『一般的な梅毒の治療』
今回は『一般的な梅毒の治療』についてお話しいたします。梅毒の治療は、日本性感染症学会誌 「性感染症 診断・治療ガイドライン」に沿った治療を推奨いたします。
最近、「2013年に修正された 性感染症 診断・治療ガイドライン」では梅毒の治療には、殺菌的に働き、耐性の報告もないペニシリンを第一に選択すべきであると言われています。
バイシリンG(ベンジルペニシリンベンザチン)投与が基本になります。
合成ペニシリンではなく、天然であり経験的に他のペニシリン(C‐R)よりも有効であるといわれています。
バイシリンG:1日量、120万単位を3回に分けて内服、
またはアモキシリン、アミノベンジルペニシリン250mg×6cap(1日量1,500mg)を3回に分けて内服させます。
ペニシリン・アレルギーがある場合には、塩酸ミノサイクリンまたはドキシサイクリン1日、1回100mgを2回内服させます。
ただし、妊婦の場合にはアセチルスピラマイシン1日、1回200mgを6回内服させます。
投与期間は、 梅毒第1期(感染後3カ月まで)に2~4週間、
第2期(感染後3カ月から3年まで)には4~8週間、
第3期以降には8~12週間を必要とします。
投与期間は、感染時期を推定し、その期の梅毒に準じますが、感染後1年以上経過している場合や、感染時期の不明な場合には8~12週間投与します。
我々臨床医に言いたいことですが、“梅毒の治療の目的”で一番大事なことは、梅毒の病原微生物であるTreponema pallidum(トレパネーマパリドュム)を死滅させることであって、梅毒血清反応の検査成績(Tp抗体価)を陰性化させることではないということです。
これは臨床医の「落とし穴」ともいえます。
一度梅毒になるとTPHAは陰性に転じることはないため不安に感じるかもしれませんが、「性感染症 診断・治療ガイドライン」にそった治療をなされば通常は心配ありません。
尚、私は駆梅療法に、今まで通常、アモキシリン製剤(合成ペニシリン製剤の一つ)1日、 250mg×6cap(1日量1,500mg)を3回に分けて投与し臨床的に奏効して来ました。
これからも使用する予定です。
(参考文献)2013年に修正された日本性感染症学会の診断・治療ガイドライン 梅毒
2016.4.25 尾上泰彦
①クリトリスの包皮に発症した梅毒の硬性下疳
②ヤマモモの果実 梅毒という病名の由来:
第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので
楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていました。いつの間にか、「楊」の字が取れて、
次第に梅瘡⇒黴毒⇒梅毒と変化したと言われています。
2016年06月16日
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.dr-onoe.com/mt/mt-tb.cgi/292