泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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第198回ICD講習会

日本性感染症学会 第27回学術大会 第198回ICD講習会の報告をいたします。

ICDとはInfection control doctorのことです。

この講習会は感染症の専門医の資格を得るためのもので、予め申込みをし参加します。

参加者はおよそ500名の医師です。

私はこのICD講習会の司会をおおせつかりました。また私自身も講演いたしました。

以下がその概要です。

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日本性感染症学会 第27回学術大会

第198回ICD講習会

会期:平成26年12月7日(日)16:00~17:30

会場:神戸国際会議場 メインホール

テーマ:外来で見る性感染症の一般知識

(個人単位の感染制御という概念を含め)

司会:尾上 泰彦(宮本町中央診療所)

演題1.外来でみるSTIとは

尾上 泰彦(宮本町中央診療所)

演題2.クラミジア感染症・淋菌感染症

伊藤 晋(あいクリニック)

演題3.性器ヘルペス・尖圭コンジローマ

川名 尚(帝京大学産婦人科)

演題4.梅毒

尾上 智彦(東京慈恵会医科大学皮膚科)

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司会のことば   宮本町中央診療所  尾上泰彦

今回のICD講習会では、日本性感染症学会として「外来で見る性感染症の一般知識(個人単位の感染制御という概念を含め)」というテーマで、定点報告対象疾患の淋菌感染症、クラミジア感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ。全数報告対象疾患の梅毒を取り上げた。
4人のエキスパートの先生方にそれぞれの疾患の最前線の解説をしていただく。
ICDであれば性感染症患者に、その疾患の診断、治療、予防についての教育をできる程度の見識を持っておくべきである。副題の“個人単位の感染制御という概念を含め”とは、ICDとして患者あるいは一般市民に性感染症から自分の身を守るための知識を与えることができるという意味を込めている。

1)  私は、先ずSTIの序論について触れ、開業医の立場から経験しえたSTIの臨床写真を提示しながら、問診、視診技術のポイントについて言及し「外来で見るSTI」の実態にせまる。
2)   淋菌、クラミジアは男性尿道炎や子宮頸管炎の主要な起炎微生物である。
尿道炎を中心に淋菌感染症、クラミジア感染症の問題点さらに咽頭感染について、この疾患に精力的に取り組んでおられる伊藤 晋先生(あいクリニック)にお話しをいただく。
3) 性器ヘルペスと尖圭コンジローマは、共にウイルス性の性感染症で、それぞれ独特な感染病理を有し根治が難しい疾患である。この疾患の診断、治療については日本を代表する川名 尚先生(帝京大学 産婦人科)にお話しをいただく。
4) 梅毒は決して過去の病気ではない。術前検査で発見されることもあり、ICDとして診断、治療に関わることもある感染症である。特に、男性同性愛者(MSM;men who have sex with men)では梅毒とHIV感染症の合併の頻度が、高いことがしられている。また最近、血清反応検査は、自動化検査法に変更され、その解釈はICDにとっても重要な知識である。この梅毒については尾上智彦先生(東京慈恵会医科大学 皮膚科)にお話しをいただく。
今回のICD講習会が、ICDの皆様の性感染症対策に最新の情報提供の機会となれば幸いであり、多くの方々のご参加を期待したい。

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以下が私の講演内容の要旨です。

1.外来でみるSTIとは

宮本町中央診療所  尾上泰彦

日本性感染症学会の診断・治療 ガイドライン 2011にはSTIとして17疾患が記載されている。

今回のICD講習会では外来で見るSTIとして頻度の高いクラミジア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマそして梅毒を取り上げた。

外来で見るSTIは教科書で見るような典型的な症例ばかりではない。

むしろ非典型的な症例が多く診断に苦慮する場合も多い。そのため、STIの診断には問診、視診技術が重要となる。

問診は簡単な項目(主訴、来院理由など)の聴取にとどめ、詳細は性器の視診時に行うことを勧めたい。

これは視診の流れの中で問診を進める方が、より具体的な内容の聴取が可能なことを経験するからである。

プライベートパーツを見せている状態の方が、患者側も心が開きやすく、医師とのコミュニケーションが取りやすいと考える。性行動の内容としてオーラルセックス、アナルセックスなどの聴取、ことにオーラルセックスが日常的に行われている現在、これについての聴取は診断に重要である。パートナーの人物背景も参考となる。

特に、10代の後半~30代の男性患者では男性同性愛者(MSM;men who have sex with men)の可能性もある。

MSMの可能性のある患者に対しては、セックスパートナーが異性であるかのような問診をすべきではない。

MSMの患者はそうした問診をされると、医師に対して心を閉ざす傾向が多く、良好な信頼関係が望めなくなる可能性が高い。また、現在はインターネットが広く普及し、患者もそれなりの知識を持って来院するが、誤った情報にいわば洗脳されてしまっている場合も多く、それらを柔軟に修正する必要がある。

臨床医は、診察したその日、その瞬間の臨床所見を見逃すと、その後には二度と診られないという意識で、プライベートパーツに潜む多彩な情報を見逃さないようにすべきである。それが患者のプライベートパーツを見せることへの覚悟に応えることにもなる。また、一つのSTIを見つけた場合、他のSTIにも感染している可能性があることに留意すべきである。さらに“STIを疑うポイント?”とは本人が、何時、何処で、誰と、何をしたのか、どんな事象が起きたのかの検証ともいえる。

開業医の立場から、私が経験しえたSTIの臨床写真を提示しながら、

問診、視診技術のポイントについて言及し「外来で見るSTI」の実態にせまる。

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2014年12月16日

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