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原著「川崎市において分離されたNeissera gonorrhoeaeの背景と感染経路に関する検討」

本論文は「原著」で私は共著者でありますので、ご報告いたします。
 
本論文は日本性感染症学会第28回学術大会(2015年12月5日)に発表し、同学会誌から投稿の推薦を受けた内容を改変したものである。
 
井村幸恵 金坂伊須萌 金山明子 小林寅喆 尾上泰彦
日本性感染症学会誌,2016;103-109.
 
(写真は参考です)
 
①日本性感染症学会誌 第27巻 第1号 2016
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②原著「原著「川崎市において分離されたNeissera gonorrhoeaeの 背景と感染経路に関する検討」 論文要旨

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2013~2014年に淋菌感染症の疑いで来院した190例(男性111例、女性79例)の尿道・腟分泌物および咽頭ぬぐい液から培養されたNeissera gonorrhoeaeの患者背景および、感染様式を調査した。

さらに生殖器および咽頭より同時に分離した菌株においてClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)の寒天平板希釈法で各種抗菌薬感受性を測定し、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法による遺伝子パターンの解析を行った。

男性111例および女性79例中培養陽性例は、それぞれ80例(72.1%)および36例(45.6%)であった。

生殖器陽性例は男性80例(72.1%)、女性28例(35.4%)、咽頭のみ陽性を示した例は男性には見られず女性にのみ8例(10.1%)認められた。

③淋菌はグラム陰性双球菌です。
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④咽頭の淋菌培養検査法
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⑤淋菌性尿道炎の特徴
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⑥淋菌性子宮頸管炎の特徴
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男性患者の生殖器陽性例における性交渉相手の背景で最も多かったのはCommercial Sex Worker(CSW)51例(63.8%)、次いでパートナー22例(27.5%)であった。

男性の咽頭陽性例において感染経路はCSW6例(46.2%)、パートナー6例(46.2%)からと同等で、また、性行為様式ではオーラルセックスが関連する場合が最も高く、男性の生殖器陽性患者の62.6%、女性の生殖器陽性患者の75.0%であった。

咽頭と生殖器から同時に検出された分離株のPFGEパターンは男性13例中11例が一致し、女性では8例中全て一致した。
 
⑦生殖器・咽頭の淋菌・クラミジアの重複感染症例
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男性の淋菌感染症患者において性交渉相手がパートナーおよびCSWに関わらず咽頭感染例が多いことが明らかとなった。

⑧CSWの口腔咽頭は性感染症の温床
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感染様式では男女問わずオーラルセックスを介した感染が主流となっていることが判明した。

パートナー間においても高い頻度で咽頭感染が生じることから、このような感染経路についても一般の人々に対して広く啓発することが急務であると考える。
 
⑨CSWの口腔咽頭は性感染症の温床
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⑩CSWの口腔咽頭は性感染症の温床

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2016年10月14日

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