泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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膀胱異物

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7月のある猛暑日、29歳の未亡人が駆け込むようにして受診してきました。
開口一番、「先生、入れちゃったんです。」という訴え。
「えっ・・・? 一体何を何処に入れたんですか?状況を説明してください」
という私の問いかけに対する彼女の答えはびっくりするような内容でした。


「夜中の3時ごろ、婦人用体温計を尿道に挿入してオナニーしていたんです。
そうしたら、興奮のあまり、腰を動かしすぎて、体温計が、スルッと尿道の奥に入ってしまったんです。
潤滑液としてジェリーを付けておいたからだと思うのですが、あっと言う間に・・・。
どうしたらいいでしょうか?助けてください!」


そこで早速、検査に移りました。
内視鏡(膀胱鏡)で膀胱の中を観察してみますと、確かに婦人用体温計が確認できます。
しかし、なんと、今ではあまり使用されていない水銀体温計でした。
ちなみに体温計は破損等はしておらず、38.0度を示しているのも確認できました。


普通の異物であれば、異物用膀胱鏡で取り除くことができるのですが、
水銀体温計は破損すると危険ですからこれは使用できません。
そこで急きょ開腹手術に変更しました。
下腹部を3cmほど切開し、膀胱を開け、安全に婦人用体温計を取り出した。
めでたし、めでたし。


でもあまりにも人騒がせですね。
私は寝ることができないまま、朝9時に始まる外来の診察に向かいました。
こんなこともあるんですね。


さて今回の例でみられた膀胱異物とは、原因はいろいろありますが、
いたずらやオナニー(自慰)で尿道から膀胱に異物を入れて、それが取れなくなった状態です。
入れる物はたくさんあります。


たとえばローソク、マッチ棒、体温計、塗り箸、カテーテル、ビニールチューブ、マドラー、麦わら、紙、鉛筆、ボールペン、ストロー、針金、電線、ヘアピン、輪ゴム、靴紐など、何でもありです。
まさに『この世にある物で膀胱の中に、無い物はない!』といわれるぐらいバラエティーに富んでいます。

このような異物を入れたまま放置しておくと膀胱炎の原因となり、排尿痛、血尿、下腹部痛などの症状がでます。
さらに放置しておくと異物が核となり、その周囲に石が付き、膀胱結石となります。
最悪な場合、膀胱穿孔を生じたり、膀胱結石が巨大となり膀胱から直腸に穿孔してしまい、
肛門から尿が出てきてしまうことさえあります。


もし貴方が、誤って膀胱になにかを入れてしまった場合は、早急に緊急外来にかけ込みましょう。
でも、できればこのような医者泣かせなことがないように、くれぐれもご注意ください。


それでは、ごきげんよう!


2009年07月31日

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