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性風俗嬢のアメーバー肝膿瘍(中編)
さて、今回からは「赤痢アメーバー症」と「アメーバ―肝膿瘍」について少し勉強していきます。
前回は、特殊な性風俗業に従事している女性が、以前この「アメーバー肝膿瘍」を患っていたことをお話しました。
「赤痢アメーバー症」の、人への感染は便中に排泄された囊子を経口摂取することにより成立します。
経口された囊子は小腸の下部で脱囊し,栄養型になります。それが、大腸腔に移行して粘膜組織内へと侵入します。
さらに、栄養型虫体が血行性に転移し,肝や肺に膿瘍を形成します。
以前では赤痢アメーバー症は、細菌性赤痢に準じ、消化管感染症と認識されていました。
そのため、赤痢アメーバー症患者の届出があった場合、疫学調査の対象が性的パートナーにまでおよぶことはなく、患者と食事などを共にした接触者を中心に糞便検査が行われていました。
ところが、最近では性風俗店で働く女性にも、赤痢アメーバー患者が出ていることが指HIV陽性の者が、赤痢アメーバー抗体を持っている可能性が高いことも知られています。
一方、最近では、女性が赤痢アメーバーを持っている率も高くなっており、赤痢アメーバ症はもはや特殊な集団における感染症とは言えず、日本国内に蔓延している疾患と捉えるべきです。
赤痢アメーバ感染症は、今後も増加が予想される疾患であり、診断の遅れは重篤な状態を引き起こすため、早期診断が重要となります。
また、アメーバ肝膿瘍と診断するための重要な点の一つは、STIを疑った患者の性生活についての問診です。
患者の背景として、同性愛歴や性風俗店での性行為歴などを、患者自ら医師に告げるケースは決して多くありません。
また、プライバシーの観点から、医師の方から強引には聞き出せないというジレンマもあり、診断の遅れに繋がる懸念があります。
問診のテクニックが重要となります。医師側が心を開いておかないと、患者の心は直ぐに閉じてしまいます。
次週も引き続き、この話題について勉強していきます。
2012年10月15日