梅毒の再感染について
30代後半の男性から梅毒の再感染について相談がありましたので報告いたします。【相談内容】
2016年12月7日に、尾上先生に相談した30代後半の男性です。
(概要)13年前に梅毒に感染し治療済です。
が、新規に梅毒に再感染しました。
梅毒(+)でTP抗体定量354.0U/ml(再検同値)、
RPR定量276.0R.U.(希釈再検済 20倍)で、
アモキシシリンカプセル250を1日1錠4回を処方され、1カ月間服薬しました。
このたび血液検査をしました。
結果は、TP抗体定量16324.0U/ml(希釈再検済 20倍)
RPR定量35.0R.U.(希釈再検済 5倍)でした。
①梅毒の診断・検査
主治医の先生は、TP抗体が急激に上昇している意味がわからないとおっしゃっており、念のため再度28日分のアモキシシリンカプセル250を1日1錠4回を処方されました。
今回、尾上先生に教えていただきたいことは、TP抗体値が急激に上昇した理由を教えてください。
また、前回の検査報告書には、TP抗体定量の欄外に、(再検同値)と記載されていたのに対し、今回は(希釈再検済 20倍)となっておりました。
どのような違いなのか教えて頂きたいです。
あと、尾上先生は、梅毒に関する各投稿に対して1カ月間アモキシシリンカプセル250を服薬すれば、感染能力は消滅し完治と判断できるとご回答されておりますが、私も同じように完治と判断できるのでしょうか?
その際は、処方された薬はどうしたらよいのでしょうか?
彼女との性行為が可能なのかも含めてご回答頂ければ幸いです。
お忙しいところ誠に恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。
お忙しいところ有難うございます。
お返事が遅いのでお身体悪いのかと心配してました。
薬は服用しており、処方の不足分として個人輸入したアモキシシリンカプセル250を追加して1日2錠×3回服用しております。
お時間できましたら、ご返信お願い致します。
②梅毒血清反応
【回答】
TP抗体値が急激に上昇した理由ですが、
通常は再感染した場合は、TPHAの値が、 急激にかなり上昇するのが特徴的です。
しかし、貴男は アモキシシリンカプセル250mgを1日4錠を処方され、1カ月間服薬した。
それなのに(服薬前)の TP抗体定量値が 354.0U/mlから
(服薬後)には16324.0U/ml とかなり上昇しています。
これは、血液検査のタイミングの問題が考えられます。
丁度、服薬、1カ月前に検査したタイミングが早かったのかもしれません。
もし、服薬しないで1~2週間後に検査していたら、もっと上昇していたかもしれません。
服薬したからTP抗体定量値が16324.0U/mlまで下がったのかもしれません。
③梅毒の診断・検査
これは、無いとは思いますが、また、貴方にその後、性的接触(性行動)があったとすれば梅毒の再々感染の可能性があります。その場合もかなり上昇いたします。
梅毒は終生免疫が得られませんから、何回でも再感染いたします。
④パーカーインク染色 ・ ライトギムザ染色
例えはあまり良くないですが、自動車事故と同じです。
事故車を修理すれば、また快適に走行できるようになります。
が、運悪く、また交通事故を起こすかもしれません。
修理して、さらにまた走行していれば事故を起こす可能性があります。
何回でも事故を起こす可能性があります。
⑤梅毒の治療 治療ガイドライン2016
ですから、感染したら駆梅療法を再スタートすれば、良いわけです。
2016年11月1日に改訂された日本性感染症学会の治療ガイドラインに則った治療をすれば問題なく完治します。
貴男の場合は、アモキシリンカプセル250mg(サワシリンなど)1日6cap/分3を8週間服用することをお勧めいたします。
1日量は4capではなく6capです。
この駆梅療法が終了すれば、もちろん、服薬の必要はありません。
日常生活、性的行動も普通にできます。
あとは、定期的(1~3カ月)毎に血液検査をして経過観察することです。
⑥臨床医の落とし穴!
貴男の別のご質問ですが、≪前回の検査報告書には、TP抗体定量の欄外に、(再検同値)と記載されていた≫
≪今回は(希釈再検済 20倍)となっておりました≫≪どのような違いなのか教えて頂きたいです≫
TP抗体定量354.0U/ml(再検同値)とは定量検査ですから検査データに誤りがあるといけないので、念のため検査センターが、同じ検査をしてくれて、同じ成績データだったという意味です。
親切に再検査をしてくれたわけです。
(希釈再検済 20倍)の意味ですが、希釈法を再度行い、その結果が2回とも20倍を示したという意味です。
従来は梅毒血清反応は人間による用手操作、目視判定による倍数希釈法が一般的でしたが最近では利便性、簡便性、効率性に勝る、自動分析装置による検査法(自動化法)が一般的になっています。
しかし臨床現場において自動化法の普及を知らない医師が直面する問題にその結果の取り扱いの解釈があります。
問題点の第一には結果の表記方法が異なるということです。
第二には倍数希釈法と自動化法がどのように対応するのか明確に示されていないことです。
希釈液法は、現在はある意味では過渡期で行っていますが、将来はやらなくなると思います。
これからは自動化法に向かっていくと考えます。
ただ、現在は医師のデータの解釈の混乱を避ける意味で参考値として付記されていると考えてください。
⑦梅毒治療の経過観察
また貴男はTP法を気になさっていますが、梅毒の経過観察はTP法ではなく、RPR法で行ってください。
RPRの値が下がっていれば、良い方向に向かっていると考えてください。
貴男の成績はRPR定量276.0R.U.(希釈再検済 20倍)がRPR定量35.0R.U.(希釈再検済 5倍)に下がっていますから、治療効果が上がっていると考えられます。
良かったですね。
お大事になさってください。
2017年01月23日
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