泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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男性同性愛者の性感染症

1月某日、未婚で44歳の男性が来院してきました。
来院の理由を聞いてみると、
『HIVの即日検査を希望します。あと梅毒が心配です』とのこと。
一見、紳士風で、礼儀正しい立ち居振る舞いの男性でした。


そこで詳しく話を聞いてみると、その男性は「同性愛者(ゲイ)」でありました。
早速、診察致しますと、陰茎には異常所見を認めないが、陰嚢皮膚には梅毒性皮 疹を認めました。
これは梅毒の第二期に見られる皮膚所見です。
本人希望のHIV 即日検査もすぐさま行いましたが、こちらは陰性で、私もほっとしました。


梅毒については念のため、梅毒血清反応検査も行いましたが、
1週間後に、やはりハッキリと陽性であることが判明しました。
梅毒第二期ですので、早速駆梅療法(梅毒の治療)を開始しました。
治療は本人の努力もあって約2ヶ月で終了し、 現在は経過を観察しているところです。


さて、いい機会ですので、
今回は男性同性愛者(ゲイ)の性感染症について少しお話しましょう。
肛門と性器そしてハンド・フィンガー・性玩具・薬(ヤク)等を使用するゲイのセックスには、
計り知れない特殊性があります。肛門は本来、性行為で用いる部位ではありません。
肛門を使うだけで免疫力が低下するといわれています。


男性同性愛者には特有な性感染症があり、
男性性器と女性性器の結合で生じる性感染症とは全く違う病気があります。
それは「A型肝炎」と「赤痢アメーバ症」です。
A型肝炎はA型肝炎ウイルス(HAV)が原因です。
赤痢アメーバ(腸管の寄 生する原虫)は大便を直接的あるいは間接的になめることで感染します。


しかし、なんといっても最も注意しなければならいのがHIV感染です。
他にはゲイの約10%が梅毒に感染しているとも言われています。この数字の高さは驚きですね。
また尖圭コンジローマですが、ゲイのコンジローマは肛門にできるのが特徴です。
肛門の尖圭コンジローマはやはりHIV感染者に多くみられます。
また梅毒の第二期に生じる扁平コンジローマも、尖圭コンジローマとの鑑別が必要となります。


このような事実からもわかりますように、
ゲイの方は積極的にAIDS、梅毒、A・B・C型肝炎の血液検査を受けるべきです。
既にA型肝炎・B型肝炎・C型肝炎はゲイの間で深刻な問題になっています。
しかし、A型肝炎・B型肝炎は予防ワク チンがありますので、対策をとることも不可能ではありません。
セックスをするゲイにはワクチンをお奨めいたします。
これからは、男性同性愛者(ゲイ)のための性感染症の専門医が必要な時代になるかもしれませんね。


それでは、ごきげんよう!


2009年03月17日

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