泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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性器ヘルペスは感染しても症状が出ない!?

先日、35歳の男性会社員が
「ペニスに小さな水疱ができ、痛みと痒みがあります。」と言って来院してきました。
早速診てみますと、確かにペニスの冠状溝付近直径1~2mm大の小さな水疱が3つできています。


詳しく聞いてみると、2年から1年間に10回以上も性器ヘルペスが再発し、
日常生活に支障をきたしているとのこと。
そこで「初めて感染したのは何年前ですか?」と聞くと
「いや、いきなりの再発みたいです」との返事が返って来ました。


感染したときは症状がなく、「いきなり再発」とはどういうことなのか・・・?
今回はこのことについて少し勉強しましょう。


確かに性器ヘルペスは、初めて感染した人の約70%に症状が出ないといわれています。
そしてその後もはっきりとした皮膚症状が出ないため、自分がウイルスを泄していることを知らずに他人に感染させている例が多くみられます。
症状がないままウイルスを排泄する時期は、初めて感染してから3か月以内に
最も高率に起こることが分かっており、経過とともに減少していきます。


再発を1年間で10回以上繰り返す人と再発のない人を比べると、
明らかに再発多い人はウイルスの排泄が多く、時期は再発前後の1週間に
集中していると言われています。


HSV(単純ヘルペスウイルス)に感染した場合、
ヘルペスが口にできれば口唇ヘルペス、性器にできれば性器ヘルペスと呼ばれます。
また、HSVには1型と2型2種類があり、口唇ヘルペスは1型、性器ヘルペスは2型が
多いといわれています。


1型が初めて性器に感染すると、激しい症状(水疱、痛み、発熱、足の付け根のンパ腺の
腫れ、膀胱炎様症状、歩行障害など)がでますが、再発はそれほど多はありません。
2型はそれに比べて症状はおとなしくなりますが、頻回に再発繰り返すと言われています。


また、HSV-2・1抗体がともに陽性の人において、性器ヘルペスの症状が出にくことが指摘されています。これが冒頭にあげた、「症状が出ないのでヘルペ・ウイルスの排泄に気づかず、他人を感染させている」という事例の原因と考えられます。


日本では性風俗嬢でのHSV-2抗体の保有率が高く、1・2型を持つ人も多いため
注意が必要です。
またHSV-2感染者のわずか10~25%の人しか感染に気づいていないという報告もあります。ですから私たちは知らないで感染し、知らないで他にうつしているかもしれません。


今後、医療者は性器ヘルペス感染症の正しい診断、治療、予防を認識し、
そして患者さんへの正しい知識の啓蒙・教育を心がけていく必要があるでしょう。




2008年12月24日

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