Home > 【梅毒】 > 梅毒の届け出・治療・感染源の追跡は如何に!
梅毒の届け出・治療・感染源の追跡は如何に!
ある産婦人科の先生から耳鼻咽喉科の先生を通して、私に「梅毒」について相談がありましたので報告いたします。
【1回目の相談内容】
ある産婦人科の先生から梅毒について質問がありました。
患者さんは女性で、無症候性梅毒の方です。
以下の2点について教えていただけませんか?
1.直ぐに保健所に届け出が必要でしょうか?
2.治療は.ペニシリンで良いのでしょうか?
治療のポイントありますか?
【1回目の回答】
1.何科の医師でも、梅毒と診断したら、診断がついてから、7日以内に所轄の保健所に届け出る義務があります。全数報告ですから、臨床が忙しいでしょうが届け出てください。
お忙しければ、所定の書類を事務系の方に保健所でもらってきていただき、書類が作成できましたら、また事務系の方(スタッフ)に提出していただきましょう。
2.無症候性梅毒の治療については、私のお勧めは、著効薬であるアモキシリン製剤(合成ペニシリン)1.5gを8週間投与することです。
副作用があれば日本性感染症学会の治療ガイドラインを参考にし、他の抗生剤に変更なさってください。
ただし、治療の開始にあたっては、Jarisch-Herxheimer反応(現象)の説明が必要です。
第1・2期の患者に高頻度にあらわれます。治療開始後、数時間で起こる生体反応です。
投与開始直後にT.p.菌体が急激に破壊されるため、大量の抗原が放出され、アレルギー反応が生じる可能性があります。
突然の発熱・悪寒・頭痛・感冒様症状などが生じます。
皮膚症状の増悪もありえます。この反応の多くは一過性に生じます。
患者に予め、このことを説明しておく必要があります。
説明しておかないと、患者は激しく、ビックリすることがあります。
念のため鎮痛解熱剤などの投与をしておくとよいでしょう。
さて、治療終了後、6か月~1年、毎月1回は梅毒血清反応(STS,TP抗体)を行い、抗体価を経過観察されると、患者さんも医師も安心されることでしょう。
STSの抗体価が下がるといいですね。
TP抗体は下がらなくても気にすることはありません。
梅毒の治療の目的はT,p.を死滅させることであって、梅毒血清反応を陰性化することではありません。
もし、あまり抗体価が下がってこない場合は、HIV検査をして安心いたしましょう。
通常は投薬され1か月以上経過されましたら、感染能力はなくなりますから、日常生活で感染することはないと考えます。セックスもOKです。
【2回目の相談内容】
再度の質問です。先日の梅毒の件ですが、感染経路を追跡すべきかどうか教えてください。
倫理的には、すべきと思いますが如何でしょうか?
ご意見をお聞かせくださいませんか?
【2回目の回答】
この患者さんは女性ですね! 自分がどの男性から梅毒を移されたのか、知りたいですよね!
この病気の感染経路を追跡することは、今迄のセックスパートナーを調査しばれればなりません。
つまり、この女性の男性遍歴を自ら追跡することになりますね。
無症候性梅毒ですから、かなり難しいと思われますが、彼女が思い当たる、元彼たちに連絡し、自分が梅毒に罹患したことを告知しなければなりません。
そして、パートナーに『貴方の将来が心配ですから、梅毒の血液検査を受けてください』とお願いできでば、その真意が伝わり梅毒の感染者が見つかるかもしれません。
しかし、そこまで努力して彼女が感染経路を探いだし、犯人を見つけて納得したいのかどうかですね!
かなり難しい問題と思います。彼女の心の傷をいやすために見つかることをお祈りいたします。
【耳鼻咽喉科の先生からのお返事】
早速の明快なる、お返事ありがとうございました。読めば読むほど、大変だと感じました。
産婦人科の先生は保健所に梅毒の届け出をしたそうです。
その際、HIVも調べるように指示されたそうです。
なかなか追跡は、厳しいと思われますが、促すようにすると、仰ってました。
今回の尾上先生のアドバイスを踏まえて、産婦人科の先生と小生との間での、今回の症例についてのみならず、今後のお互いの連携について、お話する事が、出来て非常に有益な関わりが出来ました。尾上先生のお陰と感謝しております。
ありがとうございました。
以上、報告いたします。
1.山
2.ヤマモモです。コケモモではありません。
第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていましたが、いつの間にか「楊』の字が取れて、次第に梅瘡⇒黴毒⇒梅毒と変化したと言われています。
2015年09月05日
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.dr-onoe.com/mt/mt-tb.cgi/200