて勉強しています。
今回は梅毒シリーズ(全6回)の4回目です。
4.梅毒の診断
さて梅毒の診断に利用される検査には病変からのTPの検出と梅毒血清反応検査があげられます。
TPはin vitroでの分離培養はできないため、TPの検出方法には暗視野法、墨汁法、パ-カ-インク法、病理組織学的検査などがあげられます。
しかしTPの検出には検出可能な病変が必要であり、暗視野法や墨汁法などの視覚的に病原体を確認する方法は委託できる検査ではなく手技や病原体の視認に習熟を要し、
また病理組織学的検査は侵襲が大きくなります。
このため潜伏期でも利用可能であり、簡易な採血で済む梅毒血清反応検査が広く診断に用いられています。
梅毒血清反応は用いる抗原によって大きく二つに分けられます。
一つはカルジオリピン、非特異的脂質抗原を用いる方法で、RPRカ-ドテストやガラス板法など<の名称で知られています。もう一つはTP抗原を用いる方法で、TPHAやFTA-ABSなどがあります。
このうち非特異的脂質抗原を用いる方法は病勢をよく反映するので、診断のみならず治癒や再発の判定にも用いられますが、生物学的偽陽性(BFP:biological false positive)として知られている特異性の問題があります。
TP抗原を用いる方法は特異性が高いものの、通常治癒後も陰性化しないことと感染後陽性化するのに期間を要する点に注意が必要です。
臨床症状から梅毒を疑った場合にはカルジオリピンを抗原とする方法、TP抗原を用いる方法、それぞれの長所短所を補うべく、両者を測定して総合的に判断いたします。
次回は、「5.検査の問題点・治癒判定について」について勉強いたします。
お楽しみに!
②TPの検出方法の一つに暗視野法があります。
③マリ-・アントワネットは梅毒だった。当時、梅毒のことをフランスでは「イタリア病」と呼んでいた。イタリアでは「フランス病」と呼んでいた。
④シュ-ベルトは梅毒で死んだ?!
梅毒に感染してその絶望の境地から弦楽四重奏曲「死と乙女」を作曲したと言われています。
『梅毒の診断と検査法について』3.病期による梅毒症状
少し専門的になりますが、前々回から6回にわたって梅毒の診断・検査法・検査の問題点・治癒判定・梅毒の届け出などについて勉強しています。
今回は梅毒シリーズ(全6回)の3回目です。
3.病期による梅毒症状
第1期顕症梅毒による病変は数週間程度で自然に消褪していき、潜伏期を経て
感染から約3か月程度で梅毒性ばら疹、梅毒性乾癬、扁平コンジロ-マなどに
代表される第2期顕症梅毒を呈します。
第2期梅毒は梅毒血清反応が陽性の時期であり「疑うこと」さえできれば診断は
比較的容易ですが、疑わなければ梅毒血清反応はル-チンで行う検査では無い為、
診断は困難となり、皮疹を見逃さないことが必要です。
典型的な皮疹で特に特徴的なものは掌蹠の赤斑であり、梅毒を疑った場合には
掌蹠の診察は欠かせません。
また第2期顕症梅毒は感染から3か月程度経ってから生じるため、患者からの
自発的な性感染症に関する問診は望みにくいと言えます。
たとえ患者本人が第1期に生じていた性器の症状を自覚していたとしても、
自然に軽快してしまっている病変と現在の症状を結び付けて、
さらにその症状を自発的に話すことは恥ずかしさもあるため困難となります。
患者本人は性器の症状や性交渉歴に関して「恥ずかしい」「言いたくない」
「思い出せない」という心理が働くのに加え医師側も慣れていなければ「聞きにくい」。
プライベ-トパ-ツに関わる疾患ゆえの診察、診断の難しさがそこにあります。
次回は、「4.梅毒の診断」について勉強いたします。
お楽しみに!
①第二期 手(掌)の紅斑
②第二期 足裏(蹠)の紅斑
③第二期 口腔内に生じたバタフライ・アピアレンス
④第二期 肛囲に生じた扁平コンジローマ
⑤第二期に見られる赤い丘疹が、楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていました。
いつの間にか「楊」の字が取れて、次第に梅瘡⇒黴毒⇒梅毒と変化したと言われています
『梅毒の診断と検査法について』 2.梅毒とは
今回は梅毒シリーズ(全6回)の2回目です。
2.梅毒とは
梅毒は潜伏期と顕症期を繰り返し進行する、Treponema pallidum (TP)による慢性の全身性感染症です。
典型例では外性器あるいは口腔、肛門より性交渉により感染し、感染後3週間程度で初期硬結や硬性下疳といった病変とリンパ節腫脹を生じます(第1期顕症梅毒)。
これらの病変は二次感染を伴わない場合、見た目の派手さとは裏腹に概ね無痛性です。
女性は自身の外性器を観察する機会が乏しい場合も多く、この無痛性の病変の出現に気づかないこともあると考えられます。
また、男性では病変に気づいていても、痛くもない性器に生じた病変に関して、恥ずかしさから受診をためらうことも多々あると考えられます。
第1期顕症梅毒を疑う場合には、感染初期の梅毒血清反応陰性の期間があることに留意する必要があります。
つまり感染初期では血清反応陰性であっても感染は否定できるものではありません。
また、感染期間から比較的時間がたってから発症するために性交渉に関する問診に自発性が乏しいことも考えられる為、性交渉歴に関しては心理面に配慮しつつも積極的に聴取する必要があります。
次回は、「3.病期による梅毒症状」について勉強いたします。
お楽しみに!
①男性初期硬結(冠状溝):初期硬結を認めることは稀です。
②男性硬性下疳:二次感染を起こさなければ疼痛は認めません。
③女性のクリトリス包皮付近に生じた硬性下疳。疼痛が無いのが特徴。
④男性の下口唇に生じた硬性下疳(2か所)
『梅毒の診断と検査法について』1.はじめに
少し専門的になりますが、今回から6回にわたって
梅毒の診断・検査法・検査の問題点・治癒判定・梅毒の届け出などについて勉強いたしましょう。
先ず初回は「1.はじめに」で梅毒の概要について勉強いたします。
1.はじめに
梅毒はTreponema pallidum (TP)による慢性全身性の性感染症です。
梅毒は病変からのTPの検出(暗視野法、パ-カ-インク法)あるいは血清学的検査で通常診断します。
しかし直接TPを検出する方法は特殊な顕微鏡や技術を要するため、実際には梅毒は血清学的に診断される場合が多いいようです。
梅毒の血清学的診断方法には2種類あり、RPRカ-ドテストなど非特異的脂質抗原を用いる方法とFTA-ABSやTPHAといったTP抗原を用いる方法があります。
非特異的脂質抗原を用いた梅毒血清抗体価は、梅毒の病勢を示す傾向にあり、診断のみならず治療にも利用されます。
梅毒の血清学的検査は従来、煩雑な用手操作、目視判定が必要であり、客観性にも疑問がもたれていましたが、近年自動測定器で測定可能な検査方法が本邦で普及しつつあります。
次回は、「2.梅毒とは」について勉強いたします。
お楽しみに!
①梅毒トレポネ-マの特徴:
屈曲した螺旋状菌・直径0.1~0.2μm・活発に回転や屈曲運動を行う・温度変化に弱く39℃で5時間、4℃で24時間以内に死滅する病原体です。
②昔、この吉原の大門を多くの男達がくぐり、多くの男達が梅毒になったのでしょうか?!
③吉原病院 娼婦(花魁)検診風景 このころ黴毒(梅毒)をどのように診ていたのでしょうか?
五感を駆使して診ていたのでしょうか? 「目で診る花柳病!?」
梅毒の届け出・治療・感染源の追跡は如何に!
ある産婦人科の先生から耳鼻咽喉科の先生を通して、私に「梅毒」について相談がありましたので報告いたします。
【1回目の相談内容】
ある産婦人科の先生から梅毒について質問がありました。
患者さんは女性で、無症候性梅毒の方です。
以下の2点について教えていただけませんか?
1.直ぐに保健所に届け出が必要でしょうか?
2.治療は.ペニシリンで良いのでしょうか?
治療のポイントありますか?
【1回目の回答】
1.何科の医師でも、梅毒と診断したら、診断がついてから、7日以内に所轄の保健所に届け出る義務があります。全数報告ですから、臨床が忙しいでしょうが届け出てください。
お忙しければ、所定の書類を事務系の方に保健所でもらってきていただき、書類が作成できましたら、また事務系の方(スタッフ)に提出していただきましょう。
2.無症候性梅毒の治療については、私のお勧めは、著効薬であるアモキシリン製剤(合成ペニシリン)1.5gを8週間投与することです。
副作用があれば日本性感染症学会の治療ガイドラインを参考にし、他の抗生剤に変更なさってください。
ただし、治療の開始にあたっては、Jarisch-Herxheimer反応(現象)の説明が必要です。
第1・2期の患者に高頻度にあらわれます。治療開始後、数時間で起こる生体反応です。
投与開始直後にT.p.菌体が急激に破壊されるため、大量の抗原が放出され、アレルギー反応が生じる可能性があります。
突然の発熱・悪寒・頭痛・感冒様症状などが生じます。
皮膚症状の増悪もありえます。この反応の多くは一過性に生じます。
患者に予め、このことを説明しておく必要があります。
説明しておかないと、患者は激しく、ビックリすることがあります。
念のため鎮痛解熱剤などの投与をしておくとよいでしょう。
さて、治療終了後、6か月~1年、毎月1回は梅毒血清反応(STS,TP抗体)を行い、抗体価を経過観察されると、患者さんも医師も安心されることでしょう。
STSの抗体価が下がるといいですね。
TP抗体は下がらなくても気にすることはありません。
梅毒の治療の目的はT,p.を死滅させることであって、梅毒血清反応を陰性化することではありません。
もし、あまり抗体価が下がってこない場合は、HIV検査をして安心いたしましょう。
通常は投薬され1か月以上経過されましたら、感染能力はなくなりますから、日常生活で感染することはないと考えます。セックスもOKです。
【2回目の相談内容】
再度の質問です。先日の梅毒の件ですが、感染経路を追跡すべきかどうか教えてください。
倫理的には、すべきと思いますが如何でしょうか?
ご意見をお聞かせくださいませんか?
【2回目の回答】
この患者さんは女性ですね! 自分がどの男性から梅毒を移されたのか、知りたいですよね!
この病気の感染経路を追跡することは、今迄のセックスパートナーを調査しばれればなりません。
つまり、この女性の男性遍歴を自ら追跡することになりますね。
無症候性梅毒ですから、かなり難しいと思われますが、彼女が思い当たる、元彼たちに連絡し、自分が梅毒に罹患したことを告知しなければなりません。
そして、パートナーに『貴方の将来が心配ですから、梅毒の血液検査を受けてください』とお願いできでば、その真意が伝わり梅毒の感染者が見つかるかもしれません。
しかし、そこまで努力して彼女が感染経路を探いだし、犯人を見つけて納得したいのかどうかですね!
かなり難しい問題と思います。彼女の心の傷をいやすために見つかることをお祈りいたします。
【耳鼻咽喉科の先生からのお返事】
早速の明快なる、お返事ありがとうございました。読めば読むほど、大変だと感じました。
産婦人科の先生は保健所に梅毒の届け出をしたそうです。
その際、HIVも調べるように指示されたそうです。
なかなか追跡は、厳しいと思われますが、促すようにすると、仰ってました。
今回の尾上先生のアドバイスを踏まえて、産婦人科の先生と小生との間での、今回の症例についてのみならず、今後のお互いの連携について、お話する事が、出来て非常に有益な関わりが出来ました。尾上先生のお陰と感謝しております。
ありがとうございました。
以上、報告いたします。
1.山
2.ヤマモモです。コケモモではありません。
第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていましたが、いつの間にか「楊』の字が取れて、次第に梅瘡⇒黴毒⇒梅毒と変化したと言われています。
梅毒について 女性からの相談
梅毒について 年齢不詳の女性からの相談がありましたので報告いたします。
【相談内容】
先生お忙しいところ大変失礼します。梅毒について、初めてご相談させていただきます。
私は5月に梅毒2期と診断されました。今、現在サワシリンカプセル250mg一日8時間おきに3回服用しています。
5月中旬の時点でRPR64でした。
先月某病院の担当医にどれくらいで数値下がるのか聞いたところ「約8週間服用して数値は半分くらいになる」と言っていました。
ただネットで色々調べましたが2期だと4週から8週で数値下がると書いてありました。
この病気は自分で招いたことなのは十分理解しています。
今は絶望しかありません。
どうか先生、助けてください。
【回答】
梅毒になった原因と梅毒2期と診断された根拠は不明ですが、まとめますと、貴女は5月に梅毒2期と診断され、現在サワシリンカプセル250mgを1日3回(250mg×3=1日量750mg)服用されています。
一日8時間おきに3回服用しています。梅毒血清反応の成績は5月中旬の時点でRPR64でした。
梅毒血清反応の成績(結果)は時間経過と共に下降傾向になりますから、ご心配いりません。
検査成績の結果で一喜一憂しないでください。
駆梅治療をチャント行うことが大切です。
貴女の治療はサワシリンカプセル250mg×一日3回服用(250mg×3回)
1日量750mgを服用なさった。
日本性感染症学会の治療ガイドラインでは梅毒の治療には、殺菌的に働き、耐性の報告もないペニシリンを第一にすべきで、経口合成ペニシリン(AMPC,ABPC1日500mg×3=1日量1,500mgなど)を内服させる。
投与期間は、第1期は2~4週間、第2期では4~8週間、第3期以降では8~12週間を必要とする。
無症候梅毒ではカルジオリピンを抗原とする検査で、抗体価が16倍以上を示す症例は治療することが望ましい。
投与期間は、感染時期を推定し、その期の梅毒に準じるが、感染後1年以上経過している場合や、感染時期の不明な場合には、8~12週間とするとされています。
貴女の服用されているサワシリンカプセルは経口合成ペニシリン(AMPC)ですから、安心して服用してください。
また、治癒判定については、梅毒の治療効果は、カルジオリピンを抗原とする検査の抗体価とよく相関するので、病期に応じた十分な治療を行った後は、一般に臨床症状の持続や再発がないこと、およびカルジオリピンを抗原とする検査を定期的に追跡して定量値が8倍以下に低下することを確認するとされています。
貴女の場合、1日の内服薬の量が少なかったようですね。日本性感染症学会の梅毒・治療ガイドラインでは経口合成ペニシリン(AMPC 1日500mg×3=1日量1,500mgなど)を内服することを勧めていますから、主治医に頼んで投与量を増やすか、投与期間を長くしてもらってください。
私のお勧めは経口合成ペニシリン(AMPC 1日500mg×3=1日量1,500mg)を8週間服用することです。
これにより、ご結婚、お子さんを作ることは可能です。
もし、まだ不安があるのでしたら、梅毒の専門医のいる皮膚科を受診なさってください。
お大事になさってください。
梅毒検査時期について (男性)
男性から梅毒検査時期についての相談がありましたので、ご報告いたします。
【相談内容】
お世話になっております。
6週間前に不安な行為がありました。
梅毒の検査を不安行為から6週間で受検した際、確かな結果はでますでしょうか。
クラミジア、淋菌は不安行為から2週間で受検、陰性でした。
ですが、陰茎が痛む事が有り梅毒検査を受検したく相談させて頂きました。
目視した限りでは変化は無いと思います。
お忙しい中恐れ入りますがご教授をお願い致します。
【回答】
梅毒検査時期についてのご質問ですね!
梅毒血清反応は、感染機会から早くて3週間、できたら6週間以上経過してから検査を受けましょう。
貴方の場合6週間を経過していますから、検査を受ける一番良いチャンスです。
検査を受けて安心いたしましょう。
陰茎が痛むことと梅毒とは関係ないと考えます。
それでも、ご心配であれば専門医に診ていただきましょう。
『梅毒の治療について (女性)』
女性から梅毒の治療について相談がありましたので、ご報告いたします。
【相談内容】
昨年(2014年1月)から梅毒の治療を始めて、今月(2015年4月)で1年と4ヶ月になるのですが、
治療に時間がかかっています。
先生がお手上げ状態なのですが、どうしたらいいのでしょうか?
検査結果数値・経過に関しては以下の通りです。
2014年1月 感染発覚。
同時に他の感染症から性病検査、がん検査までやりましたが、梅毒以外は全て白でした。
サワシリンカプセル250mg×朝昼晩一日3回服用開始(250mg×3回、一日量750mg)
2月4日 定量検査 RPR 16/TPHA 640
3月4日 定量検査 RPR 16/TPHA 640
4月2日 定量検査 RPR 16/TPHA 640
5月2日 定量検査 RPR 8/TPHA 640
6月10日 定量検査 RPR 8/TPHA 640
7月10日 定量検査 RPR 8/TPHA 640
外陰炎になる。
性器外部の左側一部分に1cm×3cm位ですが、見た目は乾燥肌みたいなものが生じ、痒いです。
きっかけは生理用品による擦れ、抗生物質の塗り薬で3日位で治りました。
ただ生理中・前後含め、生理用品でかぶれること自体始めてでした。
8月8日 定量検査 RPR 8/TPHA 640
9月8日 定量検査 RPR 8/TPHA 640
10月3日 定量検査 RPR 4/TPHA 320
クラリスロマイシンカプセル250mg×朝昼晩一日3回服用しました。
服用4日目に発疹が全身に出たこと、及び激しい下痢のため、
サワシリンカプセル250mg×朝昼晩一日3回に戻しました。
結局10日間だけクラリスロマイシンを服用しました。
尚、この月、数値が下がったのはあくまでサワシリン服用の結果で、クラリスロマイシンに変えた
タイミングとたまたま同じだっただけです。
検査を受けた日に新しい薬を貰って、1週間後に検査結果が出たら下がっていました。
11月15日 定量検査 RPR 8/TPHA 640
12月12日 定量検査 RPR 8/TPHA 640
2015年1月9日 定量検査 RPR 8/TPHA 640
例によって感染症から性病、がん検査、梅毒以外は全て白。
(但し、この回の梅毒の検査に関しては、PA法と呼ばれる簡易検査で、一度でも梅毒に感染したら、
例え完治していても抗体の関係で必ず引っ掛かります。)
外陰炎・カンジタになる。
外陰炎は前回と全く同じ場所でした。
抗生物質の塗り薬ですぐ治りましたが、以降、生理に関係なく、下着に擦れた程度でも、
ちょくちょくなるようになりました。
2月6日 定量検査 RPR 8/TPHA 640
薬を変える。セファクロルカプセル250mg×朝昼晩一日3回服用。
2月17日 子宮頚癌ワクチン3回目を打つ。 直後からじんましんが出始めました。
2月23日 じんましんのため、皮膚科に行く。
3月6日 定量検査 RPR 8/TPHA 640
4月7日 定量検査 RPR 8/TPHA 640
薬を変える。オフロキサシンカプセル100mg×朝昼晩一日3回服用。
ちなみに今まで、花粉症まで含め、アレルギーとかは出たことがなかったのですが。
実は歯医者さん(普通に虫歯の治療)にも通っているのですが(梅毒に関しては告げてあります)、
歯医者さんでも皮膚科でも、「梅毒の通常の治療で1年を越えることはあり得ないと思いますが…」
と言われました。
産婦人科の先生は「数値が下がらないのが不思議なのですが、可能性としては2つ?
実はすでに治っている?
リンパに梅毒が入り込んでいる
この場合、飲み薬では治らず、点滴・筋肉注射も同じく意味がありません。
わずかに可能性があるとしたら皮下注射ですが…
これは僕も聞いたことがある、というレベルで…
正直、僕ではお手上げ状態です。」だそうです。
この先生は性病などにかなり詳しいベテランの先生で、梅毒の治療経験も何十人もあるような方です。
ところが、その先生をして私みたいに数値が全く変わらない症例が初めてなので、
他の先生方にも聞いて回って下さったそうです。
私の場合、全く自覚症状がなく、いつ感染したのかも定かではないのですが、数値からみて、
また特に症状も出ておらず、あと2014年1月以前の検査では、
2013年1月、感染症・性病、がん検査全て白。
2013年8月、感染症・性病全で白でしたので、潜伏期間等で検査をすり抜けたとしても、
2013年1月以前の感染はまずあり得ないと思います。
(検査を2度すり抜けたとしても、現在までで最大2年4ヶ月)
産婦人科の先生にも、「紹介状・診断書はいくらでも書きますので、何か他の病院・先生でいい
アイデアがあれば、それを試してみるべきです」と言われました。
その場合、何科に行けばいいのでしょうか?
というか、誰に聞けばいいんでしょうか?
大学病院とかに行くべきなんでしょうか?
【回答】
貴女の場合、全く自覚症状がなく、いつ感染したのかも不明である。
貴女の治療はサワシリンカプセル250mg×一日3回服用(250mg×3回)
1日量750mgをかなり長期間服用なさった。
貴女の主治医はかなり熱心に検査、治療をなさっておられます。
日本性感染症学会の治療ガイドラインでは梅毒の治療には、
殺菌的に働き、耐性の報告もないペニシリンを第一にすべきで、
経口合成ペニシリン(AMPC,ABPC1日500mg×3=1日量1,500mgなど)を内服させる。
投与期間は、第1期は2~4週間、第2期では4~8週間、第3期以降では8~12週間を必要とする。
無症候梅毒ではカルジオリピンを抗原とする検査で、抗体価が16倍以上を示す症例は治療することが望ましい。
投与期間は、感染時期を推定し、その期の梅毒に準じるが、感染後1年以上経過している場合や、
感染時期の不明な場合には、8~12週間とするとされています。
また、治癒判定については、梅毒の治療効果は、カルジオリピンを抗原とする検査の抗体価と
よく相関するので、病期に応じた十分な治療を行った後は、一般に臨床症状の持続や再発がないこと、およびカルジオリピンを抗原とする検査を定期的に追跡して定量値が8倍以下に低下することを確認するとされています。
貴女の場合、1日の内服薬の量が少なかったようですが、かなり長期間服用なさっておられますから、治療は完結終了したと考えて良いと思います。治療効果もカルジオリピンを抗原とする検査でかなり前から8倍以下になっていますからご心配ないと考えます。
もちろんHIVの検査もされていると思いますからご安心ください。
もしまだ不安があるのでしたら、梅毒の専門医のいる皮膚科を受診なさってください。
お大事になさってください。
梅毒の治療
梅毒の治療について相談をうけましたので、ご紹介いたします。【相談】はじめまして 私は23歳の女性です。
現在、梅毒の治療中です。
私は約3年前、梅毒に感染しました。
そして1ヶ月間、サワシリンを飲みました。
症状がなくなった事で通院をかってにやめてしまいました。
その後、最近脱毛が気になってきました。
心配になり、再び某病院を受診し、検査したところ梅毒陽性の結果が出ました。
それから入院させられ、その病院でサワシリン3ヶ月間、その後ミノマイシン1ヶ月間投与されました。
現在ペニシリンG注射、2週間が終わりましたが、数値が基準値まで下がらないため
退院は延期になりペニシリンG注射の治療も追加されています。
今、現在、RPRは18,8で陽性という説明を受けているのですが
この数値も関係ないのでしょうか?
ネットで検索してみても症例があまりないため、このまま入院していて完治するのかとても不安です。
お忙しい中、失礼いたしますが、ご指導ください。よろしくお願いいたします。
【回答】
貴方は約3年前に梅毒に感染し、1ヶ月間 サワシリン(合成ペニシリンであるアモキシリン製剤)を服用した。
症状がなくなり通院を辞めたと言う事ですが、どのような症状がでたのでしょうかね。
最近、脱毛が気になり、再び検査したところ梅毒陽性の結果が出たということですが、
梅毒の検査は、通常、RPR検査とTPHA(TP抗体)検査をおこないます。
一度、梅毒に感染すると、TPHA(TP抗体)は陽性のままとなり、陰性になりません。
つまり陰転しないということです。
これは梅毒は治療済みでも検査で過去の歴史が出るということです。
治療を継続しても、数値が基準値まで下がることはありません。
貴方はすでに十分過ぎるくらい、駆梅療法を行っています。
現在の治療は意味がないと言うことです。むしろ身体に弊害が生じるかもしれません。
現在、RPRが18.8だそうですが、貴女は十分(3カ月以上)に治療されていますから、
これは過去の歴史をあらわしているものと考えて下さい。
この数値もご心配ありません。
ですから、貴方は梅毒については治療する必要はありません。
早く退院されて普通の生活に戻りましょう。
貴方は梅毒の感染能力はなく、日常生活は普通にできます。
セックスしても他人に感染することもありません。
脱毛の原因は他にあるのではないでしょうか。
一度、梅毒の専門医(皮膚科医)に脱毛を含めてご相談なさっては如何でしょうか。
お大事になさってください。
月刊誌『テーミス』「新梅毒」急増の意外な感染源を警戒しろ!
月刊誌『テーミス』に私の記事が掲載されましたので報告いたします。
月刊誌『テーミス』は伊藤寿男氏が編集主幹です。
伊藤寿男氏は昭和33年、講談社に入社。『週刊現代』編集長。
『フライデー』編集長を兼務。昭和63年に同社を退社。
株式会社テーミスを創業、代表取締役社長兼編集主幹です。
この月刊誌『テーミス』は、時代が見える!未来が読める!
一歩先行く情報満載!を謳っています。
内容は
1.経済・ビジネスの最深部に迫る
2.読者の眼でマスコミの内幕を斬る
3.健康に役立つ最新医療情報を
4.「背景」に目配りした政治・教育・文化情報
5.ホンネだけの世界・国際情報 などです。
さて、THEMIS(テーミス)とは?何か? 調べみました。
THEMISはギリシア神話に登場する女神。左手に剣、右手に秤を持ち、判断から私心を取り去るため目を布で覆っている。正義と公平の守護神である。
私の記事の掲載内容は下記の如くです。
母親や赤ちゃんまで襲う
「新梅毒」急増の意外な感染源を警戒しろ
「もうエイズも梅毒も怖くない」が常識だが新手の風俗などから水面下で蔓延中!
老いも若きも危機感が薄れて
1985年、日本で初めてエイズが確認されたときの衝撃は、日本列島を震撼させたといってよい。ある有名俳優は外国旅行中だったが、国内を避けてフランスで治療を受けているとか、すでに死亡したという噂まで流れたものである。
それから後は、ある風俗地区のソープ嬢にエイズが発症したと風評が立つと、客足がばったり途絶えたりもした。ところが約30年たって現在では、死に至る病といわれたエイズも、効果的な治療法が発見されたこともあって、話題になることも少なくなった。
しかし、日本性感染症学会評議員で宮本町中央診療所院長の尾上泰彦氏は「文明国でHIV感染者が増えているのは日本ぐらいだ。さらに東アジア全体では急増している。10代後半から30代に多いが、特にMSM (Men who have Sex with Men)と呼ばれる男性同士でSEXするゲイに増加傾向がある」と語る。
もちろん若い世代だけではない。東南アジアへ旅行する中高年男性も、昼はゴルフをするものの、夜は現地の女性とアバンチュールを楽しむケースが常態化している。
現地の日本人ガイドによれば、「一時はエイズが怖くて夜の遊びは控えられていたが、ここ数年は『女性は全員HIV感染者ですから気をつけて』と注意するものの、全く気にしていないようだ」と語る。
一方、最もポピュラーでありながら、しばらくその名を聞くことのなかった性感染症である梅毒も急増しているのだ。
13年は全国で1千200人を超えたが、なんと3年間で患者数は倍増している。梅毒は感染症法で医師には全例報告が義務づけられているが、多忙などを理由に保健所に報告していないケースが多いから、実際の梅毒患者はもっと増大しているとみてよい。
梅毒は太平洋戦争終結数年後まで、患者であることを隠す不名誉な病気であることに加え、死に至る病として恐れられてきた。ところが抗生物質であるペニシリンの発見によって、完治できるようになったため、人前で口にすることも出来るし、もう恐ろしい病気ではなくなってしまった。
そんな誤れる安心感が広まったため、最近は、若い世代を中心に広く拡大しているというのが実状である。
しかも梅毒まで、エイズと同じようにMSMの急増が患者数を加速しているというのである。
(後文は省略いたします)
梅毒 若い男に急増のナゾ
2013年11月28日(木)発行の「夕刊フジ」に掲載されましたので報告いたします。
梅毒 若い男に急増のナゾ
世界中で蔓延(まんえん)を繰り返した梅毒は、治療薬ペニシリンの開発で、“過去の病気”とみられてきたが、昨年まで3年連続で患者数が増加。現在の統計方法になった平成12年以降、初めて1000人を突破した。
ベートーベンやニーチェも苦しんだ
ベートーベンやニーチェが苦しんだころは、売春婦が病気を媒介し、男から女へ、女から男へと患者を広げていた。
しかし、最近は事情が違うという。日本性感染症学会評議員で、「宮本町中央診療所」の尾上泰彦院長が言う。
「梅毒は男性同性愛者に多く、患者は8割が男性で、特に30代くらいまでの比較的若い人に目立ちます。
男性同性愛者に多いのは、アナルセックスが原因。アナルセックスは、肛門の締め付けが膣より強く、 ペニスにキズがつきやすい。その傷口から梅毒の細菌が感染しやすいのです。また、30代くらいまでは、恋愛感情が盛んで、交際が終わっても新しいパートナーを求めたがる。晴れてパートナーができると、相手に梅毒を感染させたり、相手から梅毒を感されたりして、病気が広がっていくのです」
オチンチンやリンパ腺が腫れても痛みなし
梅毒は、陰茎やリンパ腺が腫れたりするのが初期症状。ところが、腫れても痛みがないから放置されやすい。
そういう症状の軽さも患者を増やすゆえんだ。
「感染を防ぐには、コンドームが効果的ですが、万全ではありません。フェラチオはじめオーラルセックスで、 梅毒を起こす細菌が口に感染するのです」(尾上氏)
もちろん異性間セックスで感染するケースもあるが、そのルートは日本に出稼ぎにきたアジア人女性とセックスした男性が感染するのがほとんどだという。感染ルートがなんであれ、梅毒の人が注意しなければいけないことがある。
「梅毒の人は、HIVにも感染している可能性がとても高い。梅毒の診断を受けたら、念のためHIV検査も受けるべきです」(尾上氏)
梅毒単独なら、最大8週間抗生物質を服用すれば治る。
しかし、HIVを合併していると、薬が効きにくく、治療が難しくなるという。
女性の硬性下疳について(後編)
問診から、感染したのは仕事による性交渉の時だったことがわかり、感染時期は初診の3~4週間程度前と推測しました。
治療は、日本性感染症 診断・治療ガイドラインに沿って、経口合成ペニシリン剤(AMPC)を1日500㎎×3回、8週間、内服投与いたしました。
治療開始時に生じることがある、発熱、頭痛、発疹などの反応は特にありませんでした。
駆梅療法開始時は、RPRカードテスト 256倍と高値でしたが、治療が奏功し、1カ月後には64倍、2カ月後には16倍、3ヵ月後には8倍、4カ月後には4倍と順調に低下しました。
局所所見では、初診時に認められた直径約10㎜大の潰瘍も、8日目には治癒過程に入り、潰瘍は浅くなり、24日目には、左大陰唇を伸展するとクリトリス包皮に確認できた潰瘍が、きれいに消失し瘢痕治癒していました。
また3カ月後には、潰瘍はきれいに治癒しており、瘢痕は分からなくなっていました。ただ治癒部周辺には軽度の色素沈着が認められました。
経過観察中、第2期にあらわれる梅毒疹は認めませんでした。
その後、本人は性風俗嬢をやめ結婚いたしました。
1年半後の来院時には、局所の潰瘍はきれいに治癒しており、色素沈着も消失していました。
さらに2年3ヵ月後の来院時には、まったく正常に復しており、痕跡もわからないきれいな状態になっておりました。
尚、本症例は、梅毒と診断後、7日以内に県知事に届け出いたしました。
この届け出は医師の義務とされています。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
女性の硬性下疳について(前編)
梅毒第1期にあらわれる顕症梅毒の初期症状に、初期硬結と硬性下疳(コウセイゲカン)があります。その中で、男性の硬性下疳はしばしば目にしますが、女性の硬性下疳は私の経験では非常に稀といえます。
今回は、その女性の硬性下疳の症例をご紹介いたします。
患者さんは、29歳、女性で、未婚です。
職業は性風俗従事者(commercial sex workers;CSW)の方です。
当院に来られたのは「外性器のただれ」を訴えてでした。来院の3日前に外性器のびらんに気付かれたようです。
初診時の性器を確認したところ、左クリトリス包皮と大陰唇を伸ばすと、クリトリス包皮の外側に直径約10㎜大の潰瘍があるのがはっきりとわかりました。
しかし、その潰瘍に疼痛はなかったようです。
ただし、CSWの仕事中は軽度の疼痛を感じたということでした。
また、左鼠径部リンパ節は腫れていましたが、疼痛はありませんでした。
体温は36.8℃で、特に発熱はありません。
彼女はCSWですが、特定のパートナーはいないとのことでした。
初診時の検査成績は次の通りでした。
梅毒血清反応の成績は、RPR(自動化法)330.0R.U.、RPRカードテスト256倍、TP抗体1290.0T.U.でした。
そして、臨床症状、問診および検査所見より第1期顕症梅毒と診断いたしました。
次回は、この女性の治療をどのように進めていったかについてお話し致します。
梅毒の臨床について
最近、あるドクターから相談を受けました。
少し専門的になりますが、 今回は梅毒の臨床について勉強しましょう。
【ドクターからの相談内容】
梅毒は無治療の患者は、そのままだと何年したら感染力は無くなる物ですか? 教えて下さい。
治癒判定については、ガラス板で幾ら以下とか具体的に教えてください。
【回答】
ご相談、ありがとうございます。
梅毒は無治療でもおそらく10年以上経過していれば、感染力はなくなると考えます。
ただしカルジオリピンを抗原とする検査で抗体価が16倍以上を示す症例では
治療することが望ましいと考えます。
また治癒判定については以下の様に考えてください。
●治療効果は、カルジオリピンを抗原とする検査(STS:RPRまたは凝集法)の抗体価とよく相関するので、病期に応じた十分な治療を行った後は、一般に臨床症状の持続や再発がないことを確認することが必要です。
●およびカルジオリピンを抗原とする検査を定期的に追跡して、定量値が8倍以下に低下することをお勧めいたします。
●またカルジオリピンを抗原とする検査(STS:RPRまたは凝集法)の抗体価が治療開始時と比較して 1/4(四分の一)以下に低下すれば治癒とする考え方もあります。
●なお、ガラス板の抗原検査は、2010年に中止となり検査ができなくなっております。
ここで梅毒血清反応につて勉強いたしましょう。
梅毒の血清反応は2種類あります。
1つは非特異的脂質抗原のカルジオリピンを抗原とする血清反応でSTS(serologic tests for syphilis)で、もう1つは特異的梅毒トレポネーマを抗原とする血清反応です。
STSには現在、2法ありRPRカードテスト(rapid plasma reagin card test)と凝集法があります。
また特異的梅毒トレポネーマを抗原とする血清反応には3法あり、TPHA法(treponema pallidum hemagglutination test)、 FTA-ABS法(fluorescent treponemal antibody absorption test) およびTPLA(Treponema pallidum latex agglutination)です。
専門医はこれらの血清反応を組み合わせて診断、治療法の選択および経過観察を行っています。
むつかしい話になり申し訳ございませんでした。
恐るべし『悪魔のお土産』梅毒!
『先生、ペニスのカリにシコリができちゃった!右足の付け根が腫れているけど、痛くはないので・・・』 と言って29歳の会社員が来院してきた。
診察すると、ペニスの冠状溝(カリの所)に直径8mm大の潰瘍(シコリ)が2ヶ所できており、右足の付け根(鼠径部)のリンパ腺が腫れていた。発熱はなかった。
私が、『3週間前にセックスしたでしょう?』 と聞くと、
『エッ?先生、どうして分かるの?確かに3週間前にピンクサロンに行ったけど!』と落胆のご様子。
『オーラルサービスでなったんだよ!これが有名な梅毒の初期症状である硬性下疳(こうせいげかん)だよ!でも良かったじゃない?こうして症状が出たから治療できるし!』と告げると、彼は驚いていました。
この男性の場合は、感染から、およそ3週間して病原体の侵入部位に硬いしこりができていました。
この時期に治療できれば後々の問題や心配が生じる可能性は少なくてすみます。
梅毒とは「トレポネーマ・パリダム」という細長いらせん形の病原体による感染症で、おもに性行為または類似行為によって感染する全身的な性感染症です。
●第1期場梅毒(感染後3ヶ月まで)
感染からおよそ3週間で、病原体の侵入部位に硬いしこりができてきます。 これを初期硬結といいます。
初期硬結はやがて中心にびらんや潰瘍をつくり、周囲が硬く盛り上がり痛みなどの症状はあまりなく、単発のことが普通です。しかしオーラルセックスでは複数できることもあります。
男性では冠状溝(カリ)、包皮、亀頭部あるいは口唇などによく見られます。
やがて足のつけ根などのリンパ節が腫れてきますが、痛みがないのが特徴です。
女性の場合は、・・・に症状が現れます。
● 第2期梅毒(感染から3ヶ月以降~)
この頃から病原体は、局所から血中に入って増殖し、全身に広がり第2期梅毒疹が生じます。
第2期のもっとも早い時期には梅毒性バラ疹が現れます。男女ともに、体幹(頭、頚、胸、腹)を中心に、顔や手足に見られ、1~2cm大の目立たない淡紅色斑で自覚症状がなく、数週間後に自然に消えていきます。感染後約12週間目には丘疹性梅毒疹(きゅうしんせいばいどくしん)が現れます。
小豆大からえんどう豆大で赤褐色から赤銅色の皮膚の平らな隆起として、顔、体幹、手足に多発します。
このように、皮膚や粘膜に皮膚症状が出る梅毒のケースを「顕症梅毒」と言います。
しかし実際は「潜伏梅毒」といって症状を認めない場合が大変多いので感染機会のあった方はで是非検査を受けて安心しましょう。
血液検査(梅毒血清反応)は、病原体に感染してから3~6週間後に陽性化しますから6週間後に受けてください。結婚する時や子供ができる時に問題が生じないようにしましょう。
もしも検査を受けないでいると いつまでも心に平和は訪れません。
● 治療について
1929年に梅毒の特効薬である抗生物質ペニシリンの発見により、それ以後梅毒の大流行はなくなりました。それまでは治療は大変困難を極めたため、最後には神経炎や血管炎を起こしたり、 色々な臓器に腫瘍ができ壊死になり腐ってしまったり、脳や脊髄が侵されて痴呆や感情障害などの神経症状をあらわし、『脳梅』と云われ人格が崩壊することもありました。
現在では梅毒の治療は専門医にかかれば難しいものではありません。
忘れずに!早期発見!早期治療!
●梅毒についての豆知識
『梅毒』という病名の由来は第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれたことからきています。
いつの間にか「楊」の字が取れて、次第に梅瘡→黴毒→梅毒と変化したそうです。
そもそも梅毒はコロンブス一行が1492年、新大陸の発見とともに“原住民の風土病”をヨーロッパに持ち帰った『悪魔のお土産』といわれています。
その後爆発的に全世界に拡がり、日本への伝来は永正九年(1512)で、約20年足らずで日本にやってきたといわれています。
恐るべし、『セックスのパワー』、恐るべし『悪魔のお土産』