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女性の愛液
週刊現代2012年6月16日号に「女性の愛液」と「潮吹き」についての特集記事が掲載されました。
<前代未聞の“袋とじ”>
女体の神秘を科学する――知られざる構造と仕組み
特撮連写「なぜ女性は濡れるのか」その瞬間を撮った!
今回はその中で「女性の愛液」についてご紹介いたします。
「潮吹き」については別の機会にご紹介する予定です。
主に名古屋市立大医学部名誉教授で日本におけるセクソロジーの権威である渡仲三先生の研究と三重大学の亀谷譲医師と共同研究についての報告です。
愛液の成分は酸性であるほのかな酸味をもたらす菌
「女性の腟は基本的に普段からしっとりと潤っています。性的に興奮すると、透明、または半透明の粘液が漏れ出し、性器全体がさらに潤う。これを俗に『愛液』『ラブジュース』と言い、愛液で腟周辺が潤った状態を『濡れる』と呼んでいます」(名古屋市立大医学部名誉教授で日本におけるセクソロジーの権威・渡仲三氏)
腟が濡れるのはなぜか、この生物にとっての根源的な問いに向き合ってみると、女性の身体の神秘の一部を知ることができる。
そこで本誌は2名のモデルに、実際に愛液を出してもらった。
まずはその成分から。自らの手やアダルトグッズを用いて腟を濡らし、青のリトマス試験紙を当てる。青の部分が赤に変色すれば、愛液の成分は酸性であると証明されることになる。
実際に行ってみると、2名のモデルとも、リトマス試験紙を少し腟に触れさせただけで、瞬く間に赤に変わった。
「愛液は酸性です。ちなみに、同世代の女性では処女のほうが酸性度が高く、経験豊富な女性ほど低下し、腟内はアルカリ性に近づく。セックスの積み重ねによって、デーデルライン桿菌という腟を酸性に保つ菌の作用が弱まるのです。デーデルライン桿菌は若い女性ほど分泌が多く、愛液にほのかな〝甘酸っぱいヨーグルトのような味〟をもたらします」(渡氏)
愛液は酸性だが、基本的にはほとんど無味無臭。女性器が放つ臭いは、愛液本来のものというより、尿や外陰部のアポクリン汗腺の臭いなのだというでは愛液に粘性があるのはなぜなのか。モデルの一人、千夏ちゃんに答えてもらおう。
「いつもは水とあまり変わりませんね。でも、生理の前後などはやや粘度が高まると思います。私はオナニーを2~3時間するのですが、1時間くらいした頃に、ネバネバ感が高まるんです」
粘性については次項でその秘密を明らかにしよう。
(左上)糸を引く程度で粘り気はほとんどない。
(左下)オナニーをしてもらうと、5分ほどでベッドのシーツにお尻の大きさほどの染みができた。
(右)青のリトマス試験紙が膣に当てた部分だけ赤に。
(中)スポイトで吸い取れるほど液が漏れ出す。
(左)プレパラートに垂らすと、半透明の液体であることがわかる。
(左上)やはり粘度は控えめ。納豆のような糸を引く女性は性病である可能性が高い。
(左下)愛液がシーツに染みてしまっても、尿と異なり色もなく、あっという間に乾く。
(右)リトマス試験紙の実験結果。
(中)スポイトにたっぷり取れた愛液はほぼ無色透明。
(右)プレパラートに垂らすと水よりも乾きが早かった。
愛液の役割とその仕組み愛液は雨漏りのように染み出す
愛液の役割は3つに分けられる。ペニスの挿入をスムーズにさせる潤滑油としての働き、腟内を雑菌から守るため酸性に保つこと、そして精子を腟の奥へ追い込むことだ。精子は酸性を嫌い、アルカリ性を好むため、殺菌作用を持つバルトリン腺液の分泌により腟の奥へと移動していくのである。
では、愛液がどういう仕組みで、どん部分から分泌されるのか。この問題は、世界の研究者の間でも長らく謎とされてきた。
「’80年代になっても、日本では性の研究は異常なほどタブー視された未開の分野で、『研究すれば教授にはなれない』と言われたほどでした。
しかし私は、’83年、その謎を解くべく、三重大学の亀谷譲医師と共同研究を始めます。性的に興奮した状態の膣粘膜を電子顕微鏡で調査・分析したのです。
その結果、愛液の成分がわかりました。約8割が、主にタンパク質からなる血漿。残りは、バルトリン腺液と子宮頸管粘液が加わった一種の糖タンパクであるムコイド(類粘液質)でした」(前出・渡氏)
バルトリン腺液と子宮頸管粘液は粘性が高い。愛液の成分のうち、この2つが増えることでネバネバ感が増すのである。
女性器が濡れる仕組みも、渡氏の研究によってほぼ解明されている。
「性的刺激を受けると、知覚神経が働き、快感が中枢神経に伝わる。大脳と中脳の間にある間脳の自律神経、特に交感神経が興奮し、血管の透過性が高まります。
すると、血液中の液体成分が血管の外に雨漏りのように漏れ出します。腟全体は『水を含んだスポンジ』のような状態になっており、そのスポンジのような腟壁から愛液が汗のように染み出すのです。私の研究で、腟壁の細胞の中に、他の細胞には見られない『液胞(空っぽの袋状の細胞)』が多数見られました。この液胞がスポンジのような役割をしている。つまり、腟壁にある毛細血管から滲み出た体液を、腟粘膜の液胞が飲み込んで貯蔵したり、吐き出したりしているのです。もし、愛液が何らかの腺によってもたらされるのであれば、そうはいきません。腺から分泌される液というものは、材料を揃えて液に加工する過程が必ず必要になる。当然、ある程度の時間がかかるため、必要な時にすぐ出るというわけにはいかないのです」(渡氏)
(上)女性の体内の断面図。かつてはバルトリン腺から愛液が出るとされていたが、渡氏らの研究で腟のギザギザの部分から染み出ることがわかった。
(右)腟粘膜を2000倍に拡大した図。愛液の成分は毛細血管から出た血漿がほとんどで、上皮細胞を通って出てくる。
(下)電子顕微鏡で撮影した体内。中央の3が尿道、上部の2が愛液が染み出す腟の筋層である。
デートの最中、勃起してしまった経験は男には必ずある。これは女性にも言えることだという。「手を繋いだりすると濡れてしまうので、下着にオリモノ専用シート(上の写真)を付けないとビショビショになってしまうんです。トイレに行くたびに替えるので大変」(20代・化粧品メーカー勤務)
そしていざセックスという時、男は女性の腟が濡れていると満足する。愛液が出ている=感じていると言えるのか。前出の渡氏に聞いた。
「たとえ性的に興奮しなくても、濡れやすい体質の女性はいます。また、同じ女性でも愛液の量はコンディションによって異なる。濡れやすいと言えるのは、心身ともに健康で女性ホルモンの分泌が安定している女性です。汗をかきやすい女性も、代謝がいいわけですから、濡れやすいタイプが多いですね」
20代女性の内性器。
左は小型カメラで捉えたもの。
右は外子宮口が逆三角形に見える。
中は外子宮口が横へ線状に広がる。内部には液胞のような多数の泡が見られる。
2014年11月08日
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