泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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性風俗嬢の性感染症(その1)

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先日、ある出版社からのインタビュー取材を受けました。
テーマは、「性風俗嬢の性感染症」についてです。

性風俗を利用することでの性感染症のリスクについては、このブログをご覧の方々には、周知の事実だと思います。しかし、世間一般では、まだまだその実態についての理解が不足しているように感じます。
そこで、今回から3回にわたって、このインタビュー取材の内容を抜粋してご紹介することにいたします。

記者:
先生、今日はどうぞよろしくお願いいたします。
今回お話を伺いたいのは「性風俗嬢の性感染症」についてです。
まずは性感染症の拡大に、性風俗嬢がどのように関わっているのか、ということから教えてください。

尾上:
性風俗店で働く女性を「性風俗従事者(commercial sex workers=ここでは以下CSWと略します)」といいます。現在、このCSWが、男性の性感染症で最も症例数の多いクラミジア性尿道炎、淋菌性尿道炎の最大感染原因になっています。

記者:
どうしてCSWが性感染症の最大原因になったのでしょうか?

尾上:
その質問にお答えするには、まずは日本の性風俗の歴史や実態について、ご説明しないといけませんね。ご存知のように、1958年に「売春防止法」が施行され、いわゆる「赤線」で行われていた売春行為が違法となりました。それによって、日本の性産業は大きく変わり、多くの赤線業者が「トルコ風呂」(1984年に現在の「ソープランド」という名前に改称)を始めました。

記者:
これによって、提供されるサービスの内容がいわゆる性行為ではなくなったということですね。

尾上:
そうですね。体を洗ったり、マッサージをしたり、さらにオーラルセックスや素股、手や乳房での性器への刺激、肛門・前立腺刺激、性玩具使用などは、売春防止法にいう「性行為」にあたらないということで、法の網をくぐりぬけた新しいスタイルの性商品がつぎつぎと現れました。
このような性商品は世界的にみても類がなく、日本特有の現象と思われます。

記者:
確かに、ソープランド以外にも様々なタイプの風俗店がありますよね。
提供している内容も、ライトなサービスからヘビーなサービスまで様々です。

尾上:
殊に、ファッションヘルス、ピンクサロンなどのオーラルセックス専門店の存在が、問題です。これらは低料金のため、手軽に若い男性が利用していますよね。
このことが性感染症の拡大・蔓延に拍車をかけているわけです。


さて、次回は実際にCSWの女性がどんな感染症にかかっている例が多いかをご紹介します。
お楽しみに。



2009年06月30日

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