腟トリコモナス症の再発
30代の女性から「腟トリコモナス症の再発」について
相談がありましたので報告いたします。
①腟トリコモナス症
②腟トリコモナス原虫:活発に運動する
③腟トリコモナス原虫の鞭毛 (鏡検:生標本)
【相談内容】30代の女性。
腟トリコモナス症の再発で悩んでいます。
約1年間、検査と治療を繰り返している状態です。
原因がわからず、不安な日々です。
フラジール腟剤と内服薬で症状が改善されず、
チニダゾール腟剤と内服薬に切り替え治療を行いました。
その後陰性となりましたが、3週間後痒みがあったため、
再検査を受け、再び陽性。
チニダゾール10錠を1度に服薬後、陰性となりました。
次の生理後の再検査でも、トリコモナスの検出がなかったため、
1度は完治と言われました。
しかし、半年が経ち再び痒みがあったため、
検査をしたところ疑陽性との判定(陽性とまでは言い切れないと言われました)。
生理直前の検査で陰性。
生理後の検査で陽性となり、現在チニダゾール腟剤と内服薬7日間で治療しております。
この半年、新たな感染リスクのある行為はありません。
検査方法は、培養検査かと思います。
再発の原因がわからないこと、また現在の治療方法でよいのか、不安な日々です。
先生からアドバイスをお願いできますと幸いです。
よろしくお願いします。
つづく
④腟トリコモナス症ってどんな病気なの?
つづき
【回答】
腟トリコモナス症の再発で大変長い間、お悩みですね。
貴女は、約1年前から、検査と治療を繰り返している。
原因がわからず、日々不安である。
フラジール腟剤と内服薬で症状が改善されない。
そのためチニダゾール腟剤と内服薬に変更。
その後、陰性となったが、3週間後、痒みを認め
再検査を受け、再び陽性。
チニダゾール10錠を1度に服薬後、陰性となる。
次回の生理後の再検査で、トリコモナスは陰性。
一度は完治と言われた。
しかし、半年後、再び痒みを認めた。
検査をしたところ疑陽性との判定(陽性とまでは言い切れない)。
生理直前の検査で陰性。
生理後の検査で陽性となり、現在チニダゾール腟剤と
内服薬7日間で治療しております。
この半年、新たな感染リスクのある行為はない。
検査方法は、培養検査かと思います。
再発の原因がわからない。
現在の治療方法でよいのか、日々、不安である。
先生からのアドバイスを希望する。
以上貴女の臨床経過をまとめてみました。
つづく
⑤腟トリコモナス原虫 鞭毛 波動膜 18μm
つづき
さて≪腟トリコモナス症の治療≫ は、基本的にパートナーと共に、
同時期、同期間の治療を必要とします。
その際、男性では、女性に比べトリコモナス検出が困難であるため、
パートナーの男性が陰性と判定されることが多いのが現実である。
しかし、男性も治療を行うことをお勧めいたします。
トリコモナス感染症の治療には、現在、5-ニトロイミダゾール系の
メトロニダゾール(フラジール)が一般的であります。
女性でも尿路への感染の可能性があり、やはり経口剤が必要です。
腟座剤や経口投与が困難な例では、腟錠単独療法を行います。
なお、難治な場合や再発する場合では経口、腟錠による併用療法を行います。
●メトロニダゾール(フラジール錠250mgなど)の500mg/日分2、10日間
また、ニトロイミダゾール系の薬剤は、その構造内にニトロ基をもっており、
発ガン性が否定できないとされています。
そこで、1クールの投与は10日間程度にとどめ、追加治療が必要なら
1週間はあけることとしています。そのほか、投与中の飲酒により、
腹部の疝痛、嘔吐、顔面潮紅などのアンタビュース様作用
(アルコールと薬の相互作用で危険な症状がでること)が現れる危険性があるので、
投与中および投与後3日間の飲酒は避けることをお勧めいたします。
さらに、最近の治療法として、上記の10日間薬剤投与法のほかに、単回大量投与法として
メトロニダゾール(フラジール)1.5g単回投与がありますが、現在、保険適用ではありません。
また、メトロニダゾール(フラジール)と同系統であるチニダゾールでは2g(200mg10錠)単回投与が保険適用です。
≪治癒判定≫については、自他覚症状の消失をみるとともに、トリコモナス原虫の消失を確認いたします。
女性では、次回月経後にも原虫消失の確認をする方がよいとされています。
これは腟トリコモナス原虫が月経血中で増殖するためと言われているからです。
≪予後≫については、メトロニダゾール(フラジール)の経口投与で90~95%の消失がみられます。
同時期に患者とパートナーの両者を治療すれば、その予後は良好とされています。
つづく
⑥腟トリコモナス原虫;模式図
つづき
『腟トリコモナス症の治療』について
5-ニトロイミダゾール系の薬剤は大変有効ですが、一部に耐性を示すトリコモナスがあります。
これらは現在のところより高用量の再投与で対処していますが、なかには消失のみられない
難治な症例もあります。
これら耐性トリコモナスにも有効な薬剤の開発が待たれるところです。
初回治療が無効で再感染が否定される例への再治療として海外では、海外での初回治療である
メトロニダゾール(フラジール)500mg、一日2回、7日間にての再治療が勧められています。
その上でなお無効であれば、メトロニダゾール(フラジール)2g単回経口投与を24時間おきに
3~5日間を試みるとされていますが、このような治療は性感染症の専門家のもとでなされる
ことが勧められます。
幸い、貴女が受診されている婦人科の先生の治療は安心できると思います。
早く良くなってください。お大事になさってください。
⑦腟トリコモナス原虫の鞭毛 (鏡検:生標本)
【返事と相談内容】
先生ご丁寧にアドバイスをいただきありがとうございます。
新たな情報を得ることができ、治療に対して少し前向きになれました。
先生に追加でお伺いしたいことがあります。
下着やタオルについては、洗濯後、乾燥機等で完全に乾燥させれば、
使用して問題ありませんでしょうか。
また自宅浴槽については、入浴後水を抜いて通常の掃除を行い、
乾燥させることで、湯船に浸かっても問題ないと考えてよろしいでしょうか。
治癒後、温泉にも行きたいのですが、再感染しないか神経質になっております。
定期的にSTD検査を受けることが1番の予防法になるのでしょうか。
よろしくお願いします。
【2回目の回答】
腟トリコモナス症の予防法としては、
感染経路の遮断対策を忘れてはなりません。
性行為以外の接触による感染報告も時にみられるからです。
他の感染経路としては、身に着ける下着ヤタオルなどからの感染、
洋式トイレ、便器や浴槽を通じた感染の報告もあります。
しかし通常は日常生活で感染することは無いと考えます。
あまり神経質になる必要はないと思います。
貴女がおっしゃる通り、下着やタオルについては、洗濯後、乾燥機等で
完全に乾燥させれば、使用しても何ら問題ありません。
自宅浴槽については、入浴後水を抜いて通常の掃除を行い、
乾燥させることで、湯船に浸かっても問題ないと考えます。
治癒後は、温泉にも行き楽しんでください。
ご心配があれば婦人科でご相談し、もし必要があればSTD検査を
受けることは良い事だと考えます。
2017年02月27日
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