梅毒の臨床について
最近、あるドクターから相談を受けました。
少し専門的になりますが、 今回は梅毒の臨床について勉強しましょう。
【ドクターからの相談内容】
梅毒は無治療の患者は、そのままだと何年したら感染力は無くなる物ですか? 教えて下さい。
治癒判定については、ガラス板で幾ら以下とか具体的に教えてください。
【回答】
ご相談、ありがとうございます。
梅毒は無治療でもおそらく10年以上経過していれば、感染力はなくなると考えます。
ただしカルジオリピンを抗原とする検査で抗体価が16倍以上を示す症例では
治療することが望ましいと考えます。
また治癒判定については以下の様に考えてください。
●治療効果は、カルジオリピンを抗原とする検査(STS:RPRまたは凝集法)の抗体価とよく相関するので、病期に応じた十分な治療を行った後は、一般に臨床症状の持続や再発がないことを確認することが必要です。
●およびカルジオリピンを抗原とする検査を定期的に追跡して、定量値が8倍以下に低下することをお勧めいたします。
●またカルジオリピンを抗原とする検査(STS:RPRまたは凝集法)の抗体価が治療開始時と比較して 1/4(四分の一)以下に低下すれば治癒とする考え方もあります。
●なお、ガラス板の抗原検査は、2010年に中止となり検査ができなくなっております。
ここで梅毒血清反応につて勉強いたしましょう。
梅毒の血清反応は2種類あります。
1つは非特異的脂質抗原のカルジオリピンを抗原とする血清反応でSTS(serologic tests for syphilis)で、もう1つは特異的梅毒トレポネーマを抗原とする血清反応です。
STSには現在、2法ありRPRカードテスト(rapid plasma reagin card test)と凝集法があります。
また特異的梅毒トレポネーマを抗原とする血清反応には3法あり、TPHA法(treponema pallidum hemagglutination test)、 FTA-ABS法(fluorescent treponemal antibody absorption test) およびTPLA(Treponema pallidum latex agglutination)です。
専門医はこれらの血清反応を組み合わせて診断、治療法の選択および経過観察を行っています。
むつかしい話になり申し訳ございませんでした。
2011年11月06日