泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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クンニによるHIVの罹患について

20代の男性からクンニリングスによるHIVの罹患について
相談がありましたので報告いたします。

【相談内容】

こんばんは。タイトル通りなのですがクンニリングスをした場合
 
(腟に舌をねじ込む行為を含む)、HIV感染の確率はあるのでしょうか?

普段から感染防止を徹底しており、コンドームは必ず装着しますが、
 
クンニリングスも控えたほうがよろしいのでしょうか?
 
①コンドーム

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【回答】

性感染症の感染は粘膜と粘膜の接触、体液の交換で成立いたします。
 
貴男の舌と女性の生殖器粘膜が直接接触し、さらに貴男の唾液と女性の
 
生殖器から分泌物があるため、体液の交換が成立いたします。
 
従って、HIV感染症を含む性感染症のリスクがあります。
 
 
貴男が行っている
クンニリングスは危険な性行動です。
 
健康なセックスを行ってください。
 
性行動の初めから最後まで、しっかりとコンドームを装着してください。
 
貴男の性の健康をお祈りいたします。
 
②池の円形の虹

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2016年09月24日 | トラックバック (0)

『HIV感染症とその治療について最新の知見』

日本性感染症学会
第6回 関東甲信越支部総会・学術集会
が2015年9月27日(日)13:00~
東邦大学看護学部 第9講堂室で開催されました。
その中で私が興味を持ちました講演について報告いたします。
その演題は『HIV感染症とその治療について最新の知見』です。
講師は 味澤 篤先生(公益財団法人 東京都保健医療公社 豊島病院 副院長)です。
 
演題 『HIV感染症とその治療について最新の知見』

以下にその講演要旨を示します。
不治の病であったHIV感染症は、抗HIV療法(antiretroviral therapy、ART)の進歩により長期の予後が期待できる疾患になった。
国内で本格的にARTが導入された1977年時点では、
①抗HIV薬の認可に国内と海外ではギャップがあること、
②アドヒアランスの問題、
③高額な治療費、
④必要な検査が認可されていないなどの問題があった。

しかしこれもHIV診療関係者の努力と協力により乗り越えることができた。
ART自体も進歩し、HIV感染者の予後は劇的に改善し、またARTが2次感染予防にも有効
であることが判明した。
ではHIV感染者はARTを行えば、それで「OK」なのかと言われれば「No」と言わざるを得ない。
近年HIV感染者に起こる合併症では、脳血管障害、心筋梗塞、糖尿病、非AIDS指標悪性腫瘍および骨折などが注目されるようになった。
したがって、HIV感染症診療は早期のART導入と同時に、さまざまな長期合併症に対して、定期的にチェックを行い、早期に介入を行うことが必要である。
またARTは確かに進歩したが、まだ治癒の道は見えていない。
ARTにより血液中のHIVはほぼ検出されなくなっている。
しかしスパイク状のウイルス増殖が時々見られる。
HIVが潜伏している感染細胞のプールが存在し、そこで微小なHIV増殖が生じているためと考えられている。
HIVが潜伏している感染細胞の主体は、腸管粘膜下をはじめとするCD4陽性メモリーT細胞とされる。
メモリーT細胞に潜んでいるHIVにどのように対処していくかが、今後の治癒あるいは機能的治癒を考えるうえで重要ポイントである。

以下は私の講演中に聞いたメモ書きです。
1.HIVはCD4に乗っかって、3日で全身に拡がる、ずるがしこいウイルス。
2.2007年頃からはHIV感染者はAIDS以外の疾患で死亡するようになった。
例えば、癌、心筋梗塞、脳梗塞。
3.また糖尿病になりやすくなり、同時に合併症も生じる。
4.今は、HIVの感染すると直ぐに治療を開始する。CD4と関係なく!
5.インテグラーゼ阻害剤は効果が良く、副作用も少ない。
6.HIV感染者に起こる合併症で、女性は骨折しやすい。
 
尚、日本性感染症学会 関東甲信越支部長は帝京科学大学医療科学部看護学科教授の齋藤益子先生です。講演会は多くの専門家が出席されて盛況でした。
以上です。

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2015年11月18日 | トラックバック (0)

HIV検査、増える郵送検診

2015年(平成27年)10月5日(月) 読売新聞夕刊に掲載された記事を紹介いたします。

HIV増える郵送検診

顔合わさず「手軽」昨年7万7500件

エイズウイルス(HIV)感染の有無を調べる民間の郵送検査の利用件数が昨年、過去最多の7万7588件に上ったことが、慶應大医学部の加藤真吾専任講師(微生物学)らの調査で分かった。
数千円の負担で気軽に検査ができるのが人気だが、判定後のフォロー体制が不十分な業者あるなど、課題も多い。
「陽性」フォローない業者も郵送検査の件数は、調査を始めた2001年は約3600件だったが、年々増加している。
人気の背景には、時間的な制限がなく、他人と顔を合わせずに検査できるという手軽さがある。
利用者は2000~8000円程度で検査キットを購入。指先から少量採血して検査会社に返送すると、
数日から1週間程度で検査結果が出る。
結果は郵送やメール、インターネット上でパスワードを入力するなどして確認するという。
ただ、郵送検査で行われるのは、スクリーニング(ふるい分け)検査と呼ばれる1次検査。
「陽性」の結果が出ても、「疑陽性」で、実際は感染していない可能性があり、最終判断には、病院などで確認検査を受ける必要がある。
加藤専任講師によると、業者の中には、1次検査の結果を知らせるだけで、その後の対応は個人の判断に任せきりのところも多い。
動揺して自暴自棄になり、確認検査を受けないままの人が出てしまう可能性もあるという。
HIV検査は、保健所などの公的機関でも無料で匿名で受けられる。
医師が対面で結果を説明するため、説明内容が十分に伝わるメリットがあるが、曜日や時間帯が限定されているところが多い。
08年に年間17万7000件だった公的機関での検査件数はここ数年、13万~14万件台と伸び悩んでいる。
HIVの郵送検査は、00年ごろから扱う民間業者が出始めた。
今は10業者ほどあり、近年増えつつあるという。
加藤専任講師は、「郵送検査では検査結果の説明や相談が対面で行われず、十分な情報が検査を受けた人に伝わっていない可能性がある」と話し、必要な人がきちんと治療を受けられるよう、運用指針の整備の必要性を指摘する。
年間2万件弱の郵送検査を行っているアルバコーポレーション(大阪市)では、年30~40件ほどの「陽性」判定が出る。陽性だった人に確認検査を受けられる病院を紹介したり、相談に乗ったりして検査後のフォローに努めているという。
同社の萬田和志社長は「検査の安全性や信頼性を守るため、業界で基準をつくる必要がある」と話している。

HIV感染: 厚生労働省のエイズ動向委員会によると、昨年新たに報告されたHIVの感染者数は1091人、エイズを発症した患者は455人。
適切な治療を受ければ、エイズの発症を抑えることができるため、発症前に感染を早期発見するための検査が大切とされる。

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2015年10月09日 | トラックバック (0)

『エイズ通信』(平成27年6月発行)

川崎市役所健康福祉局健康安全部
健康危機管理担当
エイズ・結核担当 より


『エイズ通信』(平成27年6月発行)が発行されていますので 報告いたします。
 
「厚生労働省のエイズ動向委員会は5月27日、2014年に新たに報告されたHIV感染者とエイズ患者は計1546人と過去3番目に多かったと発表した。新たな感染者1092人のうち、20代の349人は統計を取り始めた1985年以降で最も多かった。20代の感染者数が30代(347人)を上回ったのも12年ぶりという。
人口10万人当たりの感染率でみても20代は他の年代に比べて、増加傾向が目立っている。
(5月28日 朝日新聞デジタル)」
★川崎市内医療機関からの梅毒発生報告
☆注目されるのは!
近年急増しているのは「梅毒」です。
首都圏を中心に患者が増え、2013年は前年比1.4倍。更に2014年も増加しています。
梅毒感染からHIVリスクが高まる危険性もあります。
■報告数は男性が多いですが、H27年は女性が増加傾向です。
女性は症状がなく職場の検診でみつかる方が多いのが特徴です。
■無症候者は女性が多く、川崎市全体では60%が「川崎区」からの報告です。
 
『 日本は先進国のなかで唯一エイズ患者が増加している国です!
 
エイズはすぐに発症しないので、感染に気付かないままたくさんの人にうつしてしまう・・・
また、梅毒の初期も自覚症状がないことが多い・・・一度出た症状が消えてしまうこともあり、すぐには検査を受けない人が多いです。でも病気は進行しています。
梅毒感染者は、感染していない人の2~5倍HIVに感染しやすくなると言われています。
 
心配なことがあるなら、検査を受けましょう!!  』
 
写真をご参考にしてください。

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2015年07月22日 | トラックバック (0)

「私はエイズでしょうか?」

18歳の男性からHIV感染症について相談がありましたので報告いたします。

【相談内容】
エイズが心配です。
2週間前に性風俗に行き、亀頭にできものができたので、病院に行くと性器ヘルペスに性風俗に行く以前からかかっていたと言われました。
そして2週間後にあたる今日、性器ヘルペスの症状は治ってきましたが、朝起きたら肺が息苦しく違和感が出てきました。
午後になった今、症状は軽くなりました。
ネットで調べたところエイズの初期症状に肺の違和感と書いてありました。
とても不安です。
検査に行こうと思うのですが3ヶ月後でないと確実な結果がでないのでそれまでとても苦痛です。

やはり自分はエイズなのでしょうか?
ちなみに思い当たる行為は自分の口にヘルペスのかさぶたができた状態でキスをしました。
それと相手の性器を触った手で自分の性器を少し触りました。
ほかは思い当たりません。
長くなってしまい申し訳ありません。
どうかお願いします。

【回答】
HIVに感染しているかどうかは、感染機会から8週間以上経過したらHIVの抗体検査を受けることが可能です。
検査を受けて安心いたしましょう。
亀頭部にできたものは性器ヘルペスの再発と考えられます。
風俗に行き、それがストレスとなりヘルペスが再発してきたと思われます。
また、肺の違和感がご心配なようですから、呼吸器内科あるいは一般内科で診てもらって安心いたしましょう。
おそらくHIV感染症とは関係ないと考えます。
その他に、貴男は危険な性行動をしていますから、専門医で性感染症の検査を受けましょう。
お大事にしてください!

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2015年06月26日 | トラックバック (0)

HIV検査について

30代の女性からHIV検査について相談がありましたので報告いたします。

【相談内容1.】

4日前に抗生物質の点滴を受けたのですが、HIVの検査を受けても結果に響きませんか?

【回答】
AIDSはHIV感染(AIDSウイルス感染)で生じるものです。
抗生物質は細菌に対する治療薬です。

ですから、抗生物質の点滴を受けて、HIVの検査をしても検査に何の影響もありません。

安心して検査を受けてください。ご心配なく。お大事に。

【相談者からの返事】

これで、HIV検査を受けに行く決心がつきました。近日中に検査を受けて安心したいと思います。
お忙しい中、返信ありがとうございました。

【コメント】
最近、このようなご相談が増えております。心配なことがあれば専門医に相談いたしましょう。

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2015年06月26日 | トラックバック (0)

『民間クリニックへのHIV即日検査の導入支援および実施状況の解析』

専門的になりますが下記の研究の報告をいたします。


厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業

HIV検査相談の充実と利用機会の促進に関する研究

平成26年度 研究報告書 pp120-130

 
『民間クリニックへのHIV即日検査の導入支援および実施状況の解析』

研究分担者 井戸田一朗(しらかば診療所)

研究協力者 尾上泰彦(宮本町中央診療所)、他。

 
研究要旨

HIV検査希望者にとって利便性が高い検査相談体制の一つである「即日検査」について、民間クリニックへの導入支援を行うとともに、実施施設での検査数、陽性数等の動向を調査した。

2014年は新規導入が7箇所あり、研究協力クリニックの合計は41箇所となった。

特に埼玉県においては、県庁担当者が民間クリニックでのHIV即日検査導入に積極的であった
ことから、自治体の協力を得て2箇所のクリニックへの導入ができた。

本年度の検査数は25.703件であり、2001年の導入以降で一番多くなった。

陽性数は91件で昨年と比較して5%増、陽性率は0.35%とほぼ横ばいであった。

東京におけるその他クリニック(主にSTIクリニック)の集計では、東京では4箇所の新規導入があったが、検査数は2%増、陽性数は9%増と大幅な増加は見られず、受検者が分散したと思われた。

確認検査陽性例の結果受け取りや医療機関の受診状況については、陽性例91例中86例(95%)が確認検査の結果を受け取っており、そのうち94%は受診把握もされていた。

多くの陽性者を早期のHIV治療に結びつけたことは、検査提供施設として十分な役割を果たし
ていると思われる。

民間クリニックは有料であるにも関わらず、医療機関という安心感や場所・受付時間等の利便性の
良さから多くの検査希望者が即日検査を受検していると思われる。また、STIクリニックは他の性感染症に罹患している人も多く来院し、医師が直接患者を診察することでHIVの早期発見に繋がる可能性が高いことから、医療機関における即日検査の導入は非常に効果的と考える。

以上

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2015年06月12日 | トラックバック (0)

「HIV感染について」

20代後半の女性からHIV感染について相談がありましたのでご報告いたします。

【相談内容】
昨年、複数の男性と性行為をしてしまいました。

一番最後の気になる行為は9月にありました。

保健所で無料のHIV検査を12月下旬に受けました。

その結果は陰性でした。

これは確実なんでしょうか?

最近寝汗などあり不安です。

HIV感染はHIVを持ってない人からも移るのでしょうか?

【回答】
貴女の最後の感染機会は昨年の9月にあった。
HIV検査を12月下旬に保健所で行った。保健所のHIV検査は一般的に感染機会から3か月以上経たないと検査をしてくれません。
ということは、HIV検査を感染機会があってから、3か月以上経って行ったわけですから、これが陰性でしたから、何のご心配もないと考えてよろしいということです。
貴女が心配していることですが、HIVを持っていない人からは、HIVが 移ることはあり得ません。
あとは貴女の心の問題です。
貴女がまだ不安であれば、もう一度HIVの血液検査を受けて心に平和を勝ち取りましょう。
お大事になさってください。

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2015年06月10日 | トラックバック (0)

「民間クリニックへのHIV即日検査の導入支援および実施状況の解析」

民間クリニックへのHIV即日検査の導入支援および実施状況の析」
厚生労働科学研究費エイズ対策研究事業

『HIV検査相談の充実と利用機会の促進に関する研究』

平成25年度 研究報告書
発行:2014年3月31日

私が関与した研究を報告いたします。

民間クリニックへのHIV即日検査の導入支援および実施状況の析」
研究分担者 : 井戸田一朗(しらかば診療所)
研究協力者 : 尾上泰彦、他.

【研究要旨】
HIV検査希望者にとって利便性が高い検査相談体制の一つである「即日検査」について、民間クリニックへの導入支援を行うとともに、実践施設での検査数、陽性数等の動向を調査した。
本年度は新規導入が4箇所あり、研究協力クリニックの合計は36個所となった。
実践状況調査は34箇所について行った。本年度の検査数は25,936件と昨年と比較して13%の増加となり、2001年以降最高となった。
陽性数は87件と昨年より6%減少し、陽性率も0,34%と低い傾向にあった。
その他クリニック(主にSTIクリニック)のみの確認検査陽性例の結果受け取りや医療機関の受診状況については、陽性例87例中81例(93%)が確認検査の結果を受け取っており、そのうち89%は受診把握もされていた。
多くの陽性者を早期のHIV治療に結びつけたことは、検査提供者としての役割を十分に果たしていると思われる。
HIVの早期発見・早期治療に民間クリニックでの即日検査の実施は非常に効果的であり、今後も民間クリニックへの即日検査の導入を進めていきたいと考えている。

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2014年06月06日

世界エイズデー(World AIDS Day)(後編)

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前回お話しました、HIV検査で、正確な結果が早く出るやり方。
今回はその検査の受け方のお話をいたします。
 
この検査は“HIV即日検査”といいます。まず、検査の仕組みからお話いたしましょう。
HIVに感染している場合、体内でHIV抗体が作られますので、HIV抗体の有無を測るために、採血(少量)をします。
検査の時間にかかる時間ですが、採血してから約30分で結果を受け取ることができます。
この検査を受けるタイミングですが、感染する可能性のあった機会から、2~3カ月後が効果的です。
感染する可能性のあった機会から、2~3ヵ月経過していない場合は、HIVに感染していても、抗体が体内でまだ十分に作られていません。
ですので、信頼できる結果を受け取ることが難しくなります。そのような場合は2~3ヵ月後にもう一度、検査を受けることをお勧めします。
 
次に、検査結果の見方について説明いたします。
感染していない場合は「陰性」とでます。感染しているかどうかわからない場合は「要確認」とでます。
この結果の中には、感染していない方が含まれています。
 
では、「要確認」とでた場合、どうしたらいいのでしょうか。
まず、確認検査を行います。多くの場合、採血した残りの血液を使って、感染しているかどうかを調べます。
結果は1週間後にでます。
その確認検査の結果は、検査を受けた医療機関、保健所などを受診して受け取れます。
 
結果の見方ですが、感染していない場合は、「陰性」、感染している場合は、「陽性」と書かれています。
もしも不幸にも「陽性」とでた場合は、HIV感染者となるわけですが、専門医療機関を紹介していただき、今後の日常生活の指導を受けましょう。
 
また治療が必要となる場合もあります。HIV感染は治療法の進歩により、最近ではエイズとして発病する方が著しく減少しています。
積極的に専門医療機関を受診いたしましょう。
 
幸運をお祈りいたします。

2012年11月30日

世界エイズデー(World AIDS Day)(前編)

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 12月1日は世界エイズデー(World AIDS Day)です。
 
世界レベルでのエイズの蔓延防止と、患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、世界保健機関(WHO)が1988年に制定したもので、毎年12月1日を中心に、世界各国でエイズに関する啓発活動が行われています。
日本でも、その趣旨に賛同し、エイズに関する正しい知識等についての啓発活動を推進しており、全国各地で様々な「世界エイズデー」イベントが実施されています。
 
エイズ(AIDS)は治療法の進歩により、最近では発病する方が減少しています。
しかし自分がHIV感染者であるかどうかは、確認しておく必要があります。
自分がHIV感染者であるかどうか知らないでいると、セックスパートナーに感染させる可能性があります。それを確認するには、HIV検査を受けるしかありません。
 
でも、「もしかしてHIVに感染していたらどうしよう」と思うと、検査を受けることを躊躇してしまうものです。HIV検査をすることが怖くなるのですね。でも、怖いからこそ検査を受けるのです。
しかし、勇気を出して、検査を受けられたとしても、その後がまた、怖いのです。
検査を受けてその結果(成績)が出るまで、その時間が長いと、精神的に参ってしまいます。
何日も眠れなくなることもあるでしょう。
 
検査を受けたら、できるだけ早くその結果を知りたいもの。
そこで、正確で早くその結果が出る検査法が求められます。その方法は、あります。
日本においても、すでに10年以上前からその検査は存在しており、多くの方がその恩恵を受けております。
 
その検査法については、次回に詳しくお話いたしましょう。

2012年11月29日

日本国内のHIV-2感染について

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先週、「第4世代HIV抗原/抗体迅速検査」についてご紹介しましたが、今回はAIDSウィルスの中でも「HIV-2感染」について少し詳しくお話しいたしましょう。

AIDSウイルス(=HIV ヒト免疫不全ウイルス)は1型・2型と、タイプが2種類あります。
それをHIV-1、HIV-2と表現します。HIV-1は世界的に感染拡大しているタイプです。
一方でHIV-2はアフリカ型といわれ、特に西アフリカ地域に多いタイプです。
2型は1型と比べると感染力が弱く、発病するまでの期間も長いとされています。

今まで、日本国内ではHIV-2感染者の報告はほとんどありませんでした。
実状を詳しく見てみますと、日本国内では1993年に韓国国籍の2人の感染報告が最初とされています。続いて2002年にHIV検査目的で来日した韓国人男性の感染が確認されています。
さらに2004年には日本滞在中の西アフリカ男性の感染報告がありました。
そしてその後、初の日本人男性の感染者の報告が出てきます。
この日本人男性は西アフリカ滞在中に輸血を受け、その後しばらくして、日本に帰国しAIDSウイルス検査を実施。その結果、HIV-2の陽性が確認されました。2006年9月4日のことでした。
日本人初のHIV-2感染者として、結構マスコミで騒がれましたから、ご記憶されている方も多いかもしれません。

ここまで女性のHIV-2感染者の報告はありませんでした。
ところが2008年に愛知県で、日本女性2名のHIV-2感染者が確認されたのです。
この2人の日本女性(20~30歳)は、海外に行ったことはありません。
もちろんアフリカにも行っていません。
ではどうしてHIV-2が感染したのか。実はこの2人の女性のパートナーが、西アフリカ出身の男性だったんです。つまり、このアフリカ男性と性行為を行い感染したと考えられています。
この日本人女性2人のHIV-2の感染者は、性行為で感染していることから、この後日本国内でHIV-2の感染が性行為で拡大することが危惧されていました。

しかしながら2010年現在まで、HIV‐2の日本国内での感染者の報告は幸いなことにありません。
しかしその実態はわかりません。検査によって事実が明らかになっていないだけで、静かに感染が拡大しているかもしれません。つまり、今後も感染が広がっていく危険性は考えておくべきだということです。
HIV-2の感染力はHIV-1に比べて非常に弱いとされていますが、コンドームを使わないセックスやアナルセックスをすることによって、感染する可能性があります。ですからHIV-1と同じようにHIV-2の感染予防にも充分に配慮すべきです。

AIDSは他人事ではありません。セーフティーセックスを常に心がけておきましょう。

2010年09月12日

第4世代HIV迅速検査

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AIDSウイルスに感染したかどうかを、心配している方にはビッグニュースです。

採血してから15~30分で結果(成績)がでるという、従来よりも検査スピードをアップした、第4世代のHIV抗原/抗体迅速検査『エスプライン HIV Ag/Ab』が登場しました。
感染機会(心配な行為)から30日以上経っていれば安心して検査ができます。

この検査方法はイムノクロマト法を原理とし、HIV-1型および2型の抗体とHIV-1型の抗原を同時に検出でき、かつ個別にも検出できます。
このHIV第4世代の迅速検査『エスプライン HIV Ag/Ab』は、HIV-1型の感染初期には、抗原が抗体より早期に血中に現れることに着目し、この1型抗原との反応をとらえることを特徴としています。すなわち抗原と抗体の両方を検出できるということです。この1型抗原を検出できることにより、従来のウィンドウ期間(=検出できない期間)を短縮することが可能になりました。

もちろんこの検査もスクリーン検査ですから、陽性に出た場合は従来の確認検査を行うことが必要です。またこの検査はHIV-2型の感染の有無は否定できませんから、感染機会から8~12週間以降にHIV抗体検査を受ける必要があります。

しかしながら、この検査はHIV感染を心配している多くの人が、その悩みから早期に解放される福音となることでしょう。

2010年08月24日

19歳のHIV感染患者(その3)

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前回、当クリニックに来院してきた19歳の同性愛者の男性の、HIV抗体迅速検査が「陽性」だっというお話をしました。HIV確認検査の結果を待ちながら、まずは早期顕症梅毒感染の治療を始めたところ、彼の様子に変化が表れたことまでお話ししました。詳しくは前回(その2)をご覧ください。

この男性に駆梅療法をおこなったところ、その翌日より感冒様症状が発現し、発熱(38℃)、全身倦怠感さらにその3日後には全身的に紅斑が生じてきたのです。
これはいわゆる駆梅療法によるJarisch-Herxheimer(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー)現象か、あるいは薬疹が考えられました。

ここでJarisch-Herxheimer現象について少し説明しておきましょう。
少し難しいですが、早期梅毒(第1期)の治療をするにあたっては大切なことです。
これは簡単に言うと梅毒の治療開始後、数時間で起こる生体反応です。
薬の投与開始直後からTP(梅毒の菌体)が急激に破壊されるため大量の抗原が放出され、アレルギー反応が生じる可能性があります。
突然の発熱(39度前後)、全身倦怠感、悪寒、頭痛、筋肉痛などが生じます。
皮膚症状の増悪もあり得ます。

治療の現場では、あらかじめ患者さんに、これが薬の副作用でないことを説明しておく必要があります。
説明を怠ったままでこの現象がでた場合、患者は激しく驚きます。
せっかく治療を始めたのに病気が益々悪化したと考え、医師との信頼関係を損ねる可能性もありますので注意が必要です。
多くの場合、この現象は一過性に生じ、何も恐くないことを充分に強調しておくと良いと思います。また予め鎮痛解熱剤の投与をしておくと患者も安心するでしょう。

話を元に戻しますと、この19歳の男性の場合も、駆梅療法開始後、間もなく感冒様症状が発現し発熱(38℃)、全身倦怠感さらにその3日後には全身的に紅斑が生じてきました。
この全てがJarisch-Herxheimer現象と考えられます。
私見ではHIV感染がベースにあるためこの現象が激しく、増幅されその期間も延長したものと考えます。結局、その3日後には紅斑は退色しました。

そして来院してから7日後、HIV検査の確認検査(Western Blotウエスタンブロット法)および抗原検査のPCR法(核酸増幅法)の結果がでてきました。結果は、私が恐れていた通り“陽性”でした。

「検査結果をお知らせいたします」と予め知らせてあったその日、彼は神妙な顔つきで来院してきました。
その表情は、明らかに最悪の事態を覚悟している様子でした。
私も覚悟を決め、静かに事実を伝えました。“HIV感染”の告知です。
彼は表面上、冷静を装っていましたが、その心中はいかばかりであったのか・・・。

そしてその日、ペニスと肛門も確認したところ、ペニスの硬性下疳は潰瘍が小さく浅くなり、肛門の尖圭コンジローマもボリュウム的には約50%減少していました。
梅毒と尖圭コンジローマの経過は良い方向に行っていますが、“HIV感染”については専門医療機関(某大学病院)に委ねなければならなりません。
彼の健康と幸せを心の中で祈りながら紹介状を作成しました。
19歳というあまりにも若い男性のHIV感染。

HIV感染は「ひとごと」ではありません。
ぜひ「身近にあること」という意識を多くの方に持っていただきたいと思います。

2010年03月03日

19歳のHIV感染患者(その2)

前回、当クリニックに来院してきた19歳の音大生の男性についてご紹介しました。
ペニスに潰瘍あるこの男性、同性愛者であるということで、HIV抗体迅速検査を行ったところまでをお話ししました。詳しくは前回(その1)をご覧ください。

19歳の彼のHIV抗体迅速検査の結果が出るのを待っている間に、さらに性感染症全般についての検査も行ないました。その内容は性器・肛門・口腔内の診察、さらに身体の視診です。
検査項目はクラミジア、淋菌、梅毒、ヘルペス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、血液一般、血液化学などの血液、尿検査に及びます。

そうこうしている間にHIV抗体迅速検査の結果が出ました。
予想はしていましたが、やはり「陽性」と出ました。医師としても緊張する一瞬です。
もちろんこの検査はHIV抗体のスクリーニングであるので、確認検査で陽性を確認しなければHIV感染は確定できません。実際、一般の人では確認検査で陰性になる人も少なくありません。
しかし、同性愛者の場合、陽性率が高いというのも事実なのです。
「まだ、19歳で・・・」と心中は暗澹たる気持ちになりながらも、医師として冷静に彼に事実を伝えました。

「HIV感染の疑いがあります」という私の言葉に対し、彼はある程度覚悟していた様子で冷静を装っていました。しかし彼の心中には計り知れないものがあったでしょう。
そうと思うと私も言葉を失う思いがあります。でもそうは言っていられません。
もしHIV感染が間違いないのであれば、彼はこれからこの病気と戦わなければなりません。
そして私も医師として彼をサポートしなればなりません。
私自身も、緊張しながらも冷静を装い、これからの診療、治療について彼に説明を行ないました。

まずは、スクリーニングの結果を受けて、HIV検査をしなければいけません。
そこで、確認検査(Western Blotウエスタンブロット法、抗原・抗体法)と抗原検査としてPCR法(核酸増幅法)もオーダーしました。検査結果がでるまで約7~10日間はかかりますが、それまで治療を待つわけにはいきません。
臨床症状から、とりあえず早期顕症梅毒と尖圭コンジローマの治療を開始しました。
駆梅療法としては、ペニシリン系抗生物質であるアモキシリン(AMPC)1.5gr/日を投与。
また肛門の尖圭コンジローマに対してはイミキモド(ベセルナクリーム5%)の外用剤塗布(3回/週)を処方し、経過観察をしました。
ところがその翌日から彼の体調が急変したのです。

詳しくは次回にお話ししましょう。

2010年03月03日

19歳のHIV感染患者(その1)

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「HIV感染」というと「自分に関係ない」「アフリカなど遠い世界の出来事」のように思っていらっしゃる方はいませんか?

HIV感染は、日本でも看過できない大きな問題で、決して「関係のない」事ではありません。

先月発表された厚生労働省のエイズ動向委員会の報告によると、2009年に国内で新たに報告されたHIV感染者は1,008人、エイズ患者は420人で、計1,428人。
2003年以来、毎年この数は増え続けていたのですが、2009年は前年比8%減で7年ぶりに減少しています。しかし、感染の有無を調べる抗体検査件数も前年比15%減で、単に「検査する人が減ったので、感染者が発見できなかっただけ」という有識者の見方もあります。

HIVへの関心が薄れている傾向も否定できないと思います。
そんな風潮に警鐘を鳴らす意味で、最近当クリニックに来院したHIV患者の例をご紹介しましょう。

先日、『先生、ペニスにタダレができ、肛門にイボができました』と言って来院してきたのは、まだ19歳の男性。見るからに優しそうな音大生でした。
さっそく問診をすると男性同性愛者(MSM)であり、いわゆるその受け役(ウケ=ネコ)であることがわかりました。パートナーの男性は24歳だそうです。

まずはすぐに局所を診察しました。
ペニスの冠状溝近くの包皮内板に2つの浅い潰瘍を認め、肛門周囲には多数(1~3mm大、10個)の疣贅(イボ)を認めました。
これを見て先ず疑った病気は梅毒です。ペニスに潰瘍あることから、この潰瘍は梅毒の初期症状である“硬性下疳”では?と考えました。
また潰瘍が浅く複数あるため、性器ヘルペスの再発も疑わなければなりません。
しかし、激しいオーラルセックスにより、複数の硬性下疳が生じることも決して珍しくはないのです。

さらに肛門周囲を確認すると、できているイボは尖圭コンジローマであることがわかりました。
同性愛者ということでしたから、本人の承諾を得てHIV抗体迅速検査も行いました。
その結果は大変つらいものであったのですが、長くなりますので次回にお話ししたいと思います。

2010年03月03日

いきなりエイズ!

今日は、最近、突然やってきた患者さんのお話をしましょう。


38歳の男性が、唐突に『梅毒の治療してください。』
と言って来院してきました。
梅毒の診療には慣れているとはいえ、このフレーズには結構びっくり!
『では、まず診察を、そして次に血液検査をしましょう。』と説明して診察に取り掛かりました。


『先ず、口を開けてください!アーン!』これがびっくり。
口腔内は真っ白で、明らかにカンジダ。
特に舌の上には、ぶ厚いカンジダの白い絨毯(白苔)が敷きつめられているようで
直感でエイズ患者によくある、日和見感染による口腔カンジダ症だと考えました。
「日和見感染」とは身体の免疫機能が低下し、抵抗力が無くなったとき、
健康な時にはなんでもなかった細菌、ウイルス、カビ、原虫などにより起こる感染を言います。


内心は驚いたものの、表情には出さずに診察を続けます。
次に『それでは、身体を見せてください』と言ったところで、これがまたびっくり!
胸、背中それに腕には直径10~25mm大の濃い茶色い斑点が多数みられるのです。
「これはカポジ肉腫だ!」直感的に考えました。
濃い茶色の、数センチ大の単独の斑点ができるカポジ肉腫とは、エイズ患者に発症する悪性腫瘍です。
最後に血液検査をしたところ、結果はやはりHIV陽性で、確認検査でも陽性を示しました。
そこで、この患者さんはエイズの拠点病院に紹介いたしました。


日本では1982年に始めてエイズ患者が認定されて以来、今年で26年になります。
HIV感染者は感染に気づかずにいると、早ければ7,8年でAIDSとして発症し、
何処の病院にも受診してまいります。最近ではこの患者さんのように、
『いきなりエイズ』と言う感じで一般病院をおとずれる時代になっています。


『いきなりエイズ』とはHIV感染によって免疫が低下し、日和見感染症を発症した人が
病院で初めて抗体検査を受け、HIV陽性と分かる今回のような場合のことです。
最近では徐々にこれが増加しております。
HIV感染者は日本国内でも増え続けており、彼らがいつAIDSを発症し、来院するか分かりません!
一般病院でも、いつでもAIDS患者を受け入れられる準備体制を整えることが
必要になってきているのではないでしょうか。


日本でもAIDSパンデミック(大流行)が起きるか?
性感染症と戦う最前線に居る医師として、AIDS大流行発生の恐れを
完全に否定することが出来ないのが、今の日本の現状です。

2008年11月25日

世界エイズデー(12月1日)

世界エイズデー(12月1日)が近づいています。
世界エイズデーとは、WHOが1988年に定めたもので、世界規模でのエイズ蔓延の防止、
エイズ患者やHIV感染者に対する差別や偏見の解消を目的としています。
この日を中心とする約1ヶ月間はエイズへの理解を深める意味で「レッドリボン月間」
とされています。


レッドリボンは元々はヨーロッパの昔の風習で、
亡くなった人々への追悼の気持ちをあらわすものでしたが、
1980年代頃のアメリカで、これをエイズに対する理解と支援の意志を示すために
使われるようになり、今では世界的なシンボルとなっています。


この期間に、日本でもエイズデー関連イベントが各地で行われます。
HIV・STD検査イベント、HIV即日検査、HIV夜間検査、HIV歯科診療紹介制度、
エイズフォーラム、エイズ電話相談、HIV専門カンセリングなどです。


11月29日には、渋谷のハチ公前周辺でコンドームが配布されるイベントがあったり、
アンジェラ・アキ、今井絵理子らが出演する「RED RIBBON LIVE 2008」も開催されます。


また11月25日~12月1日は、健全な性の維持・増進の重要性に対する国民の理解を
深めるための啓発週間である、『第8回性の健康週間』でもあります。
私も12月1日(月)『性感染症の現状とその予防のためのフォーラム』で講演します。
会場はラゾーナ川崎プラザソル5階ホール 13時30分開演です。
私の講演演題は『口腔咽頭は性感染症の温床』です。


ところで、日本では現在、平均すると一日に4人以上がHIVに感染しているのをご存知ですか?
HIV感染やエイズは、若者もしくは同性愛者ななど特定の人の病気と思われがちですが、
実は、30代が爆発的に増えています。そして、40,50代も確実に増加傾向にあります。
エイズは感染してから発症するまで平均10年。若い人たちの感染の増加とともに、
以前、HIVに感染した人たちが次々に発症しているからです。


HIVはセクシャリティーや年齢に関係なく、ハイリスクな行為でうつります。
しかし、今ではHIVに感染してもエイズ発病前に薬を飲むことで
発病を抑えることができるようになりました。
つまり、早期発見が大変重要なのです。
どうです、この機会に、ぜひ一度検査を受けられてみては?
検査は保健所にて、匿名そして無料で受けられます!

それでは皆さんの「性の健康」をお祈りいたします。

財団法人性の健康医学財団のホームページへ
「性感染症の現状とその予防のためのフォーラム」PDF版はコチラ

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2008年11月14日

HIV検査について

エイズやHIV感染については、最近、マスコミ等で取り上げられる機会が少なくなったこともあり、一般の人々の関心は薄れがちですが、文明国でエイズが増えているのは日本だけだといわれています。
日本国内では、HIV感染者・エイズ感染者は年々確実に増えています。
感染してもエイズ発症までの数年間は特別な自覚症状がほとんどなく、感染に気づくことができません。
そこで、感染の心配のある場合には血液検査が必要です。


HIV検査には抗体検査とNAT(核酸増幅検査)検査があります。
抗体検査は方法が比較的容易で、スクリーニング検査として広く用いられています。
数十分で結果が出る迅速検査も抗体検査のひとつです。
ただし抗体スクリーニング検査では、HIVに感染していないのに、たまたまHIV抗原と反応する抗体を持っていて検査結果が陽性(偽陽性)となる人が、通常1000人に数人はいます。
従って、抗体検査陽性の場合には、その陽性結果が本当にHIV感染による陽性なのか偽陽性なのかを確認するHIV確認検査(WB法:ウエスタンブロット法)を行う必要があります。


抗体スクリーニング検査で陰性の場合、HIV感染の心配はほとんどなくなります。
ただし、感染後2ヶ月以内の場合は感染していても検査結果が陰性となるので、心配が残る場合は2ヶ月以上経ってからもう一度検査を受けましょう。
HIV抗体の即日30分検査(迅速抗体検査)は、感染の心配なことがあってから2ヶ月以上たってから受けてください。プライバシーは守られます。 受付時の氏名は匿名(仮名)でもかまいません。
検査は担当医と簡単な面接をし、少量の採血を受けるだけです。
検査結果は約30分後、担当医より聞くことができます。
迅速抗体検査法は通常の抗体スクリーニング検査法とほぼ同じ精度であり、検査法として特に問題はありません。安心して受けてください。
心配なことや不安なことについては担当医に相談してください。


一方、NAT(核酸増幅)検査は、血中のウイルスそのものを検出します。
技術的に高度な検査で、抗体検査に比べ費用と時間がかかるので、スクリーニング検査としては通常使われていません。 またNAT検査は結果が出るまでに7~10日間かかります。
厚生労働省はエイズ対策研究事業としてNAT検査(核酸増幅検査)を行っております。
この事業の協力医療機関では、迅速検査が陽性で確認検査が必要な場合や、感染初期の可能性がありNAT検査を希望する場合には、速やかに受けることができます。


それでは感染機会からどのくらい経てばNAT検査ができるのか?
皆さん、この、いつ検査ができるのかで悩んでいます。
NAT検査では、抗体検査に比べ感染初期のウインドウ期(感染しているのに検査では陰性となる期間)を11日程度短縮が可能です。
ただ抗体検査のウインドウ期を2ヶ月として、2ヶ月後の検査で陰性であれば感染の可能性を完全に否定できます。 NAT検査の場合は理論的にはこの2ヶ月も11日程度短縮できることになりますが 大差がないので、抗体検査の場合と同様に2ヶ月ということで良いかと思います。
ただし、最近の抗体検査はかなり改良され検出感度が高くなっているため、感染後1ヵ月後にはほとんどのケースで抗体が検出されます。
従って、感染機会後2ヶ月前であっても、感染が心配で検査希望があれば1回目の検査を先ず、感染機会後1ヶ月目で受け、陰性であればひとまず安心いたしましょう。
その後、感染を完全に否定するため、念のための検査を感染機会後2ヶ月以降に受けるという選択肢が多くの人にとっては最も現実的な方法だと思います。
したがって、通常のHIVスクリーニング検査は全て抗体検査で行い、NAT検査は感染初期症状等があり、感染初期が疑われる場合か、検査希望者から特別にNAT検査の希望があったとき、考慮するということが良いと思います。


感染の心配のある方は検査を受けて心に平和を勝ち取りましょう。

2008年10月03日 | トラックバック (0)

12月1日は世界エイズデー

06年に国内で新たに判明したHIV感染者はとエイズ患者は計1358人でした。
05年より159人増えて過去最悪を記録しました。
04年以降3年連続で1000人を 超えています。
エイズが増えてる国は、文明国では日本だけだといわれています。
厚生労働省エイズ動向委員会によりますと、06年のHIV感染者は日本人と外国人を あわせて952人で05年より120人増えています。
このうち日本人男性が約83%を 占めています。
都道府県別では東京都が354人と最も多く、ワースト2の大阪府の128人を大きく引き離しています。
年代別では20~30代が68%でした。
エイズ患者は日本人と外国人をあわせて406人。これまで最多だった04年の358人を 超えています。
増加している日本人男性の感染経路は感染者、患者のいずれも、 同姓間の性的接触が99年ごろから急増していると言われています。
12月1日は世界エイズデーです。各地で『HIVや性感染症の予防啓発イベント』が 開催されます。
あなたも参加してみませんか。
[参考]読売新聞(07年11月22日)

2007年11月29日

HIVは2種類ある!びっくり!

“HIVは2種類ある!びっくり!”知らなかった!

H I Vは遺伝子タイプが異なる1型と2型があります。
H I V感染の主流となっている1型は世界の99%以上を占めています。
2型は1型に比べ感染力が弱く,発病までにかかる潜伏期間も長い。
つまり2型はヒトに感染すると生かさず殺さずズーッとそのヒトに住んでいようという非常に賢いウイルスです。感染すると“生ける屍”になってしまうといわれています。
2型はアフリカに多く、特に西アフリカ地域を中心に報告されています。また米国、フランス、韓国、インドなどでも報告例があります。

HIV2型の国内で確認された感染例は2002年10月に報告されています。
この患者さんは検査のために来日した韓国人の男性で、異性間接触によるものと推定されています。
さらに国内で確認された感染例は2004年12月に報告されています。
この患者さんは国内に在住する西アフリカ人男性で異性間接触によるものと推定されています。
これまでは、HIV2型に感染した日本人はいなかったのですが、とうとう出ました。

今回2006年9月4日、HIV2型に日本人男性が感染したことを、厚生労働省のエイズ研究班が確認し発表いたしました。同省によりますと、日本人感染者の確認は初めてです。
この男性は、過去に西アフリカで輸血を受けた経験があり、同省は「滞在していた地域では2型が流行しており、現地での輸血が感染原因とみられる」としています。
ですからHIV検査は1型、2型の両方をする必要があります。
通常、日本ではHIV検査は1型、2型の両方をしておりますから、心配ございません。

2007年08月03日

HIV検査はいつ受ければいいの?

最近はエイズのことをマスコミ等で取り上げられる機会が少なくなったこともあり、一般の人の関心は薄れがちですが、文明国でエイズが増えているのは日本だけです。
日本国内ではHIV感染は年々確実に拡がりつつあります。
感染してもエイズ発症までの数年間は特別な自覚症状がほとんどなく、感染に気づくことができません。 そこで、感染の心配のある場合には血液検査が必要です。

HIV検査には1、抗体検査と2、NAT検査(核酸増幅検査)の2つがあります。
「抗体検査」は方法が比較的容易で、スクリーニング検査として広く用いられています。
約30分で結果が出る迅速検査も抗体検査のひとつです。
この検査は感染の心配なことがあってから2ヶ月以上たってから受けてください。
ほとんどの医療機関では氏名は匿名(仮名)でも検査は受けられます。
基本的にはHIV検査に保険証は必要ありません。 プライバシーも守られます。
民間の医療機関では、検査料金は取り決めがありませんから各医療機関によってバラツキがありますが、およそ¥5,000~¥10,000です。
検査は担当医と簡単な面接をし、少量の採血を受けるだけです。
検査結果は約30分後担当医より聞くことができます。
「迅速抗体検査法」は通常の「抗体スクリーニング検査法」とほぼ同じ精度であり、検査法として特に問題はありません。 安心して受けてください。
心配なことや不安なことについては担当医と相談ができます。

ただし「抗体スクリーニング検査」では、HIVに感染していないのに、たまたまHIV抗原と反応する抗体を持っていて検査結果が陽性(偽陽性)となる人が、通常1000人に数人はいます。
従って、抗体検査陽性の場合には、その陽性結果が本当にHIV感染による陽性なのか、偽陽性なのかを確認する「HIV確認検査」(WB法:ウエスタンブロット法)を行う必要があります。
「抗体スクリーニング検査」で陰性の場合、HIV感染の心配はほとんどなくなります。
ただし、感染後2ヶ月以内で検査を受けた場合は感染していても検査結果が陰性となる場合があるので、2ヶ月以上経ってからもう一度検査を受けましょう。

「NAT検査」は、血中のウイルスそのものを検出します。
技術的に高度な検査で、抗体検査に比べ費用と時間がかかるので、スクリーニング検査としては通常使われていません。「NAT検査」は感染の機会があってから6週間以上たってから受けてください。
もし迅速検査が陽性の場合は確認検査を、感染初期の可能性がある場合はNAT検査(核酸増幅検査)を速やかに受けましょう。 感染の心配のある方は検査を受けて心に平和を勝ち取りましょう。
ほとんどの保健所でもHIVの検査は可能ですが、その内容については 自分で確認いたしましょう。

2007年07月27日

エイズ(HIV感染症)

性感染症(STD)の中で最も怖いのがエイズ(HIV感染症)です。

エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)とはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染して起こる病気です。
感染するとHIVが身体を病気から守る免疫機構を破壊し、健康なときにはなんでもなかった細菌やウイルスに抵抗力を失います。
その結果様々な感染症や悪性腫瘍にかかりやすくなり、多くの場合は死にいたります。

HIV感染症は血液、精液、腟分泌液などを介して感染します。
現在、日本では異性間・男性同性間の性的接触が主な感染経路です。
感染予防のために教育・啓発が行われていますが、エイズ患者(HIV感染者)は増加しています。
先進国でエイズ患者が増加しているのは日本だけです。治療法は進歩し死亡率は低下してきています。
しかし、感染者の多くは自分が感染していることを知らず、他の人に移しているとともに、治療を受けることもなくエイズを発症することになります。
また他のSTDに感染しているとHIVに数倍感染しやすいといわれています。
心配のある方はHIV検査を受けて心に平和を勝ち取りましょう。
HIV抗体迅速(30分)検査は感染機会から8週間たてば受けられます。
抗原をみる核酸増幅検査(NAT)は6週間たてば受けられます。

エイズの予防の基本は不特定の人とセックスをしないことと、最初から最後までコンドームを使用することです。
皆さん“愛のある健康なセックス”を心がけましょう。

2007年04月13日

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