泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」

今回は専門的になりますが下記の研究について報告いたします。

平成26年度厚生労働科学研究費助成金(エイズ対策研究事業)

高リスク層のHIV感染監視と予防啓発及び内外のHIV関連疫学動向のモニタリングに関する研究

平成26年度 研究報告書  pp143-151

「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」


研究担当者:荒川創一

研究協力者:尾上泰彦、他。

 
以下に研究要旨を示します。

 

研究要旨


全国13のSTDクリニックを受診した患者(男女)及びセックスワーカー(CSW)を対象として、希望者に無料VIV抗体検査を提供し、HIV感染の浸透度を検討した。対象者は、STD感染不安もしくは定期検診のために受診した者とし、同意を得てHIV抗体検査およびHIV検査ニーズ及びHIV関連知識に関するアンケート調査を行った。

平成26年11月20日から平成27年2月末日の間に連続サンプリングした。11医療機関から症例が集まり、集まった症例数は、男性患者180例、女性患者70例、CSW30例で合計280例であった。

HIV抗体陽性者は、男性患者6名(3.33%)に認められた。アンケート分析(n=313)の結果、HIV検査目的以外で受診した例は、男性患者78.3%、女性患者72.4%、CSW50.0%であったが、無料検査希望者は、90%近くと高率であった。HIV受検経験者の割合は、男性患者17.4%、女性患者36.8%、CSW66.7%で、HIV受検経験者中の複数回経験者は、それぞれ、25.0%、71.4%、85.0%であった。HIV感染リスク認知が「全くないor低いと思う」と回答したものは、男性患者67.2%、女性患者56.6%、CSW30.0%と、リスク認知が不十分な状況が示唆された。HIV関連知識(7項目)に関しては、正解率65%以上が多く、知識レベルは一般に低くはないが、3グループとも、「性感染症に罹っているとHIVに感染しやすい」、「HIV検査で感染が分かった場合、名前や住所が国に報告される」の正解率は低かった(それぞれ、44-62%、25-35%)。以上より次の点が示唆された。

(1)    男性患者のHIV抗体陽性率は3%を超え、これまで同様保健所等での検査よりかなり高率であった。本調査では、男性のHIV感染者は関東方面に集積していた。

(2)    無料HIV検査へのニーズが全国的に非常に大きく、無料HIV検査提供の意義が改めて示された。

(3)    STDクリニック受診者の間には、「性感染症に罹っているとHIVに感染しやすい」という予防上重要な知識の普及が不十分であり、今後の啓発の重要性が示唆された。

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2015年06月10日

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