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注目すべき梅毒の高濃度アモキシシリン治療法など
日本における梅毒感染報告数は爆発的に伸びており社会問題になっております。
今回はその梅毒の治療について勉強したいと思います。
"1950年代、日本ではペニシリンの筋注による「ペニシリン・ショック」で多くの方が死亡し、マスコミで大きく報道され社会問題となりました。
従って、日本では、ペニシリン系抗菌薬の筋肉注射が行えない状況から外国の標準的治療とは異なった独自の治療法となっています。
●日本における梅毒の治療
梅毒の治療には多くの症例で、梅毒トレポネーマの細胞壁合成を阻害し、殺菌的に働き耐性の報告が無いペニシリン系抗生物質が使用されています。
①梅毒の治療薬(参考)
梅毒の治療は日本性感染症学会の梅毒治療ガイドライン2016によりますと下記のごとくです。
●第1期
バイシリンG:1日120万単位/分3(現在、品不足)
アモキシシリン(サワシリンなど)1日1,500mg/分3
アミノベンジルペニシリン1日1,500mg/分3
2~4週間内服投与する。
●第2期
バイシリンG:1日120万単位/分3(現在、品不足)
アモキシシリン(サワシリンなど)1日1,500mg/分3
アミノベンジルペニシリン1日1,500mg/分3
4~8週間内服投与します。
●第3期以降では8~12週間投与します。
②梅毒の治療 日本性感染症学会ガイドライン
③日本ではアモキシシリンが最も使用されている
●ペニシリン・アレルギーの場合は
塩酸ミノサイクリン 1日 100mg×2回を服用します。
あるいは
ドキシサイクリン 1日 100mg×2回を服用します。
投与期間は第1期では2~4週間です。
第2期では4~8週間です。
●妊婦の場合は
アセチルスピラマイシン 1日 200mg×6回を服用します。
④ペニシリン・アレルギー&妊婦の場合
●世界的にはCDCの治療指針が採択されています。
米国CDCの2015年のガイドラインを見ますと
●ペニシリンGの筋注が推奨されています。
●妊婦に対してはペニシリンGの筋注のみが推奨されています。
⑤米国CDC 2015年のガイドライン
世界の標準はベンザチンペニシリン 240万単位 1回 筋注です。しかし世界的にこの薬剤が不足しています。
しかも、日本ではベンザチンペニシリンが発売されておらず、現状では多くの国で行われている標準的な治療を行うことができません。
⑥梅毒の世界的標準治療
海外における標準治療のベンザチンペニシリン 240万単位 筋肉注射(早期:単回投与、後期:週1回3週間)の治療効果は、80~100%と報告されています。
⑦梅毒の世界的標準治療
日本性感染症学会 診断・治療ガイドライン2016では、アモキシシリン1500mg/日の内服を推奨していますが、臨床的な効果を示したエビデンスは乏しく、あまり報告がありません。
⑧アモキシシリンの臨床的効果のエビデンスが乏しい
一方、英国の梅毒ガイドラインでは、ベンザチンペニシリンG(BPG)の代替薬としてアモキシシリン(AMPC)とプロベネシドの併用を推奨しています。
⑨英国の梅毒ガイドライン
日本でもアモキシシリン(AMPC)3000mg/日とプロベネシドによる治療成功率が95.5%という報告があります。内服薬の1日量が2倍になりますが、投与期間が短縮され治療成績も良好です。
⑩アモキシシシリン+プロベネシドの治療成功率
●神経梅毒の治療
ベンジルペニシリンカリウム(結晶ペニシリンGカリウム)を1日200~400万単位×6回
(すなわち1日1,200~2,400万単位を投与)を
点滴静注で10日~14日間投与します。
●先天梅毒の治療
ベンジルペニシリンカリウム(結晶ペニシリンGカリウム)の点滴静注を行います。
⑪梅毒の治療 神経梅毒&先天梅毒
●HIV患者の梅毒治療については
世界的にはベンザチンペニシリン筋肉注射が標準的治療薬となっています。
●単回投与で感染性の高い第1期、第2期梅毒の治療が完了できます。
●日本では現在、長期間の内服が必要なため、内服コンプライアンスを保つ努力が必要となります。
●HIV患者の梅毒の治療におけるアモキシリン+プロベネシド内服投与の治療効果を検討した結果、
2015年に内服アモキシシリンにプロベネシドを加えた治療がHIV感染者の梅毒合併例に対して高い治癒率を示すとの報告がされています。HIV感染を合併した梅毒症例では、HIVを合併していない梅毒症例よりも治療効果が低いため、この研究成績は梅毒の治療に貢献できる可能性があります。
⑫HIV患者の梅毒治療
梅毒治療として国際的標準治療薬はベンザシンペニシリンGの筋肉注射ですが、日本では発売されていません。
そこで、日本でも梅毒をきちんと治療できないか、ということで考え出されたのがアモキシシリン+プロベネシドの併用療法です。
ペニシリンは腎臓から尿中に排泄される抗生物質です。また、プロベネシドは抗生物質であるペニシリンの排泄を抑制するために開発された薬とも言われています。
プロベネシドは高尿酸血症の治療薬ですが、アモキシシリンの尿排泄を抑制するという薬物相互作用があり、併用によりアモキシシリンの血中濃度を高く維持することが可能です。
プロベネシドを使用することでペニシリンが排泄されにくくなるため、病原菌に対抗しやすくなります。
●薬剤の適応や日本性感染症学会のガイドラインにはない投与方法ですから担当医個々の判断が求められますが、1日3gなどの高用量のアモキシシリンを1日750mgなどのプロベネシドと併用して早期顕症梅毒や早期無症候梅毒には2週間、晩期もしくは罹患時期の分からない無症候梅毒には4週間の投与を推奨する報告もあり、このアモキシシリンにプロベネシド併用する医療機関が増加傾向にあります。
ここで、高用量アモキシシリン+プロベネシドの駆梅療法を紹介いたします。
●早期顕症梅毒・早期無症候梅毒では1日3gの高用量アモキシシリンと1日750mgのプロベネシドの併用療法を行います。2週間内服投与します。
●晩期無症候梅毒・罹患時不明の無症候梅毒では1日3gの高用量アモキシシリンと1日750mgのプロベネシドの併用療法を行います。4週間内服投与します。
⑬高用量アモキシシリン+プロベネシド 駆梅療法
確かに"現在、日本ではベンザチンペニシリンが発売されておらず、世界的に行われている標準的な治療を行うことができません"
しかしながら、最近の梅毒患者の急増によりペニシリン系の筋肉注射を見直す気運が高まっています。
●2017年1月23日に「エイズ・性感染症に関する小委員会」が開催されました。〝梅毒に対するペニシリンGの筋注“について、国内でも使えるようにしてはどうかという提案がありました。
●現在、厚労省は、梅毒の感染拡大に対処するため、1回の筋肉注射で済むペニシリンGの必要性を性感染症の予防指針に盛り込む方向で調整中です。
●しかしながらまだまだ「(ペニシリンGも含めた)国際標準で使用されている薬剤が国内でも使えるようにすることが重要だという認識を共有した」というレベルであることがわかりました。
⑭梅毒治療にペニシリンG(筋注)
以上。
2017年06月01日
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