泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

Home > 【その他の病気】 > 陰嚢水腫

陰嚢水腫

退職したばかりの60歳代の男性が受診してきました。

「左の睾丸が腫れています。左睾丸の横に水ぶくれのようなものがあるんです」
『どのくらい前からですか』
「3ヵ月ほど前からだと思います」

診察室を暗転して陰嚢に懐中電灯をあて透光試験を行うと、明らかに光が透過し陰嚢水腫と診断できました。大きさは小鶏卵大でした。陰嚢の腫れている箇所を穿刺すると、穿刺液を約30ml採取できました。透明な淡黄色の体液でした。これは典型的は陰嚢水腫です。

今回は陰嚢水腫について少し勉強いたしましょう。

陰嚢内の、睾丸(精巣)を包んでいる膜(精巣鞘膜)から体液が過剰に分泌されることにより、鞘膜内に体液がたまり、精巣鞘膜が膨らみ、陰嚢が鶏卵大に腫れる良性の病気です。小児ではうずらの卵くらいの大きさのこともありますが、お年寄りでは拳大より大きくなることもあります。

陰嚢水腫の原因は、おもに精巣鞘膜の体液の分泌過剰ですが、新生児では、腹膜から連続する鞘状突起があって、そのために腹腔内の体液が鞘状突起内に流入し、陰嚢に水腫を形成します。多くの症例では、生後1年以内に腹膜との交通は自然閉鎖し、精巣鞘膜腔が形成されるので、1歳位までは様子をみることが良いと考えられています。

多くは無症状ですが、ときに不快感や脹れた感じを認めることもあります。 局所を触診しますと、陰嚢の表面が滑らかで、少し柔らかい感じがします。 大きさはウズラの卵大~拳大以上まで様々です。圧痛などはなく、懐中電灯で陰嚢を透かしてみると、きれいに睾丸が透けて見えます。

超音波検査を行えばもっとはっきり分かります。 注射針で内容液を穿刺し、内容液が黄色の透明であれば、陰嚢水腫と診断できます。しかしながら精巣腫瘍(悪性腫瘍)も痛みがないので、陰嚢水腫との鑑別が最も大切になります。精巣腫瘍では透光性はなく、触診すると硬く弾性があります。また副睾丸炎(精巣上体炎)、睾丸捻転症(精巣捻転症)では、激しい圧痛がありますが、透光性はありません。

陰嚢水腫の治療は一般的には、注射針による穿刺で、内容液を吸引採取します。 小児は、1~2回の穿刺吸引で多くは治癒します。 成人では、何度も穿刺吸引を繰り返しても治らないこともあります。 そのような場合は手術が必要となり精巣鞘膜を摘除いたします。


blog.jpg


2014年01月29日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.dr-onoe.com/mt/mt-tb.cgi/72

Entries

Archives