泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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 女性性器ヘルペスで尿失禁 お漏らし

女性性器ヘルペスで尿失禁お漏らし 最近、30代前半の女性が性器ヘルペスの初感染で受診してきました。
来院時、37.8℃の発熱、鼠径リンパ節有痛性腫脹、歩行障害、膀胱炎症状を認めました。
さらに外性器の局所症状として、両側の大・小陰唇、腟前庭に多数の水疱、びらんを認めました。
そこで抗ウイルス剤の内服薬としてバルトレックスを投与し、外陰部の粘膜を保護する意味で消炎用軟膏を投与しました。
その帰り道、彼女に、あるアクシデントが起きました。彼女は自分のマンションのエレベーターに乗り、7階に向かいました。
その途中、履いていたジーパンが何か濡れていることに気づきました。
さらにショックなことにエレベーターの床も濡れていました。 直ぐに自分の尿で濡れたことが、分かったのです。
幸いなことにエレベーターには、他に誰もいなかったので、急いで、エレベーターの床の清掃を行い、恥をかかずに事なきを得ました。
この現象は尿失禁です。患者本人が気づかない内に生じた尿のお漏らしです。
性器ヘルペスでの、この現象は私が知る限り、文献や資料などには記載されていません。
私は単純ヘルペスウィルスが上行性に仙骨神経根に直接進展し、限局性の髄膜脊髄炎が起き尿失禁を呈したと考えました。
一般には、女性の性器ヘルペスの初感染時にあらわれるElsberg syndromeでは排尿障害を起こします。
この病気は、馬尾症候群を呈する進行性炎症性多発神経根炎です。
尿意を感じない神経因性膀胱となり、カテーテルの挿入が必要となる場合もあります。
単純ヘルペスウィルスが上行性に仙骨神経根に直接進展し、限局性の髄膜脊髄炎が起き排尿障害などを生じます。
この女性の場合、原因(病態生理)は分かりませんが、尿失禁としてあらわれたものと考えられます。 少し難しいですね。
こんなこともあるんですね。


*馬尾症候群 脊髄の一番下から下に向かって、神経の束が伸びています。この束は、下方のいくつかの椎骨を通って、仙骨(脊椎の根元にある骨)の上まで達しています。この神経の束は、馬の尾に似た形をしているため、馬尾と呼ばれています。馬尾神経が、椎間板の破裂やヘルニア、腫瘍、膿瘍、外傷による損傷、炎症(強直性脊椎炎など)による腫れなどによって圧迫されることがあり、それによって現れる症状を、馬尾症候群といいます。

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2013年06月07日

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