女性の硬性下疳について(後編)
問診から、感染したのは仕事による性交渉の時だったことがわかり、感染時期は初診の3~4週間程度前と推測しました。
治療は、日本性感染症 診断・治療ガイドラインに沿って、経口合成ペニシリン剤(AMPC)を1日500㎎×3回、8週間、内服投与いたしました。
治療開始時に生じることがある、発熱、頭痛、発疹などの反応は特にありませんでした。
駆梅療法開始時は、RPRカードテスト 256倍と高値でしたが、治療が奏功し、1カ月後には64倍、2カ月後には16倍、3ヵ月後には8倍、4カ月後には4倍と順調に低下しました。
局所所見では、初診時に認められた直径約10㎜大の潰瘍も、8日目には治癒過程に入り、潰瘍は浅くなり、24日目には、左大陰唇を伸展するとクリトリス包皮に確認できた潰瘍が、きれいに消失し瘢痕治癒していました。
また3カ月後には、潰瘍はきれいに治癒しており、瘢痕は分からなくなっていました。ただ治癒部周辺には軽度の色素沈着が認められました。
経過観察中、第2期にあらわれる梅毒疹は認めませんでした。
その後、本人は性風俗嬢をやめ結婚いたしました。
1年半後の来院時には、局所の潰瘍はきれいに治癒しており、色素沈着も消失していました。
さらに2年3ヵ月後の来院時には、まったく正常に復しており、痕跡もわからないきれいな状態になっておりました。
尚、本症例は、梅毒と診断後、7日以内に県知事に届け出いたしました。
この届け出は医師の義務とされています。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
2012年04月18日