泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

Home > 【性感染症全般】 > 尿道下裂と性感染症(前編)

尿道下裂と性感染症(前編)

kame.jpg

 

20代前半の男性が受診してきました。
「先生、尿道の入り口にイボができちゃった」とのこと。
『痛くありませんか?』
「痛くも痒くもありません」

陰茎を診察すると、確かに尿道の入口から、直径5mm大のイボが顔を出しています。
診断結果は、尖圭コンジロー マでした。

また、別の30代前半の男性が受診してきました。
「どうされましたか?」と聞くと、
「尿道の中が白くただれてい ます」と言います。

診察すると、外尿道口より約3mm奥に、直径4mm大の白い潰瘍ができていました。
「痛くありませんか?」と訊ねると
「痛くありません」と言います。
さらに、「3週間ほど前にエッチしましたか?」と聞くと、
「エッ!なんでわかるんですか?」との返答。
臨床診断は梅毒の初期症状の硬性下疳でした。
オーラルセックスによって引き起こされることの多い症状です。

次に受診してきたのは、20代後半の男性です。
彼の訴えは、
「先生、おしっこのし始めがものすごく痛くて、黄色い膿が出ているんです」とのことでした。
診察すると、外尿道口から溢れんばかりの黄色い膿が出てきました。
典型的な淋菌性尿道炎です。

さて、これら3人の男性の症状には、ある共通点がありました。
それは一体何かと言うと、「尿道下裂」です。

「尿道下裂」とは男性のオチンチンの先天的(生まれつき)な形態異常(奇形)です。
この尿道口の奇形は大変多く、外来で一番多く見られます。
男性外性器の発育分化には、胎生期の性ホルモンの作用が必要であり、
このホルモンの分泌や作用に、何らかの問題があったと考えられていますが、
はっきりとは解明されていません。

この状態を一言で言うと、尿道が裂けている状態です。
専門的には陰茎腹側面の発育に欠陥があり、その近くに外尿道口が開いている状態です。

では、次回は、この「尿道下裂」についてもう少し詳しくご説明いたしましょう。




2012年01月20日

Entries

Archives