泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

Home > 【HPV感染について】 > 【子宮頸癌ワクチン 接種呼びかけ中止】

【子宮頸癌ワクチン 接種呼びかけ中止】

子宮頸癌は数年~数十年にわたって、持続的にヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した後に起こるとされています。
子宮頸癌の予防ワクチンは、子宮頸癌全体の50~70%の原因とされる2種類(16型・18型)のHPVに予防効果があります。
HPVの感染や癌になる過程の異常(異形成)が90%以上予防できたとの報告があり、これに引き続いて起こる子宮頸癌の予防効果が期待されています。
子宮頸癌の予防ワクチンは世界保健機関(WHO)が接種を推奨し、120カ国で接種実績があります。また多くの先進国では公的接種されています。
ところが、今年4月に公的に定期接種の対象にしたのに、わずか2カ月で「ワクチン接種の中止はしないが、推奨はやめる」と決定されました。 歩行障害やけいれん、体の複数部分に慢性的な痛みが生じるなど、重い副作用が相次いで報告されたためです。
この報告を受け、接種対象となる女の子の親達は動揺しています。確かに副反応の心配を抱えたまま、子供たちに接種を受けさせるわけにはいきません。
今回はこのテーマについて、現在の状況を具体的にお話いたしましょう。
平成25年6月14日に、厚生労働省より各都道府県知事あてに、「ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について」積極的に接種を勧奨すべきでないとの勧告が通達されました。その内容は次のようなものです。
1.積極的接種勧奨の差し控え
この7月中旬の中学1年生女子を対象に個別通知を発送する予定でしたが、専門家による再評価により結論が出されるまで延期いたします。
2.ワクチン接種は可能であることの説明
これは接種勧奨の差し控えであって接種中止ではありません。保護者に有効性とリスクを十分に理解してもらったうえでの接種はできます。 今回の措置で次回接種を差し控えた場合、接種間隔を超えるケースが想定されますが、これについては国において検討中です。 高校1年生に対しても経過措置も含め検討されています。 3.国による再検討
多くの問題点はありますが、国において引き続き子宮頸癌予防ワクチンについて検討されることになっています。 結論がでるまで半年程度かかる見込みです。
これを受けて地方自治体およびその医師会は、ワクチン接種を希望される方へ、 副反応が起こるリスクを十分に理解した上で接種いただくよう、お願いすることになりました。
子宮頸がんの定期予防接種は原則、小学6年から高校1年の女性が対象となります。希望者については、今後も公費負担で予防接種は受けられます。 今後は副作用のリスクが解明され、接種による予防効果が大きいと判断されれば、積極推奨に戻ることもあるそうです。
「より安心して接種をしてもらうために情報を集める」との事で、接種対象の子供を持つ保護者らに冷静な対応が求められています。


2013年06月27日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.dr-onoe.com/mt/mt-tb.cgi/52

Entries

Archives