左側の睾丸の痛み
30代前半の男性から「左睾丸部の痛み」について相談がありましたので報告いたします。【相談内容】
お忙しいところすみません。
病名や対策がはっきりしないので、困っています。
長文ですみませんが、よろしくお願いします。
現在30代前半です。14歳の時から、年に6回程度の左側の睾丸の痛みがあります。
右側は1度もありません。
ふと、わずかな鈍痛を感じて「あ、来たかな?」と思う。
精巣上体のあたり。股間を打ったときのような、ずーんとした痛み。
その痛みに耐えながら歩いたりコンビニバイトしたこともあります。
座ったり寝ていればほとんど痛まない。
痛みは左下腹部のそけい部のあたりまで広がることも。
鈍痛からはじまり、痛みのピークを迎え、やがて痛みが引いていく。
時間は10分から最長で2時間、平均して60分で痛みが完全に引く。
その後は若干、違和感があるようにも感じるが、痛みはない。
数時間もすればもういつも通り。
黙視確認では腫れはなし。体温も普通。自分自身の触診では、
この痛みがあるときは精巣上体付近の血管?などがいつもより膨らんでいるというか、体積が増えているように感じます。
睾丸上部にぽちっとしたふくらみがあるが、そこを押すと特に痛い。
ただしこのふくらみは常にある。睾丸自体は変化なし。
この痛みがある時は、排便がしたくなることが多く、排便を終えると治りが早いことが多い。
下痢はしない。
原因は不明ながら、さあ気合い入れていくぞ!と気を引き締めた後に起きやすい。
重いものを変に持ったとき(よろめいたりした時に左下腹部の腹筋に変に力が入ったとき)などになりやすい。
しかし、通常の筋トレ(腹筋など)の後には起きない。
この症状の特徴として、風呂にはいると数分で治る。
風呂に入って、「あーーーー・・・」とリラックスして陰嚢がゆるむと治る。
風呂の時間でない時にも、できるだけ下腹部をリラックスさせて陰嚢の袋をゆるめるようにすると治りが早いように思えるが、なかなか入浴時のようにはいかない。
半年以上起きないこともあれば、1週間しかたっていないのに起きることもある。
疲労具合や性行為の有無、季節に関係なく起きる。
一度病院に行ってエコー検査で見たときは、平常時だったので分からず。
医者からは、症状のあるときにまた来てくれと言われた。のちに閉院。
別の病院に行った時は、行くときは痛みがあったものの
待っている間などにほとんどおさまり、原因不明。
問診のみで、おそらく精索軸捻転の軽いものではないかと言われた。のちに閉院。
なお、発生したら睾丸を下に引っ張ってみろ、と言われたので
やってみたこともあるものの、効果は実感できず。
また別の病院では、症状のない時だったが、病状から精索垂捻転ではないかと言われた。
精索軸捻転なら、転げ回るほど痛いし、これまで何回も起きているのに全部自然におさまるというのは不自然なことと思います。
こういった状況です。痛みがピークの時は、ポーカーフェイスは保てますが、激しく動くのはかなり辛くなります。
根治療法、発生時の対処法などがありましたら、ご教示頂きますと助かります。
①左精索静脈瘤(症例1)
【回答】
私は、貴男の診察をしておりませんから、はっきりとはアドバイスができません
貴男がおっしゃる通り、精巣捻転(睾丸回転症、精索軸捻転など)の臨床症状(七転八倒する強度な疼痛など)がなく精巣の腫脹もないので、精巣捻転は否定できると考えます。
臨床症状から考えられるのは、左精索静脈瘤です。
精索静脈瘤とは、睾丸(精巣)から心臓に戻る静脈(蔓状静脈叢)内の血液が逆流してしまい、
睾丸の周りに静脈のこぶ(瘤)ができてしまう状態をいいます。
乏精子症や精子の運動率低下、男性不妊症のおおくは精索静脈瘤が原因の一つとされています。
腹部から流れてくる暖かい血液が睾丸の温度を上げ、精子を作る機能に悪影響を与えると考えられています。
男性の約20%にこの症状、現象が起こる可能性があります。
この左精索静脈瘤の症状はほとんど左側に起こります。
左鼠径部から陰嚢にかけて鈍痛、違和感、不快感、時には股間を蹴られた、打った時に生じる、
ズーンとした痛みを感じる場合もあります。
また睾丸を握られている感じがする場合もあります。
そして、左下腹部から鼠径部あたりまで痛みが広がることもあります。
立位で診察すると、左陰嚢内の睾丸の横から下方にかけてないか柔らかい膨らみ(塊)を触れることがあります。
これが精索静脈瘤と言って静脈のこぶ(瘤)です。
貴男の臨床症状から、左精索静脈瘤を考えます。
②左精索静脈瘤(症例2)
左の鼠蹊部あるいは陰嚢内の違和感があれば精索静脈瘤が考えられます。
長時間の立位の仕事、長時間のデスクワーク(パソコン業務など)、長距離ドライブ(トラック運転手など)、タクシー運転手など立位あるいは座位で長時間同じ姿勢を保っていると違和感が出てくるかもしれません。
運動不足も一つの誘因になることがあります。
この症状、現象が生じた場会は寝てしまうことです。
痛みはおそらく和らぐでしょう。
チョコット運動、コーヒーブレイクなどは有効と考えます。
ある意味、女性の骨盤内で生じるエコノミークラス症候群に似ています。
飛行機の中でジット座っていますと、骨盤の中が充血し血栓症などのトラブルの誘因になると考えられています。
貴男が考えているように、一度泌尿器科の専門医に診てもらうことをお勧めいたします。
お大事になさってください。
③ハロウィン
2016年10月09日
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.dr-onoe.com/mt/mt-tb.cgi/344