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淋病でないのに淋病にされた男(その3)
前回までの2回で、2か所の病院から「淋菌性咽頭炎」と診断され、治療を続けたにもかかわらず淋菌が陰性とならなかった男性に、私が「淋病ではないですよ」と診断を下したところまでお話しをしました。
詳しくは「バックナンバー」をご覧ください。
今日はなぜ私が彼が淋病ではないとわかったかをお話ししましょう。
驚いている彼に、私はゆっくり説明をしました。
「私の診断には2つの理由があります。
先ず、2ヵ所の耳鼻咽喉科で検査したPCR法は、咽頭の淋菌検査には使用してはいけない検査だ、ということです。
なぜかというと、PCR法は咽頭に住み着いている常在菌(非病原性菌)に反応して、淋菌でないのに淋菌と間違えてしまうことがあるのです。
この事実は最近、判って、学会などでも発表されています。
たまたま貴方が行った耳鼻咽喉科の先生方は、この事実を知らなかったのですね。
残念なことです。
2つ目の理由は、ここの診療所で1週間前に行った検査です。
ここではSDA法でノドの拭い液法と、うがい液法の淋菌検出検査をしましたね。
その結果は陰性でしたよ。おめでとうございます。
ちなみにSDA法は現在、咽頭の淋菌検査に最も使用されている検査で、保険にも適用されています。はっきりしてよかったですね。安心してください」
彼の顔に、みるみる安堵の笑みが浮かびました。
「そうだったんですね・・・。先生!すっきりしました。よかった・・・!」
彼は「ありがとうございました!」と何度も頭を下げながら、診療所を後にしていきました。
診察した医師が不適切な検査法を用いたために、何週間も淋菌に悩まされた彼。
治療の場で検査方法を選ぶのは医師ですが、受診する患者さんが検査に対する知識を少しでも持っていることで、今回のような事件を避けることができる可能性があります。
いい機会ですので、次回は淋菌の検査について、もう少し詳しくお話ししておきましょう。
2010年04月21日