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院長掲載記事「臨床研修プラクティス」
臨床研修プラクティス 2010年2月号 (7巻2号) 文光堂
2010年1月10日発行
定価 2,100円(本体2,000円)
~主要目次~
【特集】
I.性感染症とは?~概念と現状~/松本哲朗
近年の性風俗の多様化によって,性感染症はどの診療科でも遭遇し得る病気になっています。
基本的な知識を身につけましょう.
【ミニレクチャー:性風俗従事者の性感染症】
風俗女性の性感染症
宮本町中央診療所 尾上泰彦
性風俗店で働く女性を性風俗従事者(commercial sex workers=以下CSWと略す)といいます。このCSWが、男性のSTIで最も症例数の多いクラミジア性尿道炎、淋菌性尿道炎の最大感染要因です。
1958年、「売春防止法」が施行され、わが国の性産業は大きく変わり、多くの赤線業者が「トルコ風呂」(1984年に現在のソープランドに改称)を始めたのは同じ年です。
さらにオーラルセックス、素股、アナルセックス、手、乳房などは、売春防止法にいう性行為にあたらないということで、法の網をくぐりぬけた新しいスタイルの性商品がつぎつぎと現れました。殊に、ファッションヘルス、ピンクサロンなどのオーラルセックス専門店の存在が大きく、低料金のため手軽に若い男性が利用しています。
CSWのSTIで最も頻度の高いものは、クラミジア感染症、次いで性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、淋菌感染症、ケジラミ症、梅毒の順になっています。また外陰・腟カンジダ症、細菌性腟症は多くのCSWの職業病的様相を呈しています。これはCSWの仕事上、腟内洗浄を日常的に行うことがその要因の一つと考えられます。
クラミジア感染症はCSWにとっては避けては通れないSTIで、最も高頻度に罹患しています。
性器ヘルペスはCSWにとって初感染時はSTIですが、再発はセックス、月経、仕事のストレスなどにより高頻度にみられSTIとはいえません。しかし、他人への感染力があるのでSTIとなります。
HIV/AIDS感染者の報告は日本女性のCSWに関しては、High Risk Groupにもかかわらず、ほとんどなく、一般女性とHIVの陽性率は変わらないと考えられます。
しかしその他のSTIに関してはHigh Risk Groupであることに変わりはありません。
CSWの口腔咽頭は性感染症の温床
オーラルセックスのみでクラミジア、淋病、ヘルペス、梅毒などに感染する可能性があります。男性のSTIで最も症例数の多いクラミジア性尿道炎、淋菌性尿道炎の最大感染源はCSWのオーラルサービスです。このCSWのクラミジア性、淋菌性咽頭炎の特徴は、咽頭からのクラミジア、淋菌の検出率が高いにもかかわらず、ほとんどの症例が無症候で咽頭発赤や扁桃腫脹など他覚的所見がみられないことです。実際にCSWの咽頭では淋菌の検出率は性器よりも高く、一方、クラミジアでは性器の方が咽頭より検出率が高くでます。
症例
18歳・CSW(ソープランド嬢)のクラミジア性・淋菌性咽頭炎を示します。(性器・咽頭同時感染例です) 咽頭所見:咽頭に自覚症状はなく、発赤、扁桃腫脹なども認めません。
検査所見
咽頭淋病(SDA法)スワブ・うがい液共に陽性、
咽頭クラミジア(SDA法)スワブ陰性・うがい液陽性
咽頭淋菌分離培養:陽性
性器淋菌(SDA法):陽性
性器クラミジア(SDA法):陽性
性器淋菌分離培養:陽性
2010年01月18日