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講演「泌尿器科医のためのアトラスで見る これが梅毒だ」
2017年2月25日(土) 18:15~19:15京王プラザホテル 本館 4階『花』で私の特別講演がありましたので報告いたします。
【特別講演】
『泌尿器科医のためのアトラスで見る これが梅毒だ』
宮本町中央診療所 院長 尾上泰彦
①第44回東京泌尿器科医会学術集会
「梅毒」という病名の由来は第2期の赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていました。
いつの間にか「楊」の字が取れて、次第に梅瘡⇒黴毒⇒梅毒と変化したと言われています。
また、梅毒はクリストファー・コロンブス一行が1492年、新大陸の発見と共に❝原住民の風土病❞をヨーロッパに持ち帰ったとされ、「悪魔のお土産」といわれました。
その後、爆発的に全世界に拡がり、日本への伝来は永正九年(1512年)で、約20年足らずで日本にやってきました。
恐るべし、セックスのパワー。
梅毒のヨーロッパ伝播の通説であります。
本講演では、私が経験した梅毒症例を中心に臨床写真を提示しながら視診技術のポイントについて述べました。
②吉原病院 花魁 検診風景
ご存知の通り「今や、梅毒はパンデミック状態」であり、大きな社会問題になっております。
忘れられていた梅毒。
昔の病気と思われていた梅毒。
若い医師が見たことがない梅毒。
そういう意味では再興感染症でもあります。
臨床医は忙しい。多くの医師は届けない。
届け出は氷山の一角。
梅毒は全数報告で、どんな医師でも「梅毒」と診断したら都道府県知事に7日以内に届け出る義務があります。
それでも梅毒は2011年以降、大都市を中心に徐々に増加し、現在、アウトブレイクしています。
③梅毒は全数報告
それでは何故、梅毒が増加しているのか?
何故、この5年間で梅毒が急増したのか?
しかも、なぜ、若い女性に急増しているのか。
確かに、先天梅毒児も毎年増加傾向を示し、胎児感染で重い障害の恐れもあり、社会的に危惧されています。
疫学調査によると、年齢群別報告数の男性のピークは20~40歳代です。
それに比して、何故か、女性のピークは20代前半の20~24歳にあります。
その原因、理由はわかりません。
しかも、この謎に迫る疫学的調査は、内容があまりにもプライベートでプライバシーにかかわるため調査の仕様がありません。
日本人の性行動様式が急に変わることは考え難い。
しかし、若い20代前半の女性に急増しています。
急増の原因は、内的因子では考え難く、外的因子も考えなければなりません。
④ 2017.1.6 讀賣新聞夕刊「梅毒患者5年で5倍」
一説に、2016年外国人旅行者が、初めて2400万人を超えました。
中国などアジア地域の旅行者が大幅に増加しています。
これが原因の一因なのかもしれません。
⑤外国人旅行者数が2400万人を超えた。
日本政府観光局の報告によりますと来日する中国人は、2008年に初めて100万人を突破し、徐々に増加し、2016年には637万人以上と急伸しています。
この外的要因が原因とは、根拠がないためはっきりとは言えませんが、一因の可能性もあります。
⑥来日する中国人 急伸!
中国衛生部が発表した「全国法定伝染病疫情状況」によりますと、2013年度の梅毒感染者数は406,772人で、これは15年前の10倍以上とのことであります。
また、中国国家衛生・計画出産委員会HPによると、2015年のみの中国の梅毒患者数は433,974人(参考:2015年の日本の患者数は2,698人)です。
つまり、中国における梅毒患者数は日本をはるかに上回る増加をみせています。
⑦2015年の中国の梅毒患者数
中国の総人口は日本の11倍以上ありますが、梅毒患者数は日本の160倍超というから、梅毒の急伸状態には驚きであります。
こうした経路で日本の若い女性に梅毒患者が増え、日本での感染が増えたという可能性は考えられます。
⑧梅毒流行の原因?
梅毒に国境はないともいえます。
⑨めったに遭遇しない初期硬結
梅毒の病因、分類、臨床症状(第1期:初期硬結、
硬性下疳、鼠径部リンパ節無痛性腫脹)、
⑩硬性下疳は周辺が隆起し、軟骨様の硬さがあり疼痛がない。
⑪女性の硬性下疳は比較的稀である。
第2期(バラ疹、梅毒性乾癬、脱毛、扁平コンジローマ、
口腔咽頭粘膜斑など)、
⑫梅毒は非常に多彩な症状を呈する!
⑬症例:女性 第2期 梅毒性乾癬 手掌・足底
⑭症例:男性 第2期梅毒 口腔咽頭粘膜斑
第3期、第4期の臨床像、悪性梅毒。HIV感染症との関係。
眼科領域の梅毒。輸入感染症である軟性下疳の臨床像。
⑮梅毒の治療 治療ガイドライン 2016
梅毒の診断・検査、治療、臨床医の落とし穴。
そして梅毒の感染予防の基本。
⑯梅毒の予防 感染予防の基本
これらの臨床現場のアトラスを提示しながら紹介・概説しました。
2017年04月02日
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