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すっかり、コンジローマの被害者意識
7月のある猛暑の日。
23歳のフリーターA子さんが私の診療所を受診してきました。
「先生、アソコにイボイボができました。痛くもかゆくもありませんが、気持ちが悪くて・・・」 という訴え。
さっそく診察をすると、A子さんの小陰唇と腟前庭に、形が乳頭状、鶏冠状で、
色調が灰白色から褐色、大きさが径1~5mm大のイボが、たくさんできていました。
幸いなことに、腟壁、子宮頸部、肛囲周囲にはイボはできていませんでした。
先生
「A子さん、この病気は尖圭コンジローマです。今、パートナーはいますか?」
A子さん
「え!?尖圭コンジローマ! 本当ですか・・・? 今の彼と付き合い始めて2ヵ月になります。
じゃあ、彼に病気をうつされたんですね。ひどいわぁ。頭にきちゃう!」と、急に怒りだしたA子さん。
「今の彼」という言い方が気になった私はさらに質問をしました。
先生
「つきあって2か月ですか・・・。では元カレとはいつ別れましたか?」
A子さん
「別れたのは、もう半年も前ですから関係ないですよね。移したのは今の彼に決まってます。」
ところが関係あるのです。
尖圭コンジローマは、病気がうつってから発病するまでの潜伏期間が、
約3週間~8ヵ月(平均3ヵ月)もあります。
潜伏期間が長いので、前のパートナーの状態も把握する必要があります。
A子さんの場合、もし前のパートナーに尖圭コンジローマが認められれば、
それが感染源として最も疑わしこととなります。
潜伏期間が長いため、このように誤解を招くケースもあります。
現在のパートナーが実は被害者であるのに、自分が加害者であることを知らずして、
あたかも自分が被害者であると思い込み、すっかり被害者意識で受診してくるA子さんのような場合もあるのです。
そこで、確認のため、A子さんから元カレに電話をしてもらいました。
やはり元カレは、A子さんと別れてから、尖圭コンジローマの治療を、某泌尿器科でやったことが判りました。感染源はモトカレだったのです。
その後、念のため、A子さんの現在の彼にも来てもらい、診察をしました。
幸いなことに、現在は発症していませんでした。
でもこれから約6ヵ月は経過観察することが重要になります。
A子さんは、今の彼の心に深い傷をつけたことを反省していることでしょう。
それではご機嫌よう。
2009年07月31日